• 作成日 : 2023年3月10日

サービス残業とは?違法となる理由や労働環境、残業を減らす方法を解説

サービス残業とは、残業に対して労働時間分の賃金が支払われていないものを言います。労働基準法違反であり、企業はサービス残業を強要してはいけません。みなし管理職のサービス残業の他、労働者が自ら残業した場合でも企業に責任が問われます。飲食業や建設業などでは、サービス残業が多いと言われています。

サービス残業とは?

サービス残業とは労働者が賃金の支払いを受けずに時間外労働することを指します。残業代は本来、労働者の残業時間をきちんとカウントし、1時間あたりの賃金や割増賃金として支払われなければなりません。

企業が労働者の所定労働時間外に行っている労働を残業と認めなかったり、労働者が自らの意思により残業を企業に申告しなかったりして、無給になっている残業を「サービス残業」と言います。

サービス残業が違法となる理由

サービス残業は労働基準法に反する行為です。企業が労働者にサービス残業をさせることはもちろん、労働者が自発的にサービス残業をしても労働基準法違反になります。労働基準法では使用者に労働者が行った労働時間に対して賃金を支払う義務があることを定めています。

労働基準法第37条第1項(時間外・休日の割増賃金)
使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

引用:労働基準法|e-Gov 法令検索

無給で労働させる行為は労働基準法違反に該当し、罰則が科せられる恐れがあります。サービス残業に対する罰則は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

残業違反の罰則について、詳しくは次の記事で解説しています。参考にしてください。

サービス残業に陥りやすい労働環境の例は?

労働環境により、サービス残業になりやすい職場・そうでもない職場があります。サービス残業はどのような職場で起こりやすいのでしょうか?
サービス残業に陥りやすい労働環境を、例を挙げてご紹介します。

勤怠管理をしていない

企業には労働者の勤怠状況を、正確に把握することが求められます。勤怠データは給料計算に欠かせないデータです。きちんと勤怠管理を行って給料計算に反映させなければならず、管理が行われていなかったり不十分であったりすると時間外労働時間が不正確になり、サービス残業が生じます。

常に忙しい

常に忙しい状態であることもサービス残業の発生につながります。忙しいと目の前にある仕事をこなすことで精一杯になり、残業時間の記録などは後回しになりがちです。時間外労働をしているのにもかかわらず日にちや時間が不明なため賃金の計算ができず、サービス残業につながります。

サービス残業が発生する要因

労働者の行った残業がサービス残業となってしまうのは、どうしてなのでしょうか?
サービス残業が発生する要因には、以下のことが考えられます。

労働力と業務量のアンバランス

仕事量が多いと当然ながら所定労働時間内に終わらないという事態が発生し、残業が必要になります。しかし労働者に支払う賃金もその分増え、人件費の増大という経営上の問題が発生します。また法定労働時間を超える時間外労働に対しては上限規制が設けられているため、抵触しないようにする必要があります。

やるべき仕事は残っているが残業はできないということにより、サービス残業が発生します。

職場の雰囲気

職場で役職者をはじめとする多くの労働者が残っていると、下の立場の者は帰りにくい雰囲気になります。ただそこにいるわけにもいかないためサービス残業をすることになります。

みなし管理職の存在

仕事の多くを自分の裁量で行うことができる管理者は、労働時間管理の対象外とできることが労働基準法で認められています。管理者には時間外労働をした時間をカウントしたり、割増賃金を支払ったりする必要はありません。これを悪用して会社に課せられている時間外労働に関する義務を放棄する行為が存在することも、サービス残業が生じる原因となっています。

管理者でないにもかかわらず管理者として取り扱ってサービス残業させる行為で、「みなし管理職」と呼ばれます。

管理職の残業代について詳しくはこちらの記事で説明しています。参考にしてください。

サービス残業が当たり前になっている業界

業界によっては業務や職場環境などが原因となってサービス残業が当たり前になっている場合があります。サービス残業が常態化している業界と理由をご説明します。

飲食業

飲食店は以下のように、あらかじめ定めてある時間通りに勤務することが難しいことからサービス残業が当たり前になっています。

  • 客がいるため、休憩時間が取れない
  • 予想外の時間に混雑して接客する人手が必要となり、終業時間にあがることができない

建設業

建設業は以下のように、労働時間が不確定になりがちであることからサービス残業が当たり前になっています。

  • 雨天が続いて作業が滞る
  • 設計変更があり、待ち時間が発生する
  • 資材の調達、あるいは前の工期が遅れているため、次の作業に進めない
  • 事故が発生して作業がストップされる

看護師

看護師には勤務に欠かせない申し送りを労働時間に含めないという慣習があり、この時間分のサービス残業発生が当たり前になっています。

保育士

保育士は業務量が多く、お誕生日会やお遊戯会といった行事の準備などを自宅に持ち帰って労働することによるサービス残業が当たり前になっています。また休憩時間を使って連絡帳へ記入したり、勤務時間の後に保護者に必要事項を連絡したりすることも、日常的なサービス残業発生につながっています。

介護職

介護職は以下のように多忙であることからサービス残業が当たり前になっています。

  • 利用者に提供を求められるサービス量が多く、時間をオーバーしてしまう
  • 引き継ぎ連絡や日報の作成といった、細かい必要作業が多い
  • 緊急な対応が求められる
  • 介護について研修の参加などが求められる

公務員

公務員は以下のようなことから、業種によってはサービス残業が当たり前になっています。

  • 予算内での業務遂行が民間企業よりも厳格に求められ、人件費管理が徹底している
  • 閉庁時間を過ぎても必要な対応をすることが求められる

自主的にサービス残業した場合でも罰則はある?

