• 更新日 : 2023年11月17日

感情労働とは?頭脳労働とどう違う?具体例を用いて解説

感情労働とは?頭脳労働とどう違う?具体例を用いて解説

感情労働とは、自分自身の感情をコントロールする必要性がある労働のことを言います。感情労働を行う職種としては、顧客と接するサービス業や営業職などが代表的です。

本記事では、肉体労働や頭脳労働との違いや、実際に感情労働といわれる職業の具体例を用いて感情労働について詳しく解説していきます。

感情労働とは

感情労働とは、最近注目されている新しい労働形態の概念です。顧客に対して心理的に前向きな働きかけをするために、自分の感情をコントロールすることで報酬につなげる労働のことをいいます。

感情労働は、アメリカの社会学者であるA・R・ホックシールドが労働形態の一つとして提唱したものです。感情労働のように労働形態の概念を指す言葉として、肉体労働や頭脳労働などがあります。

本項では、感情労働と頭脳労働、肉体労働との違いについて解説していきます。

頭脳労働との違い

頭脳労働とは、主に思考力、判断力、想像力など頭脳を使ってアイデア、企画、提案などを作り出し報酬を得る労働形態のことです。頭脳労働を行う職種は、企画、管理、事務などが該当します。また、医師、弁護士、税理士などの専門的な職種や、研究職なども頭脳労働に含まれます。

肉体労働との違い

肉体労働とは、身体を使って報酬を得る労働形態のことです。肉体労働を行う職種は、建設業、製造業などです。また、農業、林業、水産業などの第一次産業も肉体労働に含まれます。

感情労働の具体例

以下のようなケースが感情労働に該当します。

例えば、企業のカスタマーセンターに、顧客から商品に関する苦情の電話がかかってきたとします。電話を受けたカスタマーサポートは、自分の感情をコントロールしながら相手を落ち着かせるように働きかける必要があります。苦情を受けてカスタマーサポート自身が落ち込んだり、イライラしたりすることは感情労働ではありません。

相手を落ち着かせるように穏やかに話し誠実に説明し、ときには笑って緊張感を緩めて顧客に前向きになってもらうように働きかけるのが感情労働です。

感情労働と言われる主な業界

感情労働は、発生しやすい業界があります。具体的には、接客を伴うサービス業、医療業界、教育業界などです。本項では、感情労働と言われる主な業界について解説していきます。

接客を伴うサービス業

接客を伴うサービス業とは、飲食業、販売業、美容理容業など数多くの仕事が含まれます。接客を伴うサービス業は、顧客との接触が不可欠であり、自分自身の感情をコントロールしなければならない場合が多くあります。そのため、感情労働が多い代表的な業界と言われているのです。

医療業界

医療業界と言えば、医師や看護師が患者と向き合う代表的な職種ですが、医療事務、薬剤師、助産師なども患者と接する職種です。医療業界に勤務する方は、医療を提供するだけでなく、患者の精神的な不安や悩みに対しても向き合います。また、患者が前向きになるようにサポートする点で感情労働に該当します。

教育業界

学校の先生などの教育業界も、感情労働が多い代表的な職種と言われていわれています。人を教育する仕事とは、相手に対して勉強、知識、スキルを教えることだけではありません。相手の悩みなどに耳を傾けて心に寄り添うことも、大変重要な仕事です。

感情労働と言われる主な職種

感情労働が必要な職種とは、顧客と直接やり取りが発生する仕事がほとんどです。顧客と直接コミュニケーションをとることが業務となる職種は、感情労働に該当します。本項では、感情労働と言われる主な職種について見ていきます。

客室乗務員

客室乗務員は、お客様に第一印象で親しみを感じてもらうとともに、機内での安全や快適さを与えるために笑顔や穏やかな表情と明るい声が必要な職種です。また、お客様の状況に応じた的確な対応やサービスをすることが、感情労働と言えます。

営業担当者

営業担当者は、顧客に商品やサービスを勧めて、欲しいと思ってもらえるよう購買意欲を引き出すために感情労働が必要です。必ず顧客と接する職種のため、自分自身の感情をコントロールしながら成果に結びつくような技法が要求されます。

販売員

販売員は、顧客や来客者に商品やサービスの魅力を伝えるために感情労働が必要です。商品やサービスを勧めて顧客のニーズを引き出すために、自分自身の感情をコントロールしながら明るい声や表情を作ることも必要です。

飲食店のスタッフ

飲食店のスタッフは、自分自身の感情をコントロールしながら笑顔で明るい声で顧客と接客します。顧客に対して繊細で細やかなサービスを提供するため、感情労働が不可欠な職種とされています。

医師・看護師

医師は、医療技術のほかにも患者の状態によって精神的なサポートを行う必要があります。また、患者との信頼関係を構築するために、患者へ笑顔で接したり明るい声掛けをしたりと感情労働が必要です。看護師も、患者との信頼関係を築くことが大切であり、いつも笑顔で優しい態度でいる必要があります。

