• 更新日 : 2024年2月29日

子の看護休暇とは? 有給・無給?対象となる子どもや取得条件を解説

子の看護休暇とは、小学校入学前の子を育てる従業員が取得できる休暇です。育児・介護休業法が根拠にあり、取得した日時が無給か有給かは企業が定めることができます。本記事では、子の看護休暇を取得できる条件や注意点などについて詳しく解説します。子の看護休暇に関わる助成金についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

子の看護休暇とは?

子の看護休暇とは、小学校入学前の子を育てる従業員が、子ども1人につき年間5日(上限は年間10日)の休暇を時間単位で取得できる休暇のことです。年次有給休暇とは別に休暇を設けることで、子育て世代の従業員が育児しながら働きやすくなることを目的としています。子どもの病気やケガの看病のほか、予防接種や健康診断を受ける際にも使用できます。

介護休暇との違い

看護休暇と似た制度に介護休暇があります。介護休暇と看護休暇の違いは、対象となる家族です。看護休暇は小学校入学前の子どもが対象家族です。対して介護休暇は、要介護状態にある「配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫」が対象家族となります。

介護休暇の日数や取得単位は看護休暇と同一で、年間5日(上限10日)の休暇を時間単位で取得できます。

参考:介護休暇とは|厚生労働省

子の看護休暇を定めている法律

子の看護休暇は育児・介護休業法の第16条の2から第16条の4にかけて定められています。育児・介護休業法について簡単に説明します。

育児・介護休業法

育児・介護休業法は正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。育児・介護休業法では、育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、育児・介護を行う従業員についての残業の制限などについて定めています。

これらの制度については分量が多いため、就業規則とは別に育児・介護休業規程として定めている企業が一般的です。

2021年改正の概要

育児・介護休業法は2021年に改正があり、出生時育児休業の創設や育児休業の分割取得など、育児休業の制度が大きく変わりました。

子の看護休暇についても改正があり、1時間単位で取得できるようになりました。また、1日の所定労働時間が4時間以下の従業員は取得できませんでしたが、取得可能になっています。

改正前改正後(2021年1月1日以降)
取得単位半日単位時間単位
対象者1日の所定労働時間が4時間以下の従業員は取得不可1日の所定労働時間が4時間以下の従業員も取得可能

参考:育児・介護休業法の改正について(令和3年1月1日施行) | 北海道労働局

子の看護休暇が取得できる条件

子の看護休暇は、対象となる子どもの病気やケガに伴う世話をする場合に取得することができます。ただし日雇いの方や一定の労働条件で働く方について、労使協定を定めている場合は取得することができません。ここでは取得できる条件を紹介します。

対象となる子ども

子の看護休暇は小学校入学前の子どもが対象となりますが、ここでいう子どもは従業員の実子・養子のほかこれに準ずる関係の子どもも対象になります。つまり、特別養子縁組の子や養子縁組里親に委託されている子も対象となります。そのため、配偶者の連れ子は養子縁組をしないと対象となる子どもになりません。

対象者

日雇いもしくは労使協定で定められた従業員でなければ、子の看護休暇の対象者となります。ただし、対象となる子どもを育てている従業員に限ります。そのため子どもの祖父母は養子縁組をしない限り子の看護休暇の対象者とはなりません。

対象外となる人

企業は日雇いの従業員のほか、労使協定で次の事項に該当する従業員について子の看護休暇の対象外とすることができます。

  • 勤務期間が6か月未満
  • 1週間の所定労働日数が2日以下

取得の日数・単位

子の看護休暇の日数は対象となる子ども1人につき年間5日です。2人以上いる場合でも10日が上限となります。取得単位は1日のほか、時間単位での取得ができます。

看護休暇を利用できるケース

子の看護休暇は原則として、子どもの病気やケガの治療中の世話、通院、予防接種などに利用されます。すぐ治癒する病気であったとしても、従業員が必要だと考えた場合には子の看護休暇が利用できます。

従業員の看護休暇利用申出に対して、企業は従業員が子の看護や世話を行うことが分かる書類を提出させることができます。ただし、書類の提出させる場合でも事後の提出にするなど、従業員に負担を強いることのないよう配慮しなければなりません。

子の看護休暇中は有給?無給?

