• 更新日 : 2024年2月9日

ハッカソンとは?意味や目的、アイデアソンとの違い、イベント事例などを解説!

ハッカソンとは?意味や目的、アイデアソンとの違い、イベント事例などを解説!

ハッカソンとは、エンジニアやデザイナーがチームを組み、制限時間内にアプリケーションなどを開発し、成果を競うイベントです。アメリカで発祥したハッカソンは、その後日本にも広がり、現在ではさまざまな目的の多様なハッカソンが開かれています。本記事では、ハッカソンの意味や3つの種類、開催のメリット、国内の事例などについて解説します。

ハッカソンとは?

「ハッカソン」という名称は「ハック(Hack)」と「マラソン(Marathon)」を組み合わせた造語です。ここではハッカソンの概要や歴史、開催の目的を解説します。

ハッカソンの概要

ハッカソンとは、エンジニアやプログラマー、デザイナーなどソフトウェア開発関係者がチームを作り、限られた時間内に集中して開発作業を行い、その成果を競うイベントです。

ハッカソンでは多様な参加者が互いにアイデアを出し合うため、従来になかった新しい発想が生じ、新製品・新サービスの創案に役立つといわれています。またIT技術者の教育や新たなコミュニティーの形成などにも効果が期待されます。

近年では、ハッカソンはIT関連企業だけでなく他分野にも広がり、各種団体や大学などの教育機関、地方自治体などによってさまざまなハッカソンが開催されるようになりました。また全国どこからでも参加できるオンラインハッカソンも開かれています。

ハッカソンの歴史

ハッカソンという名称は1999年頃、アメリカのサン・マイクロシステムズ社により使われ始めたといわれています。その後2000年代には、オープンイノベーションや新製品開発の手段として広く普及していきました。

日本では2011年の東日本大震災の後、ITコミュニティーによる復興支援ハッカソンが開催されたことで認知度が上がり、数多くの多様なハッカソンが開かれるようになりました。

ハッカソンの目的

ハッカソンを開催する目的の1つとして、新商品や新サービスの創出が挙げられます。ハッカソンには多方面からさまざまな参加者が集まるため、それまでにはなかった新たな発想が生まれ、オープンイノベーションにつながりやすいといわれています。

またハッカソンは、社内や社外のコミュニティづくりにも利用されます。チームを組んだメンバー同士は、ハッカソン終了後も引き続き情報交換をすることが多く、ハッカソンをきっかけに、業務上の協力関係が生じるケースも少なくないようです。

そしてハッカソンは、IT人材の教育にも活用されます。普段は接点のない社外の優秀なエンジニアや、自分と異なる専門領域の参加者とチームを組んで交流することで、新しい知識や技術の習得が期待できます。また、モチベーション向上にも効果が見込めるでしょう。

さらに、人材採用を目的とするハッカソンも開催されています。一定期間、実際に作業を共にすることで、自社の良さをアピールするとともに、就職志望者の性質や能力を把握し、優秀な人材獲得につなげる取り組みです。

ハッカソンとアイデアソンの違い

ハッカソンと似た言葉に「アイデアソン」があります。この2つは類似点もありますが、ゴールや参加者が異なります。ここでは、両者の違いを解説します。

アイデアソンとは

アイデアソンとは、さまざまな職種や立場の人が集まり、新商品や新サービス、新事業などのアイデアを出し合うイベントです。ハッカソンが「Hac」と「Marathon」からの造語であるように、アイデアソンは「Idea」と「Marathon」を組み合わせた言葉です。

アイデアソンは、もともとハッカソンの一部として行われていました。アイデアソンで新たな製品やサービスの構想を練り、その後に続く開発作業で、実際の成果物を作り上げるという流れが一般的です。しかし近年は、アイデアソン単体での開催も増えてきました。

ハッカソンとの相違点

ハッカソンとアイデアソンは、そのゴールが異なります。ハッカソンがアプリケーションなど「成果物の製造」をゴールとするのに対し、アイデアソンは、新商品や新サービスの「アイデアの創出」をゴールとしている点が違いです

またハッカソンとアイデアソンでは、参加者の範囲が違います。ハッカソンの主要な参加者は、ITエンジニア、プログラマー、デザイナーといったソフトウェア開発関係者です。これに対しアイデアソンの参加者はIT関係者に限定されず、さまざまな分野から多様な経歴・立場の人が広く集められます。

