- 更新日 : 2024年8月21日
36協定の新様式とは?変更点や記入例、届け出の注意点(2021年4月から)
36協定届の新様式とは、労働基準法の改正などにより変更された、時間外労働や休日労働を行う場合に労使間で締結し、労働基準監督署に届け出る書面の様式のことです。厚生労働省などのサイトからダウンロードして、利用することが可能です。本記事では、36協定届が新様式に変更された背景や旧様式からの変更点、記入例などをご紹介します。
目次
36協定とは?
36(サブロク)協定とは、使用者が労働者に対して、法律で定められた時間や日数を超えて労働させる際に締結する、労使協定のことです。法定労働時間は「原則1日8時間・週40時間」であり、法定休日は少なくとも1週間に1日の休日を与えなければならないとされています。
36協定という呼び名は、労働基準法第36条で定められていることに由来しており、正式名称は、「時間外・休日労働に関する協定」であることを押さえておきましょう。
36協定は、労使で締結した後、所轄の労働基準監督署へ届け出なければ効力が発生しません。届け出をしないまま法定労働時間や法定休日を超えて労働させると、労働基準法違反に該当します。
36協定の対象者
36協定の対象者は「労働基準法上の労働者」であり、契約社員やアルバイトなどの非正規雇用の従業員も含みます。ただし、労働基準法上の管理監督者は、36協定の対象にはならないため、休日出勤や労働時間の制限が適用されません。
36協定届が新様式となった理由
36協定の新様式となった主な背景は、以下の2つです。
- 時間外労働の上限規制
- 労働基準法施行規則の改正
これまでも、月の時間外労働を45時間までとする規定はありましたが、特別条項を設けることで、事実上は上限の撤廃と等しい状態になっていました。また、上限を大幅に超えて恒常的に時間外労働をさせるといった企業に対しても、行政指導という軽い処分で済んでいたのです。
しかし、法改正によって、時間外労働の上限が明確に示されるようになり、違反が発覚した企業に対しては重い罰則が科せられるようになりました。このような変化に伴い、36協定届も新様式になったという経緯があります。
また、労働基準法施行規則の改正によって、電子化を促進するために届け出の押印・署名が廃止されたことも背景にあります。
参考:労働基準法施行規則等の一部を改正する省令案について(概要)|厚生労働省
36協定届が新様式に変更(2021年4月1日から)
新様式の36協定届における、旧様式からの変更点は以下のとおりです。
- 36協定届の書式が一般条項と特別条項に分かれた
- 署名・押印などが不要に
- 協定当事者の内容確認用チェック欄が追加された
- 電子申請に限り本社一括での届け出が可能に
それぞれの内容を解説します。
36協定届の書式が一般条項と特別条項に分かれた
新様式の36協定届では、一般条項と特別条項付きとで、36協定届の書式が分かれました。様式第9号様式は一般条項、様式第9号の2は特別条項付きの取り決めに対して使用します。
なお、一般条項は36協定そのものであり、時間外労働や休日出勤が上限時間以内の場合の取り決めです。一方で特別条項は、臨時的な特別の事情があり、一般条項の上限を超えた時間外労働を可能とする取り決めを指します。
旧様式では、特別条項の有無にかかわらず第9号様式が使用されていました。しかし、働き方改革に伴い時間外労働の上限規制が明確に示され、特別条項に記載する内容が増えたため、書式が変更されたと考えられます。
署名・押印などが不要に
近年の行政手続きの見直しの影響を受け、署名・押印などが不要になったことも、新様式の36協定届における変更点の1つです。ただし、36協定届が「協定書」を兼ねる場合には、押印や署名が必要となるため注意が必要です。詳細は後述します。
協定当事者の内容確認用チェック欄が追加された
新様式の36協定届には、締結の適正化に向けて、協定当事者が以下の内容を確認できるようにチェックボックスが追加されました。
- 労働時間が月100時間未満(複数月で80時間以内)であること
- 労働者過半数の代表者であること
- 協定当事者は管理監督者でなく投票などにより選出され、かつ使用者の意向に基づいて選出された者でないこと
電子申請に限り本社一括での届け出が可能に
新様式の36協定届では電子申請に限り、事業所単位での届け出をする必要がなくなり、一括届出が可能になっていたことも変更ポイントとして挙げられます。
ただし、労使間における36協定の締結は今まで通り、事業所単位で行う必要があります。混同しないように気をつけましょう。
参考:労働基準法・最低賃金法などに定められた届出や申請は電子申請を利用しましょう!|厚生労働省
36協定届の新様式書類
2024年4月1日以降、36協定では11種類の書類が用いられています。このうち、「様式第9号」「様式第9号の2」「様式第9号の3」「様式第9号の6」「様式第9号の7」については、2024年3月31日以前の書式から変更はありません。
2024年4月からは、これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されてきた建設業や自動車運転の業務、医師について、猶予期間が終了し上限規制が適用されたことに伴い書式が変更されています。それぞれの様式の概要について解説します。
様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードが可能です。
様式第9号
労働基準法で定められている、時間外労働や休日労働の範囲内で労働者を勤務させる場合に使用します。必要な内容が記載されていれば、ほかの形式で届け出ることも可能です。