サービス残業は労働者が自主的に行った場合でも違法行為に該当します。

労働者がサービス残業しなければならない状況を作り出したとして、使用者に責任が問われます。労働基準法第37条違反として6ヵ月以下の懲役か30万円以下の罰金の罰則が科せられる場合があります。

これまでの残業代を請求するには?

労働者がこれまでに行ってきたサービス残業について、賃金の支払いを求めるにはどうしたら良いのでしょうか?不払いとなっている残業代を請求する方法をご説明します。

残業代の計算方法

時間外労働に対しては割増賃金が支払われます。割増賃金とは通常の賃金に割合率分を加算した賃金を指します。労働基準法は次の割増率で計算される割増賃金を支払う必要があると規定しています。

時間外労働
月60時間まで
25%
月60時間超
50%
休日労働
35%

証拠を集める

サービス残業によって不払いとなっている残業代を請求するには、まず証拠を集める必要があります。サービス残業をしていたという事実や時間を証明するために、次のような証拠を集めることが大切です。

  • タイムカードや出勤簿
  • 業務指示書や上司からのメール
  • パソコンのログインやログアウトの記録
  • メールの送受信記録
  • 日報や作業報告書

内容証明郵便を出す

一般的にサービス残業にかかる残業代・残業手当の請求は、内容証明郵便を出すことで行います。内容証明郵便は郵便物について差出人や受取人、内容、日付について記録を残し、証拠とすることができるサービスです。
内容証明郵便を使って、不払いとなっている残業代・残業手当請求を行う旨、会社に告げます。

会社と交渉する

内容証明郵便を出すなどした結果、会社がサービス残業代の支払いに前向きである場合は交渉します。しかし会社との関係が悪化する可能性あり、またサービス残業代請求は離職してから行われることも少なくないため、あまり現実的な方法ではありません。

個人で交渉することが難しい場合は、都道府県労働局の紛争調整委員会の「あっせん」制度や社会保険労務士会労働紛争解決センターを通して話し合いで解決する方法もあります。

労働審判・労働訴訟を起こす

会社がサービス残業代の支払いに前向きでない場合、あるいは交渉が決裂した場合、労働審判や労働訴訟を起こすことになります。労働審判は労働問題を速やかに解決するための手続きです。

訴訟に比べて期間や費用はかかりませんが、きちんと法的拘束力のある結果を得ることができます。

サービス残業を減らす方法

サービス残業は労働基準法に違反する行為で、場合によってはサービス残業をさせた使用者に罰則が科せられます。長時間労働によって健康を損なう恐れもあるため、労働者としても以下に説明する方法でサービス残業はなくす・減らすようにしなければなりません。

強要されても断る

サービス残業は強要されても、断って労働しないことが大切です。強く言われたからといってサービス残業をしてしまうと、以降もずっとサービス残業をしなければならなくなります。毅然とした態度で断れば、次第とサービス残業を強要されることはなくなります。今回だけ、忙しいときだけといってサービス残業をするのではなく、しっかりと断りましょう。

弁護士などに相談する

しつこく会社にサービス残業をするよう要求される場合は、弁護士などへ相談しましょう。労働者は働いた分の賃金支払いを受ける権利があり、サービス残業は違法行為です。

法律違反を要求されるような場合には然るべき相手へ相談して、必要とされる手段で対抗することが求められます。
適切である相談先には弁護士の他に社会保険労務士や司法書士などが考えられます。

サービス残業を減らすための企業の対策

サービス残業を減らすために、徹底した労働時間管理が企業の対策として求められます。さまざまな理由でサービス残業は発生し、労働時間管理に甘さがあると認められていない残業が生じます。

サービス残業を減らすためには労働時間管理を厳格に行い、会社が認める残業以外の残業をなくさなければなりません。そのためには残業をする際のルールを明確にすることが大切です。残業はルールに則って申請・承認を受けたものに限る、とすることで従業員の残業が把握できるようになります。就労状況が可視化でき、サービス残業防止につながります。

サービス残業防止のために就労状況を可視化しよう!

サービス残業は労働者に賃金を払わずに労働させる違法行為です。労働基準法違反になり、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に科せられる恐れがあります。また労働者は行ってきたサービス残業に対して、不払いとなっている残業代を会社に請求することができます。会社は訴訟を起こされるリスクもあることを認識しておかなければなりません。

サービス残業を減らすためには、労働時間管理を徹底することが大切です。ルールを作って残業を把握し、就労状況を可視化してサービス残業を防ぎましょう。

よくある質問

サービス残業とは何ですか?

所定労働時間を超えて労働しながら、賃金が支払われないことを言います詳しくはこちらをご覧ください。

サービス残業を減らす方法について教えてください

ルールを設けて承認していない残業は認めないとして、就労状況を把握することでサービス残業を減らすことができます。詳しくはこちらをご覧ください。


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