• 更新日 : 2024年6月28日

新型うつ病とは?うつ病との違いやチェック方法、原因、対策方法

近年、従来のうつ病とは異なる新しいタイプの気分障害「新型うつ病」が注目されています。無気力や無為な日々が続き、社会から離れていく症状が特徴的で、若年層を中心に増加する傾向にあります。

企業では、社員の新型うつ病への理解を深め、適切な対応を行うことが求められています。本記事では、新型うつ病の概要や症状、発症リスク、対策などについて解説します。

新型うつ病とは?

新型うつ病とは、従来のうつ病とは異なる特徴を持つうつ状態を指すマスメディア用語です。医学的に明確な定義はありません。従来のうつ病は、真面目で責任感が強い人が自己を責める傾向が強いのに対し、新型うつ病は他罰的で自己中心的な傾向があります。

例えば、「上司が悪い」「会社が悪い」と他者を責めることが多く、自ら「うつ病です」と申し出て休養を主張することが特徴です。新型うつ病は、特に若年層に多く見られ、週末は元気だが週明けに落ち込むなど、症状が状況に依存することが少なくありません。

新型うつ病の症状

新型うつ病の症状を理解し、早期に対策を講じることで、罹患した社員を適切にサポートし、職場環境の改善を図ることができます。新型うつ病の代表的な症状には、以下のようなものがあります。

気分にムラがある

新型うつ病の特徴の一つは、気分にムラがあることです。平日は仕事のストレスで落ち込んでいるが、週末や自分の好きなことをしているときは元気になることがあります。従来のうつ病とは異なり、状況に応じて気分が変動するため、周囲からは「怠けている」と誤解されることが少なくありありません。職場では無気力である一方、プライベートでは活発に活動する傾向があります。

自分の失敗を他人のせいにする

新型うつ病の患者は、自分の失敗を他人のせいにする特徴もあります。仕事でミスをした際に「上司の指示が悪かった」「同僚が協力してくれなかった」と他者に責任転嫁します。自己責任を認めず、他者の責任にすることで、自分を守ろうとする心理が働いています。このような態度は、職場での人間関係を悪化させる原因となります。

他人からの批判に過剰反応する

新型うつ病には、他人からの批判に過剰反応するという特徴も指摘できます。上司からの軽い指摘や同僚からのアドバイスに対して、過度に落ち込んだり、怒りを感じたりすることがあります。自己評価が高く、他者からの評価に敏感であるため、批判を受けると強いストレスを感じます。この過剰反応によって、職場でのコミュニケーションを困難にし、ストレスを増大させてしまいます。

発汗・動悸・パニックなどの身体症状が出る

新型うつ病にかかった場合、職場でのストレスが高まると、急に汗をかいたり、心臓が激しく鼓動したり、パニック発作を起こしたりすることがあります。これらの症状は、日常生活や仕事に支障をきたすため、適切な医療機関での診断と治療が必要です。

睡眠時間が長くなる

新型うつ病の患者は、睡眠時間が長くなる傾向があります。通常の睡眠時間が7~8時間であるのに対し、新型うつ病の患者は10時間以上寝ても疲れが取れないと感じることもあります。過度な睡眠は、日中の活動に支障をきたし、仕事のパフォーマンスを低下させます。睡眠の質が低下している場合も多く、適切な治療と生活習慣の見直しが求められるでしょう。

新型うつ病とうつ病との違い

新型うつ病とうつ病との違いを理解することで、新型うつ病と従来のうつ病に対する適切な対応やサポートが可能となります。以下のような違いがあります。

自己評価と他者評価

従来のうつ病では、患者は自己評価が低く、自分を責める傾向があります。仕事でミスをした際に「自分が無能だから」と自己批判することが多いです。一方、新型うつ病の患者は自己評価が高く、他者を責める傾向があります。同じ状況で「上司の指示が悪かった」と他者に責任転嫁します。この違いは、対処法やサポートの方法にも影響を与えます。

気分の変動

従来のうつ病では、気分の落ち込みが持続的で、日常生活全般に影響を及ぼします。仕事中も休日も常に気分が沈んでいる状態が続きます。一方、新型うつ病では、気分の変動が激しく、状況に応じて気分が変わります。平日は仕事のストレスで落ち込んでいるが、週末や趣味の時間は元気になることが多くあります。このため、新型うつ病は周囲から「怠けている」と誤解されやすいでしょう。

