• 更新日 : 2025年1月17日

パートで育休が取れなかった場合どうすればいい?取得条件と対応を解説

パートの方でも育休は取れます。育休や産休は、雇用形態に関係なく取れることが労働基準法により定められています。

万が一、パートで育休が取れなかった場合は、育休を取得できる条件に満たしていない可能性があるため、事前に条件を確認することが重要です。また、条件を満たしているにもかかわらず、育休を取れない場合も然るべき対応を取る必要があります。

本記事では、パートで育休が取れるかについて徹底解説します。

パートで育休が取れる条件とは?

育休は育児休業の略語で、育児・介護休業法により定められた原則1歳未満の子どもを育てるための休暇です。法律に基づいて育休を取得でき、会社側は休暇の申し出を拒否できません。

ただし、パートで育休を取るためには条件があり、満たしていなければ育休が取れない可能性が高まります。まずは、パートで育休が取れる条件を確認していきましょう。

同一の事業主に雇用されて1年以上経つ

同一の事業主に1年以上雇用されていることは、育児休業申し出の直前の1年間において、事業主に雇用されている状態を指します。契約期間が連続しているかどうかではなく継続しているかが重要です。たとえば、契約終了時に次の契約がむすばれている場合は実質的に継続しているとされます。

ただし、2022年4月の改正法の施行によって、一定の条件を満たす有期雇用労働者は1年以上の雇用条件が撤廃されました。

そのため、子どもが1歳6ヶ月になるまでの間に契約が終了するか定かでない場合は、1年未満の勤続年数であっても育休を取得できます。

子が1歳6ヶ月になるまで雇用が続くこと

育休は、子どもが1歳になるまで取得可能ですが、保育園に入園できない可能性も考慮して最長1歳6ヶ月まで雇用を続ける必要があります。期間中に雇用が終了する予定の場合、育休の取得は認められないため注意が必要です。

子どもが1歳を迎えるまでに契約が終了する場合、育休の申請はできません。逆に、契約更新の可能性が高く、子どもが1歳6ヶ月になるまで働く見込みがある場合は申請が可能です。

そのため、育休を取得するためにも、雇用が継続することを証明できるようにしておきましょう。

パートで会社が育休を断れるケース

会社側は原則、育休を拒否できませんが、ケースによっては断ることも可能です。例外的に会社側から労働者の育休申請を拒否できるケースは以下のとおりです。

雇用された期間が1年未満

労使協定が締結されている場合、雇用期間が1年未満の労働者は育休の対象外となる可能性があります。

育児・介護休業法によると、雇用期間が1年未満の労働者は、育休を取得できないケースがあります。たとえば、入社後10ヶ月のパートが育休を申請した場合、会社と労働者の代表が締結した労使協定で「雇用期間が1年未満の労働者は育休の対象外」と定められていれば、会社は申請の拒否が可能です。

そのため、育休を取得したいと考えているパートは、自分自身の雇用期間と会社の労使協定の内容を確認し、必要に応じて会社に相談することが重要です。

1年以内に雇用関係が終了する

育児・介護休業法では、労使協定により育休の申し出時点で1年以内に雇用契約が終了すると確定している場合、会社は申請を拒否できます。

たとえば、契約期間が1年間のパートとして働く方の場合、契約開始から6ヶ月後に育休を申請した場合、申し出から1年以内に契約が終了すると会社側は拒否することが可能です。

そのため、育休の取得を検討しているパートは、自身の雇用契約期間と会社の労使協定の内容を確認することが重要です。労使協定がない場合や、労使協定で除外されていない場合は、育休取得できる可能性があるため事前に確認してください。

週の所定労働日数が2日以下

育児・介護休業法では、労使協定により、週の所定労働日数が2日以下の労働者は育休の対象外にできます。

週に2日だけ勤務するパートが育休を申請した場合、会社と労働者の代表が労使協定で「週の所定労働日数が2日以下の労働者は育休の対象外」と定めていれば、会社側は育休を断れます。

そのため、育休を取得したいパートの方には、自身の週の所定労働日数と会社の労使協定の内容確認を周知することが重要です。従業員に事前に伝えておくと、育休の対象になるかを事前に確認でき、トラブル防止にもつながります。

パートで育休を取れなかった場合どうする?

育休取得の条件を満たしているにもかかわらず、会社から育休を断られるケースも珍しくありません。以下では、万が一パートで育休が取れなかった場合に取るべき対処法を解説します。

人事や会社の相談窓口に相談する

育休を取れない場合、まずは人事や会社の相談窓口で相談することが重要です。育児・介護休業法では、安心して育休の取得ができる環境を整える対策として、産休・育休の相談窓口の設置を推奨しています。

直属の上司が育休に育休に関する知識がなければ、育休取得を断られる可能性があります。しかし、人事や会社の相談窓口に育休取得を断られたと相談すれば、事実関係調査が実施され、育休の取得を認めてもらえる可能性が高まるでしょう。

しかし、会社によっては育休の相談窓口が設置されていない場合もあるため、まずは会社に相談窓口があるかを確認してください。

会社の就業規則を確認する

育休を取得できなかった場合は、会社の就業規則を確認し、育休に関する社内の規則や手続き、労働協定の内容を把握することが重要です。

育児・介護休業法によると、一定の条件を満たす従業員に育休取得の権利が認められます。しかし、条件を満たしていなければ育休取得の対象外となるため注意が必要です。

そのため、育休を取得できなかった場合は、会社の就業規則や労使協定を再度確認し、自身が育休取得条件に満たしているか確認してください。

総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、都道府県労働局や労働基準監督署内に設置されており、育休の相談だけでなく、解雇や配置転換、退職勧奨、いじめ・嫌がらせなどの問題を相談できるサービスです。労働者と事業主からの相談も受けており、予約不要、無料で相談を受け付けています。

