• 作成日 : 2022年12月23日

厚生年金保険料が急に上がったのはなぜ?原因や計算方法を解説!

厚生年金保険料が急に上がったのはなぜ?原因や計算方法を解説!

厚生年金や健康保険などの社会保険料は、会社勤めや公務員の場合、給与から天引きされるのが一般的です。そのため、給与明細を見て保険料が上がったのを知り驚く方も多いでしょう。保険料が上がるのは通常、1年に1度ですが、例外もあります。本記事では、厚生年金保険料の計算方法や標準報酬月額上限の改定について説明します。

厚生年金保険料が急に上がったのはなぜ?

厚生年金保険料が急に上がった原因として、どのような理由が考えられるでしょうか。
後ほど詳しく説明しますが、厚生年金保険料は毎月の給与や賞与などを合計した1年間の収入をもとに計算されています。計算結果は通常9月から1年間適用されるため、急に上がったと感じるのはちょうど9月の給与のときかもしれません。ただし、日本年金機構が定めた基準以上に急激に収入が増えた場合には、随時、厚生年金保険料の改定が行われます。随時改定は収入が急激に減った場合にも同様に行われます。
それでは、厚生年金保険とその保険料について、さらに詳しくみていきましょう。

そもそも厚生年金保険とは?

日本の年金制度は、2階建てとよく言われます。20歳以上60歳以下の国民全員が加入する国民年金が1階部分、厚生年金保険の適用事業所に雇用される人が加入する厚生年金保険が2階部分です。将来、年金を受給する際にも仕組みは同じで、厚生年金保険に加入していた人は、国民年金と厚生年金を合算した金額を受給できます。

なお、厚生年金保険の適用事業所とは、株式会社などの法人事業所(社長1人だけでも)か、5人以上を常時雇用している個人事業所(農林水産業、一部サービス業などを除く)をいいます。適用事業所に雇用されている人は、正社員だけではなく、基準以上の時間や賃金で働くパートタイマーやアルバイトも厚生年金に加入しなければなりません。

厚生年金保険の保険料は、雇用主が半額を負担します。そのため、給与から引かれている厚生年金保険料は、全体の半額ということになります。

厚生年金保険についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事を参照ください。

参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構

厚生年金保険料を含む社会保険料の計算方法は?

厚生年金の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に決まった保険料率を掛けて計算します。保険料率は現時点で18.3%に固定されています。
なお、給与の中には残業手当、通勤手当、家族手当などの各種手当や現物支給のものも含まれます。賞与については、いわゆるボーナスのほかに期末手当や年末一時金、繁忙手当など、年に4回以上の支給がある場合には標準賞与額ではなく標準報酬月額によって計算されます。

では、標準報酬月額、標準賞与額、とは何でしょうか。
標準報酬月額とは、給与額を一定の幅で区分し、厚生年金保険料を計算する標準額を定めたものです。現在は、1等級から32等級まであり、1等級は8万8千円、32等級は65万円となっています。

標準賞与額とは、1回の賞与額の1千円未満を切り捨てた金額です。上限は1回につき150万円で、それ以上は150万円で計算されます。なお、厚生年金保険を含む社会保険の保険料についてより詳しく知りたい方は以下の記事を参照ください。

参考:厚生年金保険の保険料|日本年金機構
参考:令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)|日本年金機構

資格取得時決定

従業員は、雇い入れられた日に厚生年金保険の加入資格を取得し被保険者となります。
しかし、給与を支払われた実績がないため、標準報酬月額がわかりません。そこで、厚生労働大臣によって資格取得時の標準報酬月額決定について、以下のルールが定められています。

  • 一定期間(月、週など)によって報酬が決まる場合
    被保険者となった日から働いた期間の、1日あたりの報酬の30倍に相当する額
  • 日、時間、出来高または請負によって報酬が決まる場合
    事業所内で、被保険者と同様の業務内容かつ同様の報酬を受け取った従業員の前月の平均報酬額
  • 上記のどちらにも当てはまらない場合
    被保険者と同様の地方で、被保険者と同様の業務内容かつ同様の報酬を受けた人の前月の報酬額
  • 上記の複数に当てはまる場合
    それぞれの条件によって上記3つのルールを使用して算定した額の合算