他者からの批判への反応

従来のうつ病の患者は、他者からの批判に対しても自己を責める傾向があります。上司からの指摘に対して「自分が悪い」と感じ、さらに落ち込むことが珍しくありません。これに対し、新型うつ病の患者は、他者からの批判に過剰反応し、怒りや反発を示すことがあります。同僚からの軽いアドバイスに対しても「自分を否定された」と感じ、強いストレスを感じてしまいます。

身体症状の現れ方

従来のうつ病では、身体症状として食欲不振や体重減少、不眠などが一般的です。食事が喉を通らず、体重が急激に減少することがあります。一方、新型うつ病では、発汗、動悸、パニック発作などの身体症状が現れます。職場でのストレスが高まると、急に汗をかいたり、心臓が激しく鼓動したりすることがあります。

社会的活動への影響

従来のうつ病の患者は、社会的活動全般に対して意欲を失い、引きこもりがちになります。例えば、友人との交流や趣味の活動にも興味を失い、家に閉じこもることが多く見られるパターンです。しかし、新型うつ病の患者は、特定の状況下でのみ症状が現れるため、プライベートでは元気に活動することが少なくありません。職場では無気力である一方、休日には旅行や趣味を楽しむことがあります。

新型うつ病のチェック方法

新型うつ病は、従来のうつ病とは異なる特徴を持つため、特定の質問項目を通じて自己評価を行うことができます。セルフチェックの結果に不安を感じた場合は、専門の医療機関での診断を受けることが大切です。以下に、具体的な質問項目を挙げて解説します。

気分の変動

「最近、仕事中は気分が落ち込むが、休日や趣味の時間は元気になることが多いですか?」
この質問は、新型うつ病の特徴である気分の変動を確認するためのものです。平日は無気力である一方、週末には活発に活動する場合、新型うつ病の可能性があります。

他罰的な思考

「仕事でミスをしたとき、自分ではなく他人のせいにすることが多いですか?」
新型うつ病の患者は、自己責任を認めず、他者に責任転嫁する傾向があります。「上司の指示が悪かった」と他人を責める場合、この特徴が見られます。

批判への過剰反応

「他人からの批判や指摘に対して、過剰に反応してしまうことがありますか?」
新型うつ病の患者は、他人からの批判に対して過剰に反応し、強いストレスを感じることが多く見られます。軽い指摘に対しても深く落ち込んだり、怒りを感じたりする場合、この特徴が見られます。

身体症状の有無

「ストレスを感じると、発汗や動悸、パニック発作などの身体症状が現れることがありますか?」
新型うつ病の患者は、精神的なストレスが身体症状として現れることが多くあります。職場でのストレスが高まると、急に汗をかいたり、心臓が激しく鼓動したりする場合、この特徴が見られます。

睡眠時間の変化

「最近、睡眠時間が長くなり、10時間以上寝ても疲れが取れないと感じることがありますか?」
新型うつ病の患者は、過眠の傾向があり、長時間の睡眠を必要とするのが一般的です。通常の睡眠時間が7~8時間であるのに対し、10時間以上寝ても疲れが取れない場合、この特徴があると言えます。

新型うつ病になりやすい人

新型うつ病を発症しやすい人に対し、早急に対策を講じるためにも、新型うつ病になりやすい人の特徴を把握しておくことが必要です。ここでは、代表的な3つの特徴を挙げておきましょう。

自己中心的な人

新型うつ病になりやすい人の特徴の一つに、自己中心的な性格を指摘できるでしょう。自己中心的な人は、自分の意見や感情を優先し、他人の意見や感情を軽視する傾向があります。職場でのトラブルが発生した際に、「上司が悪い」「同僚が協力しない」と他者を責めることが少なくありません。こうした態度は、周囲との摩擦を生みやすく、ストレスが蓄積しやすいと言えます。また、自己中心的な人は、自分の思い通りにならないと強いストレスを感じるため、新型うつ病を発症しやすいタイプです。

