• 更新日 : 2024年10月25日

インシデントレポート(インシデント報告書)とは?書き方と記載例を解説

医薬品のミスや手術ミスなど、医療現場においてミスが起きてしまう場合もあります。そのようなミスが起きた際には、インシデントレポートの作成が必要です。当記事では、インシデントレポートの書き方や作成時の注意点、テンプレートや記載例を紹介します。インシデントレポート作成時の参考にしてください。

インシデントレポート(インシデント報告書)とは

「インシデント」とは、事故などにつながる状態や、事象を表す言葉です。特に医療現場におけるインシデントの報告のために作成される書類を「インシデントレポート」と言います。

インシデントレポートは、医療現場における医療ミスにつながりかねない行為や、間違った医療行為につながるような事象を把握するために作成される書類です。「インシデント報告書」と呼ばれる場合もありますが、内容に違いはありません。

インシデントレポート(インシデント報告書)の目的

インシデントレポートを作成する目的は、以下のとおりです。

  • 原因の分析
  • 再発防止
  • 改善策の検討

レポートを作成することで、インシデントの原因が特定可能となり、再発防止につながります。また、インシデントの内容を把握することで、改善策の検討にも役立ちます。

インシデントレポートは、ミスをした当事者の責任追及や、反省文のような性質の書類ではありません。あくまでも改善や再発防止のための書類です。

インシデントレポート(インシデント報告書)の書き方

インシデントレポートの様式は、作成する医療現場ごとに異なります。しかし、レポートの目的を果たすためには欠かせない項目もあります。項目ごとに解説するため、作成時の参考としてください。

インシデントの発生日時

インシデントが発生した日時を記載します。できるだけ正確な日時を記載する必要があります。

インシデントの発生場所

インシデントが発生した場所を記載します。病院であれば、どの病棟のどの場所で発生したのかを具体的に記載します。

インシデントの発生状況

インシデントの発生した状況を記載します。誰に対して、どのような行為が行われたのかを結果とともに記載する必要があります。

インシデントの発生原因

インシデントを起こした発生原因を記載します。何が原因で起きたインシデントであるかが、明確にわかるように記載しなければなりません。

インシデントの影響度

インシデントによってどの程度影響を受けたのかを記載します。簡単な措置で済んだのか、重篤な障害を引き起こしたのかなど、受けた影響を該当するレベルに分けて記載しましょう。なお、チェックボックスがあれば、該当するレベルにチェックを入れます。

インシデントの対応状況

インシデントに対して、どのような対応を行ったのかを記載します。薬剤の投与などを行ったのであれば、その結果症状がどのように変化したのかも併せて記載します。

インシデントレポート(インシデント報告書)の無料テンプレート

インシデントレポートは、インシデントの発生原因を特定し、再発を防止するために重要な書類です。しかし、どのように作成すればよいのかわからない方も多いでしょう。そのような方には、テンプレートの作成をおすすめします。

テンプレートには、インシデント報告書が備えるべき項目がすべて備えられています。記載例も載っているため、初めての方でも、迷うことなく作成可能でしょう。下記のリンクから無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

参考:インシデント報告書(ワード)|マネーフォワード クラウド給与

インシデントレポート(インシデント報告書)の記載例

インシデント報告書には、発生状況をはじめ、記載すべき項目が多く存在します。作成が初めてであれば、戸惑うこともあるでしょう。各項目の記載例を紹介するため、作成時の参考にしてください。

  • 発生日時

令和6年9月25日(水)8:00ごろ

  • 発生場所

内科病棟 食堂

  • 発生状況

朝食時、患者である〇〇さんに配膳された食事に、当該患者にアレルギーを引き起こす玉子が含まれていました。

  • 発生原因

食事を提供する際に、看護師が当該患者のアレルギー情報の確認を怠ったことが原因です。玉子を摂取したことで、軽度の呼吸困難や発疹といったアレルギー症状が見られました。

  • 影響度

レベル3aに該当し、一過性の症状が見られたため、簡単な措置や治療が必要となりました。

  • 対応状況

アレルギー症状の出現を確認した看護師は、速やかに担当医に連絡を行い、抗ヒスタミン剤の投与などを行いました。措置後の経過観察を行ったところ、患者の容体は安定し、アレルギー症状は見られなくなりました。今後は、アレルギー情報等の患者情報の確認を怠ることなく、再発防止のための措置を講じます。

インシデントレポート(インシデント報告書)を書くときの注意点

インシデントレポートを作成する際には、客観的な事実を伝えることを意識しなければなりません。6W1Hを意識し、事実関係を整理して記載しましょう。看護師や医師などの病院スタッフだけでなく、患者の行動も含めてわかりやすく簡潔にまとめることが必要です。

インシデントの原因を特定するためには、「なぜなぜ分析」を活用しましょう。「なぜ」を繰り返すことで、発生原因の深い掘り下げが可能となります。たとえば、患者に書類が届いていなかった場合には、なぜ届かなかったのかを考えます。別の患者に渡したために、本来の患者に届かなかったのであれば、なぜ別の患者に渡したのかを、さらに考えることが必要です。このように「なぜ」を繰り返すことで、表面的ではない根本的な原因が特定され、再発防止や改善策の考案につながります。

インシデントレポートの作成時においては、主観的な表現を避けることが必要です。起こしてしまったインシデントに対して、反省を述べたくなるかも知れませんが、そのような記載は、内容をわかりづらくしてしまいます。客観的事実のみを伝えることが重要です。また、推測を避けることも必要となります。周りの状況などから判断し、確実に発生したことだけを伝えましょう。

インシデントレポートで再発防止を図ろう

医療現場におけるインシデントの発生は、患者の命にもかかわってしまいます。インシデントを発生させないような体制作りはもちろんのこと、発生した場合の再発防止も重要です。インシデントレポートは、医療現場におけるインシデントの再発防止に、重要な役割を果たす書類です。当記事の解説を参考に作成し、事故の予防や再発防止に努めてください。


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