様式第9号の2
使用者が労働者に対し、労働基準法で定められている時間を超える労働や休日労働を行ってもらう際に使用する書類です。この様式で届け出る場合、以下2枚の書類を使います。
- 限度時間内の時間外労働についての届出書
- 限度時間を超える時間外労働についての届出書
限度時間内の時間外労働については、様式第9号と同じ内容を記載しましょう。一方、限度時間を超える時間外労働については、該当する労働者数、限度時間を超えた場合の割増賃金率などを記載しなければなりません。
様式第9号の3
新技術や新商品の研究開発業務など、特別条項が適用されない業務に携わる労働者が、時間外労働や休日労働を行う際に使用する書類です。以下のような項目を記載しましょう。
- 業務の種類
- 時間外労働を行う具体的な事由
- あらかじめ定められている労働時間
- 延長する時間
- 健康・福祉を確保するための措置
そのほかの様式
建設業(災害時における復旧及び復興の事業が見込まれる場合)や自動車運転の業務、医師の時間外労働・休日労働に関する36協定届は、以下の様式を使用します。
様式名 | 業種など | 条項 | 補足 |
---|---|---|---|
様式第9号の3の4 | 建設業 | 一般条項 | 災害時における復旧及び復興の事業が見込まれる場合 |
様式第9号の3の5 | 建設業 | 特別条項付き | |
様式第9号の3の6 | 自動車運転の業務を含む | 一般条項 | ― |
様式第9号の3の7 | 自動車運転の業務を含む | 特別条項付き | ― |
様式第9号の4 | 医業に従事する医師など | 一般条項 | ― |
様式第9号の5 | 医業に従事する医師など | 特別条項付き | ― |
また、労使委員会や労働時間等設定改善委員会への決議届は、以下の様式を使用してください。
様式名 | 概要 |
---|---|
様式第9号の6 | 時間外労働・休日労働に関する労使委員会の決議届 |
様式第9号の7 | 時間外労働・休日労働に関する労働時間等設定改善委員会の決議届 |
参考:時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)|厚生労働省 東京労働局
新様式の36協定届の記入例
新様式の36協定届の記入例を、一般条項の「様式第9号」と特別条項付きの「様式第9号の2」についてご紹介します。
一般条項|様式第9号
使用者が時間外労働を命令する際の理由は、具体的に記入しましょう。「使用者の判断による」など、抽象的な表現は認められず、たとえば「月末の決算事務に対応するため」というように記入します。
また、「時間外労働と休日労働を合計して月100時間未満、2~6ヶ月平均で月80時間を超えないこと」をはじめ、合計で3箇所あるチェックボックスを確認し、当てはまっている場合はチェックしましょう。
特別条項付き|様式第9号の2
「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」などの項目は、具体的に記入しましょう。「業務の都合上必要であったため」といった抽象的な表現は、恒常的な長時間労働を招きかねないため、認められていません。
表面と裏面に計4箇所あるチェックボックスの内容を確認し、チェックしましょう。チェックボックスのチェックがない場合は、有効とならないため注意が必要です。
新様式の36協定届を提出する際の注意点
新様式の36協定届を提出する際は、以下の3つの点に注意しましょう。
- 適切なタイミングで届け出る
- 協定書を兼ねる場合は署名・押印が必要
- 記載漏れを防ぐ
それぞれの内容について解説します。
適切なタイミングで届け出る
36協定届は、適切なタイミングで届け出るようにしましょう。36協定は、たとえ労使で締結してあったとしても、所轄の労働基準監督署に届出をしていないと、効力が発生しません。その状態で法定労働時間を超えて労働をさせてしまうと、労働基準法違反になってしまいます。
協定書を兼ねる場合は署名・押印が必要
36協定届と協定書を別々に作成する場合は、36協定届への署名・押印は不要です。しかし、36協定届が協定書を兼ねる場合は、これまでどおり署名・押印が必要なことを押さえておきましょう。
なお36協定届は、労使間で締結した36協定の内容を労働基準監督署に届け出る書面であり、協定書は、使用者と労働者が36協定を締結する書面を指します。
記載漏れを防ぐ
36協定届を届け出る前に、記載漏れがないかどうか確認しましょう。記載漏れがあると届け出たと認められず、効力が発生しない可能性があります。チェックボックスのチェックの付け忘れも記載漏れに含まれるため、提出前に細かく確認することが大切です。
新様式のポイントを押さえて、36協定届を提出しよう
36協定届は、法改正によって時間外労働の上限が明確に示されるようになったことなどを背景に、新様式に変更されました。業種や目的に応じて使用する様式が異なるため、適切なものを使用する必要があります。テンプレートは厚生労働省のサイトにあるため、ダウンロードして利用しましょう。
書式が一般条項と特別条項に分かれたり、署名・押印などが不要になったり、内容確認用のチェックボックスが追加されたりしたことが、旧様式からの変更ポイントです。旧様式からの変更ポイントを押さえて、36協定届を作成・提出しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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