- 更新日 : 2024年9月6日
エイジハラスメントとは?意味や対策を具体例をもとに解説
エイジハラスメントとは、年齢や世代について差別したり、嫌がらせをしたりする迷惑行為です。パワハラやセクハラと同じく、職場で行われやすいハラスメントとして注目を集めています。
本記事では、エイジハラスメントの意味や注目される背景、具体例、予防策などを解説します。実際に起きた場合の対処法も紹介しますので、参考にしてください。
目次
エイジハラスメントとは
エイジハラスメント(エイハラ)とは、年齢に関するハラスメントのことです。年齢や世代の違いを理由に、差別や嫌がらせをする行為を指します。
職場では、ほかにもセクハラやパワハラなどが問題になっていますが、そもそもハラスメントとはどのようなものかをみていきましょう。
ハラスメントの定義
ハラスメントとは、相手に不快感を与える嫌がらせやいじめなどの迷惑行為を指します。職場で行われるハラスメントには、次のようなものがあげられます。
- パワーハラスメント(パワハラ):優越的な関係を背景として精神的・身体的苦痛を与える行為
- セクシャルハラスメント(セクハラ):「労働者」の意に反する「性的な言動」を行う行為
- マタニティハラスメント(マタハラ):妊娠・出産・育児に関して、女性労働者が受ける不当な取り扱いや嫌がらせ
エイジハラスメントも職場で起こりやすいハラスメントのひとつで、パワハラやセクハラに該当する要素も含まれます。
エイジハラスメントは30代以上の中高年社員が対象になることが多いものの、反対に中高年社員が若手社員に対して若さを理由にハラスメントを行うケースもあります。
ハラスメントの詳しい内容については、以下の記事を参考にしてください。
エイジハラスメントが注目された背景
ハラスメントといえばセクハラやパワハラが広く認知されていますが、エイジハラスメントはまだあまり知られていません、エイジハラスメントだとは思わず、無自覚にハラスメント行為が行われている状況もあるでしょう。
エイジハラスメントが注目されるようになったのは最近で、主にドラマやSNSがきっかけです。
「エイジハラスメント」というドラマが放送された
エイジハラスメントという言葉が周知されるようになったのは、2015年にテレビ朝日で放送された「エイジハラスメント」というドラマがきっかけです。
旧体質の企業を舞台に、ヒロインがただ若いというだけで年上の社員から嫌がらせを受けるという内容です。ドラマによりエイジハラスメントの存在を知った視聴者も多く、職場で起こる可能性のあるエイジハラスメントの問題提起になりました。
SNS等でこれまで可視化されてなかったハラスメントが可視化された
SNSで職場のエイジハラスメントについて相談する人が増え、議論を交わされるようになったことも、注目されるようになった理由です。
年齢や世代に関する嫌がらせや差別行為など、エイジハラスメントにあたることは実際の職場で古くから起きていたと考えられます。これまでは目に見えなかったハラスメントが、インターネットの普及で可視化されるようになったといえるでしょう。
エイジハラスメントの具体例
エイジハラスメントに該当する具体例は、次のような行為があげられます。
- 年齢を強く表現する呼称を使う
- 世代や年齢を理由とした言動をする
- 業務の選定を年齢で行う
- 世代で一括りにする
それぞれ、詳しくみていきましょう。
年齢を強く表現する呼称を使う
年齢を強く表現する呼称を使うのは、エイジハラスメントにあたります。「おばさん」「おじさん」といった呼称が代表的です。
これらは相手の年齢的特徴に着目した呼称であり、年齢が高いことを揶揄して使われることもあります。例え使う側にハラスメントの意識がなくても、呼ばれた方は傷つくことがあるでしょう。
世代や年齢を理由とした言動をする
世代や年齢を理由とした言動もエイジハラスメントに該当します。「若いんだからこれぐらいのことは頑張って」「もう年なんだから無理しないように」といった発言は、励ましや労りのつもりで使っていても、年齢を意識させて相手を不快にさせる可能性があるでしょう。
世代や年齢を理由にしなくても、「〇〇さんだったら頑張れるよね」「お疲れのようなので無理しないでください」など、その人に着目して言葉をかけることは可能です。
業務の選定を年齢で行う
業務をしてもらうとき、年齢を理由に選定するのはエイジハラスメントにあたります。若いからという理由だけで体力を使う仕事を任せたり、シニアだからという理由で単純作業しか与えないような場合です。
業務の選定はあくまでその人の能力やキャリア、適性に応じて行う必要があり、年齢だけで決定するのはエイジハラスメントといえるでしょう。
世代で一括りにする
「ゆとり世代」や「団塊世代」など、世代を一括りにして決めつけることもエイジハラスメントにあたる可能性があります。
世代自体は特徴を表現するだけで、ハラスメントの要素はありません。しかし、世代の特徴によって相手を決めつけるのは、不快感を与えることもあります。世代をネガティブな意味合いで使う場合は、エイジハラスメントに該当することがあるでしょう。
エイジハラスメントはハラスメント防止法の対象になる?
