• 更新日 : 2024年10月7日

テレワークとは?メリット・デメリットや導入方法、助成金を解説

テレワークとは、オフィスから離れた場所で情報通信技術を利用して働くことです。場所や時間を有効活用できる働き方として注目されています。テレワークの実施状況や導入するメリット、注意点をまとめました。また、導入時に活用できる助成金・補助金や、具体的な導入手順も紹介します。ぜひ参考にして、働きやすい環境を構築してください。

テレワークとは?

テレワークとは、情報通信技術を活用し、オフィスから離れた場所で働くことを意味する言葉です。テレ(tele:離れた)とワーク(work:仕事)を組み合わせた造語で、場所や時間の自由度が高い働き方として注目されています。

なお、労働者に対しては、オフィスで働くかテレワークで働くかにかかわらず、労働基準法や労働者災害補償保険法などの労働関係法令が適用されます。労働契約に基づいて事業者の支配下で生じたテレワーク時の災害は、業務災害として労災保険給付対象です。また、雇用条件によっては雇用保険の被保険者となります。

テレワークの主な形態

働く場所の観点から、テレワークは次の3つに分類できます。

  • 在宅勤務
  • サテライトオフィス勤務
  • モバイル勤務

在宅勤務とは、労働者が自宅で働くスタイルです。通勤する必要がないため、ラッシュ時のストレスを回避できるだけでなく、時間も有効活用できます。

サテライトオフィス勤務とは、本拠地以外のオフィスで働くスタイルです。本拠地よりもサテライトオフィスが自宅からアクセスしやすい場所にあれば、通勤時間を短縮できるかもしれません。

モバイル勤務とは、移動中や出先で働くことです。移動時間を無駄なく活用できるため、より効率性の高い働き方が可能になります。

リモートワークとの違い

テレワークとリモートワークは、通常同じ意味の言葉として使用されています。厳密にいえば、テレワークは「情報通信技術を活かした働き方」、リモートワークは「オフィスから離れた場所での働き方」と分けられます。しかし、情報通信技術を活かしてオフィス以外で働くなら、どちらにも当てはまるため、間違いではありません。

なお、政府や公的機関では、「テレワーク」を使う傾向にあります。

テレワークを実施している企業の割合

総務省の情報通信動向調査によれば、2023年の時点で49.9%の企業でテレワークが導入されています。新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけとして、テレワークを導入する企業は爆発的に増加しましたが、現在ではワークライフバランスを向上させる柔軟な働き方の一形態として普及しています。

調査年2018年2019年2020年2021年2022年2023年
導入企業の割合19.1%20.2%47.5%51.9%51.7%49.9%

テレワークの導入状況は、業種によっても異なります。特に多いのが情報通信業です。テレワークを導入している企業は、2023年の時点で9割を超えています。

産業2023年時点の導入企業の割合
全体49.9%
建設業53.8%
製造業53.1%
運輸・郵便業35.4%
卸売・小売業47.6%
金融・保険業81.3%
不動産業69.8%
情報通信業93.4%
サービス業・その他42.4%

参考:令和5年通信利用動向調査の結果|総務省

企業がテレワークを導入するメリット

テレワークという働き方が選択できることは、労働者にとっても多くのメリットがあります。長い通勤時間から解放され、家事や育児にもゆとりを持って取り組めるかもしれません。

また、テレワークは企業にとってもメリットがあります。主なメリットを紹介します。

多様な人材を雇用できる

オフィスに通勤できることを雇用条件とすると、労働者の居住エリアや勤務時間を限定してしまいます。テレワークなら、インターネット環境さえあれば場所や時間を問わず働けるため、労働者の対象も広がるでしょう。

異なる地域に暮らす方や短時間しか働けない方も、採用対象となります。また、労働者の範囲が広がることで、より優秀な人材も見つかりやすくなります。

コストを削減できる

テレワークを導入すれば、労働者の交通費や出張費なども削減できます。また、資料をオンラインで共有すれば、紙代や印刷代、郵送費の削減も可能です。

オフィスを借りている場合なら、賃料も抑えられるかもしれません。通勤する労働者が減れば、オフィスをサイズダウンできるだけでなく、都心部や駅近以外も視野に入れられます。

企業イメージの向上につながる

テレワークを導入することで、労働者の働きやすさに配慮した企業というイメージがつく可能性もあります。

企業イメージが向上すれば、社会的評価が高くなるだけでなく、雇用を希望する人も増加するかもしれません。労働人口が減少し労働者確保が難しくなるなか、企業イメージを高めることは、企業存続を左右する重要なポイントだといえます。

