- 更新日 : 2024年7月26日
ソフトスキルとは?高い人や鍛え方、社員の評価方法を解説
ソフトスキルとは、発想力や適応力といった、個人の特性にかかわる能力です。資格などのハードスキルと異なり、研修や本によって獲得できるものではなく、経験を通して継続的に養っていくスキルでもあります。社会人基礎力やトランスファラブルスキルと言い換えることも可能です。当記事では、ソフトスキルについて詳しく解説します。
目次
ソフトスキルとは?
ソフトスキルとは、発想力や適応力、誠実さ、信頼性、チームワーク、リーダーシップ、コミュニケーション能力といった、個人の特性にかかわる能力です。語学力やプログラミング能力、資格といったハードスキルとは異なり、研修や本によって獲得できるスキルではなく、人生や仕事における経験を通して継続的に養わなければならないスキルでもあります。ビジネスシーンでは、業務遂行の基礎となる能力や個人特性を指し、多くのビジネスパーソンに求められる基礎的なスキルです。
ソフトスキルの言い換え
ビジネスシーンでも欠かせないソフトスキルですが、「個人スキル」「社会人基礎力」「トランスファラブルスキル」などとも言い換えられます。ちなみに、「トランスファラブル」とは英語で「Transferable」と書き、日本語では「移すことのできる」という意味の形容詞です。個人特性を意味するソフトスキルは、たとえ別の職場に異動したり転職したりしても転用・応用ができるため、「移すことのできるスキル」という意味で「トランスファラブルスキル」と呼ばれています。
ソフトスキルが高い人とは
ソフトスキルは、決断力や判断力、論理的思考能力、問題発見能力、課題解決能力、チームワーク、リーダーシップ、コミュニケーション能力などの個人特性です。ソフトスキルの高い人は、以下のような特徴があります。
- 決断力がある
- 適切に判断できる
- 論理的に物事を捉えられる
- 問題を発見して解決できる
- メンバーと協力して仕事を進められる
業務遂行に必要な基礎的な能力が高いため、職場では仕事のできるハイパフォーマーと認知されているケースが多いのも特徴です。
ソフトスキルを身につけるメリット
ソフトスキルを身に付けるメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 業務をスムーズに遂行できる
- 対人関係を円滑に進められる
- 転職の際に有利になる
業務遂行に必要な基礎的な能力でもあるため、ソフトスキルを身につけることで業務をスムースに遂行できるのがメリットです。また、人生や仕事を通して培ったチームワークやコミュニケーション能力によって、職場における対人関係を円滑に進められるというメリットもあります。さらに、転用や応用が利くソフトスキルを身につければ、転職の際に有利になるのも大きなメリットです。ただし、ソフトスキルだけでなく、ハードスキルもバランスよく身につける必要があります。なぜなら、資格が語学力といったハードスキルは、就職や転職の際の要件として求められるケースが多いからです。
ソフトスキルとハードスキルとの違い
前章でもお伝えしたとおり、求人ではソフトスキルとハードスキルの両方が要件として記載されているケースがほとんどです。ソフトスキルは人生や仕事における経験を通して培った個人の特性、ハードスキルは仕事に求められる専門性の高いスキルを指します。業務を円滑に遂行するには、この2つのスキルをバランスよく習得することが重要です。
ソフトスキルは数値で評価しにくい
資格としても取得できるハードスキルとは対照的に、ソフトスキルは数値で評価しにくい能力です。例えば、社員を評価する場面では、定性的なソフトスキルは定量的に評価しにくく、現状の把握や育成方針の設定が難しいという問題があります。一方、ハードスキルは適性検査の実施や特定資格の有無によって、客観的に能力を評価することが可能です。なお、社員のソフトスキルを評価するには、スキルマップの活用やフィードバックの実施といった方法があります。
ソフトスキルは経験を通じて身につく
研修や本による学習で獲得できるハードスキルとは異なり、ソフトスキルは人生や仕事における経験を通じて身につく能力です。座学や独学だけで身につけるのは難しく、実際に業務を経験しないとスキルアップは期待できないでしょう。例えば、業務で必要なリーダーシップやコミュニケーション能力に関して、研修や座学でどんなに手法を学んだとしても、実際の業務で活かせるとは限りません。一方、ハードスキルは研修や座学で専門的な知識を習得し、実際の業務で活用することで、効率よくスキルアップを目指すことも可能です。
ソフトスキルは様々な場面で活用できる
個人の特性でもあるソフトスキルは、専門性の高いハードスキルより汎用性が高いという特徴があります。なぜなら、別の職場に異動したり転職したりしても、一度身につけたソフトスキルは転用・応用が利くからです。一方、ハードスキルは専門性が高く、特定の職場でしか通用しなかったり、時代の変化によって知識が古くなったりする恐れがあります。就職や転職をする際に、特定の資格を求められる場合もありますが、別の業界ではまったく役に立たないケースも珍しくありません。