ハラスメント防止法とは、ハラスメントの防止を規定するさまざまな法律の総称です。ハラスメントの防止を規定する法律には、次のものがあります。
- 男女雇用機会均等法
- 労働基準法
- 育児・介護休業法
- パワハラ防止法
男女雇用機会均等法には職場でのセクシャルハラスメントを防止するための規定があり、労働基準法や育児・介護休業法にはマタニティーハラスメントを防止するための規定があります。パワハラ防止法は「労働施策総合推進法」の通称で、文字通りパワハラが職場で発生した場合に適用される法律です。
現時点でエイジハラスメントの防止を定める法律はありませんが、年代や世代の違いを理由にした嫌がらせやいじめは、パワハラやセクハラに該当する要素も含み、明確に区分できない場合も少なくありません。
エイジハラスメントもパワハラやセクハラとして、ハラスメント防止法の対象になることはあるでしょう。
エイジハラスメントが生じる原因
エイジハラスメントが生じる原因はさまざまですが、主に次の3点があげられます。
- コミュニケーションが足りない
- エイジハラスメントをハラスメントと認識していない
- ハラスメント対策の整備が足りない
それぞれ、内容をみていきましょう。
コミュニケーションが足りない
エイジハラスメントが起こる主な原因には、コミュニケーション不足があります。特に中高年社員と若手社員はジェネレーションギャップが生じやすく、職場の交流が不足している場合は世代が違う人との接し方がよくわからないというケースも少なくありません。
どのような言葉が相手を不快にするか理解できず、意図せずにエイジハラスメントで相手を傷つける場合があります。
エイジハラスメントをハラスメントと認識していない
エイジハラスメントにあたる言動を、ハラスメントだと認識していないことも原因のひとつです。「この程度の言動はハラスメントではない」「自分が言われても嫌だと感じないことは相手も同じ」と考え、無自覚にエイジハラスメントをしているケースがこれにあたります。
しかし、ハラスメントの認定はあくまで受け取る側がどう感じたかです。自分ではハラスメントだと思っていないことも、相手が不快になればハラスメントとして認定されるため、注意しなければなりません。
ハラスメント対策の整備が足りない
職場にハラスメント対策の制度が整備されていないことも、エイジハラスメントが起こる原因です。会社側がハラスメントの防止に取り組んでいなければ、社員にもハラスメントを防止しようという意識が生まれにくいでしょう。
経営者からハラスメント防止に向けたメッセージを発信したり、ハラスメントへの意識を高める研修を行ったりするなど、積極的な取り組みが求められます。
エイジハラスメントがもたらす問題
エイジハラスメントの対策を行わないと、ハラスメントを受けた社員の離職が増えたり、業務に支障が出たりするなどの問題があります。
エイジハラスメントがもたらす問題について、みていきましょう。
離職・退職者が増える
エイジハラスメントを放置していると、社員の離職・退職者が増えるという問題があります。ハラスメントの被害者が離職しても、実際にエイジハラスメントを行った社員がそのままであれば、同じことを繰り返す可能性があるでしょう。
離職率の高い職場は求職者からのイメージも悪く、求人が集まらないというマイナスの循環が生まれます。深刻な人手不足になる前に、エイジハラスメントの早期対策が必要です。
企業のブランド毀損
エイジハラスメントが行われていることが外部に漏れた場合、企業イメージを損ないます。近年、企業の悪い噂はSNSや口コミサイトなどで拡散されやすく、エイジハラスメントが蔓延している職場という印象が強くなれば、企業のブランドを毀損するでしょう。
エイジハラスメントを受けて退職した社員が匿名でSNSに書き込む可能性もないとはいえず、企業イメージを守るためにも早めの防止対策が必要です。
業務に支障が出る
エイジハラスメントがある会社は社員間の交流がうまくいかず、業務もスムーズに進みません。社員は安心して意見を出せなくなり、仕事へのモチベーションも低下するでしょう。
