- 更新日 : 2019年11月7日
年末調整で火災保険は控除されるか?

火災保険は、火災や自然災害(台風による被害、落雷による被害など)によって建物や家財に損害が生じた場合に補償される保険です。以前は年末調整や確定申告の際に、支払った火災保険料に対して適用される「損害保険料控除」がありましたが、現在は廃止されています。
ここでは特に、年末調整の際にこれらの控除手続きがどのようにかかわってくるのかを説明します。
年末調整で処理される損害保険料控除とは
損害保険料控除とは、1月1日から12月31日の1年間に支払った損害保険料に対して控除が認められることを指します。損害保険料には、民間・共済の、住宅・家財などに対してかけられる地震保険や火災保険、または身体を保障するためにかけられる傷害保険などが含まれます。
なお、損害保険料は、保険期間によって「長期保険契約」と「短期保険契約」に区分され、それぞれ別々の方法で控除額を算出します。
長期保険契約は、保険(共済)期間が10年以上あり、満期返戻金のある保険契約をいい、短期保険契約はそれ以外の保険契約をいいます。
以前は、年末調整において、この損害保険料が控除項目にあげられていました。
ところが、平成18年の所得税法等の改正により、火災保険料が含まれている「損害保険料控除」という制度が廃止されて、新たに「地震保険料控除」という制度が設けられました。所得税については平成19年以降、住民税については平成20年以降に地震保険料控除が適用されました。
この変更は、国が国民に対し地震災害に対する備えを行ってほしいという考えから、国民自身が地震保険に加入することを後押しするために行なわれたとされています。平成23年に起こった東日本大震災という未曽有の災害からも、地震保険は非常に重要な保険といえます。
損害保険と火災保険の長期保険契約の経過措置
損害保険料控除の廃止に伴って、適用されていた火災保険料の控除も廃止になりました。そのため、今後、年末調整や確定申告による新たな保険料控除はできません。
ただし、以下の要件をすべて満たした一定の長期損害保険契約の場合には、経過措置として地震保険料控除の対象となります。
年末調整の際には、「給与所得者の保険料控除申告書」の地震保険料控除の欄に旧長期損害保険料の区分を明記しましょう。
・平成19年1月1日以降、その損害保険契約等の変更をしていない
・保険期間が、10年以上ある
・保険期間満了後に、満期返戻金が発生する
なお、事業用資産に対する火災保険については、事業所得または不動産所得の経費の扱いになります。
地震保険料控除の計算方法
地震保険料の控除額に関する計算方法は、以下の表のとおりです。
所得税 | 住民税 | |||
---|---|---|---|---|
年間控除対象保険料 | 控除額 | 年間控除対象保険料 | 控除額 | |
地震保険料控除 | 50,000 円以下 | 支払保険料金額 | 50,000 円以下 | 支払保険料 × 1/2 |
50,000 円超 | 50,000 円 | 50,000 円超 | 25,000 円 | |
長期損害保険料控除 (経過措置) | 10,000 円以下 | 支払保険料 | 5,000 円以下 | 支払保険料 |
10,000 円超20,000 円以下 | 支払保険料 × 1/2+5,000 円 | 5,000 円超15,000 円以下 | 支払保険料 × 1/2+2,500 円 | |
20,000 円超 | 15,000 円 | 15,000 円超 | 10,000 円 |
所得税の地震保険料控除額
所得税の地震保険料控除額の計算方法について、いくつか例を挙げてみましょう。
■地震保険料を1年間に40,000円支払った人の場合
40,000円は、限度額となる50,000円より少額のため、控除額は40,000円となります。
■旧長期損害保険料を1年間に14,000円支払った人の場合
14,000円 × 2分の1 + 5,000円 = 控除額は12,000円となります。
■地震保険料を1年間に40,000円に加え、旧長期損害保険料を1年間に14,000円支払った人の場合
どちらも支払った場合には、いずれか一の契約のみに該当するものとして控除額を計算します(最高50,000円)。
まず、上記の計算をした上で地震保険料の控除金額と旧損害保険料の控除金額を合算します。
40,000円 + 12,000円 = 52,000円です。
この金額と、限度額となる50,000円を比較し、少額となる金額が採用されるため、控除額は50,000円となります。
住民税の地震保険料控除額
住民税の地震保険料控除額の計算方法は、以下のようになります。
■地震保険料を1年間に40,000円支払った人の場合
40,000円 × 2分の1 = 控除額は20,000円となります。
■旧長期損害保険料を1年間に14,000円支払った人の場合
14,000円 × 2分の1 + 2,500円 = 控除額は9,500円となります。
■地震保険料を1年間に40,000円に加え、旧長期損害保険料を1年間に14,000円支払った人の場合
どちらも支払った場合には、いずれか一の契約のみに該当するものとして控除額を計算します(最高25,000円)。
まず、上記の計算をした上で地震保険料の控除金額と旧損害保険料の控除金額を合算します。
20,000円 + 9,500円 = 29,500円です。
この金額と、限度額となる25,000円を比較し、少額となる金額を採用して、控除額を25,000円と決定します。
火災保険の経過措置に注意しましょう
火災保険料は控除対象ではなくなりましたが、以前から加入していた火災保険に関しては経過措置を受けられる可能性があります。再度、該当項目をチェックしてみましょう。
なお、年末調整に際して、地震保険料控除額の計算は難解に感じるかもしれませんが、保険料控除申告書に沿って記入していけば思いのほかスムーズにできるはずです。
年末調整の保険料控除申告書の記入方法については「年末調整の保険料控除申告書の書き方」を参考にしてみてください。
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