傷つきやすい人

新型うつ病になりやすい人のもう一つの特徴は、傷つきやすい性格です。傷つきやすい人は、他人からの評価や批判に対して過敏に反応し、深く落ち込むことが多い傾向があります。上司からの軽い指摘に対しても「自分はダメな人間だ」と感じ、強いストレスを感じることがあります。このような過敏な反応は、職場でのコミュニケーションを困難にし、ストレスが増大します。傷つきやすい人は、自己評価が低く、他人の評価に依存する傾向があるため、新型うつ病を発症しやすいタイプに該当します。

自己主張が苦手な人

自己主張が苦手な人も、新型うつ病になりやすい特徴を持っています。自己主張が苦手な人は、自分の意見や感情を表現するのが難しく、他人に合わせてしまうことが多く見られます。職場での会議やディスカッションで、自分の意見を言えずに黙ってしまうことがあるでしょう。自己主張しないことで、ストレスを内に溜め込みやすく、結果として精神的な負担が増大します。また、自己主張が苦手な人は、他人の期待に応えようと無理をすることが多く、過労やストレスが原因で新型うつ病を発症しやすいタイプです。

新型うつ病にかかる原因

そもそも、なぜ新型うつ病にかかるのでしょうか。ここでは、新型うつ病にかかる原因を具体例とともに説明します。

困難なことから逃げたい心理

新型うつ病にかかる原因の一つに、困難なことから逃げたい心理があります。例えば、職場での業務が過重であったり、上司からの厳しい指導が続いたりすると、これらの困難から逃れたいという気持ちが強くなります。この心理は、仕事に対する意欲を低下させ、結果として新型うつ病の発症につながることがあります。特に、若年層に多く見られ、仕事のプレッシャーから逃れるために休職を選択するケースが増えています。

自己防衛的な心理

自己防衛的な心理も新型うつ病の原因の一つです。自己防衛的な人は、自分の失敗やミスを他人のせいにする傾向があります。仕事でミスをした際に「上司の指示が悪かった」「同僚が協力しなかった」と他者を責めることで、自分を守ろうとします。このような態度は、周囲との摩擦を生みやすく、ストレスの蓄積につながるため、新型うつ病の発症を引き起こすことがあります。

仕事のストレス

仕事のストレスは、新型うつ病の原因の代表的なものと言えるでしょう。特に、長時間労働や過重労働、職場での人間関係のトラブルなどがストレスの要因となります。毎日残業が続き、休日も仕事に追われる状況では、心身ともに疲弊しやすくなります。また、上司や同僚との関係が悪化すると、職場でのストレスが増大し、新型うつ病の発症リスクが高まります。これらのストレス要因が重なることで、精神的な負担が限界に達し、新型うつ病を引き起こすことにつながりやすくなります。

生育環境

生育環境も新型うつ病の発症に影響を与える要因の一つです。幼少期に過度に保護されたり、逆に厳しく育てられたりした場合、適応力が低下しやすくなります。過保護な環境で育った人は、困難な状況に直面した際に対処する力が不足し、ストレスに弱くなります。一方、厳しい環境で育った人は、自己評価が低く、他者からの評価に過敏になることがあります。これらの生育環境が、新型うつ病の発症リスクを高める要因となるでしょう。

新型うつ病からの回復方法

新型うつ病になりやすい人、新型うつ病にかかる原因についてみてきましたが、なってしまった場合、どのような回復方法があるのでしょうか。5つの方法を紹介します。

専門家へ相談する

新型うつ病からの回復には、まず専門家への相談が重要です。精神科医や心療内科医に相談することで、適切な診断と治療方針が決定されます。具体的には、抗うつ薬や抗不安薬の処方、心理療法の提案などが行われます。専門家のサポートを受けることで、自己判断による誤った対処を避け、効果的な治療を進めることができます。

カウンセリングを行う

カウンセリングは、新型うつ病の治療において重要な役割を果たします。カウンセラーとの対話を通じて、患者は自分の感情や考え方を整理し、ストレスの対処法を学びます。例えば、認知行動療法を用いて、ネガティブな思考パターンを修正し、ポジティブな行動を促進します。カウンセリングは、患者が自己理解を深め、ストレス耐性を高めるための有効な手段です。カウンセラーは患者の進捗を見守り、必要に応じて治療方針を調整してくれます。

