• 更新日 : 2025年6月19日

中途採用の入社手続きの流れは?入社前と後にわけて必要書類や注意点を解説

中途採用が確定した場合、さまざまな入社手続きを行います。新卒採用者と異なり、中途採用は不定期で行われるため、いつでも対応できるよう準備が必要です。

本記事では、中途採用の入社手続きの流れについて解説します。税金や社会保険に関する手続きのほか、入社前に行っておく手続きや社内手続き、中途採用ならではの入社手続きもあわせて紹介します。

目次

中途採用者の入社前に行っておく入社手続き

中途採用者の入社前に行っておく主な入社手続きは以下の3つです。

  • 採用通知書を交付する
  • 入社承諾書を受け取る
  • 雇用契約締結のための書類を作成・交付する
  • メールアドレスの発行や備品の準備をする
  • 内定者へ初日の流れや提出書類に関して案内する
  • 通勤手当の額を決める

各手続きについて解説します。

採用通知書を交付する

採用通知書とは、会社の求人に応募した人に対して、正式に採用する旨を伝える書類です。一般的には以下を記載します。

  • 日付
  • 中途採用者の氏名
  • 会社名
  • 代表取締役の氏名
  • 求人への応募のお礼
  • 採用を決定した旨のお知らせ
  • 入社日
  • 人事担当者の氏名と連絡先

採用通知書の作成義務は特にありませんが、交付することで中途採用者へ丁寧な印象を与えられるため、ぜひ準備しておきましょう。なお、採用通知書は書面・電子ファイルのどちらで作成しても問題ありません。

入社承諾書を受け取る

入社承諾書は、内定者が入社の意思を正式に表明する書類です。入社承諾書を受け取った後に、本格的に入社手続きの準備を進めます。入社承諾書も作成義務はありませんが、内定者の入社の意思を書面に残せるため、双方の認識の齟齬によるトラブルを防げます。

入社承諾書を作成した場合は、採用通知書と一緒に内定者に送付し、署名・捺印してもらったうえで返送するようにお願いしましょう。郵送でやり取りする場合は、入社承諾書の返送に使う封筒も忘れずに同封してください。

雇用契約締結のための書類を作成・交付する

中途採用確定後に最初に行うのは、雇用契約の締結です。会社側が事前に「労働条件通知書」と「雇用契約書」を作成して準備します。

  • 労働条件通知書:賃金や労働時間などの労働条件を採用者に通知するための書面
  • 雇用契約書:雇用主と採用者が雇用契約の内容に合意したことを証明する書面

労働条件通知書を基に、会社側が内定者に労働条件について周知し、両者が合意すれば雇用契約を締結します。両者の合意があれば雇用契約が成立するため法律上、雇用契約書は不要ですが、合意の証明として雇用契約書を取り交わすのが一般的です。

なお、労働条件通知書の内定者への交付は必須です。労働基準法では、賃金や労働時間など労働条件に関する所定の事項について書面での交付を義務づけています。

メールアドレスの発行や備品の準備をする

入社後にスムーズに仕事ができるように、入社前に中途採用者のメールアドレスやID、パスワードを発行しておきましょう。社内での情報共有や業務に用いるさまざまなシステムをすぐに使用できます。

また、以下の備品の準備も入社前に準備しましょう。

  • 社員証と入館カード
  • 名刺
  • 机と椅子
  • パソコンと周辺機器
  • 固定電話や携帯電話
  • 筆記具や事務備品 など

内定者へ初日の流れや提出書類に関して案内する

雇用契約締結後に「入社初日の流れ」と「入社時の提出書類」を案内しましょう。

初日のスケジュールや持参物(筆記用具や研修で使用する資料など)、自己紹介の有無などを事前に伝え、心の準備を含めて内定者に入社準備をしてもらいます。出社時間や集合場所、入館方法なども忘れずに伝えましょう。

入社時に提出してもらう書類も同時に案内します。あらかじめ提出書類の一覧を書面で交付して、提出書類の漏れを防ぎましょう。

通勤手当の額を決める

従業員に対して通勤手当を支給する場合は、内定者の通勤経路や通勤手段を調べたうえで、社内規定に基づいて通勤手当の金額を決定する必要があります。

通勤手当は入社日から支給対象になるため、内定者が入社する前に、書面や電子メールなどで通勤経路や通勤手段を教えてもらいましょう。教えてもらう際は、最も経済的かつ合理的な経路・手段を申請してもらう旨もあわせて伝えます。

