- 更新日 : 2025年3月19日
忌引き休暇は有給扱いになる?日数や申請方法について徹底解説
忌引き休暇が有給の休暇扱いになるかは、会社の規定により異なります。法律上の決まりはなく、企業ごとに運用が異なるため、事前にルールを定めて準備しておくことが重要です。
本記事では、忌引き休暇の概要や導入の流れについても詳しく解説します。忌引き休暇に関する就業規則を定める際は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
目次
忌引き休暇とは|家族や親族が亡くなった際に付与する休暇のこと
忌引き休暇は、家族や親族が亡くなった際に取得する特別休暇です。忌引きは「喪に服す」という意味を持ち、昔は親族の死後に自宅で故人を悼む習慣がありました。
現在でも、葬儀の準備や手続きのために休む必要があるという考えが根付いています。法律で休暇を付与する義務はありませんが、企業により就業規則で忌引き休暇を設けています。多くの場合、取得日は平日・休日を問わず、故人が亡くなった日から数日間与えられるのが一般的です。
慶弔休暇については下記の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
忌引き休暇が有給扱いになるかは就業規則により異なる
忌引き休暇が有給の休暇扱いになるかは、会社の就業規則によります。有給の休暇として給与が支払われるケースもあれば、無給となるケースもあります。考えられるケースは以下のとおりです。
- 欠勤扱いで無給:忌引き休暇を特別休暇として認めていない
- 出勤扱いで無給:休暇はあるが給与は支払われない
- 出勤扱いで有給:給与が支払われる
就業規則で有給とされているにもかかわらず無給とするのは、トラブルの原因です。企業は、規則通りに休暇を運用することが重要です。
忌引き休暇と有給休暇の違い
忌引き休暇と有給休暇の最大の違いは、法定休暇かどうかです。有給休暇は法律で付与が義務付けられた休暇ですが、忌引き休暇は企業が独自に定める特別休暇の一種です。そのため、忌引き休暇は無給でも問題ありません。
無給の場合、月給を日割り計算し、取得日数分の給与が差し引かれます。なお、忌引きの際に有給休暇を使用することも可能です。有給休暇の使い方は労働者の自由であり、会社は制限できません。
就業規則で忌引き休暇が特別休暇として定められている場合、有給休暇へ変更できるか事前に確認しておくことが重要です。
下記記事では、有給休暇について詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
忌引き休暇の付与状況
厚生労働省の令和3年の調査では、忌引き休暇の付与状況は下記のように報告されています。
正社員に実施 | うち、当該労働者にも実施 パートに実施 | |
---|---|---|
無期雇用パートタイムを雇用している企業 | 71.7% | 44.8% |
有期雇用パートタイムを雇用している企業 | 84.2% | 52.0% |
有期雇用フルタイムを雇用している企業 | 86.8% | 71.7% |
参考:令和3年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の概況|厚生労働省
上記のように、企業により付与状況に差があることも理解しておきましょう。
忌引き休暇の対象・日数
忌引き休暇の日数は、亡くなった方との親等により異なります。一般的に、親や配偶者の場合は長期間、親族が遠くなるほど短期間に設定されます。企業ごとに基準が異なるため、休暇日数や取得条件を事前に確認し、就業規則に明記することが重要です。以下では、忌引き休暇の対象や日数について解説します。
対象となる親族の範囲
一般的に、忌引き休暇は3親等までの親族が対象です。具体的には、配偶者や父母、義理の父母、子、祖父母、兄弟・姉妹、曽祖父母、叔父・叔母、甥・姪、曾孫などが該当します。
血縁が近い親族ほど長く休暇を取得できる一方、遠い親戚や知人は対象外となる可能性があります。ただし、企業によっては同僚や取引先の訃報でも特例として忌引き休暇を認める場合もあるため、事前確認が重要です。
