- 更新日 : 2023年11月9日
年末調整による還付金の支払日はいつ?
年末調整の還付金とは、徴収された源泉所得税が本来納めるべき金額よりも多かった場合に、12月または1月に戻ってくるお金のことです。年末調整は過不足税額の調整をする仕組みであるため、源泉所得税が不足していた場合には追加徴収されます。今回は年末調整による還付金の支払日や受け取り方法を解説します。
目次
年末調整における還付金とは?
年末調整によって返還される還付金とは、年末調整で過不足税額を精算した際に払いすぎていた場合に返還されるお金のことです。年末調整は、1月1日から12月末までの期間に給与や賞与から天引きによって徴収された所得税と1年分の正確な所得税額を比較し、過不足精算をおこなう制度を指します。
過不足税額について詳しくはこちらの記事をご参照ください。
ただし、年末調整をすれば必ず還付金が返ってくるわけではありません。所得税の過不足精算の結果、源泉所得税が実際の所得税額よりも不足していた場合、追加徴収されることを覚えておきましょう。
そもそもなぜ年末調整で所得税の過不足精算をする必要があるかというと、毎月納付してきた源泉所得税は概算による仮の金額であるためです。毎月源泉徴収される所得税は、前年の年末調整の際に提出した「扶養控除申告書」をもとに決定されます。
一方、扶養控除をはじめとする実際の控除額は、その年の終わりまで正確な金額がわからないことがほとんどです。このように、前年の年末調整時に決定された控除額とその年の控除額に差が生じるため、正確な控除額がわかる年末に過不足を修正する必要があるというわけです。
なお、年末調整で生命保険料控除や地震保険料控除などを受ける場合は、従業員が自分で保険料控除申告書を記入し、申告しなければなりません。会社は従業員が個人的に加入している生命保険料の情報を把握しているわけではないためです。
その場合、10〜11月頃に加入先の保険会社から送付される保険料控除証明書を提出し、年末までの支払い予定を含めた、その年に支払った保険料額を証明します。
年末調整による還付金の支払日はいつ?
年末調整による還付金は、一般的には年末調整で還付申請をおこなった1ヶ月後あたりに支払われるものです。12月中に還付される会社が多いなか、業務上の都合により、また従業員に共稼ぎが増えてきたことを背景に、1月下旬を支払日とする会社もあります。ここからは、それぞれ何故その時期になるのかという理由について解説します。
早ければ12月中に還付される
年末調整の還付金の支払日は、12月中であることが多いようです。具体的には、12月最後の給与支給日に一緒に振り込まれるパターンが一般的です。
年末調整は、1年間のうちに支給した給与や賞与を精算することを目的に実施するものであるため、年内に終わらせる必要があると考える会社が多いことが考えられます。また、年末調整を給与とは別に支給した場合、振込手数料がかかることも理由に挙げられるでしょう。
所得税法に関する基本通達では、12月賞与をその年最後に支給するものとみなして年末調整をおこなうことも認められています。12月賞与は12月給与よりも先に支給されることが多いため、12月上旬には年末調整の還付金を受け取るケースもあるということです。
遅い場合は1月下旬に還付される
年末調整の還付金の支払日を12月の給与支払日と同じ日とする会社が多いなか、1月下旬頃に振り込む会社もあります。それには、下記のような理由が挙げられます。
- 年末の繁忙期を避けるため
- 12月の給与支払日以降に控除額の修正が入る可能性があるため
- 従業員が共働きのケースで、1月にならないと配偶者の所得が確定しないため
- 年末調整で所得税を追加徴収する場合、1月と2月にわけて徴収できるため
ただし、年末調整の結果は1月31日までに税務署に届ける必要があるため、期限を過ぎないようにしましょう。
年末調整による還付金の受け取り方法は?
年末調整による還付金の受け取り方法は、会社によってさまざまです。給与と一緒に口座への振り込みの形で還付されるケースもあれば、給与とは別に還付金のみを手渡しで渡すケースもあるようです。
ここからは、年末調整の還付の方法である「給与への反映による還付」と「手渡しによる還付」について、それぞれ解説していきます。
給与への反映による還付
年末調整の還付金は、給与と一緒に支払われるケースが多いようです。現在は給与自体、手渡しではなく口座振込で支払われることがほとんどであるため、別途支払い手数料がかからないように一緒に振り込まれます。
年末調整による還付金の受け取り方法に決められたルールはないため、会社ごとに対応が異なることを覚えておきましょう。
手渡しによる還付
給与を手渡しで支給している場合は、年末調整の還付金も一緒に、手渡しで支払うというケースもあるでしょう。あるいは、給与は口座振込であっても、年末調整による還付金のみ手渡しで支給している会社もあるかもしれません。従業員の希望に応じて、振り込みと手渡しの両方の対応をしているケースもあるようです。
繰り返しになりますが、還付金の支給方法に明確な定めはないため、それぞれの会社の状況に応じた還付方法が採用されています。
年末調整による還付金の計算方法
年末調整の還付金の計算方法について、国税庁のパンフレットに記載されている事例を挙げ、簡単にご説明しましょう。
事例:給与所得40万円の妻、17歳と19歳の子どもを1人ずつ、ならびに72歳の同居する親1名を扶養している男性
引用:令和5年分 年末調整のしかた4-1 過不足額の精算・設例|国税庁
出典:令和5年分 年末調整のしかた|国税庁
「令和5年分 年末調整のしかた4-1 過不足額の精算・設例」を加工して作成
源泉徴収簿内⑦と⑧を見ると、年収は897万円、源泉徴収済みの所得税額は20万700円であることがわかります。
次に、「給与所得控除後の金額の算出表」で年収897万円に対応する給与所得後の金額697万3,000円を確認しましょう。
次は所得控除額の計算をします。健康保険料や厚生年金の保険料138万6,102円、生命保険料控除12万円、地震保険料控除5万円を所得控除することが可能です。
さらに配偶者控除38万円、扶養控除及び障害者の控除合計額186万円、本人の基礎控除48万円を、上記の所得控除額に加えると、男性の所得控除額の合計は427万6,102円となります。
先ほど確認した給与所得後の金額から所得控除額の合計を引くと697万3,000円-427万6,102円=269万6,898円となり、269万6,000円(1,000円未満切捨て)が、課税所得金額です。
課税所得金額269万6,000円に対する所得税は、269万6,000円×税率10%-控除額9万7,500円=17万2,100円になります。
さらに、この17万2,100円から(特定増改築等)住宅借入金投特別控除額12万6,500円を控除することになりますので、所得税額は4万5,600円になります。
そして、4万5,600円×102.1%=4万6,500円(100円未満切捨て)が年調年税額になります。
最初にお伝えした源泉徴収済みの所得税が20万700円であったことから、20万700円-年調年税額4万6,500円=15万4,200円が超過額です。
超過した15万4,200円が年末調整による還付金となります。
年末調整の還付金の支払日、受け取り方法を知ろう
年末調整による還付金とは、給与や賞与から源泉徴収された所得税が実際に納めるべき金額を超過していた場合に、納税者に戻ってくるお金のことをさします。
還付金が支払われるのは12月の会社もあれば1月の会社もあるといったようにさまざまです。また、受け取り方法に明確なルールが存在するわけではないため、給与と一緒に口座振込をする方法、還付金のみ手渡しで支払う方法など、各会社の状況に応じて対応しています。
年末調整の還付金の定義や一般的な支払日、受け取り方法について理解を深め、年末調整の還付や徴収に関する手続きを正確におこなえるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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