- 更新日 : 2026年6月17日
給与制度(賃金制度)とは?種類や設計手順、見直し方法を完全ガイド
等級制度や評価制度と連動させ、就業規則に明文化したうえで事業環境の変化に応じて見直します。
- 基本給・手当・賞与を等級と評価に連動させて決める
- 就業規則の変更は常時10人以上の事業所で労基署へ届け出る
- 賃金を下げる不利益変更は原則として本人の同意を得る
従業員への影響が大きいため、説明会や個別面談を通じて納得感を高めることが大切です。
社員の頑張りに応えたいが、「どのような給与制度が適切かわからない」という悩みを抱える経営者や人事担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
給与制度は、従業員の働き方と企業の方向性をつなぐ「報酬のルール」です。適切に設計されていないと、モチベーションの低下や退職リスクの増加、労務トラブルにもつながりかねません。
この記事では、給与制度の基本から、実務での設計・見直し・減給時の対応まで、ビジネスで押さえておくべきポイントを解説します。
目次
給与制度(賃金制度)とは?
給与制度とは、企業が従業員に対してどのような基準で、どのような形で報酬(給与・賞与・手当など)を支払うかを定めたルールです。評価基準、賃金体系、支給タイミング、昇給・減給の要件などを一体的に設計する仕組みであり、会社の人材マネジメントにおいて中心的な役割を担います。
「給与制度」は「賃金制度」とも呼ばれることがあり、企業によって呼称が異なる場合がありますが、いずれも報酬の決定に関わる制度全般を指します。
制度の設計においてとくに重要なのは、透明性(ルールが明確であること)と公平性(特定の社員に偏らない運用)です。
これらが欠けると、従業員の納得感が得られず、評価制度との整合性が取れなくなるほか、労務トラブルの原因にもなりかねません。
近年では、多様な働き方や雇用形態の広がりに伴い、給与制度にも柔軟性が求められています。たとえば、個人の成果に応じた成果給、業務の役割に応じた役割給、あるいは年齢や勤続年数に基づく年齢給・勤続給など、目的や組織文化に応じて最適な制度を選ぶ必要があります。
給与体系と給与形態の違い
給与制度と似た言葉に「給与体系」と「給与形態」がありますが、両者は意味が異なります。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
給与計算の「確認作業」を効率化する5つのポイント
給与計算の確認作業をゼロにすることはできませんが、いくつかの工夫により効率化は可能です。
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給与規程(ワード)
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給与(賃金)を構成する要素
給与(賃金)は、基本給だけではなく、複数の報酬要素を組み合わせて設計されています。
- 基本給:毎月固定で支払われる給与の中心部分。等級・役割・能力・勤続年数などを基準に決定される
- 手当:基本給とは別に支給される報酬。役職手当・資格手当・住宅手当・家族手当・通勤手当など多様で、自社が何を評価・支援したいかを反映する
- 賞与:会社業績や個人評価に応じて支給される一時金。夏・冬の年2回支給が一般的で、決算賞与を加えた年3回や業績連動で支給額・回数が変動するケースもある
- 退職金制度:勤続年数や等級、退職理由などを基準に支給される長期的報酬制度。中退共を活用した退職一時金のほか、企業年金としての確定給付型(DB)・確定拠出型(企業型DC)など複数の仕組みがある
どの手当を設けるのか・何を評価して報酬へ反映するのかを整理したうえで、就業規則や賃金規程へ明文化し、従業員が納得しやすい制度設計を行いましょう。
給与制度(賃金制度)の賃金体系やトレンド
給与制度は、大きく分けて「年齢や勤続年数を基準とするタイプ」「人の能力や役割に基づくタイプ」「仕事の内容や成果に応じて決まるタイプ」に分類できます。
賃金体系には、それぞれ強みと弱みがあり、目的や人材戦略に応じて柔軟に組み合わせていくことが大切です。現在では、これらの要素を組み合わせたハイブリッド型の給与制度を採用する企業が増えています。
以下では、代表的な賃金体系をそれぞれの特徴とともに解説します。
職務給
職務給とは、担当する「職務(ジョブ)」の難易度や責任の度合いを基準に給与を決定する制度です。たとえば、同じ職種の中でも、より複雑なシステム開発を担うプログラマーのほうが高い給与を受け取るといった具合に、「仕事」そのものに値段をつける考え方です。
この制度は、年齢や勤続年数、個人の能力とは切り離して報酬を決める点が特徴で、「同一労働同一賃金」の原則と親和性が高い考え方の一つとなっています。