十分な休息を取る

新型うつ病からの回復には、十分な休息が不可欠です。過労やストレスが原因で発症することが多いため、まずは心身を休めることが重要です。できるだけ休職して仕事から離れ、リラックスできる環境で過ごすのがよいでしょう。また、規則正しい睡眠を確保し、体力と気力を回復させることが大切です。いずれにしても、無理をせず、自分のペースで休息を取ることで、回復を促すことができるでしょう。

生活環境を整える

新型うつ病の改善には、生活環境を整えることが重要なポイントとなります。まずは生活リズムを立て直し、規則正しい生活を送れるよう環境を整備しましょう。具体的には、就寝・起床時間を決め、日々の行動予定を立てるなどが挙げられます。部屋の掃除や、カーテンを開けて日光を取り入れるなど、生活空間を明るく快適な環境に改善することで、気分転換を図ります。友人・家族の協力を得ながら、少しずつ生活環境を整えていくことが大切です。

小さな成功体験を積み重ねる

新型うつ病からの回復には、小さな成功体験を積み重ねることも効果的です。成功体験は自己肯定感を高め、モチベーションを向上させます。簡単な家事や趣味を通じて達成感を得ることができます。最初は小さな目標を設定し、それを達成することで自信を取り戻します。徐々に目標を大きくしていくことで、自己効力感を高め、回復を促進します。成功体験を積み重ねることで、前向きな気持ちを持ち続けることができます。

社員が新型うつ病になったときの企業のサポート方法

社員が新型うつ病にかかった場合、会社としては適切にサポートする必要があります。どのようなサポート方法があるのか、前項で紹介した回復方法を踏まえ、6つの方法について説明します。

産業医との面談をすすめる

産業医との面談をすすめることで、専門的な見地から社員の状態を把握し、適切な対応策を講じることができます。産業医が社員のストレスレベルを評価し、必要に応じて休職や業務内容の調整を提案してくれます。産業医の面談は、社員が自分の状態を客観的に理解し、適切な治療を受けるための第一歩となります。

本人に合う業務を検討する

新型うつ病の社員には、負担の少ない業務や得意分野の業務を割り当て、ストレスを軽減し、回復をサポートします。対人ストレスが原因の場合、バックオフィス業務やリモートワークを検討することが有効です。業務内容の見直しは、社員のモチベーションを維持し、職場復帰をスムーズに進めるために重要になるでしょう。

本人の努力を認めてほめる

新型うつ病の社員には、日々の小さな努力を認めてほめることで、自己肯定感を高め、回復を促進します。定期的なフィードバックを通じて、達成したタスクや改善点を具体的にほめることが効果的です。ポジティブなフィードバックは、社員のモチベーションを向上させ、職場での安心感を与えます。

休息、休暇制度を整える

休息や休暇制度を整備し、社員が心身をリフレッシュし、回復に専念できる環境を提供します。フレックスタイム制や有給休暇の取得を推奨し、必要に応じて休職制度を活用することが重要です。適切な休息は、社員のストレスを軽減し、長期的な健康維持に寄与します。

職場環境を改善する

職場環境の改善は、新型うつ病の予防と回復に効果的です。オフィスのレイアウトを見直し、リラックスできるスペースを設けることで、社員のストレスを軽減します。また、定期的なストレスチェックやメンタルヘルス研修を実施し、職場全体でのメンタルヘルスケアを推進します。

復職プログラム支援を行う

復職プログラム支援を行うことで、社員がスムーズに職場復帰できるようサポートします。段階的な業務復帰プランを作成し、最初は短時間勤務から始め、徐々に通常勤務に戻す方法が有効です。復職プログラムは、社員の負担を軽減し、再発を防ぐために重要です。

新型うつ病への理解を深め、社員のメンタルヘルスを守ろう!

新型うつ病は、従来のうつ病とは異なる特徴を持ち、近年、特に若年層に多く見られるメンタルヘルスの問題となっています。企業としては、社員が新型うつ病にかかった場合、適切なサポートを提供することが重要です。

産業医との面談や業務内容の見直し、ポジティブなフィードバック、休息・休暇制度の整備、職場環境の改善、復職プログラムの支援など、具体的な対策を講じることで、社員の回復をサポートし、職場全体の生産性と満足度を向上させましょう。


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