- 更新日 : 2024年9月13日
労災の申請に必要な書類 – 作成および提出方法について解説
労働者が業務上または通勤により負傷した場合、労災保険の申請を行い労働基準監督署長の認定を経て労災給付を受けることができます。労災給付には療養や休業など、さまざまな給付がありますが、その種類によって労災の書類である申請書も異なります。
今回は、労災の基準や労災保険の申請に必要な書類、手続き、提出先などについて見ていきます。
目次
労災保険とは?
労災保険とは、労働者を対象に、業務上または通勤が原因の怪我や病気に対して必要な保険給付を行う制度です。原則、労働者を一人でも使用する事業の場合は、その業種の規模を問わず適用されます。労働者であれば、正社員、パート・アルバイトなどの雇用形態は関係ありません。
適用条件や申請手続き方法、補償内容などの詳細については下記の記事を参照してください。
労災が起こるのはどんな時?労災の基準は?
では、労災はなぜ起こるのでしょうか?厚生労働省の分析によると、「何らかの不安全状態が原因にあるもの」(物的要因)と「何らかの不安全行動が原因にあるもの」(人的要因)が要因であるとしています。
それぞれの原因の例としては以下のようなものが挙げられます。
何らかの不安全な状態が原因にあるものの例
- 物自体の欠陥
- 保護具・服装の欠陥
- 作業方法の欠陥 など
何らかの不安全な行動が原因にあるものの例
- 機械装置等の指定外使用
- 保護具・服装の誤り
- 危険な場所等への接近 など
次に、労災として認定される基準について説明します。
労災の認定基準とは、労働者に対して国が労災として給付をするかどうかを認定する際の基準をいいます。業務上による負傷や疾病の際の労災では下記の2つの要件を満たしていれば労災が認定されることになります。
- 業務遂行性:労働契約に基づき事業主の支配下にある状態で起きた負傷や疾病であること
- 業務起因性:業務に起因して生じた負傷や疾病であること
これに対して、精神障害や過労死の労災認定については、下記のような要件を満たす場合に認定されることになります。
- パワハラや極端な長時間労働といった「業務による強いストレス」があったこと
- 上記の後、およそ6か月以内に精神疾患を発症したこと
- 離婚や親族の死亡、精神疾患の既往歴など、業務以外の要因で精神疾患を発症させるような事情はなかったこと
上記のようなそれぞれの要件を満たしているかを総合的に判断して労災が認定されるのです。
労災の申請に必要な書類とは?
労災保険の支給手続きに必要な書類は給付の種類に応じて異なります。給付の種類によって必要な書類を準備して申請してください。必要な申請書の様式の一覧や添付書類について記載します。
各種給付請求書
申請する給付の種類によって提出が必要な請求書が異なりますので確認して準備してください。
治療費等の領収書
療養の費用を請求(様式第7号、様式第16号の5)する場合には、治療費等に要した費用の明細書と医療機関等の領収書を添付します。
賃金台帳・出勤簿の写し
休業(補償)等給付を請求する際に、申請内容の確認のために賃金台帳や出勤簿の写しの提出を求められることがあります。
後遺障害診断書等
療養を続けても何らかの症状が残ってしまった場合、医師からは症状固定という診断が出ます。労災保険では、症状固定のことを「治癒」といいます。
障害(補償)等給付において必要になりますが、症状固定になった場合には、医師に後遺障害に関する診断書の作成を依頼して必要な給付の請求時に添付します。
死亡診断書・戸籍謄本等
障害(補償)年金差額一時金の支給申請を行う際には請求書と一緒に死亡診断書や戸籍謄本または抄本を添付します。
労災および労災保険受給の手続き – 提出先など
労災保険の手続きは、基本的には下記のような流れになります。
- 労災保険指定医療機関、または、最寄りの医療機関で診察を受ける
- 請求する補償に応じた必要書類(診断書等)を準備する
- 請求書類を作成し、事業主が必要事項を証明する
- 請求書類と添付書類の提出先を確認して提出する
- 支給決定
それぞれの給付に関する手続きの詳細は下記をご参照ください。
また、労災保険の申請書類は給付の種類によって提出する先が異なっています。多くの手続きは所轄の労働基準監督署長あてに提出しますが、受診した病院に提出する書類もあります。提出先については下記のようになります。
労災事故報告書のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
労災の必要書類を再確認しましょう
労働災害は起こさないのが基本ですが、万が一、労災事故が起きてしまった場合でも、迅速で正確な対応で少しでも早く被災した労働者が復帰できるように支援していかないといけません。
労災給付の基礎的な知識を深めて、実際に労災事故が起きた時に正確な申請ができるようにもう一度確認しておいてください。
よくある質問
労災の申請に必要な書類について教えてください。
労災保険の申請には所定様式の請求書と添付書類が必要です。請求書は労働基準監督署で入手するか、あるいは厚生労働省のHPからダウンロードできます。詳しくはこちらをご覧ください。
労災保険の受給について、必要な手続きを教えてください。
業務上または通勤による怪我や病気は、労災保険指定医療機関、または最寄りの医療機関で診察を受けます。次に給付に応じた必要書類を準備し、事業主が請求書類を記入して、所轄の労働基準監督署に提出します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
男性の育休とは?期間や給付金、法改正に伴う企業の取り組みを解説
男性の子育て支援を目的に、産後パパ育休の新設などさまざまな法改正が行われているため、企業の担当者は育休に関する諸制度や法改正を正しく理解することが重要です。 本記事では、男性の育休について解説します。育休の種類や期間、育休中の給与や従業員向…
詳しくみる社会保険の任意加入とは?メリットや任意適用事業所の申請手続きを解説!
厚生年金と健康保険からなる社会保険は、適用事業所に所属し、条件を満たした全従業員が加入しなければならない強制保険制度です。適用事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があります。適用されない事業所であっても、任意適用を受けることで社会保険…
詳しくみる厚生年金と国民年金の違い – 差額や切り替え方法
公的年金制度と言われるものには国民年金、厚生年金の2つの制度があります。それぞれ支払う保険料や受給できる額、手続き方法に違いがあります。今回は、この2つの年金制度の違いや国民年金と厚生年金の間で切り替えが発生した場合の手続き方法、保険料を両…
詳しくみるぎっくり腰は労災認定される?仕事で発症した腰痛の認定基準や休業補償の金額などを解説
職場での何気ない動作や急な負荷によって、突然襲ってくるぎっくり腰。想定外の痛みとともに業務が中断されることも多く、「これは労災になるのか?」と悩まれる方も少なくありません。実は、ぎっくり腰も一定の条件を満たせば、労働災害として認定される可能…
詳しくみる労災保険の休業補償とは?金額や手続きについて解説
労災は企業にとって軽視できない問題です。企業としては職場環境の改善などで労災の発生を抑制するだけでなく、労災発生後にも適切な対応が求められます。従業員の収入を保護するためにも、労災保険の休業補償について正しく理解しなくてはなりません。そこで…
詳しくみる会社員が加入する年金制度とは?厚生年金や企業年金など
会社や個人事業主が従業員を雇用すると、厚生年金に加入させる義務があります。会社によっては、企業年金を実施しているところもあるでしょう。 人事労務などの担当者になった場合、所定の手続きを行う必要がありますが、その前に制度の基本的なことを知って…
詳しくみる