外資系企業やジョブ型雇用を採用する企業を中心に導入が進んでおり、専門性の高い職種との相性も良好です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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役割給
役割給とは、組織内で果たす役割の大きさや責任範囲に応じて給与を決める制度です。部長や課長など役職単位だけでなく、プロジェクトリーダーなどのミッション単位でも評価されることがあります。
役割基準を明文化しやすいジョブ型制度と親和性が高く、年齢に依存しない人材登用を可能にする点で、近年とくに注目されている制度です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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成果給
成果給とは、個人またはチームの「業績」「目標達成度」に応じて給与を変動させる制度です。営業職や企画職など、成果が数字で可視化されやすい部門で多く用いられています。
固定給と組み合わせて導入されることが一般的で、成果主義型組織やインセンティブ文化の強い企業でとくに採用が進んでいます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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能力給
能力給とは、職務遂行に必要なスキルや知識、思考力、判断力などの「能力」に応じて給与を決定する制度です。多くは等級制度と連動しており、評価制度を通じて能力の伸長が給与に反映されます。職務給が「仕事」に着目しているのに対し、能力給は「人(の能力)」が評価対象です。
現在では、若手社員の育成とキャリア形成を重視する企業での採用が増えており、教育制度との連携がカギとなります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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年功給(年齢給・勤続給)
年功給は、年齢や勤続年数の上昇に伴って給与が上がる制度で、日本型雇用において長年スタンダードとされてきました。年齢給・勤続給の2つの考え方を総称して「年功給」と呼びます。
現在、年功給のみで制度を運用する企業は減少傾向にありますが、多くの企業では基本給の決定要素の一つとして年功的な考え方が残っています。また、他の制度と組み合わせた「基礎部分」として活用されることも一般的です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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給与制度(賃金制度)を設計する手順・考え方
給与制度は、企業の人事方針を具体的に形にする仕組みです。従業員が納得できる制度を設計するには、単に賃金表を作るだけではなく、目的を明確にし、公平で持続可能な制度として構築していく必要があります。
ここでは、実務に即した5つのステップを紹介します。
現状の課題と制度の目的を定める
まずは、現状の課題を洗い出し、それに対して給与制度で何を実現したいのかという目的を明確にします。
たとえば、以下のような課題を背景に制度見直しを行う企業もあります。
- 若手社員の早期離職を防止したい
- 成果を正当に評価し給与へ反映したい
- 年功序列型の給与体系を見直したい
- 管理職と一般社員の給与逆転を解消したい
- 採用市場で競争力のある給与水準にしたい
この目的が後の制度設計全体の判断基準となり、制度に一貫性を持たせるための土台となります。
等級制度の骨格を策定する
次に、給与の根拠となる「等級制度」を構築します。
等級制度は従業員を職務や能力ごとに分類する仕組みで、給与テーブル・評価制度の基礎となります。
- 職能資格制度(能力に応じて序列化)
- 職務等級制度(仕事の内容・責任で分類)
- 役割等級制度(果たす役割・ミッションで分類)
各等級で求められる能力や責任を「等級定義書」として明文化すると、従業員も自分のポジションや成長の方向性を理解しやすくなります。
職能資格制度
職能資格制度とは、従業員の知識・スキル・判断力など、職務遂行能力を基準に等級や給与を決定する制度です。
日本企業で長年採用されてきた制度であり、長期育成やジョブローテーションとの相性が良いのが特徴です。幅広い経験を積ませながら、人材育成を行えます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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職務等級制度