ソフトスキルとハードスキルの例・一覧
繰り返しになりますが、ソフトスキルは人生や仕事における経験を通して培った個人の特性、ハードスキルは仕事に求められる専門性の高いスキルです。一覧形式で例を挙げると、下記のようなスキルがあります。
ソフトスキル | ハードスキル |
---|---|
など |
など |
業務や対人関係を円滑に進めるには、ソフトスキルとハードスキルをバランスよく習得することが大切です。
ソフトスキルが求められる背景
ソフトスキルが求められる背景には、以下のような理由が潜んでいます。
- AIの急速な普及
- 働き方改革の推進
- エンゲージメントの低下
近年AIが急激に進化・普及しており、従来人間が担ってきた業務の大半はAIに置き換わると言われています。そのような中、AIによる代替が難しい協調性や創造性の大切さが改めて見直された結果、ソフトスキルが求められるようになったのです。一方、「労働の質の向上」を標榜する働き方改革の推進も、大きく影響しています。社員のソフトスキルが高まると、業務全体の生産性が向上するからです。エンゲージメントは、ビジネスシーンでは会社や仕事に対する愛着を意味します。愛社精神ややりがいとも言えるエンゲージメントが向上すると、社員のモチベーションが高まり、生産性も向上します。企業価値をも向上させるエンゲージメントを高めるには、社員のソフトスキル強化が必要です。
自分のソフトスキルを知るには?
資格や点数で測れるハードスキルとは異なり、個人特性でもあるソフトスキルは定量的な評価が困難です。ここでは、自分のソフトスキルを客観的に知る方法を紹介します。
定期的に自身を振り返る
自分自身のソフトスキルを知るには、定期的に自身を振り返ってみることです。自身を振り返る際は、得意なことや苦手なことをリストアップし、それらに紐づくソフトスキルを自覚することがスタートです。例えば、対人関係がうまく行っていない場合はコミュニケーション能力が、チームとしての成果が目標に達していない場合はチームワークやリーダーシップが不足しているかもしれません。自身の振り返りは定期的に行い、その時々の状況を逐一確認していくことが大切です。
周囲からフィードバックを求める
自身を振り返って足りないソフトスキルを把握した後、周囲からフィードバックを求めてみましょう。一緒に働いている職場の同僚や上司からのフィードバックは、日頃自分がどう見られているのかを知る絶好のチャンスです。より客観的な評価を知りたい場合は、第三者による人材アセスメントを受ける方法もあります。また、転職を視野に入れている場合は、転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。日頃の会話や定期的な面談などを利用し、積極的にフィードバックの機会を作りましょう。
スキル評価ツールの利用
自己分析やフィードバック以外に、スキル評価ツールを利用する方法もあります。スキル評価ツールとは、自身のスキルを客観的に評価できるツールで、ソフトスキルに関しては「MBTI診断」や「DISC診断」などが有名です。MBTI診断では、個人の性格を16タイプに分類し、パーソナリティを診断します。DISC診断は、個人のパーソナリティスタイルを「Dominance(主導)」「Influence(感化)」「Steadiness(安定)」「Conscientiousness(慎重)」の4つに分類し、個人特性や行動特性を診断するツールです。簡易的に診断を受けられるWebサイトもあるため、一度利用してみるとよいでしょう。
キャリアカウンセラーやコーチとの相談
より客観的な評価を知りたい場合は、キャリアカウンセラーやビジネスコーチに相談する方法もあります。キャリアカウンセラーとは、求職者や在職者を対象に、職業選択や能力開発に関する相談や助言を行う専門職です。無料で相談できる機関も多数あり、有資格者や経験豊富なカウンセラーが対応してくれるため、安心して相談できます。ビジネスコーチは、ビジネスシーンでより高い成果の実現や、職場の問題解決を目的としたビジネスコーチングを行う人材です。ビジネスコーチングを導入するには、人事労務担当や管理監督者といった社内の人材がスキルを習得するか、外部のコーチに依頼する方法があります。人材開発の一環として、キャリアカウンセリングやビジネスコーチングを導入するのも一つの方法です。
社員のソフトスキルを鍛える方法
業務や対人関係を円滑に進め、仕事の成果を最大化するためには、ソフトスキルの強化が欠かせません。ここからは、社員のソフトスキルを鍛える方法を紹介します。
本やオンラインなどで学習する
