• 作成日 : 2022年9月22日

特定疾病とは?介護保険の観点から解説!

介護保険の制度は65歳以上の高齢者を対象としたものですが、16の特定疾病に罹患した場合には40歳以上65歳未満でも公的介護保険サービスを受けられます。また、上記に該当しない場合でも「厚生労働大臣が定める疾病等」の場合、医療保険により訪問看護サービスを受けられます。本記事では、介護保険の特定疾病について説明します。

特定疾病とは?

特定疾病とは、主に65歳以上の患者が多いものの、40歳以上65歳未満の患者も見られる疾患で、罹患率や有病率が加齢と関係していることが医学的に証明されている16の疾患のことです。加えて、要介護状態や要支援状態が3ヶ月~6ヶ月続く割合が高い疾患と定義されています。特定疾病と認定されると、65歳未満であっても、介護認定を受け公的な介護保険サービスを受けることができます。

参考:特定疾病の選定基準の考え方|厚生労働省

介護保険における特定疾病一覧 – 16種類

介護保険における16の特定疾病の一覧を以下に示し、簡単に説明します。

  1. 末期がん
    医師が、進行性で回復の見込みがない状態だと判断したがんに限ります。回復の見込みがない状態とは、おおむね余命6ヶ月程度の状態です。症状緩和のための治療や直接治癒を目的としない治療は、特定疾病とみなされます。
  2. 関節リウマチ
    全身の関節に炎症が表れる、炎症性自己免疫疾患です。原因にはさまざまな説がありますが特定されていません。症状には関節の痛みやこわばり、手足の変形、機能障害などがあり、筋力低下が起こって身体が動かしにくくなります。特定疾病の判断は、自覚症状と臨床検査により行われます。
  3. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
    脳と脊髄の運動神経細胞の以上により、脳からの指令が身体に届かず、筋萎縮・筋力低下が起こります。進行性の疾患で、回復することはありません。重篤になると呼吸の筋肉が衰え、多くは呼吸不全が死因となります。原因はわかっておらず、治療法も確立していない難病です。初期症状は、ボタンがとめにくい、つまづく、食べ物を飲み込みにくい、ろれつがまわらない、などです。
  4. 後縦靱帯骨化症
    脊柱に縦走する後縦靭帯が骨化し、骨髄が流れる脊柱管を圧迫して知覚障害や運動障害が起こります。症状は、首や四肢のしびれ、痛み、重くなると歩行障害、排泄障害など日常生活に影響がでます。原因は特定されていません。
    特定疾病の判断は、症状と画像所見の因果関係があるかどうかで行われます。
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
    加齢や運動不足、栄養不足などにより骨量が減少し、骨がもろくなる疾患です。背中や腰が曲がる、身長が縮むなどの症状のほか、ちょっと転倒しただけでも骨折するなどの症状があります。腰や背中の痛みと変形を伴う脊椎圧迫骨折や、転倒後などに股関節の痛みで起立不能となる大腿骨頚部骨折、転子部骨折が特徴的で、この骨折が原因で歩行不能や寝たきりになることもあります。
  6. 初老期における認知症
    ここでいう初老期とは、40歳以上65歳未満のことをいいます。認知症は加齢による脳細胞の活動低下が原因です。記憶などの認知機能が低下し、重くなると理解力や判断力が低下し、日常生活や社会生活が困難な状態になります。

    代表的なものとして、以下の3つの認知症があります。

    • アルツハイマー型認知症
      初期症状は物忘れです。その後意欲の低下や整理整頓ができなくなり、見当識障害(自分の居所がわからない)も表れます。
    • 脳血管性認知症
      物忘れに加えて、歩行障害や排尿障害を伴います。頭部画像により脳血管障害が認められます。
    • レビー小体認知症
      意識レベルの変化や、幻視体験などが特徴的な認知症です。パーキンソン症状が伴うこともあり、薬物治療の効果が期待できます。
  7. パーキンソン病関連疾患
    脳の神経細胞が減少することにより、筋肉のこわばり(筋固縮)やふるえ(振戦)、動作が緩慢になる(無動)、突進現象(姿勢反射障害)などの症状が表れます。原因はわかっていません。ただ、パーキンソン病関連の症状には薬物治療の効果が高いものも多くあります。