また、患者の不安や悩みを聞くときには、自分自身の感情をコントロールしながら安心感や信頼感を与える点において感情労働に該当します。

介護士やカウンセラー

介護士やカウンセラーは、高度な専門知識を有する職種であり、専門家として患者や利用者の心身の状態を考えて安心を与える必要があります。患者や利用者に安心感や信頼感を与えるためには、相手の話をよく聞き悩みに寄り添い、自分自身の感情をコントロールしながら笑顔や優しい態度などが必要です。

保育士や教師

生徒や園児、その保護者との信頼関係を築かなければならない保育士や教師は、感情労働が必要な職種です。いつも模範的な言葉や態度で生徒や園児と向き合う必要があり、ときには怒りや情熱も表現しなければなりません。また、生徒や園児の成長や学習に興味を持ってもらうために、笑顔や明るい声やユーモアも必要です。

感情労働に求められるスキル

感情労働は自分の感情を抑制しながら、相手が求める感情を表現しなければなりません。そのためには、感情労働に求められるスキルを身に付ける必要があります。本項では、感情労働に求められるスキルについて解説していきます。

コミュニケーション能力

感情労働は、顧客などと接することが基本です。そのため、高度なコミュニケーション能力が求められます。高度なコミュニケーションを得ることは付加価値となるため、競合他社との差別化が図れます。

メンタルケア能力

感情労働とは、自分自身の感情を抑制しながら顧客などから求められる感情を表現することです。自分自身の感情をコントロールするためには、自分と顧客の境界を保つメンタルが重要です。このメンタルケア能力を得ることで、冷静で適切な対処ができるようになります。

感情労働は働きがいのある仕事?

感情労働を働きがいのある仕事と考えている人は、少なくありません。人の役に立つことができる困った人を助けることができる人を笑顔にすることができるなどが大きな理由です。本項では、感情労働が働きがいのある仕事である理由について見ていきます。

困っている人を助けることができる

感情労働とは、基本的に自分の感情をコントロールし、相手に対して心理的に前向きな働きかけをすることです。その結果、悩んでいる人や困っている人の問題を解決することができます。自分の成長や活躍を優先するのではなく人のために貢献することを優先する人は、感情労働に働きがいを感じることができるでしょう。

人の役に立っていることを実感できる

感情労働は、人と関わることに重きを置き、自分自身ではなく相手に対して気遣いや心配りをすることです。その結果、人の役に立っていることや、貢献していることを実感できます。

感情労働の問題点

感情労働は、相手を幸せにしたり、悩みを解決したり、人の役に立ったりと、よいことばかりのように見えますが、様々な問題点もあります。本項では、感情労働の問題点について見ていきます。

① 仕事でストレスが溜まりやすい

感情労働を行うことは自分自身の感情を押し殺すことが多いため、他の仕事と比べて仕事のストレスが溜まりやすくなります。また、自分の感情に関わることのため、ストレスの回復が難しいのが問題点です。

感情労働は、苦情であってもポジティブな対応であっても、自分の感情を抑えて顧客が求める感情を表現しなければなりません。そのため、精神的な消耗も大きく、感情を抑えすぎたことによる精神障害を起こす可能性もあります。

➁ バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥りやすい

今まで熱心に仕事をしていた人が急にやる気や意欲を失くして無気力状態になることを、バーンアウト(燃え尽き症候群)と言います。感情労働は、バーンアウトになりやすい傾向にあります。その原因は、身体的、精神的ストレスです。特に、真面目な人や完璧主義な人がバーンアウトになりやすいと言われているため注意が必要です。

感情労働をしている従業員へのケア方法

感情労働はストレスが溜まりやすく、人によっては病気になったり退職したりするリスクもあります。そのため、企業は感情労働を行っている従業員に対して、対策をする必要性があるのです。本項では、感情労働をしている従業員にどのようなケア方法をすればよいのかについて解説していきます。

ストレスチェックの実施

ストレスチェックとは、従業員のストレスがどのような状態にあるのかを検査する簡単な方法です。具体的には、従業員がストレスに関する質問票を記載して、集計・分析します。

ストレスチェックをすることにより、従業員自らがストレスの状況を把握できるだけでなく、集団分析することによって職場課題も特定できます。

クレーム対応後のケア対策を整備

感情労働は顧客からのクレーム対応が多く、他の仕事に比べて神経をすり減らすことが考えられます。クレームなどの問題があった場合であっても、スムーズにケアができる対策を整備することが大切です。

そのためには、定期的な面談を行うことや、仕事での悩みやストレスについて相談できる職場環境の構築が重要です。

感情労働は精神的な負担が大きい仕事のため企業対策の徹底を

感情労働とは、自分の感情をコントロールしながら顧客などの相手の感情を満足させることです。そのため、他の仕事よりもストレスが溜まりやすく、神経をすり減らすことも多くあります。

このように、感情労働には大きな精神的負担がかかるため、企業は感情労働を行っている従業員に対する対策の徹底が必要です。


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