通勤経路や通勤手段がわかったら、通勤手当の金額を決めて、経理担当者に速やかに連絡しましょう。

入社までに内定者に準備してもらう必要書類

入社までに内定者に準備してもらう主な必要書類は以下の通りです。

(入社手続きの必要書類)

必要書類使用目的
マイナンバーカードなどマイナンバーの確認(税金や社会保険の手続き)
前職の源泉徴収票前職の所得や源泉徴収税額の確認(年末調整手続き)
扶養控除等申告書(※)扶養親族等の確認(源泉徴収と年末調整手続き)
給与所得者異動届出書または

特別徴収への切替依頼書

住民税の源泉徴収
年金手帳基礎年金番号の確認(厚生年金加入手続き)
健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届(※)扶養親族の健康保険加入と被扶養配偶者の第3号加入の手続き
雇用保険被保険者証雇用保険被保険者番号の確認(雇用保険加入手続き)
給与振込先の通帳と届書(※)給与振込先の確認と登録

※印の書類は、様式を会社側が準備し、雇用契約締結時に内定者に交付して記入・提出してもらいます。給与所得者異動届出書または特別徴収への切替依頼書は、後述する「住民税の手続き」で解説します。

また、企業によっては会社ルールなどの順守を誓う誓約書や身元保証書、資格証明書類の準備も必要です。

中途採用者の入社後に行う社会保険に関する手続き

中途採用者の入社後に、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入手続きを行います。加入手続きは、日本年金機構(健康保険組合の場合、健康保険の資格取得届は健康保険組合)に「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を提出することで完了します。提出期限は入社日から5日以内です。

また、被扶養者(健康保険)や被扶養配偶者(厚生年金保険)がいる場合は、中途採用者に準備してもらった「健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者届」も同時に提出します。

短時間労働者に対する社会保険の適用拡大により、加入対象者が変化しています。日本年金機構のホームページで現状を確認するとともに、2025年の年金法改正にも注意しましょう。また、電子申請による加入手続きもできるため、利用を検討してみましょう。

参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構

参考:電子申請・電子媒体申請(事業主・社会保険事務担当の方)|日本年金機構

中途採用者の入社後に行う雇用保険に関する手続き

雇用保険の加入手続きは、入社日の翌月10日までです。従業員が提出した雇用保険被保険者証により「雇用保険被保険者番号」を確認し、同じ番号を使ってハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。雇用保険の加入要件は以下の2つです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある

雇用保険の加入手続きも電子申請(電子政府の総合窓口「e-Gov」経由)可能です。

参考:申請等をご利用の方へ|ハローワークインターネットサービス

中途採用者の入社後に行う税金に関する手続き

中途採用者の入社後に行う税金に関する手続きを、住民税と所得税にわけて解説します。

住民税の手続き

住民税は前年度の所得に応じて源泉徴収するもので、従業員が居住する市区町村から勤務先に送付される「特別徴収税額決定通知書」に基づいて徴収を行い、市区町村に納付します。

中途採用の場合、前勤務先から送付される「給与所得者異動届出書」に会社側が必要事項を記載し、従業員が居住する市区町村役場に提出します。その後、市区町村から会社に特別徴収税額決定通知書が送付されるため、通知書に従って源泉徴収と納税を行いましょう。

なお、前職時に住民税を自分で納付していた場合、中途採用者に「特別徴収への切替依頼書」を市区町村役場に提出するように案内します。

参考:特別徴収にかかる手続きについて|東京都主税局

所得税の手続き

所得税については、給与から源泉徴収して納税するとともに前職の所得を含めて年末調整しなければなりません。

源泉徴収する所得税額は、中途採用者から提出してもらった「扶養控除等申告書」を基に算出します。算出の際は、国税庁のホームページで確認できる源泉徴収税額表を参考にしましょう。年末調整は「前職の源泉徴収票」より前職の所得や源泉徴収税額を確認したうえで行います。

参考:令和6年分 源泉徴収税額表|国税庁

中途採用者の入社後に行う社内手続き

中途採用者の入社後に行う主な社内手続きは以下の3つです。

  • 必要書類の回収
  • 法定三帳簿の作成
  • 就業規則や社内ルールの格納場所の共有

各手続きについて解説します。

必要書類の回収

原則、入社日には前述した「入社までに内定者に準備してもらう必要書類」を回収します。「未提出の書類がないか」「記入不備がないか」を確認して、必要書類を整備します。

あらかじめ回収物のチェックリストを準備して、回収漏れがないように注意しましょう。未提出の書類がある場合、提出期限を明確にして提出を促すことが大切です。

法定三帳簿の作成

法定三帳簿とは、労働基準法などで作成・保存が義務づけられている「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」です。所定の内容を記載して、3年間保存することが義務づけられています。記載内容は以下の通りです。