    • パーキンソン病
      上記パーキンソン症状を中心とした疾患です。薬剤による治療効果が高いとされています。
    • 進行性核上性麻痺
      眼球の垂直運動障害により下が見づらい、異常な姿勢(頚部を後方に傾け顎が上がる)など、多彩な症状が特徴的です。
    • 大脳皮質基底核変性症
      筋肉のこわばりや左右どちらかの動きのぎこちなさなどの大脳皮質の症状とパーキンソン症状が同時にみられる場合があるなど、症状や病状の進行に差があります。
  8. 脊髄小脳変性症(SCD)
    後頭部にある小脳が神経細胞の変性により一部損傷することにより発症します。原因の約30%は遺伝によるものとされていますが、それ以外の原因はわかっていません。初期症状は、歩行時のふらつきやろれつがまわらない、手の震えなどです。非常にゆっくりと進行する疾患ですが、進行すると寝たきりになります。
  9. 脊柱管狭窄症
    加齢により背骨や椎間板、靭帯などが変形し、脊柱管が狭くなり神経が圧迫されます。これにより、腰痛や足のしびれ、筋力低下、暴行直腸障害などが起こります。歩いていると症状がでるが休むと治まる、という間欠性跛行が特徴的です。頚椎、胸椎、腰椎のどれか1つ以上で脊柱管狭小による神経の圧迫が確認でき、症状との因果関係が認められる場合のみ、特定疾病とみなされます。
  10. 早老症
    実年齢よりも早く全身の老化がすすむ疾患です。遺伝子の異常によるものですが、そのメカニズムはまだわかっていません。20代から、若年性白内障、白髪、脱毛、骨粗鬆症、鼻が尖り鳥のような顔つき、血管や軟部組織の石灰化などの老化現象が起こります。早老症のなかにはウェルナー症候群という糖尿病や早発性動脈硬化、悪性腫瘍などを起こすものもあります。現在まだ根治の方法は見つかっていません。なお、知能は年齢相応に発達します。
  11. 多系統萎縮症(MSA)
    起立性低血圧や排尿障害、発汗低下などの自律神経症状、筋肉のこわばりやふるえ、動作緩慢、小刻み歩行などのパーキンソン症状、ふらつきやろれつがまわらない、字が書けないなどの小脳症状が組み合わさって表れる疾患です。原因はわかっていません。どの症状が強いかにより以下の3つに分類されます。

    • シャイ・ドレーガー症候群:自律神経症状が強いもの
    • 線条体黒質変性症:パーキンソン症状が強いもの
    • オリーブ橋小脳萎縮症:小脳症状が強いもの
  12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症
    いずれも糖尿病が原因で起こる合併症です。糖尿病性神経障害は足のしびれや痛みなど、糖尿病性腎症は高血圧やむくみなどの腎機能障害、糖尿病性網膜症は網膜の血流障害による視力の低下が症状です。これらの合併症それぞれに詳細な条件があり、そのすべてを満たさなければ特定疾病とはみなされません。
  13. 脳血管疾患
    脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など、脳血管で起こる疾患の総称です。高血圧や生活習慣病の人がなりやすいと言われています。脳血管疾患により、片側の手足や顔の麻痺やしびれ、言語・記憶・行為・注意障害などの高次機能障害が残り、社会生活が困難となります。なお、介護保険の特定疾病とみなされるのは、加齢に関係している疾患だと認められる場合のみです。外傷などが原因の場合には介護保険の特定疾病とはみなされません。
  14. 閉塞性動脈硬化症
    動脈硬化により血流が悪くなり、手の先、足の先まで十分な血液や栄養が届かない状態になると、歩行時に足先が冷たく感じたり、痛みやしびれを感じたりします。進行すると安静時にも痛みがあり、壊死してしまうこともあります。糖尿病や高血圧、喫煙などの生活習慣病の人が発症しやすいと言われています。動脈硬化があっても軽症では特定疾病とはみなされません。主要な動脈などの閉塞が確認され、中等症以上の症状を伴う場合に該当となります。
  15. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
    肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息など、肺疾患の総称です。喫煙習慣のある人に特に多いと言われています。症状には息切れや慢性的な咳・たん、ぜんそくのような症状などがあり、呼吸機能が低下します。介護保険の特定疾病となるのは、気流閉塞が起こっている場合です。
  16. 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
    膝関節の軟骨のすり減りや股関節の形成不全による炎症により、痛みや腫れ、関節の変形により膝の曲げ伸ばしが困難になるなどの症状があります。最初は歩き初めや立ち上がる際だけの痛みでも、進行すると痛みが強くなり、活動機能が低下します。膝関節や股関節の変形があり、著しい苦痛や機能の低下が確認できる場合、介護保険の特定疾病とみなされます。

参考:特定疾病の選定基準の考え方|厚生労働省

特定疾病で介護保険の適用対象となる条件

介護サービスに介護保険が適用されるのは、原則として、65歳以上の第1号被保険者で要介護や要支援の認定を受けた人です。40歳以上65歳未満で介護保険の適用対象となるのは、特定疾病の診断を受けた第2号被保険者のみです。適用の条件は、第1号被保険者と同様、要介護認定を受けることです。

住んでいる市区町村で要介護認定を受けたら、ケアマネージャーとともにケアプラン(サービス利用計画書)を作成し、市区町村に提出します。要介護認定とケアプランの提出により、介護サービスを利用できるようになります。

特定疾病と診断されたら

特定疾病と診断された場合、40歳以上であれば65歳未満でも介護保険を適用して介護サービスを受けることができます。要介護認定やケアプラン作成など、手続きは必要ですが、ぜひ利用しましょう。

ただ、特定疾病の場合、医療的な処置や特別な配慮が必要など、施設利用のハードルが高い場合もあるかもしれません。ケアプラン作成時には、自分にはどのようなケアが必要なのか、現在から将来についてまで医師からしっかり話を聞いて理解しておきましょう。

よくある質問

特定疾病とはなんですか?

40歳~64歳に発症する可能性がある、加齢が関係する16の疾病のことです。特定疾病と診断されると65歳未満でも介護保険が適用されます。詳しくはこちらをご覧ください。

特定疾病で介護保険の適用になる条件について教えてください。

市区町村で要介護認定を受け、ケアプランを作成して提出しなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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