• 作成日 : 2022年9月22日

残業時間を管理するための方法をわかりやすく解説

会社経営において欠かせない作業に残業時間の管理があります。労働者が法律や雇用契約の範囲内で健全に働いていることを確認して、必要に応じて業務内容の削減や待遇改善などをおこないます。この記事では残業時間管理のメリットや働き方改革による変更点、管理方法や超過時のリスクなどについて解説します。

残業時間の管理はどうすれば良い?

残業時間の管理は勤怠管理の一環として重要であり、適切に管理できれば多くのメリットにつなげられます。主なメリットは下記のとおりです。

  • 労働者の就業状況を正しく把握できる
    残業時間を管理すると各労働者の勤務時間が適切に把握できるようになり、過重労働を防止できます。過重労働は健康被害や訴訟などさまざまなトラブルの原因になるため、問題発生を未然に防げます。生産性の向上も期待できるでしょう。
  • 給与を正確に計算できる
    残業時間を管理して労働者がいつ・どれだけ働いていたか把握できれば、労働者に支払う給与の計算も正しくおこなえます。給与額は保険料や税金にもかかわり、残業中の給与は時間外手当がつくため計算しづらくなります。正確な給与額把握のためにも残業時間管理が欠かせません。
  • コンプライアンスに役立つ
    残業時間の管理はコンプライアンス=法令遵守に役立ち、自社が健全な会社であるとアピールできます。残業時間を少なく見積もったり残業代を充分に支給しなかったりすると、会社としてコンプライアンス違反につながり評判が低下するでしょう。

働き方改革で残業時間が変更に

残業時間の扱いは『働き方改革』によって大きく変わりました。働き方改革では時間外労働に上限が設けられたため、改革以前と同じ感覚で残業をさせられなくなりました。罰則も設けられており、新しい扱い方に対応していかないと違法行為になる恐れがあります。上限を超える残業も臨時的に可能ですが、臨時的な時間外労働にも複数の制限があるため注意しましょう。働き方改革の概要と残業時間管理にかかわる時間外労働の上限について、以下で詳しく解説します。

働き方改革とは

働き方改革とは、2018年から始まった労働環境に関する改革・取り組みのことです。少子高齢化により労働人口のさらなる減少が見込まれるなかで、労働者の多様な働き方を実現して生産性向上を図る狙いがあります。働き方改革によって、労働に関する8本の主要な法律が改正・施行されています。長時間労働の是正や多様・柔軟な働き方の実現、雇用形態を問わず公正な待遇の確保が主な目的です。主要な要素として以下のものが挙げられます。

  • 時間外労働の上限規制
    労働者に時間外労働をさせられる時間の上限が罰則付きで設けられました。
  • 年次有給休暇の時季指定
    有給休暇を毎年一定日数以上取得するよう義務付けられました。
  • 同一労働同一賃金
    正規・非正規労働者の間にあった待遇格差の解消が図られました。

参考:働き方改革って何だろう?|厚生労働省

時間外労働の上限

働き方改革による改正要素のなかでも、『時間外労働の上限規制』は残業時間管理と大きくかかわってきます。働き方改革以前、時間外労働の上限には罰則付きの規定が設けられていませんでした。時間外労働は36協定で定めた範囲内のみ認められていましたが、定められる範囲の上限について労働基準法での規制がなされてきませんでした。働き方改革によって36協定による時間外労働の規定範囲に上限が設けられて、36協定の様式も変更されました。

働き方改革で定められた時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。臨時的な事情がないと上限を超えられず、事情があっても複数の条件を満たす範囲内に定められています。なお、業種によっては2022年現在で時間外労働上限の適用が猶予されているものもあります。適用猶予されている業種も、多くは施行から5年後の2023年に適用されます。

参考:
働き方改革って何だろう?|厚生労働省
労働基準法|e-Gov 法令検索

残業時間の管理方法は?

残業時間を管理するためには、上限となる基準を設定したり、残業時間を自己申請させたりするなどの方策があります。労働者自身からの届出や上限の意識などにより、さまざまな形で残業時間を管理しやすくなるでしょう。残業時間の管理はエクセルなどのツールで計算する方法もありますが、各種の勤怠管理ツールを利用すればより効率的です。さまざまなツールから最も希望に近いものを選びましょう。この章では残業時間を管理する方法について詳しく解説します。

残業時間の基準設定

残業時間を管理する際は、最初に残業可能な時間の基準を設定しましょう。働き方改革により残業時間には一定の制限が設けられたため、残業時間の上限として定めた基準を超えないように勤務させます。