  • 労働者名簿:従業員の氏名や生年月日、性別、雇用した日など
  • 賃金台帳:労働日数や労働時間、時間外労働時間、基本給、賃金の控除額など
  • 出勤簿:出勤簿や始業・終業時刻、労働者が記録した労働時間報告書など

法律上、作成期限は設けられていませんが、入社後速やかに作成しましょう。

就業規則や社内ルールの格納場所の共有

入社日以降できるだけ早いタイミングで、就業規則や社内ルール、業務マニュアルなどの格納場所を中途採用者に伝えましょう。それぞれの詳細をすべて口頭で伝えるのは難しいですが、格納場所を伝えることで、知りたいことや確認したいことを中途採用者が自分で調べられるようになります。

また、労働基準法では、従業員への就業規則の周知を会社側に義務づけています。周知する方法は以下のいずれかです。

  • 常時各職場の見やすい場所へ掲示する、備え付ける
  • 就業規則を記載した書面を交付する
  • 社内システムにデータとして記録し、従業員がいつでも確認できる機器を設置する

就業規則の周知を怠ると、企業は労働基準法違反となります。

給与計算や人事システムへの登録

従業員の給与計算や勤怠管理、人事管理などの業務についてシステム導入している企業は、中途採用者をシステムに登録しなければなりません。特に勤怠管理システムに関しては、入社日から利用できるように、入社前に登録を済ませておきましょう。

給与計算システムや人事システムについても、できるだけ早めに登録しておきましょう。

追加の手続きが必要になるケース

中途採用のケースによっては、前述した内容のほかに追加の手続きが必要な可能性があります。ここからは、追加の手続きが必要になるケースを解説します。

従業員を初めて雇用する場合

従業員を初めて雇用する事業所では、労災保険への加入手続きが必要です。労災保険は、労働者が業務中や通勤中にけがを負って仕事ができなくなった際に、労働者の生活を安定させるために給付金を支給する制度です。

アルバイト・パートなどの雇用形態に関わらず、従業員を雇用する事業は、原則として労災保険の適用事業になります。

労災保険に加入するには、事業所を管轄する労働基準監督署へ「保険関係成立届」「概算保険料申告書」を提出します。

保険関係成立届は保険関係が成立した日の翌日から10日以内、概算保険料申告書は保険関係が成立した日の翌日から50日以内に提出が必要であるため、忘れないように対応しましょう。

障がい者が入社する場合

障害者雇用促進法においては、障がい者が入社する場合、社内手続きとして合理的配慮の提供を義務づけています。合理的配慮の提供の例としては下記が挙げられます。

  • 車いすを利用する人が使いやすいよう、机の高さを調節する
  • 知的障がい者の人でもわかりやすいように、マニュアルの文章や図を工夫する

また、障害者雇用促進法では、障がい者から寄せられた苦情の自主的な処理を努力義務として定めています。そのため、障がい者からの意見を受け付ける体制をあらかじめ整えておきましょう。

外国人が入社する場合

外国人が入社する場合は、ハローワークに外国人を雇用した旨の届出が必要です。提出書類は、外国人が雇用保険の被保険者になるかどうかで異なり、それぞれの詳細は以下の通りです。

  • 外国人が雇用保険の被保険者となる場合
    「雇用保険被保険者資格取得届」に、氏名や在留資格などを記載して提出する。提出期限は翌月10日まで。
  • 外国人が雇用保険の被保険者とならない場合
    「外国人雇用状況届出書」に、氏名・在留資格等・在留期間等などを記載して提出する。提出期限は翌月末日まで。

また、外国人を雇用する場合は、雇用管理の改善等が事業主の努力義務として定められています。具体的な内容として、適正な労働条件の確保や適切な人事管理の実践などが定められているため、入社前によく確認しておきましょう。

中途採用ならではの入社手続きの注意点

中途採用者の入社手続きは、大部分が新卒採用者と共通しています。しかし、中途採用ならではの入社手続きもあるため注意しましょう。中途採用ならではの入社手続きに関する、主な注意点は以下の3つです。

  • 中途採用者に雇用保険被保険者証を提出してもらう
  • 中途採用者に前職の源泉徴収票を提出してもらう
  • 給与所得者異動届出書を従業員が居住する市区町村役場に届出する