企業がテレワークを導入するデメリット

テレワークの導入には多様なメリットがありますが、いくつかデメリットもあるため注意が必要です。導入前に対策を検討したいデメリットを紹介します。

労働者の勤怠管理が難しくなる

テレワークでは、労働者の勤怠状況を管理することが困難です。自己申告では正確性に欠けるため、時給や月給で報酬を決めにくくなるかもしれません。出来高制にすれば時間を問わず仕事量を測定できますが、調査や営業といった出来高が見えにくい業務もあり、評価しにくくなることがあります。

業務が増える可能性がある

テレワークではメールやチャット、電話などを使って業務連絡を取り合います。同じオフィスにいればその場で話せば済むことも、コミュニケーションに時間がかかるようになってしまいます。

また、進捗管理や業務進行を知らせるためのワークシートの作成も必要です。通勤時間は短縮できるものの、管理業務や「業務のための業務」は増えるかもしれません。

セキュリティリスク・情報漏洩リスクが高まる

オフィスで業務をする場合は、パソコンやインターネット通信のセキュリティを一元管理できます。高度なセキュリティシステムを導入することで、ウイルス感染や情報漏洩を回避しやすくなるでしょう。

しかし、テレワークでは、個々の労働者がセキュリティ管理を担当します。セキュリティ対策が十分ではないインターネットデバイスを用いたり、安全性の低いWi-Fiを使ってアクセスしたりしている場合などには、外部の攻撃にさらされる可能性が高まります。

テレワークに向いている業種や仕事

総務省の通信利用動向調査によれば、情報通信業と金融・保険業、不動産業では3分の2を超える企業でテレワークが導入されています。しかし、テレワークに向いている業種であっても、仕事内容によっては導入が難しいかもしれません。

一般的に以下の職種は、業務のほとんどをパソコンや電話などを使って実施できるため、テレワークに向いているとされています。

  • エンジニア、プログラマー、Webデザイナーなど
  • 弁護士、会計士、税理士など
  • 営業
  • コールセンター、カスタマーサポートなど
  • Webライター、編集者など

一方、以下の職種はテレワークでの対応が難しいとされています。

  • 医療・介護関連の仕事
  • 接客業
  • 販売業
  • 製造業
  • 生産業
  • 研究職

いずれも実際に人と接する必要がある業務や、工場や研究室などの場所が限られている仕事です。ただし、仕事内容によってはテレワークを導入できるものもあるため、上手に組み合わせて効率性を高められることがあります。

例えば、特殊な設備や機械を使う研究は、テレワークでの対応は困難です。しかし、研究デザインやレポート作成はパソコンでも可能なため、部分的にテレワークを導入し、研究従事者の負担を軽減できるかもしれません。

参考:令和5年通信利用動向調査の結果|総務省

テレワーク導入に役立つ助成金や補助金

テレワーク導入時には、社内制度の整備や貸与用インターネットデバイスの購入などにより多額の費用がかかることもあります。導入時に活用できる助成金や補助金を紹介するので、条件に合致するときは申請を検討してみてください。

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

人材確保等支援助成金は、テレワークを導入する事業者と、すでにテレワークを導入し、今後拡大予定のある事業者に向けた助成金制度です。申請が受理されると、以下の費用に対して助成金を受給できます。

  • 就業規則や労使協定などの作成・変更
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • テレワーク用通信機器等の導入・運用
  • 労務管理担当者や労働者に対する研修

例えば、機器等の導入に関しては、経費の50%を助成金として受け取れます。また、離職率低下などの目標を達成したときには、支給対象となる経費の15%あるいは25%の助成金を受け取ることが可能です。ただし、100万円もしくはテレワーク対象労働者1人あたり20万円のうち、いずれか低い金額が上限となるため、あらかじめ確認しておきましょう。

参考:人材確保等支援助成金(テレワークコース)|厚生労働省

テレワーク促進助成金

自治体によっては独自に助成金制度・補助金制度を実施していることもあるため、ぜひ問い合わせておきましょう。テレワーク促進助成金は、常時雇用する労働者が2名以上999人以下の東京都内の事業所を対象とした助成金制度です。以下の2つのコースがあり、いずれか一方を選択して申請します。

  • 一般コース
  • 非正規社員拡充コース

一般コースは、常時雇用する労働者を対象にテレワーク環境を整備するための経費に対して助成金が支給されます。一方、非正規社員拡充コースは、非正規社員へのテレワーク拡充にかかる経費の助成です。いずれも労働者が30人以上999人以下の事業所は上限250万円(助成率2分の1)、2人以上30人未満の事業所は上限150万円(助成率3分の2)となります。