職務等級制度とは、担当する職務内容や責任範囲、仕事の難易度を基準に等級を決定する制度です。
「どの仕事を担当しているか」を重視する制度であり、専門職制度やジョブ型雇用との相性が良く、同一労働同一賃金の考え方とも親和性が高い制度です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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役割等級制度
役割等級制度とは、組織内で担う役割や期待成果、責任範囲を基準に等級や給与を決定する制度です。
管理職・専門職・プロジェクト責任者など、役割ごとに期待される成果や責任を整理しながら等級を決定します。職能資格制度より成果・責任を反映しやすく、職務等級制度より柔軟に運用しやすい点が特徴で、「成果も重視したいが急激な成果主義への移行は避けたい」という企業にも導入しやすい制度です。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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公平な評価制度を構築し連動させる
等級を設計したら、それに連動する評価制度を作ります。給与額を決める根拠として、評価制度の整備は不可欠です。
- 業績評価:目標達成度や成果
- 能力評価:スキルや知識の成長度
- 情意評価:勤務態度、協調性、積極性など
何を、どの比率で評価するかを明確にし、評価者間のばらつきを防ぐために、評価者研修やフィードバックの標準化もあわせて行います。
人事評価の種類について詳しくは、下記の関連記事で紹介しています。
給与テーブルを作成し人件費を試算する
評価と等級を給与額に変換するために、給与テーブル(賃金表)を設計します。
- 各等級に給与レンジ(上限・下限)を設定
- 評価に応じて昇給の幅・スピードを決める
- 手当や賞与との整合性も検討する
制度完成後は、全社員を新テーブルにあてはめて人件費シミュレーションを行い、導入後の影響を把握しておきます。とくに財務に与えるインパクトは、制度導入の成否を左右します。
就業規則への反映と従業員への説明・合意形成を行う
制度設計が完了したら、就業規則や賃金規程への反映を行います。
- 給与体系の変更(等級、昇給・降給、賞与など)は「賃金」に関する絶対的必要記載事項に該当します
- 就業規則を変更する場合、常時10人以上の従業員がいる事業所では労基署への届出が必要です
- 労働者代表の意見聴取を行い、「意見書」を添付して提出します
- 同時に、従業員への説明資料・Q&A・比較表なども用意し、不利益変更がある場合は原則として本人の同意を取得する必要があります
- 制度変更の背景と目的
- 自分の給与がどう変わるのか(個別通知)
- 評価と給与の関係
- 社員の不安や質問に対する誠実な対応
給与制度の設計は、企業の方向性を従業員に伝える「メッセージ」でもあります。納得感のある制度は、人材の定着や成長に直結し、企業価値の向上にもつながります。
中小企業における賃金テーブル設計の考え方
中小企業では、大企業のように複雑な制度を導入するよりも、シンプルで継続運用しやすい制度設計が大切です。
等級数が多すぎると、何が違う等級なのかが現場で理解されにくくなり、昇格基準への不満や評価のばらつきにつながりやすくなります。人事専任担当者が少ない中小企業では、制度の複雑さが運用の属人化や形骸化に直結するリスクがあるためです。
賃金テーブルの構成は、自社の人材戦略に合わせて以下のようなパターンから検討するとよいでしょう。
- 職務給のみ
- 職務給+職能給
- 職務給+年功給 など
成果を重視する企業では成果給の比重を高め、長期育成を重視する企業では職能給や年功要素を組み合わせる設計が一般的です。
また、昇給幅を大きく設定しすぎると将来的に人件費が増加し、昇給原資を維持できなくなるリスクがあります。制度設計時には、必ず人件費シミュレーションも行いましょう。
給与制度(賃金制度)テーブルテンプレート
給与制度をゼロから設計する場合、等級数の決め方や昇給幅の設定など、判断に迷うポイントが多くあります。とくに人事専任担当者が少ない中小企業では、テンプレートを基に設計を進めるのが効率的です。
マネーフォワードでは、以下の給与制度テンプレートを無料で提供しています。等級別の給与レンジや昇給シミュレーションまで含まれているため、自社の制度設計のたたき台としてご活用ください。
給与テーブル(販売職用)のテンプレート
L1〜L5の5等級構成で、各等級に役割定義付き。職能給・職務給の2軸設計のため、小売・販売業での等級制度整備に使いやすいテンプレートです。
給与テーブル(等級定義付き)のテンプレート
