• 作成日 : 2021年12月3日

退職後も出産手当金がもらえる?要件と手続きについて解説!

退職後も出産手当金がもらえる?要件と手続きについて解説!

出産手当金は被保険者が出産のために休職し、その間に給与を得られなかった場合に支給される給付金です。

このお金は、在職中の休業であれば受け取ることができますが、受け取る前後において退職した場合はどうなるのでしょうか?

この出産手当金は退職する場合には受けられるか、受けられないか?受けられるのであればどのような要件があるかを見ていきます。

要件を満たせば、退職後も出産手当金がもらえます

出産手当金は被保険者が出産のために休職し、その間に給与を得られなかった場合に支給される給付金です。

※出産手当金の概要についてはこちらを参照してください。

出産手当金は支給要件を満たしていれば、在職中であればもちろん、申請することにより支給されます。

では、出産手当金を申請する前に退職したり、出産手当金支給対象期間中でも退職した場合で、例えば退職後6カ月経過後でも出産手当金を受け取ることはできるのでしょうか?次に、退職後に出産手当金がもらえるケース、もらえないケースについて見ていきます。

退職後に出産手当金がもらえるケース

出産手当金を退職後も受け取れる場合があります。ここでは、その条件を見ていきましょう。

  • 退職日までに1年以上の継続した健康保険の加入期間があること
     → 健康保険の加入期間が1年未満では継続給付の対象にはなりません。
  • 退職日が産前産後休業の期間内であること
     → 出産手当金の支給対象期間内の退職であれば対象になります。
  • 退職日当日に勤務していない(仕事を休んでいる)こと
     → 退職日当日に労働していないことが必要になります。
  • 任意継続被保険者でないこと
     → ただし、任意継続被保険者であっても、任意継続被保険者の資格取得前日までに1年以上の被保険者期間があり、すでに出産手当金の支給を受けていた場合には、本来、被保険者として受けられる出産手当金の支給対象期間の最後の分まで継続して給付を受けることができます。

例えば、健康保険の加入期間が1年以上ある女性が妊娠し、産前産後休業期間中に諸事情で退職することになり、そのまま退職日当日も労働していない場合などは出産手当金が退職後も含めて産前産後休業期間中の日数分支給されます。

なお、協会けんぽの船員保険の場合は、受給要件として退職日までの1年間に3カ月以上、または3年間に1年以上、健康保険の加入期間があれば、退職日前の出産または退職後の6カ月以内の出産について、退職後も出産手当金を受けることができます。

退職後に出産手当金がもらえないケース

次は、逆に出産手当金を退職後に受け取れない場合について確認しましょう。

  • 退職日までに1年以上の継続した健康保険の加入期間がないケース
     → 1年以上継続して健康保険の加入期間がある場合は出産手当金を受け取れますが、加入期間が1年未満では継続給付の対象にはなりません。
  • 退職日が産休期間内ではないケース
     → 出産手当金の支給対象期間内の退職であれば退職後でも出産手当金は支給されますが、退職日が出産手当金支給対象期間に入っていない場合には支給対象になりません。
  • 退職日当日に引継ぎなどのために出勤したケース
     → 退職日当日に出勤していない場合、請求期間が継続されるため出産手当金の支給は継続されますが、退職日に労働した場合は請求期間が継続されないために支給対象にならなくなります。

手続きが誤って行われた場合、出産手当金をもらってから返金しなければならない場合がありますので注意してください。

最後に、出産手当金が受け取れるケース、受け取れないケースについて簡単に図にしましたので参考にしてください。

退職後も出産手当金が支給されるケース1

退職後は出産手当金が支給されないケース2

退職後は出産手当金が支給されないケース3

出産手当金は、被扶養者も対象になる?

出産手当金は、健康保険の被保険者が出産により働くことができなかったため、その休業補償的な意味合いで支給される手当金ですので、被扶養者の方への支給はありません。

ただ、出産手当金が支給されると言っても申請が必要なほか、以下のような要件もあります。

※出産手当金が支給される条件

  • 妊娠4カ月(85日)以降の出産、流産、死産であること
  • 健康保険に加入している被保険者期間が1年以上あること
  • 出産のために休職していること

注意しておくポイントとして確認しておきましょう。

出産手当金の支払い期間は?