対象外の親族や知人の葬儀に参列する際は、有給休暇を使用するのが一般的です。
休暇日数
忌引き休暇の日数も、亡くなった方との親等によって異なります。血縁関係が近いほど休暇が長く、遠い親族ほど短くなるのが一般的です。
配偶者はもっとも深い関係とされ、10日程度の休暇が付与されることがほとんどです。喪主を務める場合、葬儀の準備や手続きが多いため、長めの休暇が必要になります。
一親等(本人の父母・子)は、父母7日、配偶者の父母3日、子5日が目安です。遠方で葬儀を行う場合は、移動時間を考慮し、7日以上の休暇を認める企業もあります。
二親等(祖父母・兄弟・姉妹)では、本人の祖父母と兄弟・姉妹が3日、配偶者側は1日が一般的です。
三親等(孫・曾祖父母・叔父叔母など)は、1日または取得不可のケースもあります。企業によっては三親等以上の親族の忌引きを認めていない場合もあるため、事前の確認が重要です。
忌引き休暇制度を導入する際の流れ
忌引き休暇制度を導入していない企業や就業規則が未整備の企業は、制度を見直し、適切に対応することが重要です。事前に導入の流れを確認しておくことで、スムーズな運用が可能になり、社員とのトラブルも防げます。以下では、忌引き休暇制度を導入する具体的なステップについて解説します。
1. 休暇の適用範囲と日数を決める
忌引き休暇制度を導入する際は、休暇の適用範囲と日数を明確に定めることが重要です。企業の規模や方針により異なるため、業界の慣習や従業員の意見を踏まえて設定することが望ましいでしょう。
まず、休暇取得の適用範囲を決定します。一般的には3親等までの親族が対象ですが、企業により範囲を狭める、または拡げるケースもあります。
次に休暇日数を決めましょう。日数は、葬儀や法要に参列、遠方の場合の移動時間などを考慮し、適切に設定することが重要です。たとえば、配偶者であれば10日、親であれば7日、祖父母や兄弟姉妹であれば3日程度が一般的です。
他社の事例や業界の標準を参考にし、従業員が納得しやすいルールを定めましょう。
2. 有給か無給かを定める
忌引き休暇を有給にするか無休にするかを明確に定めることが重要です。主な選択肢は以下のとおりです。
- 特別休暇として有給にする
- 無休扱いにする
- 欠勤扱いとし、年次有給休暇の取得を推奨する
有給の特別休暇とする場合、金銭面の不安なく休めるため、心の整理に集中できて復帰後の業務効率向上が期待できます。一方で、企業側の負担は増える可能性があるため注意が必要です。
無給の場合、企業の経済的負担は軽減されますが、従業員にとって収入減がストレスとなる可能性があるため、慎重な検討が必要です。決定の際は、従業員の意見や労働組合との協議を踏まえて就業規則に明記し、全従業員に周知しましょう。
3. 弔事の際の給付金について決定する
弔事の際の給付金は必須でないため、企業の財務状況や福利厚生の方針を踏まえ、導入の可否を判断します。支給対象者は、一般的に1親等から3親等の親族とし、支給額は続柄や業務上の影響に応じて設定します。(例:1親等5万円、2親等3万円、3親等1万円など)
また、一律の金額を定めることも可能です。支払い方法は、給与と一緒に振り込むか、申請後速やかに支給するなどの選択肢があります。給付金に関する決定事項は、就業規則や福利厚生規程に明記し、従業員に周知しましょう。
4. 忌引き休暇申請書のフォーマットを用意する
忌引き休暇を適切に運用するため、統一された申請フォーマットを用意します。申請書には、申請者情報や申請日、忌引きの理由、休暇期間、連絡先、必要書類の添付欄、証人欄を含めることが一般的です。
必要書類として、死亡通知書や会葬礼状の提出を求める場合もあります。フォーマットが完成したら、社内規程やガイドラインに追加し、従業員へ周知します。
上記の流れを踏むことで、申請手続きが統一され、運用が円滑になるでしょう。
忌引き休暇申請書のテンプレート(無料)
マネーフォワードでは、無料でダウンロードできる忌引き休暇申請書のテンプレートを提供しています。