1〜8等級・号俸1〜20対応の汎用テンプレート。一般職から部長職まで役職名と等級が対応付けられており、制度見直しや人件費シミュレーションの土台に活用できます。
自社の等級数や給与レンジに合わせて数値を調整し、人件費シミュレーションと並行して活用するとより効果的です。
給与制度(賃金制度)と賞与の設計ポイント
賞与(ボーナス)は、月々の給与とは別に、従業員の貢献を評価し、モチベーションを高めることにつながります。給与制度と連動して設計することで、日常の働き方や評価制度と整合性を持たせることが可能です。
ここでは、賞与制度を構築・運用する際に押さえておくべき設計上のポイントを解説します。
賞与原資の決定ルールを明確にする
賞与支給にあたって最初に決めるべきことは、会社がどの程度の金額を支給できるかという「原資」の考え方です。
会社が支給する賞与の総額である「原資」の決め方には複数の方式がありますが、経常利益や営業利益などの業績指標に連動させる方式が代表的です。
たとえば、「経常利益の○%を賞与原資とする」といった明確なルールを設定すれば、従業員も会社の業績と自分の処遇との関係を理解しやすくなります。
業績がよければ支給額が増え、悪ければ抑えられるといった連動性があることで、組織全体の目線も揃いやすくなります。
評価と賞与額の連動性を設計する
賞与原資が決まったあとは、それをどのように従業員一人ひとりに分配するかを設計します。ここでは人事評価制度を活用します。
たとえば、評価ランクごとに係数を設定し、「基本給 × 支給係数」という計算で賞与額を算出する設計が一般的です。評価と賞与を連動させることで、成果や行動がどのように報酬に反映されるのかが見えるようになります。
また、賞与に反映される評価期間(例:上期評価を冬季賞与に反映)を明記しておくことで、従業員が成果と報酬のつながりを意識しやすくなります。
支給対象者と支給条件を明文化する
賞与は必ずしも全員に一律で支給されるものではないため、支給対象者や条件をあらかじめ定めておく必要があります。とくに注意したいのは、在籍要件と評価要件です。
「支給日に在籍していること」「査定期間中に一定の勤務実績があること」などの条件は、あらかじめ就業規則や賃金規程に明記しておきます。
具体的には以下の通りです。
- 支給日に在籍していること
- 査定期間中に一定期間勤務していること
- 休職期間中の扱いをどうするか
- 試用期間中社員を支給対象に含めるか
また、評価が著しく低い社員への支給停止や減額を制度として設ける場合は、そのルールを明文化し、支給対象外となる可能性があることを説明する必要があります。
財務的な持続性と分配の公正性を両立させる
賞与は従業員への報酬であると同時に、経営資源の一部です。業績が変動しても持続的に支給できる設計にするには、原資の上限を業績と連動させたうえで、配分基準を明確にしておくことが大切です。
以下のような3層構造にすると、全体と個人のバランスを取りながら制度を運用できます。
- 全社業績:会社全体の利益や売上目標達成率をもとに、賞与原資総額を決定
- 部門業績:各部門の成果やKPI達成度に応じて、部門ごとの配分額を調整
- 個人評価:個人の成果・能力・行動評価をもとに、最終的な支給額を決定
これにより、業績が悪い年でも原資の範囲内で配分でき、財務的な無理が生じにくくなります。また、配分基準が明確になるため、「なぜこの金額なのか」を従業員に説明しやすくなり、公正性への納得感も得られやすくなります。
多様なインセンティブ制度も検討する
賞与といえば夏と冬の定期賞与が主流ですが、それ以外にも制度を設計する選択肢があります。
たとえば、営業職などには個人実績に連動した「業績連動賞与(インセンティブ)」、利益が出た年に限定支給する「決算賞与」などがあります。
具体的には、下記のようなインセンティブ制度が有効です。
- 業績連動賞与:会社全体の利益や売上目標達成率に連動して支給額が変動。業績と報酬のつながりを従業員が実感しやすくなる
- 決算賞与:利益が出た年度のみ支給する一時金。固定コストを抑えながら利益還元できる
- 営業インセンティブ:個人の営業成績に応じて支給額が変動。成果主義型の組織文化と相性が良い
- チームインセンティブ:チーム単位の成果に応じて支給。個人競争より協調を重視したい場合に有効となる
- 特別報奨金:長期貢献や特定プロジェクトへの貢献を評価する一時金。定期的な賞与制度では拾いにくい貢献を個別に報いたい場合に適している
また、中長期的な報酬制度として、自社株式を付与する「株式報酬」や「ストックオプション」を導入する企業も増えています。これらの制度は、会社の成長と従業員の貢献を結びつけ、より長期的な視点での働き方を促すために活用されます。
詳しいインセンティブの種類やメリットなどについては、下記の関連記事をご覧ください。
給与制度(賃金制度)はいつ見直すべきか?
