• 更新日 : 2023年7月14日

パワハラ防止法とは?法改正の内容や対策法を解説!

パワハラ防止法とは?法改正の内容や対策法を解説!

パワハラ防止法の対策方法を検討する企業が増えています。2022年4月には法改正が行われ、中小企業もパワハラ防止法の対象となりました。パワハラ防止法に違反すると職場環境が悪化するだけでなく、企業名公表といった罰則を受けるリスクも高まります。そこでこの記事ではパワハラ防止法の概要や対策方法などについて詳しく解説します。

パワハラ防止法とは?

パワハラ防止法とは企業にパワハラ防止の措置を義務づける法律であり、2020年6月1日に施行されました。正式名称を「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」と言い、略称として労働施策総合推進法とも呼ばれることが一般的です。企業は職場におけるパワハラ防止のために、雇用管理の実施に必要となる措置を講じることが義務づけられたのです。

そもそもパワハラとはパワーハラスメントの略称であり、

「職場で働く者に対して職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為」

と定義されています。例えば、身体的攻撃や精神的な攻撃、人間関係からの切り離しといった行為はパワハラに該当する恐れがあります。企業内におけるパワハラ問題を解消して誰もが働きやすい環境を創出するために、パワハラ防止法が施行されることとなったのです。

参考:パワーハラスメント防止措置|厚生労働省

パワハラ防止法が制定された背景 – 働き方改革法案との関連は?

パワハラ防止法が制定された背景としては、パワハラに関する相談件数の増加が挙げられます。都道府県労働局などに設置された総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数を見てみると、平成19年度から令和元年度までの間で大きく増加していることが分かります。平成30年度には相談件数が8万件を超えており、大きな社会問題としてパワハラが注目されました。そうした現状を改善してパワハラを予防するために、パワハラ防止法が制定されたのです。

また、2018年には働き方改革推進法案が整備されました。パワハラ防止法は雇用対策法がベースになっていましたが、より総合的な観点から企業の働きやすい環境構築に取り組むために、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」という長い名称に変更された経緯があります。

参考:民事上の個別労働紛争|主な相談内容別の件数推移|厚生労働省

2022年4月のパワハラ防止法における改正について

2020年6月に先行して大企業を対象としてパワハラ防止法は施行されましたが、2022年4月1日のパワハラ防止法における改正によって中小企業にも対象範囲が広がりました。2022年4月1日以降はすべての企業は、パワハラ防止方針の明確化や相談体制の整備、パワハラに関する体制の構築などが義務化されたのです。

参考:パワーハラスメント防止措置|厚生労働省

パワハラ防止法への対策方法

パワハラ防止法へはどういった対策方法が必要とされるでしょうか。具体的に企業に求められる対策について解説します。

  • パワハラに関する方針の策定と周知を行う

    パワハラ防止に向けた企業の方針や規定を策定して、従業員に周知を徹底しましょう。より具体的には就業規則へのパワハラを禁止する項目の追加や、パワハラに対する懲戒規定などの策定が求められます。

  • パワハラに関する研修を実施する

    パワハラに関連する研修を実施して、パワハラの考え方や危険性を従業員に理解させましょう。パワハラが発生する原因や背景などを説明することで、パワハラの被害を未然に防ぐことが可能です。

  • パワハラの相談窓口を設置する

    パワハラ防止策として相談窓口の設置が求められます。相談窓口には担当者を設置して対応フローを明確にするだけでなく、相談者のプライバシーも守らなければなりません。なお、相談窓口の設置については外部委託という選択肢もあります。

  • パワハラへの対応フローを整備する

    パワハラが発生した後の対応フローを整備しておく必要があります。対応フローがあればパワハラが発生してしまった場合に迅速に対応でき、被害者の状態悪化を防げます。

  • パワハラの行為者や被害者に対する適正な措置を実施する

    パワハラの行為者や被害者に対して、適正な措置を行わなければなりません。具体的には行為者への厳正な処分や関係改善のための援助、配置転換といった措置が求められます。ほかにも、行為者の謝罪や被害者の不利益の回復といった対応も重要です。

  • パワハラの再発防止措置を講じる

    パワハラが発生してしまったら再発を防止するための取り組みが重要です。パワハラ規定の再周知や研修の実施などだけでなく、アンケートも実施して既存の体制を再評価してみましょう。

参考:パワーハラスメント防止措置|厚生労働省

パワハラ防止法に違反した場合、罰則はある?

