• 更新日 : 2023年1月31日

月の途中で退職した従業員の社会保険料は控除できる?

月の途中で退職した従業員の社会保険料は控除できる?

従業員の退職は月末だけとは限りません。月末に退職したときと月の途中で退職したときとでは、いつまでの分の社会保険料を控除する必要があるのかを迷うことがあるでしょう。
給与計算で間違いやすい、従業員が月末に退職した場合と月の途中で退職した場合の社会保険料の控除の方法や、退職後の社会保険の資格喪失の手続きについて解説します。

月の途中で退職した従業員の社会保険料は控除できる?

従業員が月の途中で退職した場合、社会保険料は退職日ギリギリまで控除できるのでは?と考える方もいるでしょう。しかし結論からいうと、月の途中で会社を辞めた従業員の退職月分の社会保険料を、給与から控除する必要はありません。

社会保険料は月を単位として徴収することになっているため、日割り計算をする必要はありません。また、社会保険料は前月分の社会保険料を当月分の給与から控除するルールになっており、保険料の納付が必要な期間は「被保険者となった月」から「被保険者の資格を喪失した月の前月」、つまり「退職日の翌日が属する月の前月」までの分が徴収されるルールになっています。うっかり退職月分の社会保険料を給料から控除しないように注意が必要です。

たとえば9月20日付で退職した場合、9月分の社会保険料は発生しませんので、8月分の社会保険料を9月に支払う給与から控除するのが最後になります。

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退職日と社会保険料控除の関係は?

社会保険料の徴収は「被保険者の資格を喪失した日が属する月の前月」までであることは、すでにお伝えしたとおりです。さらに社会保険の資格の喪失日については、「退職日」がそのまま資格喪失日になるのではなく、「退職日の翌日」に資格を失うことになる点に注意が必要です。

この点をおさえていないと、実務でもミスが発生してしまいます。ここからは以下の3つの事例において、それぞれいつまで社会保険料を控除する必要があるのかを見ていきましょう。ケース別の対応をお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてください。

月末に退職した場合

たとえば月末である10月31日に退職した場合、翌日の11月1日に被保険者の資格を失うことになります。被保険者が資格を失った月の保険料は発生しないため、資格喪失日が含まれる11月分の社会保険料を控除する必要はありません。

しかし、退職日が存在する10月分までは社会保険料が発生するため給与からの控除が必要です。

従業員が退職する際、社会保険料は、退職した月の分とその前月の分を退職月に支払われる給与から控除できることになっています。給与の締切日と支払日が「月末締め翌月10日払い」というように、11月に支払う給与がある場合は、10月分の社会保険料を11月に支払う給与から控除して問題ありません。しかし、「月末締め当月25日払い」というように、11月に支払う給与が発生しないケースでは、9月と10月の2ヵ月分の社会保険料を退職月である10月に支払う給与からまとめて控除します。

同じ月末退職でも、給与の締切日と支払日によって2ヵ月分まとめて社会保険料を控除するケースがあるので注意しましょう。

30日付け(月末1日前)で退職した場合

一方、月末の1日前に退職した場合はどうでしょう。ここでは、10月30日付で退職したケースを考えてみます。

10月30日付けで退職した場合、被保険者の資格を失うのはその翌日、10月31日です。この場合、資格を失った月である10月分の保険料は発生しないため、前月の9月分までを控除することになります。

つまり、退職月の前月分の保険料が、退職した月に支払う給与から控除されるというわけです。月末に退職をするか、月末の1日前であるかというわずか1日の違いで、社会保険料の発生が1ヵ月分変動するという点がポイントです。

15日付けで退職した場合

15日付けで退職した場合も、基本的に前項の「月末1日前」と同じように考えれば問題ありません。9月15日付けで退職した場合、資格喪失するのは9月16日になります。

資格喪失した月分の保険料は控除しないというルールを踏まえ、その前月の8月分までの保険料を控除します。

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賞与を受け取って退職した場合の控除について

退職月に賞与を受け取っていた場合も同様に資格喪失日(退職日の翌日)を基準に考えます。

通常であれば賞与からも社会保険料を控除しますが、賞与を支払った月の途中で従業員が退職した場合には、退職月の社会保険料は発生しませんので保険料を控除をする必要はありません。
月末に退職した場合のみ、資格喪失日が翌月の1日となりますので、支給する賞与から社会保険料を控除します。

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従業員退職後の社会保険の資格喪失手続きは?

従業員が退職したら退職日の翌日から5日以内に、事業所を管轄する年金事務所に行き、社会保険の資格喪失手続きをしましょう。毎日がせわしないと、5日はあっというまに過ぎるため、資格喪失の手続きの期限を過ぎないように注意しなければなりません。

年金事務所へは「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出します。協会けんぽの場合には本人から回収した「健康保険被保険者証」を、扶養者がいる場合はその分もあわせて添付します。

そのほか、「高齢受給者証」や「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」などが交付されている場合は、一緒に添付しましょう。

健康保険証の紛失によって提出できない場合には、「健康保険被保険者証回収不能届」を添付する必要があります。

年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出すると、後日「健康保険被保険者資格喪失確認通知書」が送られてきます。
退職者が国民健康保険に加入する際、多くの市区町村で「健康保険資格喪失証明書」を必要とします。「健康保険資格喪失証明書」は会社で任意の書式で作成する証明書です。退職者から請求があった場合には、速やかに発行しましょう。

なお、協会けんぽの場合、国民健康保険に加入する際の資格喪失日などを証明する書類として、退職者自身で「健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失等確認請求書」を提出することにより「健康保険・厚生年金保険資格取得・資格喪失等確認通知書」の交付を受けることも可能です。

参考:国民健康保険等に加入するため、健康保険の資格喪失証明等が必要になったとき|日本年金機構

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社会保険料は日割りではなく月割りで計算する

社会保険料は日割り計算をせず、月割りで計算を行うことがポイントです。また「被保険者となった月」から「被保険者でなくなった月の前月」までの分が徴収されるため、たとえば15日付けで退職した場合、退職月分の社会保険料を控除することはできません。この場合、退職月の前の月分までが社会保険料の控除の対象になります。

さらに、社会保険の被保険者の資格を失うのは、その翌日です。そのため、15日付け退職のケースでは、資格喪失するのは16日になる点も必ずおさえましょう。
間違えやすい項目であるため、担当者は正しく理解して、ミスが起きないように努めましょう。

社会保険料控除の仕組みを知って正しい給与計算を

従業員が月の途中で退職した場合には、退職月分の社会保険料は発生しないため、退職した月の前月分の社会保険料を給与から控除します。しかし、月末に退職した場合には資格喪失日が翌月の1日となるため、退職した月の社会保険料の控除が必要です。月末に退職した場合、給与の締切日と支払日によっては2ヵ月分まとめて社会保険料を控除しなければならないケースもあるので注意しましょう。

保険料の控除を間違えると、退職した従業員に説明し、後日返金するなどの対応が必要となります。社会保険料控除の仕組みを正しく理解して、給与計算にミスが生じないようにしましょう。

よくある質問

月の途中で退職した従業員の社会保険料は控除できる?

在籍していた最後の月からは、社会保険料を控除することはできません。詳しくはこちらをご覧ください。

15日付けで退職した場合の社会保険料はどうなる?

退職月の社会保険料は控除できません。退職月の前月までの社会保険料を控除します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:加治 直樹(経営労務コンサルタント)

銀行に20年以上勤務し、融資融資から資産運用、年金相談まで幅広く相談業務の経験あり。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタント。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は行政で企業及び労働者の労働相談業務を行いながら、セミナー講師など幅広く活動中。

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