- 更新日 : 2024年12月3日
社会保険における健康保険とは
業務外で病気やけがをしたとき、またはそのために休業してしまったときに頼れる公的な医療保険制度が社会保険制度のひとつである健康保険です。出産時や死亡時にも給付金を受け取れます。
整理しておきたい点ですが、「社会保険」には二つの意味があります。ひとつは公的な保険・年金制度全般という意味での「社会保険」で、これには国民年金や労災保険など、さまざまな立場の方が加入する保険が含まれています。
一方、会社員などが加入する「社会保険」、いわゆる「社保」は、健康保険と厚生年金保険だけを表しており、この意味で「社会保険」という言葉が使われています。
業務中に発生した従業員のけがや病気による費用は、労災保険で全額負担されます。
労働基準法により業務中に起こった事故等によるけが、病気については会社で補償をする義務があるとされているためです。
しかし、業務とかかわりのないけがや病気に関しては、当然のことながら「自分持ち」となります。突然の事故や病気、または出産をした場合などは、医療費がかかるばかりか長期の休業を強いられるケースもあり、従業員の生活に負担がかかります。
こういった場合に頼れるのが健康保険なのです。健康保険は社会保険に加入している従業員が報酬に応じた保険料を支払うことにより、いざという時に保険給付を受けることができる仕組みとなっています。
健康保険の被保険者の種類
社会保険の健康保険被保険者の種類は、健康保険の適用事業所に使用される当然被保険者・日雇特例被保険者と、適用事業所を退職後も加入できる任意継続被保険者、特例退職被保険者の4種類です。
当然被保険者
一般の被保険者の正式名称は「被保険者(日雇特例被保険者、任意継続被保険者および特例退職被保険者を除く)」といいますが、通常は簡略化して「当然被保険者」と呼ぶことが多いです。当然被保険者の範囲は次のとおりです。
1.適用事業所に雇用される代表者・従業員
役員・従業員のいずれであっても、法人から労働の対価として報酬を受けている場合は対象となります。ただし、75歳を迎えた場合は後期高齢者医療制度が適用されるため非該当です。
2.短時間就労者(パート・アルバイト等)
フルタイムで働く正社員の4分の3以上の所定労働時間・労働日数を満たす従業員が対象です。なお、平成28年10月より、週所定労働時間20時間以上・月収88,000円以上・雇用期間が1年以上・学生でないこと・企業規模が従業員501名以上に該当する短時間就労者も適用となります。
3.労働組合専従者
使用される労働組合において当然被保険者となります。
日雇特例被保険者
正社員ではなくても社会保険に加入することができます。日雇いや短期間の業務に従事する従業員は日雇特例被保険者と分類されます。
1.単発で雇われる日雇い労働者
2.2ヶ月以内のまとまった期間で雇われる労働者
3.4ヶ月以内のまとまった期間で季節労働に従事する労働者
季節に左右される業務で、年末年始の郵便配達などの仕事が該当します。
4.6ヶ月以内のまとまった期間で臨時的事業のために雇われる労働者
万博博覧会のような、臨時的に開設される事業の事業所が該当します。
任意継続被保険者
希望すれば、適用事業所を退職した後も健康保険の被保険者になることができる制度の対象者です。以下の要件にいずれも該当していなければなりません。
1.適用事業所の退職または適用除外規定に該当したために当然被保険者の資格を喪失した者であること
2.中断のない2ヶ月間保険加入資格を有しており、その後資格を失った者であること
3.船員保険の被保険者・後期高齢者医療の被保険者ではないこと
4.継続希望の申し出が資格を失ってから20日以内に行われたこと
5.初回の保険料を納付期日までに納付したこと
特例退職被保険者
定年退職者が在職中と変わらない内容で保険給付をうけられるよう作られた制度で、加入期限は75歳までです。厚生労働大臣の監督を受け、「特定健康保険組合」が運営しています。
標準報酬月額
健康保険では、被保険者が負担する保険料額と受けることができる保険給付額の算定は、報酬額に比例します。しかし、実際に支給される報酬は毎月変動があるため、保険料や給付額の計算に手間がかかります。
健康保険法ではその手間を省くため計算用の枠を設け、これを「標準報酬月額」として算定の基礎としています。標準報酬月額を決定するタイミングは、以下のようになります。
1.資格取得時決定(被保険者が保険加入の資格を有した時に決定)
2.定時決定(毎年4~6月の報酬から標準報酬月額を見直す)
3.随時改定(大幅に報酬が変動した場合の改定)
4.育児休業等終了時改定(育児休業終了時の報酬から改定)
主な給付
健康保険では、さまざまな保険給付が生活をサポートしてくれます。
・療養の給付病気やけがで医療機関等を受診した際、医療費の一部は保険給付でまかなわれるため、保険証の提示により自己負担分のみを支払えばよい
・傷病手当金
療養のため会社を休んだ期間の生活保障として支給される
・出産手当金
出産前後の会社を休んだ期間のうち、定められた日数分、生活保障のために支給される
・埋葬料
被保険者が死亡した際、その被扶養者で、かつ埋葬を行った者に対して5万円が支給される
まとめ
社会保険のなかの健康保険に加入することができる被保険者の範囲は非常に幅広く、基本的にパートやアルバイトを含む会社員等なら全員加入することができます。
会社の退職後も継続加入できるサービスがあることからも、できるだけ多くの人に社会保険に加入してもらい、病気・怪我時の医療費補助や、休業・出産・死亡時の生活保障を行うことにより、国民に安心して生活をしてもらおうという仕組みになっていることがわかります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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