パワハラ防止法には現時点では罰則が設けられていません。ただし、問題がある企業には行政より助言・指導または勧告が入る恐れがあります。もし、是正勧告を受けたにもかかわらず従わなかった場合には、企業名が公表される可能性があります。企業のイメージ低下も避けられないため、パワハラが発生しない社内の環境構築が求められているのです。

従業員がパワハラ防止法によって変わること・できること

パワハラ防止法をきっかけに従業員が変わることやできることには何があるでしょうか。

3つの視点と対策についてそれぞれ考えてみましょう。

  • 加害者にならないために
    個々が持つ価値観を認めて、主観で判断してしまうことをやめましょう。企業にはさまざまなタイプの方が働いており、世代が大きく異なるといったケースも珍しくありません。ほかにも、ジェンダー・国籍・宗教など、従業員ごとのバックグラウンドは多様です。これまでに過ごしてきた人生や育った環境によって、人によって感じ方や考えや方は異なるのです。自分にとっての当たり前が、相手にとっての当たり前とは限りません。相手の立場に立った言動を心がけ、パワハラを行ってしまわないように気をつけましょう。
  • 被害者にならないために
    パワハラを受けやすい方の傾向として、「文句を言わなさそう」や「気が弱そう」だと思われてしまうケースがあります。そうした際にうまく断る方法を知っておくと上手に立ち回ることが可能です。具体的にはアサーションという方法の活用を検討してみましょう。アサーションとは相手を尊重しつつも自分の意見をしっかりと主張するためのコミュニケーション方法です。 アサーションを用いると相手の主張を否定したり、自身の主張を無理に押し付けたりはせずに、お互いの意見を尊重してより良い結論に導けます。相手の意見を聞くことに加えて、自分の意見も伝えられるように意識してみましょう。
  • 第三者としてできること
    第三者としてパワハラに遭遇してしまったら、被害者に対してはそっと話しかけ相手の言葉に耳を傾けましょう。相手の意向を確認できたら、早急な対応が求められます。例えば、パワハラの相談窓口に連絡するなど、被害者が求めている対処を行います。この際、加害者への同調や被害者側を責めるといった行為は絶対に行ってはなりません。パワハラを助長させる恐れがあり、被害者をさらに傷つけてしまいます。また、被害者の意思を確認せずにパワハラの相談窓口などに通報する行為も控えましょう。
  • パワハラを受けた場合の対策
    パワハラを受けた場合の対策としては、まずは事実を記録することが有効です。次に、上司や同僚など周囲に相談できないか検討してみましょう。話をすることで状況を整理できたら、パワハラ相談窓口にも相談してみると問題の解決に向けて前進できます。もし、社内の関係者に話をしにくい場合には、外部の相談窓口利用を検討してみましょう。

参考:パワーハラスメント防止措置|厚生労働省

パワハラ防止法をきっかけに働きやすい職場を考えよう

2022年4月1日のパワハラ防止法における改正によって、大企業だけでなく中小企業にも対象範囲が広がりました。企業としてはパワハラが発生しないための取り組みを早急に行う必要があります。パワハラは人としての尊厳を侵害する行為です。パワハラを受けた被害者は仕事において能力が発揮できなくなる恐れがあるだけでなく、自分には価値がないと感じてしまうなど深刻な問題にもつながりかねません。パワハラ防止法をきっかけに職場の問題点を洗い出して、すべての方が働きやすい環境を構築してみましょう。


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