• 更新日 : 2024年11月15日

年末調整の還付金はいつ戻ってくる?支払日や金額の計算方法を解説

年末調整還付金とは、徴収された源泉所得税が本来納めるべき金額よりも多かった場合に、12月または1月に戻ってくるお金のことです。年末調整は過不足税額の調整をする仕組みであるため、源泉所得税が不足していた場合には追加徴収されます。今回は年末調整による還付金の支払日や受け取り方法を解説します。

年末調整によって戻る還付金とは?

年末調整によって返還される還付金とは、年末調整で過不足税額を精算した際に払いすぎていた場合に返還されるお金のことです。年末調整は、1月1日から12月末までの期間に給与や賞与から天引きによって徴収された所得税と1年分の正確な所得税額を比較し、過不足税額の精算をおこなう制度を指します。

過不足税額について詳しくはこちらの記事をご参照ください。

ただし、年末調整をすれば必ず還付金が返ってくるわけではありません。所得税の過不足精算の結果、源泉所得税が実際の所得税額よりも不足していた場合、追加徴収されることを覚えておきましょう。

そもそもなぜ年末調整で所得税の過不足精算をする必要があるかというと、毎月納付してきた源泉所得税は概算による仮の金額であるためです。毎月源泉徴収される所得税は、前年の年末調整の際に提出した「扶養控除申告書」をもとに決定されます。

一方、扶養控除をはじめとする実際の控除額は、その年の終わりまで正確な金額がわからないことがほとんどです。このように、前年の年末調整時に決定された控除額とその年の控除額に差が生じるため、正確な控除額がわかる年末に過不足を修正する必要があるというわけです。

なお、年末調整で生命保険料控除地震保険料控除などを受ける場合は、従業員が自分で保険料控除申告書を記入し、申告しなければなりません。会社は従業員が個人的に加入している生命保険料の情報を把握しているわけではないためです。

その場合、10〜11月頃に加入先の保険会社から送付される保険料控除証明書を提出し、年末までの支払い予定を含めた、その年に支払った保険料額を証明します。

年末調整による還付金の支払日はいつ?

年末調整による還付金は、一般的には年末調整で還付申請をおこなった1ヶ月後あたりに支払われるものです。12月中に還付される会社が多いなか、業務上の都合により、また従業員に共稼ぎが増えてきたことを背景に、1月下旬を支払日とする会社もあります。ここからは、それぞれ何故その時期になるのかという理由について解説します。

早ければ12月中に還付される

年末調整の還付金の支払日は、12月中であることが多いようです。具体的には、12月最後の給与支給日に一緒に振り込まれるパターンが一般的です。

年末調整は、1年間のうちに支給した給与や賞与を精算することを目的に実施するものであるため、年内に終わらせる必要があると考える会社が多いことが挙げられます。また、年末調整を給与とは別に支給した場合、振込手数料がかかることも理由となるでしょう。

所得税法に関する基本通達では、12月賞与をその年最後に支給するものとみなして年末調整をおこなうことも認められています。12月賞与は12月給与よりも先に支給されることが多いため、12月上旬には年末調整の還付金を受け取るケースもあるということです。

遅い場合は1月下旬に還付される

年末調整の還付金の支払日を12月の給与支払日と同じ日とする会社が多いなか、1月下旬頃に振り込む会社もあります。それには、下記のような理由が挙げられます。

  • 年末の繁忙期を避けるため
  • 12月の給与支払日以降に控除額の修正が入る可能性があるため
  • 従業員が共働きのケースで、1月にならないと配偶者の所得が確定しないため
  • 年末調整で所得税を追加徴収する場合、1月と2月にわけて徴収できるため

ただし、年末調整の結果は1月31日までに税務署に届ける必要があるため、期限を過ぎないようにしましょう。

年末調整による還付金の受け取り方法は?

年末調整による還付金の受け取り方法は、会社によってさまざまです。給与と一緒に口座への振り込みの形で還付されるケースもあれば、給与とは別に還付金のみを手渡しで渡すケースもあるようです。

ここからは、年末調整の還付の方法である「給与への反映による還付」と「手渡しによる還付」について、それぞれ解説していきます。

給与への反映による還付

年末調整の還付金は、給与と一緒に支払われるケースが多いようです。現在は給与自体、手渡しではなく口座振込で支払われることがほとんどであるため、別途支払い手数料がかからないように一緒に振り込まれます。

年末調整による還付金の受け取り方法に決められたルールはないため、会社ごとに対応が異なることを覚えておきましょう。

手渡しによる還付

給与を手渡しで支給している場合は、年末調整の還付金も一緒に、手渡しで支払うというケースもあるでしょう。あるいは、給与は口座振込であっても、年末調整による還付金のみ手渡しで支給している会社もあるかもしれません。従業員の希望に応じて、振り込みと手渡しの両方の対応をしているケースもあるようです。

繰り返しになりますが、還付金の支給方法に明確な定めはないため、それぞれの会社の状況に応じた還付方法が採用されています。

年末調整による還付金の計算方法(定額減税対応)

