- 更新日 : 2024年10月18日
障害者雇用とは?制度の概要や一般雇用との違い
障害者雇用とは、障害者雇用促進法に定められた障害者の安定就労を目的とした制度です。この制度により、会社は一定割合以上の障害者を雇用する義務があります。本記事では、障害者雇用制度の概要、障害者雇用率や企業側の義務などに加え、障害者雇用枠で働くメリットやデメリット、一般就労との違いなどについて、わかりやすく解説します。
目次
障害者雇用とは?
障害者雇用とは、障害者の職業の安定のために、障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)に定められた制度です。
企業や自治体は、法定雇用率以上の障害者を雇う義務があり、また障害者の就労時の支障を取り除くための合理的配慮をしなければなりません。なお、障害者雇用の対象となるのは「障害者手帳の所持者」です。
障害者雇用と一般雇用の違い
障害者の就職には、障害者雇用か一般雇用かの選択肢があります。障害者雇用では、障害者であることを開示して応募し、障害者枠で採用されます。
また障害者は、一般雇用枠へ応募もできます。このとき障害者であることを開示するかしないかは、本人の自由です。
障害者雇用は一般雇用より求人数が少なく、職種も限定される傾向にあります。また全体的に、一般雇用と比べ賃金水準が低いことも少なくありません。
しかし障害者雇用では、従業員の障害について会社側の理解があるため、配慮を受けながら働けます。そのため、障害者枠で就職した従業員の定着率は、一般枠で採用された場合より高いといわれています。
障害者雇用の対象者は?
障害者雇用の対象となるのは、次に該当する人です。
- 1~6級の身体障害者手帳を所持している人
- 児童相談所などで知的障害者と判定され、療育手帳を交付された人
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
なお、上記と同様の障害状態にあっても、手帳を所持していない場合は障害者雇用の対象にはなりません。
参考:厚生労働省 障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~
障害者雇用に関連する法律
障害者雇用に関連する法律には、障害者雇用率制度、障害者雇用促進法、また合理的配慮の提供義務などがあります。
障害者雇用率制度(法定雇用率)
障害者雇用率制度とは、すべての事業主に対して、法定雇用率以上の障害者の雇用を義務づける制度です。この制度は障害者雇用促進法に定められています。
2023年現在、民間企業の法定雇用率は2.3パーセントで、44人以上の従業員を雇う事業主は、1人以上の障害者雇用義務があります。
障害者雇用率の算定では、次のように人数をカウントします。
- 週所定労働時間が30時間以上の場合は、1人を「1人」
- 週所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合は、1人を「0.5人」
- 重度身体障害と重度知的障害は、1人を「2人」
精神障害者については、週所定労働時間が20時間以上30時間未満の場合も「1人」と計算します。また2024年4月からは、週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度障害者については、1人を「0.5人」と算定します。
法定雇用率を満たしていない事業主は「障害者雇用納付金」を納めなければなりません。障害者雇用納付金は、不足1人につき月額5万円です。一方、法定雇用率を超過して障害者を雇用している事業主は、超過1人につき月額2万7,000円の「障害者雇用調整金」を受けられます。
なお、障害者雇用納付金・障害者雇用調整金ともに、常時雇用労働者101人以上の事業所が対象です。
障害者雇用促進法
障害者雇用促進法(正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」)は、障害者の職業の安定を目的とする法律です。
この法律には障害者雇用率制度を始め、職業リハビリテーションや職業紹介、障害者への差別禁止、合理的配慮の提供義務などが定められています。
合理的配慮の提供義務
事業主は、雇用している障害者に対し、合理的配慮をしなければなりません。
合理的配慮とは、障害者がその障害により募集、採用、就労などに支障があるときに、その支障を取り除くための措置です。この合理的配慮の提供は、障害者雇用促進法の改正に伴い、2016年4月1日より事業主の義務とされました。
合理的配慮の具体例を挙げてみましょう。
- 聴覚・言語障害がある求職者に対し、筆談などにより面接を行う