このような相違点はあるものの、ハッカソンとアイデアソンは「普段は接点のない参加者が集まり、一定期間協力して、新しい何かを創り出す」という意味で共通点が多いです。

ハッカソンの種類

ハッカソンには「一般のハッカソン」「社内ハッカソン」「産学連携ハッカソン」の3種類があります。それぞれの内容を確認しておきましょう。

一般のハッカソン

企業や団体などが、社外に向けて開催するハッカソンが「一般のハッカソン」です。多方面から広く参加者を募るため、3種類のハッカソンのうち最も大規模になりやすいでしょう。

主催者は大手企業だけでなく、ベンチャー企業や地方自治体などさまざまで、テーマも広めに設定される傾向があります。また大規模なハッカソンでは、複数企業の協賛開催も多くみられます。

社内ハッカソン

社内ハッカソンは企業内で行うハッカソンで、参加者は原則として、その企業の従業員や関係者に限定されます。

社内ハッカソンの目的は、新商品・新サービスの創出や社内エンジニアのスキルアップなどです。また、普段は交流のない従業員同士が共同作業を行うことで信頼関係が生じるため、社内コミュニケーションが円滑になり、会社への帰属意識向上も期待できます。

社内ハッカソンは、3種類のハッカソンのうち最も小規模な開催になりやすく、運営の手間や経費もそれほどかからない形態です。

産学連携ハッカソン

産学連携ハッカソンとは、大学などの教育機関と企業が連携して開催するものです。日本における最初の産学連携ハッカソンは、2013年に開かれた「大学ハッカソン」だといわれています。このハッカソンは、東京工科大学と日本ベンチャーキャピタル株式会社との連携により開催されました。

近年は大学だけでなく、高等専門学校や高等学校などの教育機関が、産学連携ハッカソンに参加する例もみられます。

ハッカソンを開催するメリット

ハッカソンの開催には、最新技術への接触、帰属意識の向上といったメリットがあります。またオープンイノベーションのきっかけになりやすい点もメリットです。ここでは、ハッカソンを開催するおもなメリットを紹介します。

最新技術に触れる機会

AIやフィンテックなど、新しい技術をテーマとするハッカソンは、関連技術や関連知識を習得する良い機会だといえます。また、最新分野に携わるエンジニアがチームメンバーにいる場合、参加者は技術などの習得だけでなく、モチベーションアップも期待できるでしょう。

帰属意識の向上が期待できる

社内ハッカソンでは、普段は接点のない他部署の従業員とチームを組むことがあります。一定の時間、同じ目標に向かって力を尽くすことで信頼関係が生じるため、その後の社内コミュニケーションが円滑になりやすく、会社への帰属意識向上にも効果が期待できます。

オープンイノベーションにつながることがある

ハッカソンには、多様な経験や専門性を持つ人材が集まるため、従来には考えつかなかった視点や考え方が生じ、オープンイノベーションのきっかけになることがあります。

1つの問題に対する多方面からの意見を取り入れることにより、新しいアプローチや解決方法の糸口が見つかり、ブレイクスルーにつながりやすいといわれています。

人材採用などにも役立つ

ハッカソンが、人材採用や取引先の選定に役立つこともあります。同じ目標を持って開発作業をすることで、技術力や知識だけでなく、性質やコミュニケーション力も垣間見えるためです。

書類選考や面接では察知しえない参加者の人となりに気づくことがあり、採用や取引先選定におけるミスマッチの防止が期待できます。

ハッカソンを開催するまでの流れ

ハッカソンを開催するには、企画や会場選定、スタッフの準備など、多くの段取りが必要です。ここでは、ハッカソンを開催するまでのおおまかな流れを解説します。

ハッカソンを企画する

まずハッカソンの目的を決めます。企業PR、製品開発、コミュニティーづくりなど、ハッカソン開催の主目的を明確に定めましょう。そして目的に従い、一般・社内・産学連携などハッカソンの種類を選定します。

次にハッカソンのテーマとゴール、参加者の範囲やレベルを取り決めます。その後、募集方法や審査方法、概算経費など、詳細な事項をつめていきます。

会場を選定する

ハッカソンの参加者人数にあわせて、適切な会場を選定します。会場が広すぎると全体の管理が難しく、逆に狭すぎると作業がしづらくなるため、適度な広さの会場を選ぶ必要があります。

