- 更新日 : 2025年3月28日
社会保険の改定のタイミングを解説!適用拡大の振り返りも
社会保険が適用される条件は改定が繰り返し行われています。パートやアルバイトといった短時間労働者の方の加入を拡大させるために見直しが実施されているのです。そこでこの記事では社会保険の種類や対象者、改定のタイミングについて詳しく解説します。適用拡大の振り返りも行うので、今までの改定の流れを整理してみてください。
目次
社会保険とは?
そもそも社会保険とは、病気・怪我・老後の資金不足・失業などの生活におけるさまざまなリスクに備えるための公的保険制度です。社会保険という制度によって、私たちの生活はさまざまな側面で支えられています。まず、社会保険の種類や対象となる条件について整理しましょう。
以下の記事で社会保険について詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
社会保険の種類
社会保険の種類としては、下記の5つの保険が該当します。
- 医療保険
- 年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
医療保険・年金保険・介護保険は、加入年齢に達した際には必ず加入する義務があります。一方、雇用保険と労災保険は会社員が加入するもので、労働保険とも言われています。なお、主に会社員を対象とする健康保険(医療保険)と厚生年金保険(年金保険)の2つを狭義の意味で社会保険と呼んでいます。
以下の記事で社会保険の種類について詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
社会保険の対象者
まず、社会保険(健康保険と厚生年金保険)はフルタイムで働く方やフルタイムの3/4以上働かれる方には加入義務があります。加えて、令和4年10月においては、従業員数101人以上(※)の企業で働く以下の条件に当てはまるパートやアルバイトの方も対象です。国籍や性別・年金受給の有無に関わらず被保険者となるため注意してください。
(※)フルタイムの従業員数と、週所定労働時間及び月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の従業員数を合計した数。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
なお、企業などの事業所に属していない方などであっても、医療保険と年金保険は加入義務があります。医療保険としては国民健康保険、年金保険としては20歳以上60歳未満の方を対象に国民年金保険への加入が必要です。
次に、介護保険について確認してみましょう。介護保険は40歳に達したときに加入義務が生じ、保険料の徴収が開始されます。企業で働く従業員だけでなくすべての方が対象です。
なお、雇用保険と労災保険はパート・アルバイトを含めた労働者を1日・1人でも雇っていれば、その事業主は必ず加入しなければなりません。労災保険料は全額を事業主が負担、雇用保険料は事業主と労働者の双方で負担します。
以下の記事で社会保険の対象者について詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
参考:パート・アルバイトの皆さんへ社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。|政府広報オンライン
これまでの社会保険の改定の振り返り
これまでに社会保険(医療保険と年金保険)の改定は繰り返し行われてきました。パートやアルバイトといった短時間労働者の方の加入条件の見直しが、繰り返し行われてきたのです。現在までの改定の歴史を振り返って、今までの流れを整理してみましょう。
2016年10月の社会保険の適用拡大
2016年10月から従業員が501人以上の企業を対象に、週20時間以上働くパート・アルバイトの方などにも社会保険の加入対象が広がりました。さらに、2017年4月からは、従業員500人以下の企業で働く方も、労使で合意すれば社会保険に加入できるようになっています。
なお、従業員の数え方としては企業に所属する労働者数ではなく、厚生年金保険の被保険者数をカウントする必要があるので注意しましょう。具体的には、フルタイム労働者数とフルタイム労働者の3/4以上の労働時間で働く従業員数を合算して数えます。条件を満たしていればアルバイトやパートの方も含めてカウントしてください。
参考:平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)|厚生労働省
2022年10月の社会保険の適用拡大
2022年10月からは従業員数101人以上の企業についても、週20時間以上働くパート・アルバイトの方を社会保険に加入させる義務を負うことになりました。少子高齢化の影響もありパートやアルバイトといった多様な形で就労する方が増えています。そうしたさまざまな形で働く方に対して社会保険を適用するために、改定が繰り返し行われているのです。
以下の記事で2022年10月の社会保険の適用拡大について詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
2023年以降の社会保険の変更点
2023年以降にも社会保険の適用条件の変更が予定されています。定期的に法令をチェックして、幅広い従業員に対して社会保険を適用させましょう。
2024年の社会保険の適用拡大
2024年10月から従業員数51人以上の企業についても、週20時間以上働くパート・アルバイトの方を社会保険に加入させる義務を負うことになる予定です。
社会保険の適用拡大に対応するため、企業としては正しい現状把握が大切です。社会保険に加入していないパート・アルバイトの方について、要件に該当するかを確認しなければなりません。加入対象者を把握したうえで、対応方針を決定しましょう。加えて、社会保険の適用対象者へは忘れずに説明を行ってください。
社会保険料の計算方法
医療保険・年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険、5つの社会保険料の計算方法について整理してみましょう。ここでは企業に勤務している方の計算方法について解説します。
医療保険の計算方法
健康保険料の計算方法は以下の通りです。従業員の負担額については企業との折半です。
健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率
従業員の負担額=健康保険料÷2年金保険の計算方法
厚生年金保険料の計算方法は以下の通りです。従業員の負担額については企業との折半です。
厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率
従業員の負担額=厚生年金保険料÷2基本的な計算方法の考え方は医療保険と同じですが、厚生年金保険料率は18.3%で固定されています。
介護保険の計算方法
介護保険料の計算方法は以下の通りです。従業員の負担額については企業との折半です。
介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率
従業員の負担額=介護保険料÷2なお、健康保険料と介護保険料は健康保険組合ごとに異なる値が設定されているため注意しましょう。
雇用保険の計算方法
雇用保険の計算方法は以下の通りです。
雇用保険料=給与額(賞与額を含む)×雇用保料率なお、企業と従業員の双方が雇用保険料を負担しますが、従業員が負担する金額は労使折半ではありません。企業側が多く支払うように設定されているので覚えておきましょう。
労災保険の計算方法
労災保険料の計算方法は以下の通りです。
ただし、従業員の支払いはなく企業が労災保険料を全額負担します。労災保険料=全従業員の前年度の賃金総額×労災保険料率なお、労災保険料率の値は業種によってそれぞれ設定されており、災害の発生率を基準として決められます。
以下の記事で社会保険料の計算方法について詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
参考:厚生年金保険の保険料|厚生年金機構
参考:労働保険料の計算方法|大阪労働局
社会保険は定期的に改定されている
社会保険の適用条件は定期的に改定されています。パートやアルバイトといった短時間労働者の方であっても加入できるように、見直しが繰り返し行われているのです。
社会保険の加入は私たちの普段の生活を支えてくれる、さまざまなメリットがあります。例えば、将来もらえる年金が増えたり医療保険の給付が充実したりします。保険料についても企業が半分を負担してくれるため、加入を希望している方が少なくありません。社会保険の改定内容を正しく理解して、パートやアルバイトの方の適用を拡大させましょう。
よくある質問
これまでの社会保険改定についてはどういったものがありましたか?
パート・アルバイトの方の社会保険加入の適用条件が緩和されました。2016年10月には従業員501人以上の企業、2022年10月には従業員数101人以上の企業が対象に加わりました。詳しくはこちらをご覧ください。
2023年以降の社会保険における改定について教えてください
2024年10月から従業員数が51人以上の企業で働くパート・アルバイトの方が、新たに社会保険の適用対象になります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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