令和6年度は、定額減税により年末調整の年調年税額の計算方法に変更があります。年末調整における定額減税対応での計算手順を確認し、還付金が戻ってくる場合、どのくらい戻ってくるのかを見ていきましょう。

年末調整での年調年税額の計算手順

年末調整において定額減税の対応を含めた年調年税額を算出する手順は以下の通りです。

  1. 給与総収入額から給与所得額を求めます。
    給与総収入額を「令和6年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」にあてはめると、給与所得控除後の給与等の金額が算出できます。
  2. 参考:令和6年分 年末調整のしかた|国税庁、「令和6年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」

  3. 次に、所得控除額の合計額を求めます。
    納税者にかかる自身の基礎控除38万円の他に配偶者の配偶者控除や扶養親族の扶養控除の額を確認します。その他に、社会保険料控除や各種保険料控除がないかも合わせて確認し、所得控除額の合計額を算出します。
  4. 給与所得控除後の給与等の金額から所得控除額の合計額を差し引くと課税所得額になります。
  5. 求めた課税所得税額から算出所得税額を求めます。
  6. 参考:令和6年分 年末調整のしかた|国税庁、「令和6年分の年末調整のための算出所得税額の速算表」

  7. 令和6年度に限り、上記で算出した所得税額から定額減税の額を差し引きします。
  8. 5で求めた算出所得税額に復興特別所得税の税率102.1%を掛け算して、年調年税額を求めます。

これが、納税者の年調年税額になります。給与や賞与からすでに源泉徴収されている所得税額と比較して、多く納付している場合には12月または1月に納税者本人に還付することになります。

年末調整による還付金でいくら戻るか

それでは、具体的に給与収入の事例を挙げて、いくら税金が戻るのか、また控除されるのか確認してみましょう。

計算事例:配偶者(収入なし)と17歳の子どもが1人いる場合

■Hさん(男性)の場合

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 ◆家族構成
  ・既婚者、配偶者は専業主婦(収入なし)
  ・16歳の子どもを扶養
 ◆給与・控除関係
  ・給与総収入額 600万円
  ・源泉徴収税額 10万3838円
  ・各種保険料控除額
   -社会保険料控除 76万9541円
   -生命保険料控除 4万5000円
  ・定額減税額 9万円(3万円×対象者3名)
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  1. 給与総収入額から給与所得額を求めます。給与総収入額600万円を「令和6年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」にあてはめると、給与所得控除後の給与等の金額は436万円になります。
  2. 次に、所得控除額の合計額を求めます。Hさんは、自身の基礎控除38万円と配偶者の配偶者控除38万円、16歳の子ども1名の扶養控除38万円を受けることができます。その他に、社会保険料控除76万9541円と生命保険料控除4万5000円を受けられるため、それらを合計すると、195万4541円になります。

    38万円+38万円+38万円+76万9541円+4万5000円=195万4541円

  3. 給与所得控除後の給与等の金額から所得控除額の合計額を差し引くと課税所得額になります。

    436万円-195万4541円=240万5459円≒240万5400円(1000円未満切り捨て)

  4. 求めた課税所得税額から算出所得税額を求めます。

    240万5400円×10%-9万7500円=14万3040円

    参考:国税庁「令和6年分の年末調整のための算出所得税額の速算表」

  5. 令和6年度に限り、算出所得税額からXさんの定額減税額9万円を差し引きします。

    14万3040円-9万円=5万3040円

  6. 5で求めた算出所得税額5万3040円に復興特別所得税の税率102.1%を掛け算して、年調年税額を求めます。

    5万3040円×102.1%=5万4153円≒5万4100円(100円未満切り捨て)

よって、Hさんが本来納付すべき所得税ならびに復興特別所得税の合計額(年調年税額)は5万4100円になります。すでに源泉徴収されている所得税額10万3838円と比較すると4万9738円多く納付していることになるため、12月または1月にHさんに4万9738円還付することになります。

還付金がもらえない場合

給与や賞与から源泉徴収されている所得税額が、年末調整の際に計算した年調年税額よりも多い額の場合は、上記のように差額が還付されます。

しかし、所得税額が年調年税額よりも少ない額だった場合は、納付した税所得税が不足していたことになり、差額は還付ではなく徴収されることになります。

年末調整の還付金の支払日、受け取り方法を知ろう

年末調整による還付金とは、給与や賞与から源泉徴収された所得税が実際に納めるべき金額を超過していた場合に、納税者に戻ってくるお金のことを指します。

還付金が支払われるのは12月の会社もあれば1月の会社もあるといったようにさまざまです。また、受け取り方法に明確なルールが存在するわけではないため、給与と一緒に口座振込をする方法、還付金のみ手渡しで支払う方法など、各会社の状況に応じて対応しています。

年末調整の還付金の定義や一般的な支払日、受け取り方法について理解を深め、年末調整の還付や徴収に関する手続きを正確におこなえるようにしましょう。


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