参考:資格取得時の決定|日本年金機構

随時改定

随時改定とは、昇給や降給などにより被保険者の固定的賃金に大きな変動があった場合、年に1度の定時決定を待たずに標準報酬月額を改定できる制度です。
固定的賃金の大きな変動とは、昇給、降給のほかにも以下のようなことが考えられます。

  • 給与体系の変化(日給から月給など)
  • 日給、時給の基礎単価変動
  • 請負、歩合の単価や歩合率の変動
  • 住宅手当、役職手当など固定的手当の追加、支給額の変更

なお、随時改定を行うには、以下の3つの条件を満たさなければなりません。

  1. 固定的賃金に大きな変動があった
  2. 変動があった月から3ヶ月間の報酬の平均額から求めた標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額の差が2等級以上ある
  3. 3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上である(常時500人以上の被保険者が勤務する事業所の短時間労働者は11日)

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

定時決定

厚生年金保険料の計算の基礎となる標準報酬月額は、被保険者の実際の報酬と差が生じないよう、年に1度見直されます。毎年7月1日時点で雇用している被保険者について、4~6月の3ヶ月間の平均報酬額を計算し、標準報酬月額を決定するのです。ただし、4~6月の間に支払基礎日数が17日以上に満たない月がある場合には、その月を除いて平均報酬額額を算定します。

例:5月のみ支払基礎日数が10日の場合、4月の報酬+6月の報酬÷2ヶ月

支払基礎日数とは、給与を支払う基礎となった日数のことです。例えば月給ならば暦日、日給や時給ならば働いた日数となります。基本的には17日ですが、特定適用事業所(常時500人以上の被保険者が勤務する事業所)の短時間労働者は11日です。
定時決定で算定された厚生年金保険料が適用されるのは、9月から翌年8月までです。

※(1)4月・5月・6月の3カ月間のうち支払基礎日数が17日以上の月が1カ月以上ある場合は、該当月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
※(2)4月・5月・6月の3カ月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合、3カ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。
※(3)4月・5月・6月の3カ月間のうち支払基礎日数がいずれも15日未満の場合には、従前の標準報酬月額にて、引き続き定時決定が成されます。

参考:定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

厚生年金保険料が上がる理由は?

さて、厚生年金保険料について、計算方法などを説明しました。基本的には、1年に一度の定時決定にて標準報酬月額が決定され、それに基づいて保険料が計算されます。
では、保険料が厚生年金保険料が急に上がる理由としてどのような可能性があるかを考えてみましょう。

昇給や残業などで給与が増えた

昇給や長期間続く残業などで著しく報酬が増えた場合には、「随時改定」により標準報酬月額が2等級以上、上がった可能性があります。厚生年金保険料額表(令和4年度版)によれば、標準報酬月額が2等級上がると、保険料はだいたい2,000円~5,000円上がることになります。

参考:令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)|日本年金機構

標準報酬月額の上限変更

令和2年(2020年)9月1日、厚生年金保険法の改定により、標準報酬月額の上限が引き上げられました。それまで、上限等級は31等級で62万円(報酬月額60万5千円以上)でしたが、1等級追加され、32等級で65万円(報酬月額63万5千円以上)が上限等級となりました。
これまで31等級に該当していた方の中には、32等級に等級が上がった方もいるでしょう。その場合、厚生年金保険料も上がることになります。

参考:厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定|日本年金機構

4月~6月の給与で1年の厚生年金保険料が決まる!

前章では、厚生年金保険料が急に上がる原因を説明しました。
しかし、前述のとおり、すべての被保険者には年に一度の定時決定があります。4月~6月の報酬の平均をもとに、9月から1年間の標準報酬月額が決定するのです。標準報酬月額の計算には、各種手当も含まれます。
すなわち、4月~6月の間に残業を多くして残業手当が増えたり、結婚などで家族手当が増えたりした場合、報酬が増えて厚生年金の保険料も上がることになります。
どうしても厚生年金保険料を上げたくない、という場合には、4月~6月の報酬が増えないように気をつけると良いでしょう。

よくある質問

厚生年金保険料を含む社会保険料の計算方法は?

4月~6月の報酬の平均を求めて標準報酬月額を決定し、そこに保険料率を掛けて算定します。詳しくはこちらをご覧ください。

厚生年金保険料が上がる理由は?

4月~6月の報酬が残業などで高かったか、昇給などにより標準報酬月額が2等級以上上がったことが考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。


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