無料の忌引き休暇申請書テンプレートを活用すれば、ゼロから作成する手間を省けます。基本項目が整っており、企業の運用ルールに応じたカスタマイズも可能です。また、社内の他の申請書とフォーマットを統一することにより、管理がしやすくなります。導入時には、自社の規程と合致するか確認しておきましょう。
下記のリンクから無料でダウンロードできるため、ぜひ活用してみてください。
忌引き休暇の申請を受けた場合の対応
忌引き休暇の申請を受けた際は、迅速かつ適切に対応することが重要です。従業員が安心して休める環境を整えることで、業務の混乱を防げます。申請後の具体的な対応を把握しておくことで、手続きの遅れや認識のズレによるトラブルの回避も可能です。以下では、申請を受けた際の対応手順について解説します。
休暇が適用されるか確認する
忌引き休暇の申請を受けた際は、まず就業規則に基づき、申請者との続柄を確認します。続柄により取得可能な休暇日数が異なるため、社内規定に沿って適用可否を判断することが重要です。
一般的に葬儀の前後に取得しますが、事情により申請が遅れる場合もあるため、柔軟に対応します。上司や人事部の承認が必要な場合は、速やかに手続きを進めて申請者に結果を通知します。休暇取得が決まれば、業務の引き継ぎやフォロー環境を整えてスムーズに休める環境を整えましょう。
メールで申請を受けた場合は返信に気をつける
忌引き休暇の申請がメールで届いた場合は、慎重に返信しましょう。通常は直接申し出るのが一般的ですが、やむを得ずメールで連絡があるケースもあります。
申請者は速やかな対応を求めている場合がほとんどのため、できるだけ早く返信するよう心がけましょう。また、悲しみに暮れていることを考慮し、「お悔やみ申し上げます」といった配慮のある言葉を添えます。
申請が承認された場合は明確に伝え、適用外の場合は理由を丁寧に説明し、代替案を提案するなどの対応をしましょう。
雇用形態に関係なく休暇を付与する
忌引き休暇は、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、雇用形態に関係なく平等に付与することが重要です。正社員とパートタイム社員で扱いに差があると、不満やトラブルの原因になります。
すべての雇用形態で適用されるよう、就業規則や労働契約書に明記し、従業員に周知しておくことで公平や運用が可能になります。
忌引き休暇を導入する際の注意点
忌引き休暇を導入する際は、適切に運用できるよう注意点を確認することが重要です。事前に検討を怠ると、制度の不備や不公平感が原因でトラブルが発生する可能性があります。以下では、導入時に押さえておくべきポイントを紹介します。
従業員が休暇をとりやすい環境を整える
従業員が忌引き休暇を取得しやすい環境を整えることが重要です。申請手続きが煩雑だと取得を躊躇う原因となるため、事前にフォーマットを用意し、必要事項を記入するだけで申請できる仕組みにすると手間を減らせます。
また、忌引き休暇は急な申請が多いため、上司や人事部門が迅速に承認できる体制を整えることも必要です。さらに、休暇取得後のサポートを行うことで、従業員の不安を軽減し、安心して職場に復帰できる環境を作れます。
有給休暇との併用も考慮する
忌引き休暇を導入する際は、有給休暇との併用も考慮することが重要です。遠方で葬儀に参列する場合、移動時間を含めると忌引き休暇だけでは足りないこともあります。
そのため、有給休暇を併用できるようにすることで、従業員の負担を軽減できます。併用の可否や条件を明確にし、申請方法や必要書類の提出ルールを定めておくと、スムーズな運用が可能です。
忌引き休暇を有給の休暇扱いにするかは事前に定めておこう
忌引き休暇を有給の休暇扱いにするかは、就業規則や社内ルールで明確に定めておくことが重要です。事前に決めておけば、社員が安心して休めるだけでなく、管理側も対応に迷いがなくなり、さらなる効率化を図れます。
トラブルを防ぐためにも、忌引き休暇のルールを整備して従業員へ周知しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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