• 更新日 : 2023年2月14日

女性が使える「生理休暇」とは?休暇中は無給?取得のための手続きも解説!

働く女性にとって、生理による体調不良で生理休暇を取得することはプライベートでデリケートな問題であり、躊躇することが多いといわれています。

独身男性が上司の場合は結局言い出せず、有給休暇として処理することもあるようです。

今回は生理休暇について、その目的や労働基準法上の扱い、企業側が取得させるメリット、導入手続きなどについて解説します。

生理休暇とは?

そもそも生理休暇とは、どのようなものなのでしょうか。また、法律ではどのように規定されているのでしょうか。

生理休暇の目的

女性は男性と異なり、出産するための機能として生理があります。個人差があるとはいえ、生理中は貧血による倦怠感や頭痛、腹痛などの体調不良が生じ、就業が困難になることも少なくありません。

無理に就業すると、恒常的に体調を悪化させるおそれもあります。

生理休暇はこれらのことを踏まえて、女性を保護するために設けられた休暇制度です。

生理休暇に関連する法律

生理休暇は労働基準法で規定されています。

「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した時は、その者を生理日に就業させてはならない」(法68条)

生理日の就業が著しく困難な女性とは、生理日において下腹痛、腰痛、頭痛などにより就業が困難な女性を意味し、従事している業務を問わず休暇を請求することができます。

ポイントとなるのは、あくまで「就業が著しく困難」であることが条件であることと、本人の「請求」が必要とされていることです。

生理による体調不良があっても、就業に耐えられるのであれば対象とはなりません。

また、就業が著しく困難であっても、請求がなければ使用者は生理休暇を付与する義務はないということになります。

生理休暇の取得状況

女性労働者の生理休暇の取得率は、かなり低いのが現状です。

厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」によると、女性労働者がいる事業所のうち、平成31年4月1日から令和2年3月31日までに生理休暇の請求者がいた事業所の割合は3.3%(平成27年度2.2%)、女性労働者のうち生理休暇を請求した人の割合は0.9%(同0.9%)でした。

働き方改革が進められる中、働く女性が増えているにも関わらず、生理休暇の取得率は1%に満たないのです。

※参考「令和2年度雇用均等基本調査

その背景として、体調不良にも個人差があること、デリケートな問題でありながら本人の請求が要件となっていることに加え、対象となる女性が声を上げにくい職場環境も考えられます。

生理休暇のメリット

会社側は、取得要件を満たす女性労働者に生理休暇を付与する義務がありますが、取得率は決して高くありません。その背景には、人手不足で休むことができない、女性労働者が少なく制度が周知されていない、といった職場環境の問題もあります。

働く女性が増える中、現状のままでよいとはいえないでしょう。

生理休暇を与えると、会社にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

生理に限らず、就業が著しく困難な状態で無理に業務を行うと、ミスの多発や笑顔がないことによる接客での悪印象など、さまざまな問題が生じます。

生理による体調不良が著しい女性の中には貧血状態になる人もおり、長時間の立ち仕事に耐えられず倒れるおそれもあります。

業務中に転倒して負傷すれば、使用者は無過失責任を負い、労災保険法が適用されることになります。転倒事故は、場合によっては重傷となることもあります。

一定規模以上の会社の場合、労災事故の発生によって労災保険料率が上がることもあります。

生理休暇を適切に付与することで、このようなリスクを抑えられます。

また、女性が働きやすい職場環境を整備することは、モチベーションアップにもつながります。

生理休暇は無給?それとも有給や特別休暇?

労働基準法で、一定の要件を満たす場合に付与を義務付けている生理休暇ですが、休暇中の給与の支払い義務はあるのでしょうか。

結論からいえば、労働基準法では生理休暇中を有給とするか無給とするかを定めていません。そのため、無給としても適法ということになります。

ただし、労使協定など労使の取り決めや就業規則で有給とすることもできます。

なお、生理休暇は労働基準法で定められた法定休暇であり、会社が就業規則などで定める慶弔休暇や夏季休暇、リフレッシュ休暇などの特別休暇とは異なります。

生理休暇の取得時間・日数に決まりはある?

労働基準法では、生理休暇の請求は必ずしも暦日単位で行うものとはしていません。そのため、女性労働者が半日または時間単位で生理休暇を請求した場合は、使用者はその範囲で就労させなければよいことになります。

また、労働基準法では生理休暇の日数についても定めていませんが、生理の期間や苦痛の程度は個人差があるという趣旨であるため、就業規則などで日数を制限することはできません。

生理休暇を導入する際の手続き

生理休暇について社内の取り扱いが曖昧な場合は、しっかり整備することが大切です。どのような対応が必要になるのでしょうか。

就業規則を変更する

生理休暇は法定休暇ですが、就業規則に規定がない場合は変更しておくべきです。

労働基準法では、就業規則の絶対的必要記載事項として休暇も挙げています(法89条)。

就業規則中の「休暇等」の規定に「生理休暇」の条文を設け、「生理日の就業が著しく困難な女性労働者から請求があった時は、必要な期間休暇を与える」といった一文を記載するとよいでしょう。

申請手続きの整備

生理休暇の取得率が低いことの背景には、申請手続き上の問題もあります。プライベートでデリケートな問題であっても、本人が躊躇することなく簡便に申請できるようにすることが大切です。

具体的には口頭やメールでの当日申請も認め、就業規則に明記するとよいでしょう。

休暇の対象を生理だけではなく、更年期による体調不良といった婦人系の疾患も含めて「ウェルネス(健康)休暇」とし、プライバシーに配慮している企業もあります。

なお、「生理によって就業が著しく困難であったこと」の証明として、医師の診断書などを提出させることはできません。

従業員への周知

女性固有の生理の悩みに関して、男性労働者の理解度はかなり低いと考えるべきです。

また、女性労働者でも生理休暇についての理解が不十分である場合があるため、職場全体で周知を図る必要があります。

労働基準法上の生理休暇の扱いについては研修などを実施し、社員の理解を深めていくことが重要です。

会社に生理休暇の取得を断られた時の対応

法定休暇である以上、生理によって就業が著しく困難になった場合は、使用者は生理休暇の請求を拒否することはできません。

請求に対して取得させなかった場合は、30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条1項)。

生理休暇についての周知が不十分な企業の場合、男性の上司が労働基準法上の扱いを知らないことも考えられます。このような場合は、人事・労務部門に相談するという方法もあります。

人事・労務部門であれば、法律上の扱いは知っているでしょうし、生理休暇を付与しないことが違法であることもわかるはずです。間接的に対処してもらいましょう。

生理休暇について知っておこう!

生理休暇について、その目的や労働基準法上の扱い、企業側が取得させるメリット、導入手続きなどについて解説しました。

働く女性が増える中、働き方改革の一環として、女性が働きやすい職場環境作りが推進されています。

生理休暇についても女性労働者が取得を躊躇しないよう、会社が取得を奨励することも検討すべきでしょう。

よくある質問

生理休暇とは何ですか?

女性保護のために、労働基準法で付与が義務付けられている休暇です。詳しくはこちらをご覧ください。

生理休暇は無給扱いですか? それとも有給や特別休暇扱いですか?

法定休暇ですが、生理休暇中の賃金の支払いは義務付けられていません。詳しくはこちらをご覧ください。


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