参考:テレワーク促進助成金(令和6年度)|公益財団法人 東京しごと財団

テレワークを導入する流れ

テレワークは以下の流れで導入を進めます。

  1. 導入目的・部署・方針の決定
  2. 就業規則や評価制度、ICTへの対応などの現状把握とルール改正
  3. 情報システム環境の整備
  4. 労働者への教育実施
  5. テレワーク導入
  6. 評価と調整

まずはテレワークを導入する目的や導入部署、方針を決定します。現状の社内ルールやICTへの対応を把握し、テレワーク導入に合わせた改正を行いましょう。

情報システム環境を整備した後で、テレワークの導入に関して必要となる情報(業務手順、セキュリティ管理など)を労働者に共有します。テレワーク導入後も定期的に状況を評価し、必要に応じて改善・調整してください。

テレワークの就業規則を検討する際のポイント

テレワーク導入により、就業規則の見直しが必要になります。以下の内容を盛り込み、テレワークに対応した就業規則を作成してください。

  • テレワークの定義、対象者の規定
  • 服務規律
  • 労働時間、休憩時間、所定休日、時間外労働
  • 中抜け時間の取り扱い
  • 賃金、費用負担
  • 情報通信機器などの貸与制度
  • 教育制度
  • 安全衛生確保
  • ハラスメント防止

なお、費用負担とは、テレワーク時の通信費や文具などの負担についてです。以下のように規定できるかもしれません。

第〇条 会社が貸与する情報通信機器を利用する場合、通信費は会社負担とする。

2 在宅勤務で発生する水道光熱費は在宅勤務者の負担とする。

3 業務に必要な郵送費や消耗品費において、会社が認めた費用は会社負担とする。

4 その他の費用については在宅勤務者の負担とする。

就業規則はテンプレートを用いると作成しやすくなります。ぜひ以下から無料ダウンロードをして、ご利用ください。

https://biz.moneyforward.com/payroll/templates/273/

テレワークを導入する際の注意点

テレワーク導入時に注意したいポイントを紹介します。トラブルなく導入するためにも、ぜひご確認ください。

セキュリティ対策をしっかりと行う

セキュリティ対策が必要です。デバイスを企業が支給したり、セキュリティ管理のガイドラインを設けたりすることで、セキュリティリスク・情報漏洩リスクの軽減を図りましょう。

適切な人事評価ができる仕組みを整える

適切な人事評価は、従業員の満足度を高めるために必要な要素です。成果だけでは評価できない部分(頑張り、難易度など)も評価できる仕組みを整え、不公平感が生じにくいようにしてください。

従業員にテレワークの目的を周知する

従業員がテレワークを納得して利用するためにも、導入の目的を周知し、同意を得てください。例えば、ワークライフバランスの向上や生産性の向上などを目的とできます。

テレワーク・在宅勤務に関するテンプレート

テレワーク導入時には、就業規則以外にもさまざまな規定を作成する必要があります。テンプレートを用い、抜け漏れのないルールや書類を作成してください。在宅勤務中のルールの周知文と勤務規定は以下からダウンロードできます。

https://biz.moneyforward.com/payroll/templates/3218/

https://biz.moneyforward.com/payroll/templates/1475/

また、オフィスでの勤務から在宅勤務に切り替える際の申請書には、以下のテンプレートをご利用ください。

https://biz.moneyforward.com/payroll/templates/1485/

テレワークに役立つツールやシステム

システムやツールを活用することで、テレワークのトラブルを回避しやすくなることがあります。活用したいシステム・ツールを紹介します。

ビジネスチャット

テレワークではこまめなコミュニケーションが不可欠です。個人向け・関係者全員向けの連絡ができるビジネスチャットを利用しましょう。タスク管理やファイル共有が可能なビジネスチャットなら、業務効率向上にも役立ちます。

オンライン会議

文字だけでなく音声や映像でもコミュニケーションを図る必要があります。オンライン会議のツールを導入し、密な連携を図りましょう。

勤怠管理システム

労働時間を管理する必要があるときは、勤怠管理システムも必要です。打刻だけでなく、出勤時間や時間外労働時間の自動集計機能もあると便利です。

テレワークで働きやすい環境を構築しよう

テレワークを導入することで、多様な働き方に対応できます。

また、働きやすい環境を構築することは、人材確保や企業成長に欠かせない要素です。ぜひテレワークの導入を検討し、魅力的な企業づくりを実現してください。


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