給与制度は一度設計したら終わりではなく、会社のステージや社会情勢の変化に合わせて定期的な見直しが必要です。問題が表面化してから対応するのではなく、「現行制度が実態と合わなくなってきた兆し」を早めに捉えることが重要です。
以下のような変化が見られる場合は、見直しを検討するタイミングといえます。
- 従業員の年齢構成や雇用形態が大きく変わった
- 昇給・賞与が評価結果と連動していない
- 同業他社と比べて報酬水準が低下してきた
- 事業構造や経営戦略が大きく転換した
- 法改正(同一労働同一賃金・労働条件明示ルールの変更など)に対応できていない
- 採用・離職の理由として待遇面への不満が挙がるようになった
こうした兆候が見られたら、現行制度の効果や課題を整理したうえで、必要であれば段階的な見直しを検討しましょう。給与制度の変更は従業員への影響が大きいため、早めに着手し、十分な準備期間を確保することが大切です。
給与制度(賃金制度)を見直す際の4つのポイント
1.給与制度の形骸化を防ぐ
次に、社内外の両面から制度の妥当性を客観的に確認します。社内では、制度が形だけになっていないかを検証します。
たとえば、現場から「評価の基準が曖昧」「給与がどう決まっているのかわからない」といった声が上がっていないか、ヒアリングやアンケートを通じて把握しましょう。
一方、社外環境では、業界平均の給与水準や他社の制度内容、採用市場での競争力などを調査します。特定職種の処遇が市場水準から大きく乖離している場合は、制度の再調整が必要です。
2.市場水準やトレンドを調査する
報酬制度は、自社の内部事情だけでなく、外部環境とのバランスも重要です。とくに採用競争が激しくなっている職種では、他社との給与水準の差が人材確保に直結します。
定期的に、業界水準や地域相場、同業他社の制度などをリサーチし、自社の制度と比較することが、制度を時代に適合させるうえで欠かせません。中途採用者の処遇が新卒や既存社員と不自然に異なっていないか、といった点にも注意が必要です。
3. 給与制度の変更は段階的に進める
給与制度の見直しは、なるべく段階的に進めることが望まれます。いきなり全体を大幅に変えると、制度理解が追いつかず混乱を招いたり、従業員の不信感を高めたりする可能性があります。
給与制度を変更する際の変更手順は以下の通りです。
- 現状の給与制度や評価制度の課題を整理する
- 新しい給与体系・等級制度・評価基準を設計する
- 試験運用や人件費シミュレーションを実施する
- 従業員説明・規程改定を行い段階的に導入する
まずは試験運用を行い、課題がないかを確認しながら本格導入へ移行する流れが理想です。評価制度や等級制度とあわせて変更する場合は、相互の整合性が取れるよう、設計段階から一貫した視点で進めましょう。
4.就業規則・賃金規程を忘れずに改定する
給与制度を変更する際は、必ず就業規則や賃金規程の改定が必要になります。賃金に関する部分は「絶対的必要記載事項」にあたるため、見直し内容が昇給条件や評価連動性、給与テーブルに及ぶ場合は、規程上の整備を欠かせません。
「絶対的必要記載事項」とは、労働基準法で、就業規則へ必ず記載しなければならないと定められている項目です。賃金・労働時間・休日休暇など、従業員の労働条件に直結する内容が該当します。そのため、給与テーブルや昇給ルール、評価連動制度などを変更する場合は、就業規則や賃金規程の改定が必要です。
また、変更後の制度内容は全社員に明確に説明し、不利益変更がある場合は原則として本人の同意を得る必要があります。労働条件の変更は、法令上も社内的にも非常にデリケートな対応が求められるため、文書での通知、説明会、個別面談などを丁寧に行うことが欠かせません。
給与制度(賃金制度)による減給を適切に扱うには?