子の看護休暇について有給とするか無給とするかは企業が決められます。子の看護休暇を無給としても問題ありません。

2021年に厚生労働省が行った「雇用均等基本調査」によると「無給」が 65.1%、「有給」が 27.5%、「一部有給」が 7.4%とされています。そのためか、同調査では子の看護休暇を利用した従業員がいた事業所の割合は28.3%と3割未満にとどまっています。

参考:「令和3年度雇用均等基本調査」結果を公表します|厚生労働省

子の看護休暇の取り方

看護休暇を取るには従業員が次の事項を企業の担当者に申し出ます。

  • 従業員の氏名
  • 対象となる子どもの氏名
  • 対象となる子どもの生年月日
  • 看護休暇を取得する年月日(時間単位の場合は年月日時)
  • 必要な世話を行うための休暇であること

子の看護休暇を取得する状況は緊急性が高いことから、当日の口頭による申出でも取得を認める必要があります。看護休暇の申請用紙など書類提出がある場合には、事後の提出でも認めるようにしましょう。

子の看護休暇に関わる助成金

子の看護休暇について、有給にするなど法定を上回る制度として整備した場合に申請できる助成金があります。2023年度に募集のあった助成金を2つ紹介します。実際に申請される際は最新のパンフレットをよくご確認ください。

両立支援等助成金 育児休業等支援コース(Ⅲ 職場復帰後支援):厚生労働省

厚生労働省が行う助成金です。中小企業が対象となり、1事業主につき最大で50万円受給できます。

主な要件
  • 中小企業であること
  • 子の看護休暇を一部もしくはすべて有給にすること
  • 看護休暇を中抜け利用できること
  • 1か月以上育児休業を取得した従業員が有給の子の看護休暇を10時間以上取得したこと
制度導入時の支給額30万円
制度利用時の支給額看護休暇の取得時間数×1,000円(上限20万円)

参考:2023 年度両立支援等助成金のご案内|厚生労働省

2024年度の案内は2024年2月時点でまだ公開されていませんが、名称を「柔軟な働き方選択制度等支援コース助成金」として要件も変更することが検討されています。

働くパパママ育業応援事業 働くママコース:(公財)東京しごと財団

東京都内の中小企業が対象の奨励金制度です。

主な要件
  • 都内の中小企業であること
  • 1年以上の育児休業から復職し3か月以上都内で在勤している女性従業員がいること
  • 復帰までに復帰支援のための面談を1回以上かつ情報提供を定期的に行ったこと
  • 有給の看護休暇の導入や取得日数の上乗せなど法定を上回る制度を定めたこと
支給額125万円

参考:働くパパママ育業応援 | 働く女性の活躍支援 | TOKYOはたらくネット

子の看護休暇を利用する際の注意点

子の看護休暇を利用する際の注意点を、企業の担当者様向けに3つ紹介します。

所定労働時間が変わると残りの時間も比例変更される

1日の所定労働時間が年度の途中で変更された場合は、看護休暇の残り時間について比例変更されます。たとえば、所定労働時間が8時間である従業員について子の看護休暇の残り日数が3日(1日8時間)と5時間あったとします。この従業員の所定労働時間が6時間になった場合、残り日数と時間は3日(1日6時間)と4時間に変更されます。

計算式

変更前残り時間×変更後の所定労働時間÷変更前の所定労働時間=変更後の残り時間

なお、1時間未満の端数については切り上げられます。

取得したことを理由に不利益な取扱いを行わない

看護休暇を取得したことを理由に人事評価の査定を下げるなど、不利益な取扱いは育児・介護休業法により禁止されています。違反した場合には是正するよう行政指導が行われたり、悪質な場合社名などが公表される可能性があります。

企業側は取得日時の変更ができない

年次有給休暇は、場合によっては企業が取得日時を変更できる時季変更権という権利が適用されます。看護休暇については時季変更権のような、取得日時を変更する権利がありません。

子の看護休暇制度を整備して働きやすい職場を目指そう

子の看護休暇は、2004年に制度化された比較的新しい制度です。罰則も定められていないこともあり、厚生労働省の調査では看護休暇制度の規定がある事業所は65.7%となっています。有給休暇を全て消化したあとでもいざというときに子どもの世話ができることは、子どもを育てる従業員にとって大きいメリットです。

もし看護休暇制度がまだないもしくは明文化されていない場合は、制度化して育児しながらでも働きやすい職場を目指しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事