雇用保険被保険者証は、前職で使用していた雇用保険被保険者番号を使って雇用保険に加入するために使用します。
前職の源泉徴収票は年末調整手続き、給与所得者異動届出書は住民税に関する手続きを行う際に必要です。

マイナンバーに関する入社手続きの注意点

ここからは、入社手続きを行う際のマイナンバーの取り扱いに関する注意点を解説します。

マイナンバーの利用目的を明らかにする

従業員からマイナンバーを取得する際は、個人情報保護法の規定に基づき、利用目的を具体的に明示する必要があります。

入社手続きに使う場合は「社会保険に関する手続きで使用」「雇用保険に関する手続きで使用」などのように説明しましょう。就業規則や個別の通知書など、書面に記すとわかりやすくなります。

当初に明示した目的以外でマイナンバーを使用することは、個人情報保護法に違反するため注意しましょう。

扶養家族のマイナンバーも提出してもらう

従業員に、税法の扶養控除や社会保険の被扶養者に該当する家族がいる場合は、該当する家族のマイナンバーも手続きに必要です。

扶養家族のマイナンバーを収集する際も、従業員本人の場合と同様に利用目的を明示し、扶養家族の同意を得る必要があります。

利用目的を明示した書類を扶養家族にも確認してもらい、同意を得たうえでマイナンバーを取得しましょう。

マイナンバーの情報漏洩が発生しないように注意する

マイナンバーは個人情報の一種であるため、漏洩しないように厳重な管理が必要です。

マイナンバーの情報漏洩が発覚した場合、マイナンバー法の定めるところにより、最大4年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります。

マイナンバーを取り扱う人の限定化や、管理システムの活用を通じて、情報漏洩を防止するように心がけましょう。

中途採用者の入社手続きに関するよくある質問

ここからは、中途採用の入社手続きに関するよくある質問について、それぞれの回答を紹介します。

期日までに手続きができなかった場合はどうなる?

期日が決まっている入社手続きが間に合わなかった場合、手続きの内容によって自社にさまざまな影響があります。社会保険・雇用保険・住民税のそれぞれにおける、手続きが遅れた場合の影響は以下の通りです。

社会保険

健康保険・厚生年金被保険者資格取得届の提出が遅れると、社会保険の手続きをしていなかった期間の健康保険・厚生年金保険料をまとめて支払う必要が生じます。

雇用保険

雇用保険被保険者資格取得届の提出が6ヶ月以上遅れた場合、下記の書類もあわせて提出する必要が生じます。

  • 遅延理由書
  • 労働者名簿および労働条件が確認できる書類
  • 出勤簿および賃金台帳

また、2年以上提出していなかった場合は、2年前までしか雇用保険の加入実績をさかのぼって記録できないため要注意です。

住民税

給与所得者異動届出書を提出していない場合、市区町村は中途採用者が以前勤務していた会社へ住民税の督促を行うため、前の会社とトラブルになる可能性があります。

各種手続きが遅れることで、中途採用者やほかの企業に迷惑をかける可能性があるため、必ず期日に間に合わせましょう。

中途採用者の雇用保険被保険者番号がわからない場合の対処法は?

中途採用者の雇用保険被保険者番号が不明である場合は、雇用保険被保険者資格取得届の備考欄に、前職の会社名を記載して提出することで手続きが可能です。もしくは、雇用保険被保険者資格取得届に、中途採用者の職歴がわかる履歴書を添付する形でも手続きできます。

中途採用者本人に雇用保険被保険者証の再交付を申請してもらい、新たに被保険者番号を取得させるのも一つの方法です。

中途採用者の基礎年金番号がわからない場合の対処法は?

中途採用者が年金手帳や基礎年金番号通知書を紛失しており、基礎年金番号がわからない場合、マイナポータルやねんきんネットにログインしてもらうことで確認できます。ログインできない場合は、基礎年金番号通知書再交付申請書を年金事務所に提出して、新しい基礎年金番号を交付してもらうよう促しましょう。

不定期な中途採用に備えて事前準備をしておきましょう

中途採用者の入社手続きは税金・社会保険に関する手続きや法定三帳簿の作成のほか、中途採用者がスムーズに働くための準備など多岐にわたります。

また、新卒採用者と異なり採用の都度必要になるため、いつでも適切に対応できるよう準備が必要です。入社スケジュールや入社手続き・必要書類のチェックリストなどを事前に準備しておきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事