育休に関する相談をどこですべきかお悩みの場合でも、まずは総合労働相談コーナーへの相談がおすすめです。

ただし、総合労働相談コーナーでは制度の仕組みや解決方法を提案してくれますが、会社と直接的な交渉を行ってくれるわけではないため注意が必要です。

労働基準監督署に相談

労働基準監督署は、厚生労働省の出先機関であり、労働基準法や労働安全衛生法などにより、労働者の働く環境や安全の確保などを整えます。

具体的には、育児・介護休業法により「紛争解決援助」が提供されており、会社間で育休取得に関するトラブルが発生した場合でも労働基準監督署で相談可能です。

労働基準監督署では、相談すると労働者と事業主双方の話を聞いたうえで、問題を解決するために必要なアドバイスや指導などを行います。そのため、育休取得に関してトラブルが発生した際は、労働基準監督署に相談してみるといいでしょう。

弁護士に相談

育休取得を断られた際は、弁護士に相談も検討してみましょう。弁護士へ育休の相談をした場合、解決に関してアドバイスするだけでなく、法律のプロの観点から会社に対して育休を取得できるよう交渉も行ってくれます。

また、万が一育休申請をして不当に解雇されたという場合や、他の業種に転換するよう求められたなど不適切な対応を受けた場合も、弁護士に相談すれば訴訟の手続きを進めてもらえます。

育休取得できない理由が不当な場合やトラブルによりお困りの際は、弁護士への相談も検討してみてください。

パートの育休で会社がやってはいけない行為

パートの育休により会社がしてはいけないことの具体例を紹介します。従業員が育休申請をしたり、取得したりすることを理由に不当な行為をすると育児・介護休業法違反となるため、事前に確認しておきましょう。

育休を理由にした不当な扱い

育休取得・申請したことを理由に、解雇や雇い止め、降格などの不当な扱いは男女雇用機会均等法や育児・介護休業法により違法とされています。

たとえば、育休を取得したパートに対して、復職後に以前よりも低い職位に降格したり、給与を減額したりするのは違法です。

しかし、特定の罰則が定められているわけではなく、国からの報告を求められたり、指導や忠告を受けたりする可能性があります。

そのため、パートが育休を取得した理由だけで、従業員を解雇や降格する理由にならないことを理解しておきましょう。もし、育休を理由に不利益な取り扱いを受けた際は、適切な対応を求めることが重要です。

ハラスメント行為

育休の取得や申請をしたパートに対して嫌がらせやいじめを行うハラスメント行為は法律で禁じられています。

厚生労働省では、妊娠・出産・育児休業などに対するハラスメントを防止するために、事業主に対して必要な措置を行うことが義務付けられています。具体的には、上司や同僚からの言動により、育休を申請・取得した労働者の働き方が害されないように事業主は防止策を考えることが重要です。

育休は従業員にとって正当な権利であり、ハラスメント行為は法律でも禁止されています。従業員に快適な環境を提供するためにも、事前にハラスメント防止のための研修を行ったり、ハラスメント発生の際のマニュアルを整備したりして安心感を与えることが大切です。

パートの育休で給料はどうなる?

パートの育休中は、給料は支払われないことが一般的です。産休や育休は法律で定められた労働者の権利ですが、育休中の給料の支払いについては明確に定められていません。まれに、産休・育休中に給料の一部や全額を支払う会社もあるため、事前に確認する必要があります。

給料が支払われなければ経済的に負担がかかると不安になる方もいらっしゃるでしょう。しかし、育休中は育児休業給付金が受給可能であり、給与の50〜70%程度の額を受け取れます。

また、他にも国や自治体からはあらゆる支援が受けられるため、事前に確認しておくことが重要です。パートの育休で給料がどうなるかについては、以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。

パートの育休とは?取得条件や給付金、配偶者控除との関係、産休との違いを解説

パートの育休をスムーズに取得するには?

パートの育休をスムーズに取得するためには、育休取得の条件や手続きを事前に確認し、適切に申請して職場と連携を取ることが重要です。

育児・介護休業法に基づき、パートの方でも一定の条件を満たす場合は育休を取得する権利があります。しかし、手続きの遅れや職場と連携が取れていなければ、トラブルの原因です。事前の準備と円滑なコミュニケーションが、育休取得と復帰を円滑に進める鍵です。

育休取得と職場復帰をスムーズに進めるためにも、事前の情報収集と計画的な準備、職場と連携を取るように心がけましょう。また、インターネット上にも公的機関の情報が掲載されているため、参考にしながら手続きを進めるとさらにスムーズに手続きできます。

育休取得において疑問や不安がある場合は、労働基準監督署の雇用環境・均等部などの公的機関に相談することも検討してみてください。

パートも育休が取りやすい環境を整えよう

育休は、雇用形態に関係なくパートでも取得可能です。育休は、法律で認められている制度であるため、女性だけでなく男性も取得できます。ただし、育休を取得するには条件を満たしている必要があります。

企業は、従業員が安心して育休を取得できるようにサポートし、相談窓口を設置することも大切です。企業や従業員が安心して育休を取得できるように支えるためには、ぜひ本記事を参考にしてみてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事