また、電源やインターネット回線を確保できるかどうかの確認も重要です。延長コードや机・椅子などの数もあわせて検討しておきましょう。

スタッフを揃える

ハッカソン開催にはさまざまなスタッフが必要です。司会、メンター、ファシリテーターなどを揃えるとともに、受付や記録係、広報、緊急時の対応を行うスタッフも確保しなければなりません。

特に司会やファシリテーターは、ハッカソンをスムーズに進行させる要となるため、できれば経験豊富な人材を選びましょう。

参加者を募集する

企画時に取り決めた方法により、ハッカソンの参加者を募集します。募集方法としては、HPやSNS、ポスターやチラシ、新聞などでの告知が考えられるでしょう。多くの募集があった場合の選考基準も、事前に考えておく必要があります。

チーム分けをしておく

ハッカソンは、1チーム5~6人の編成が適しているといわれています。各チームのメンバーのスキルや経験にばらつきがないよう、バランスよく参加者を振り分けましょう。

なおチーム分けは、必ずしも事前にしなければならないわけではなく、当日行うこともあります。

ハッカソンを成功させるポイント

ハッカソンの成功には、綿密な計画やイベント時の雰囲気づくりが重要です。また、イベント後のフォローも疎かにはできません。ここでは、ハッカソンを成功させるポイントを紹介します。

綿密に企画する

ハッカソンの成功には、事前の綿密な企画が大切です。目的やテーマ、ゴール、参加者の属性、開催時間や費用などを詳細に取り決め、想定されるトラブルをリストアップして対処法を考えておくとよいでしょう。

また主催者の責任として、万が一の災害時の避難経路なども確認しておく必要があります。

アイデアを出しやすい場を作る

ハッカソンの醍醐味の1つは、多種多様な「個」の視点や意見をうまく抽出し、成果物に取り入れていくことです。

そのため、成果物の企画(アイデアソン)の段階では特に、各参加者に積極的にアイデアを出してもらうことが欠かせません。「他者のアイデアを否定・批判せず、まず受け入れる」という基本姿勢を、事前にレクチャーしておくとよいでしょう。

また、参加者に発言を促すファシリテーターには、経験豊かな人材を選ぶことも大切です。

開催後のフォローアップを行う

数時間から数日間で終了するハッカソンは「ただのお祭り」で終わるケースも散見されます。そのため、終了後も適切なフォローアップを行うことで、ハッカソン参加者同士のコミュニティーを継続させなくてはなりません。

具体的なフォローアップ策としては、イベント終了後のアンケート実施、HPやSNSなどによるハッカソンの成果報告などが考えられます。またハッカソンで開発した成果物を事業化する場合は、HPなどで進捗状況を報告することも重要です。

ハッカソンのイベント事例

ハッカソンは、具体的にどのような形で開催されているのでしょう。ここでは、国内で開催されていたハッカソンの事例を紹介します。

Digital Hack Day(LINEヤフー株式会社)

Digital Hack Dayは、Yahoo! JAPANが主催するハッカソンです。2007年に社内ハッカソンとして開始され、2013年からは外部から参加者を募る一般のハッカソンとなりました。現在では、日本最大級のハッカソンといわれています。

参考:Digital Hack Day

都知事杯オープンデータ・ハッカソン(東京都)

都知事杯オープンデータ・ハッカソンは、2021年に始まった東京都主催のハッカソンです。行政が保有するデータを積極的に公開し、シビックテックや民間企業などが新たなサービスを創出することで、都民の利便性向上につなげることが目的とされています。東京都在住者以外の参加も可能で、募集の間口が広いことも特徴です。

参考:都知事杯オープンデータ・ハッカソン

ハッカソンはフォローアップが重要

ハッカソンは、エンジニアやデザイナーなどが集まってチームを組み、一定のテーマに沿って成果物の開発を競い合うイベントです。多方面から多様な参加者が集まり、通常は交流のない人同士で、集中的な開発作業を行います。

こうしたハッカソンを通じ、チームメンバー同士に信頼関係が生まれるケースが多い反面、一過性のイベントに終わってしまうこともあります。そのような結果を防ぎ、参加者同士のつながりを持続するためには、アンケート調査やHP・SNSの発信など、主催者による継続的なフォローアップが重要です。


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