給与制度を運用する中で、等級や評価に基づいて給与が下がることもあります。役職の変更や人事評価の結果、制度の見直しによる給与レンジの調整などが該当します。
ただし、給与の引き下げは従業員の生活や働く意欲にも影響を与えるため、制度として取り扱う際には丁寧な対応と明確な運用ルールが必要です。ここでは、減給を円滑かつ公正に扱うための実務上のポイントを整理します。
減給のルールを制度の中に明示しておく
評価や等級の見直しなど、制度上の理由で給与が変動する場合には、そのルールや基準をあらかじめ就業規則や賃金規程に明記しておくことが大切です。
たとえば、「評価が一定の水準を下回った場合は昇給の対象外とする」「役職を外れた場合は役職手当の支給を停止する」など、基準を明文化しておくことで、給与の変更が特別な措置ではなく、制度に基づいたものとして扱えるようになります。
具体的には、以下のような内容を就業規則や賃金規程へ明記しておきましょう。
- 評価が一定基準を下回った場合は昇給対象外とする
- 役職変更・降格時は役職手当を変更または停止する
- 欠勤日数や勤務態度(遅刻、離席時間など)を基準に賞与査定へ反映する
- 等級変更時は等級ごとに定めた給与テーブルへ移行する
- 職務内容変更時は職務等級に応じて基本給を見直す
一方、懲戒処分として減給を行う場合は、労働基準法で金額の上限が定められており、制度的な減額とは別のルールに従う必要があります。こうした区別を事前に整理しておくことで、適切な対応が可能になります。
対象者への説明と理解を重視する
たとえ制度に基づいた変更であっても、給与が下がることに対しては不安や戸惑いが生じやすいものです。そのため、該当する従業員には個別に説明の機会を設け、制度の仕組みや評価との関係性を丁寧に伝えることが重要です。
あわせて、今後の働き方や評価のポイント、再び昇給するために必要なことなどを前向きに伝えることで、納得感を高めやすくなります。変更の内容が労働条件の不利益変更にあたる場合は、本人の同意を得ることが原則です。同意を得る際には、段階的な導入や経過措置など、従業員の負担を抑える工夫も有効です。
減給後のサポート体制を整えておく
給与が下がった従業員に対しては、その後のサポートも重要な対応のひとつです。たとえば、上司との定期的な面談を通じて評価結果を振り返り、改善点や今後の期待を共有することで、次のステップに向けた取り組みがしやすくなります。
具体的には、以下のような対応を整備しておきましょう。
- 上司との定期1on1で評価結果や改善点を継続的に共有する
- 次回昇給・昇格に必要な行動基準や目標を明確に伝える
- スキル研修や資格取得支援など、成長支援制度を案内する
- 評価結果への疑問や不満を相談できる窓口・再確認フローを整備する
評価の透明性や公正性が確保されているかも定期的に確認し、必要に応じて制度の運用や評価項目を見直していくことが、安心して働ける職場づくりにつながります。
給与制度(賃金制度)に関するよくある質問
給与制度(賃金制度)に関するよくある疑問を解説します。
賃金制度と給与テーブルの違いは?
賃金制度は「給与をどのような基準で決めるか」というルール全体を指し、等級制度・評価制度・昇給ルール・賞与制度などを一体的に設計する仕組みです。
一方、給与テーブルは賃金制度の一部で、等級・号俸ごとの基本給額を一覧化した表を指します。
賃金制度が「設計思想」で、給与テーブルが「具体的な金額の一覧」です。給与テーブルだけを整備しても、評価制度や昇給ルールと連動していなければ制度として機能しないため、両者をセットで設計することが大切です。
賃金制度設計にはどれくらい期間がかかる?
賃金制度設計にかかる期間は、企業規模や現行制度の複雑さによって大きく異なります。
小規模企業でシンプルな制度設計にとどまる場合は、数ヶ月程度で完了するケースがあるのに対して、等級制度・評価制度・給与テーブルを全面的に見直すような大規模な再構築では、1年以上かかるケースも珍しくありません。
期間が長くなる主な要因は、現状分析・人件費シミュレーション・就業規則改定・従業員説明といった複数工程が並行して発生することが挙げられます。
不利益変更が生じる場合は、労使調整にも時間がかかるため、制度見直しを検討している場合は早めに着手するのがおすすめです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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