エイジハラスメントがあると、被害を受けている社員だけではなく、職場全体に影響します。嫌がらせが行われる職場は仕事への意欲も低下しがちです。その結果、業務に支障が出て、生産性にも影響を及ぼすでしょう。
訴訟リスクがある
エイジハラスメントは、被害を受けた社員が精神的被害に対する賠償を求めて訴訟を起こす可能性があります。
加害者である社員だけでなく、ハラスメントの事実を知りながら問題を放置していたとして、企業側が訴えられるケースもあることは把握しておかなければなりません。具体的には、民法の使用者責任や、職場環境配慮義務違反の不法行為責任が問われます。
エイジハラスメントの放置は自社も訴訟リスクを抱えるということを、しっかり認識する必要があるでしょう。
エイジハラスメントの防止方法
エイジハラスメントを防止するためには、会社が意識して対策を立てることが求められます。
ここでは、エイジハラスメント防止に役立つ方法を紹介します。
定期的なアンケートを行う
エイジハラスメントの実態を把握するためには、定期的なアンケートが有効です。匿名のアンケートにすることで、社員の正直な回答が期待できます。
エイジハラスメントは、目に見えない部分で発生していることも少なくありません。まずはアンケートで実態を把握することが、エイジハラスメントの早期発見と防止に役立ちます。
ハラスメントに関する研修を行う
エイジハラスメントはパワハラやセクハラほど周知されておらず、自分の言動がエイジハラスメントだという認識を持たない社員もいます。
そのため、研修を行って、どのような言動がエイジハラスメントにあたるのかを認識してもらうことが必要です。
自分では問題ないと思っていても、相手が不快だと感じたらエイジハラスメントにあたるということも、知ってもらわなければなりません。
社員同士の相互理解を深める
コミュニケーションを活性化し、社員同士の相互理解を深めることも大切です。エイジハラスメントが起こるのは、コミュニケーションが不足してジェネレーションギャップが発生していることも原因となっています。
相互理解が足りないために、「年齢層の高い人は考えが古い」「最近の若い人の考えていることはわからない」など、世代や年齢で相手を見るようになってしまいます。コミュニケーションを活性化してお互いを知ることができれば、1人の社員として向き合い、適切に応対できるようになるでしょう。
ハラスメントに関する相談窓口を設置する
エイジハラスメントを受けている社員の受け皿として、相談窓口の設置もおすすめです。エイジハラスメントを受けても社員は誰かに相談できず、1人で悩みを抱えることもあるでしょう。
相談できる環境を作ることで被害を受けた社員のケアができるとともに、会社側はハラスメントの事実を把握し、早期解決につなげられます。
エイジハラスメントが生じた場合の対応方法
エイジハラスメントが発生してしまった場合は、早急に対処しなければなりません。手順を踏んで、当事者のヒアリングや事実確定を行いましょう。
ここでは、エイジハラスメントが生じた場合の対応方法を解説します。
被害者・加害者のヒアリングを行う
エイジハラスメントの発生を確認したら、まず被害者・加害者からヒアリングを行います。それぞれの話を聞き取り、発生原因やエイジハラスメントが起こった根本問題を突き止めることが必要です。
被害者の話には真剣に耳を傾け、個人的な感情や価値観を挟まないようにしましょう。客観的な視点と中立的な立場で対応してください。
加害者へヒアリングを行う際は、必ず被害者の同意を得ることが大切です。同意を得ずにヒアリングを行うと、加害者・被害者の人間関係をさらに悪化させてしまう可能性があります。
目撃者・関係者のヒアリング
両者の意見が食い違う場合や、客観的な裏付けが必要なときは、同じ部署の上司や社員など、第三者からのヒアリングも行いましょう。エイジハラスメントの現場をみたことのある社員はいないか、何らかの事情を知る人物がいないかを確認します。