経験によって培われるソフトスキルは、座学だけで習得するのは難しいスキルです。しかし、ソフトスキルのアウトラインを把握するには、本やオンラインで学習する方法もあります。例えば、コミュニケーションのパターンやリーダーシップの手法などは、本やオンラインで概要を把握することは可能です。ただし、インプットとアウトプットのバランスを意識し、本やオンラインで学んだ知識は、業務で積極的に活用するよう心掛けましょう。
外部研修を活用する
本やオンラインによる学習とあわせて、外部研修を活用するのも一つの方法です。ソフトスキルに関する外部研修には、コミュニケーション研修やマネジメント研修などがあります。個人の特性でもあるソフトスキルは、座学だけで簡単に身につくものではありませんが、多彩な外部研修からより実践的な研修を選ぶのがおすすめです。外部研修のなかには、ロールプレイング学習を取り入れて、実践的に学べる研修も少なくありません。ただし、研修に参加する社員には、事前にソフトスキルや研修参加の重要性を説明しておくことも重要です。
360度評価を実施する
本・オンライン学習や外部研修の他に、360度評価を実施する方法もあります。360度評価とは、上司や同僚、部下、他部署のメンバーといった業務上関係のある社員が、対象の社員を多角的に評価する手法です。従来の人事評価は上司や人事労務担当による評価が一般的でしたが、360度評価はより公平公正で多角的な評価ができると注目を集めています。評価結果によって自分がどのように見られているのかが客観的にわかるため、評価対象の社員は自分自身のソフトスキルを自覚しやすくなるでしょう。
社員のソフトスキルの評価方法
数値化が難しいソフトスキルは、ハードスキルと異なり定量的な評価ができません。しかし、社員のソフトスキルを把握して能力を最大化するには、客観的な評価が重要です。ここでは、社員のソフトスキルを評価する方法を紹介します。
スキルマップを活用する
社員のソフトスキルを客観的に評価するには、スキルマップを活用するのも効果的な方法です。スキルマップとは、業務に必要なスキルを洗い出し、社員の持つスキルを一覧にした表です。スキルを一元管理できるため、適切に把握できるというメリットがあります。スキルマップには、業務に必要な専門知識や、Word・Excelといったソフトウェアの操作方法といったハードスキル以外に、基本的なビジネスマナーやコミュニケーション能力、リーダーシップなども含まれるため、ソフトスキルの評価も可能です。
人材育成スキルマップ-無料ダウンロード
スキルマップを作成するには、特別な知識や技術は必要ありません。しかし、実用性の高いスキルマップを作成し、形骸化を防ぐためには、部署・部門ごとに業務内容を踏まえて作成する必要があります。通常は、業務内容をもとに、職種や階層ごとにスキルを抽出するのが一般的です。なお、スキルマップは評価基準を明確にし、業務内容や経営方針の変化にあわせて定期的に更新する必要があります。そこで、マネーフォワードではあらゆる職種で使いやすく、更新もしやすいスキルマップのテンプレートを作成しました。汎用性の高い、Word形式とExcel形式で用意しております。職種にあわせて、自由にカスタマイズして活用してください。
人材育成スキルマップ 営業部門(ワード) テンプレート | 給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」
人材育成スキルマップ 営業部門(エクセル) テンプレート | 給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」
同僚や上司からのフィードバックを求める
定量的な評価が難しいソフトスキルは、同僚や上司からフィードバックを求めるのも大切です。第三者の立場から評価することで、対象の社員が日頃どのような個人・行動特性を持っているのかが客観的にわかります。また、必要に応じてグループディスカッションやケーススタディを取り入れるのも効果的です。実際の業務で、どれだけコミュニケーション能力やチームワークを発揮できるのかを把握するのに役立ちます。面談や対話の機会は、積極的に設けるようにしましょう。
社員のソフトスキルを高めよう
今回はソフトスキルについて解説しました。ソフトスキルとは、発想力や適応力、誠実さ、信頼性、チームワーク、リーダーシップ、コミュニケーション能力といった、個人の特性にかかわる能力です。資格や語学力といったハードスキルとは異なり、座学だけで獲得するのは難しく、経験を通して養われるスキルでもあります。AIの普及や働き方改革の推進に伴い、すべての企業にとって社員のソフトスキル強化は喫緊の課題です。フィードバックや360度評価を取り入れ、社員のソフトスキルを高めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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