- 肢体不自由である従業員に対し、机の高さを調節し作業ができるようにする
- 精神障害がある従業員対し、出退勤時刻、休暇、休憩、通院などに配慮する
なお合理的配慮は、事業主の「過重な負担」とならない範囲で行うこととされています。
障害者雇用で働くメリット
障害を持つ人は、障害者雇用と一般雇用のどちらでも就労できます。ここでは、障害者雇用で働くメリットについて、従業員側の視点で説明します。
職場の人が障害について理解しているケースが多い
障害者雇用で働くメリットとして、障害について周囲の認識があることが挙げられます。あらかじめ障害者であることを開示しているため、障害があることを必要以上に気にする必要はありません。
障害者は、障害者雇用枠で就労することもできますが、一般枠で働くことも可能です。更に一般枠では、障害者であることの開示・非開示は本人の自由とされています。
しかし、障害者であることを開示せず一般枠で働く場合、会社側は障害について認識していないため、欠勤や休憩などについて必要な配慮を受けづらいかもしれません。
一方、障害者雇用では、会社側に障害者を受け入れる準備があるため、無理のない就労が可能です。
職場の人との間で配慮のある働き方ができる
障害者雇用では、採用の段階から、障害を持つ従業員の障害の特性について情報を共有します。
そのため会社は、障害に起因する職場での「困りごと」に対し、それを取り除くための配慮ができるようになります。
そうした配慮を受けられるため、障害のある従業員にとって就労上の支障の少ない、働きやすい職場となり、定着率も高くなるようです。
障害者雇用で働くデメリット
障害者雇用は一般雇用と比べ、求人数が少なく希望の職種を見つけにくい傾向があります。また障害者枠に応募するには、障害者手帳も必要です。
障害者手帳が必要
障害者雇用枠に応募するには、障害者手帳を持つ必要があります。仮に障害者に該当する障害があっても障害者手帳を所持していない場合は、障害者雇用の対象にはなりません。
そのため、まだ障害者手帳を持っていない場合は、就職活動の前に障害者手帳の交付申請を行うとよいでしょう。
求人数の少なさ
障害者枠の求人は、一般枠に比べ求人数が少ない傾向にあります。また職種も限定的になることが多く、希望の求人を探すには時間がかかるかもしれません。
障害者雇用で働くために使用できる社会制度
障害者の円滑な就職や就労には、専門機関による支援が重要です。ここでは、就労支援のための公的機関を紹介します。
公共職業安定所
公共職業安定所(ハローワーク)は、障害者が就職先を探すときに利用できる国の機関です。障害者枠または一般枠の職業紹介を行うだけでなく、仕事の選び方や履歴書の作成方法などについてのアドバイスも受けられます。
公共職業安定所では、就職を希望する障害者側と受け入れる企業側の双方に対し、就職から職場定着まで一連の支援を行います。令和4年度には、公共職業安定所を通じ10万件以上の障害者雇用が実現しました。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、障害者への専門的な職業リハビリテーションサービスを行っています。その他にも障害者に対する職業相談や職業準備支援、受け入れ企業への障害者雇用に関するアドバイスなども提供します。
独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構が運営する施設で、全国に拠点があります。
就労移行支援
一般就労を希望する障害者に対し必要な訓練を行い、就職や職場定着をサポートする制度です。障害者総合支援法にもとづく通所サービスで、標準支援期間は2年に設定されています。
障害者雇用に関する企業の義務
障害者雇用において、企業がしなければならない事項は次のとおりです。
- 法定雇用率以上の障害者を雇うこと
- 障害があることによる募集・採用・配置・賃金などに関する差別の禁止
- 障害者の就労について合理的配慮を行うこと
- 障害者雇用実態調査に対応すること
- 障害者職業生活相談員を選任すること(障害者が5名以上の場合)
- 障害者の解雇時にはハローワークに解雇届を提出すること
障害者雇用は会社側の理解が大切
障害者の雇用には、障害者雇用率、合理的配慮の提供、差別の禁止など、会社側が知っておかなければならない数々の制度があり、最初のうちは大変かもしれません。
しかし会社側が障害者雇用の諸制度をよく理解し、適切に受け入れることで、障害を持つ従業員は職場に定着し、その能力を充分に発揮してくれるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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