出産手当金は受けることができる期間が決まっています。

出産日(出産日が予定日よりも後の場合は出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日の翌日以降56日までの期間内で、会社を休んだために給与の支払いがされなかった日について支給されます。

なお、出産日は産前休暇扱いになります。

いくつか期間の計算例をあげておきます。

【例1】単胎妊娠、出産予定日:2021年11月1日、出産日:2021年11月1日の場合

  • 支給開始日は、出産予定日以前42日前の2021年9月27日になります。
  • 支給満了日は、出産日の翌日から56日後の2021年12月27日になります。

【例2】単胎妊娠、出産予定日:2021年11月1日、出産日:2021年11月5日の場合

  • 支給開始日は、出産予定日以前42日前の2021年9月27日になります。
  • 支給満了日は、出産日の翌日から56日後の2021年12月31日になります。

出産手当金の計算方法

出産手当金の1日あたりの支給額は、支給開始日の以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均を30日で割り、3分の2をかけた金額になります。

ただし、支給対象日以前12ヶ月に満たない場合は、下記A、Bのいずれか低い方の額を使用して計算します。

A:支給開始日以前の各月の標準報酬月額の平均額
B:30万円(前年度9月30日における全被保険者の標準報酬月額の平均額)

出産手当金の計算方法について、例えば、
支給開始日の以前12カ月間の各月の標準報酬月額の平均額が18万円だった場合、
出産手当金は、18万円÷30日×2/3=4,000円になります。

出産手当金はその支給対象日に被保険者が報酬を受けている場合には、

  • 報酬額>出産手当金
    の場合は、出産手当金は支給されません。
  • 報酬額<出産手当金
    の場合は、その差額分の出産手当金が支給されます。

となりますので注意しておく必要があります。

出産手当金の申請書類

ここでは、出産手当金の支給申請書類を記入する場合に注意が必要な点について見ていきます。

 ◆1ページ目:被保険者記入用
 ※被保険者情報欄

  • 被保険者証の記号・番号:健康保険証の記号・番号を記入してください。
  • 氏名:自署する必要がありますので注意してください。
  • ※受取代理人の欄

  • 被保険者(受取人)と受取代理人が異なる場合は記入が必要です。
  • ※被保険者のマイナンバー記載欄

  • 上方で被保険者証の記号番号を記入している場合は記入は不要です。
  • ◆2ページ目:被保険者・医師・助産師記入用
    ※申請内容欄

  • 出産のために休んだ期間(申請期間)は、未記入や日数が1日多い少ないなど誤りが多いので注意して記入してください。

出産手当金 支給申請書

引用:健康保険 出産手当金 支給申請書|全国健康保険協会
 ※医師・助産師記入欄

  • 出産後の証明ですので、すべての欄を漏れなく記入してもらってください。
  • ◆3ページ目:事業主記入用
    ※事業主が証明するところ

  • 勤務状況・支給した賃金内訳欄は、申請期間を含む締め日から締め日までで記入してください。
  • 賃金計算方法の記入欄は、欠勤控除などの計算方法を具体的に記入してください。

出産手当金 支給申請書
 

引用:健康保険 出産手当金 支給申請書|全国健康保険協会

勤務先が変更になった場合や任意継続被保険者期間がある場合は、上記の申請書以外に別添書類が必要になります。

退職する前に!出産手当金について確認しておこう

出産手当金を退職しても受けたい場合に、以下の条件を満たせば支給対象となります。

  • 退職日までに1年以上の継続した健康保険の加入期間があること
  • 退職日が産前産後休業の期間内であること
  • 退職日当日に勤務していない(仕事を休んでいる)こと
  • 任意継続被保険者でないこと

 (ただし、任意継続被保険者であっても、任意継続被保険者の資格取得前日までに1年以上の被保険者期間があり、すでに出産手当金の支給を受けていた場合には、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して給付を受けることができます。)

その他、産休や育休を取得する予定の方は、以下の記事も参考にしてください。

よくある質問

退職後も出産手当金がもらえますか?

退職日までに1年以上の継続した被保険者期間があり、かつ、資格喪失時に出産手当金を受ける条件を満たしているか、または受けている場合には、退職後も出産手当金を受けることができます。詳しくはこちらをご覧ください。

出産手当金を受給するために必要な提出書類はなんですか?

健康保険出産手当金支給申請書(協会けんぽ、または各健康保険組合で書式が異なります)の提出が必要です。添付資料は状況により必要になる場合があるので事前に問い合わせてください。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:山本 務(特定社会保険労務士/AFP/2級FP技能士/日商簿記2級/第一種衛生管理者)

山本 務(特定社会保険労務士/AFP/2級FP技能士/日商簿記2級/第一種衛生管理者)
やまもと社会保険労務士事務所所長
大学卒業後、システム開発技術者、上場企業情報システム部&人事部を経て2016年に開業。
独立後も労働局の総合労働相談員として200件以上のあっせん事案に関与。労働相談は民間委託事業の電話相談も含めて1,000件以上の実績あり。
労務相談、就業規則、給与計算を中心に、各種手続きや労使問題対応など、外部人事部員として活動。システムのことも分かる社会保険労務士です。

関連記事