36協定による残業時間の上限は月45時間・年360時間で、上限を超えて働かせるためには特別条項を労働者と締結する必要があります。特別条項の適用は臨時的な事情がある場合に限られて、内容も以下の条件4つを守らなくてはなりません。

  • 時間外労働が計720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働について、2ヶ月~6ヶ月の平均がすべて月80時間以内
  • 月45時間を超える時間外労働は年に6ヶ月まで

特別条項の有無にかかわらず、時間外労働・休日労働の合計は月100時間未満・2ヶ月~6ヶ月平均80時間以内に抑えましょう。

参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|労働基準監督署

残業時間の申請

残業時間を労働者からの自己申請制にすると、残業管理をおこないやすくなります。残業する前に会社からの承認を挟むため、特に長時間の残業を抑止・減少させられます。残業するために申請が求められると、相応の理由なしに残業できなくなるでしょう。残業時間を管理しやすくなるだけでなく、労働者の勤務時間が短くなって健康維持にもつながります。

残業申請制を採用する場合、注意しないと制度が形骸化したり逆に残業の増加を招いたりする恐れもあります。制度の形骸化は一定のルールを定めて、労働者の申請・会社の承認という工程が無意味にならないよう注意しましょう。残業の増加は申請されている残業時間と実態とのかい離が原因です。必要に応じて実態調査をおこないましょう。

なお、残業申請制では原則として未承認の残業に残業代を支払う必要がありません。しかし、黙示的指示と判断される残業は労働時間とみなされて残業代の支払いが求められます。

勤怠管理ツールを使う

残業管理の際に勤怠管理ツールを使用すると、簡単に正確な管理をおこないやすくなります。残業時間の迅速な把握や社内への残業意識付与、事前申請制の形骸化防止などさまざまな効果が期待できます。

勤怠管理ツールは各社や労働局などから提供されていますが、中でも『マネーフォワード クラウド勤怠』をおすすめします。クラウド勤怠は労働者の勤怠状況をリアルタイムに把握したり、有給休暇の管理を自動化したりできます。各種のアラート機能も実装されており、異常な打刻や一定時間以上の残業などが発生した際に知らせてくれます。名前どおりクラウドサービスのため、時間・場所・拠点数を問わず使用が可能です。アップデートも無料で受けられるため、法改正やサービス改善などにすぐ対応してくれる点も嬉しいポイントでしょう。

クラウド勤怠の料金は月額・年額のプランが用意されています。個人では月980円・年9,600円から利用できて、50人の法人では月3,980円・年35,760円から利用可能です。51人以上の法人は公式ページからお問い合わせください。

クラウド勤怠などの勤怠管理ツールを利用して、残業時間を手軽かつ正確におこないましょう。

残業時間が超過してしまうとどうなる?

労働者の残業時間が規定の水準を超えると、労働者の心身に悪影響が生じるだけでなく法令違反も発生し得ます。違反者には法律で6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられると定められているため要注意です。現場で労働者に指示を出す責任者だけでなく、違法行為を改善しなかった事業主にも同様の罰則が科せられます。時間外労働が発生し得る事業で労働者を雇う場合は、36協定の締結や残業時間の把握などを忘れずにおこないましょう。

36協定を締結しても実施可能な時間外労働には制限があるため、業務の効率化などをおこなって労働量を減らすよう努める必要もあります。労働量を減らせれば労働者にかかる負担も抑えられるため、労働者の体調を改善してさらなる業務の効率化にもつなげられるでしょう。

参考:労働基準法|e-Gov 法令検索

残業時間管理は健全な経営のためにも有効

残業時間管理のメリットや働き方改革による変更点、管理方法や超過時のリスクなどについて解説しました。残業時間の管理は労働者の意欲向上や業務の効率化などに有効で、経営を健全に進める結果にもつなげられます。一方で適切な残業時間管理をおこなわないと、業務効率低下や法律違反などの問題が生じるかもしれません。勤怠管理ツールなども積極的に活用して、適切な残業時間管理をおこないましょう。

残業時間管理は働き方改革の一環として重要です。新たな形の労働環境を積極的に構築して、長期的に「働きやすい会社」と評価されるよう努めましょう。

よくある質問

残業時間の管理は必要?

残業時間を管理すると労働者の就業状況や給与額などを正確に把握できて、コンプライアンス上問題ない会社とのアピールにつながります。詳しくはこちらをご覧ください。

残業時間の管理方法は?

勤務可能な残業時間の基準を決めてから自己申請制などにより正確な残業時間を把握して、各種勤怠管理ツールを利用するとスムーズに管理できます。詳しくはこちらをご覧ください。


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