第三者にヒアリングすることで、エイジハラスメントが外部に漏れやすくなるため、守秘義務を理解してもらうことも大切です。事実確認を行う人数は、必要最小限にとどめるとよいでしょう。
聞き取った全員の意見が一致するとは限りません。それぞれの内容を参考にしながら、合理的に判断することも必要です。
最終的な事実確定
ヒアリングが終わったら、最終的な事実確定を行います。事実確定は、次のようなパターンが考えられます。
- エイジハラスメントの事実があったと判断できる
- エイジハラスメントの事実は確認できないが、そのままでは事態が悪化する可能性があるため、何らかの対応が必要
- エイジハラスメントの事実が確認できない
エイジハラスメントの事実があったと確認できた場合には、加害者への注意・指導を行い、被害者への謝罪を促します。さらに、状況に応じて人事異動や懲戒処分なども検討します。
エイジハラスメントの事実は確認できなくても何らかの対応が必要な場合は、加害者の言動にどのような問題があったのかを明確にして、改善を促すなど再発を防止する必要があるでしょう。
外部機関の活用
社内だけで解決が難しい場合は、外部機関を活用し、弁護士や社会保険労務士など専門家へ相談窓口を委託する方法もおすすめです。
社内の窓口では、職場にいられなくなるのではないかと不安になって相談しにくい場合もあるでしょう。社内の関係者とは独立した立場にある窓口であれば、被害を受けた社員も安心して相談できます。
エイジハラスメントを相談する窓口
エイジハラスメントの相談は、公的機関などでも対応しています。自社の相談体制が整っていないときは、相談先として提案するのもよいでしょう。
主要な相談窓口を紹介します。
総合労働相談コーナー
厚生労働省が管轄する相談窓口です。各都道府県の労働局、労働基準監督署内など379ヵ所に設置されています。
相談は無料で対応しており、解雇や雇止め、配置転換などあらゆる分野の労働問題が対象です。エイジハラスメントなど、いじめ・嫌がらせの相談も受け付けています。
予約は不要で、専門の相談員が面談もしくは電話で対応しています。
みんなの人権110番
法務局・地方法務局・支局内に常設の相談電話です。法務局職員または人権擁護委員が対応しており、差別や虐待、ハラスメントなど、さまざまな人権問題について相談ができます。
相談や被害を申告すると、必要に応じて調査を行い、処理結果を通知するとともにアフターケアを実施します。
インターネットでも申し込みが可能です。必要事項を入力して送信すると、後日にメールや電話、もしくは面談で回答してくれます。
労働相談センター
全国労働組合総連合(全労連)が運営している常設の相談センターです。「労働相談ホットライン」を運営し、電話やメールでの相談を受け付けています。電話は地域の労働相談センターにつながり、エイジハラスメントをはじめとするさまざまな職場の悩みを相談できます。
電話相談は平日の月曜から金曜まで受け付けており、対応時間は地域のセンターにより異なるため、問い合わせてみるとよいでしょう。
ハラスメント相談窓口案内のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
エイジハラスメントの防止に取り組もう
エイジハラスメントは、世代や年齢に関して嫌がらせやいじめをする行為です。エイジハラスメントが起こる原因には、コミュニケーション不足やハラスメント対策の制度が整備されていないことなどがあげられます。
放置していると、離職が増えて企業イメージを損なうなどのリスクがあるため、注意が必要です。
定期的な匿名アンケートやハラスメントに関する研修を行うなど、エイジハラスメントを防止する対策を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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