- 更新日 : 2026年8月4日
算定基礎届と月額変更届の違いとは?対象者・提出方法・記入手順を解説
算定基礎届は年1回の定時決定、月額変更届は給与変動時の随時改定で、提出タイミングと対象条件が異なります。
- 算定基礎届の提出期限は毎年7月1日〜10日
- 月額変更届は2等級以上変動で提出が必要
- 同時期は月額変更届の標準報酬月額が優先
Q. 月額変更届が必要になる条件は?
A. 固定的賃金の変動後3ヶ月の報酬平均で標準報酬月額が2等級以上変動し、各月の支払基礎日数が17日以上の場合に提出が必要です。
算定基礎届と月額変更届は、社会保険料の基準となる標準報酬月額を決定・変更するために企業が提出する書類です。両者は提出タイミングや対象者の条件が異なるため、それぞれの仕組みを正しく理解しておく必要があります。
本記事では、算定基礎届(定時決定)と月額変更届(随時改定)の違い、提出方法、記入時の注意点を体系的に解説します。バックオフィス担当者が手続きで迷わないよう、結論を先に示しながら具体的な手順まで紹介します。
算定基礎届とは?
算定基礎届とは、従業員の標準報酬月額を毎年見直すために提出する書類で、正式名称は「被保険者報酬月額算定基礎届」です。この手続きは「定時決定」と呼ばれ、毎年1回実施されます。
標準報酬月額は、健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料といった社会保険料の算出基準となる金額です。厚生労働大臣が届出内容にもとづいて毎年1回決定し直す仕組みであり、決定された標準報酬月額は9月から翌年8月まで適用されます。算定基礎届は社会保険料の算定根拠そのものを左右するため、提出期限を守ることが重要です。
算定基礎届について、より詳しい解説は以下の記事も参考にしてください。
標準報酬月額がどのように等級へ当てはめられるかについては、以下のページも参考にしてください。
算定基礎届の対象者と提出が不要なケース
算定基礎届は、7月1日現在のすべての被保険者が提出対象です。正社員に限らず、アルバイト・パートタイマー、育児休業や介護休業中の従業員、傷病で休職中の社会保険加入者も対象に含まれます。
一方で、下記に該当する従業員は算定基礎届の提出対象から除外されます。
- 6月1日以降に資格を取得した従業員
- 6月30日以前に退職した従業員
- 7月改定の月額変更届を提出する従業員
- 8月または9月に随時改定が予定され、申出を行った従業員
対象外の条件を正しく把握しておくことで、誤った届出や記入漏れを防げます。
算定基礎届の提出期限と提出先
算定基礎届の提出期限は、毎年7月1日から7月10日までです。提出先は管轄の年金事務所、または日本年金機構の事務センターとなります。
提出方法には、紙の届出用紙、電子申請、電子媒体(CD・DVD)の3種類があり、企業の規模や業務フローに応じて選択できます。次の章で、それぞれの提出方法を具体的に解説します。
STEP1:届出用紙で提出する場合
届出用紙で算定基礎届を提出する場合は、必要書類を準備し、同封の返信用封筒で事務センターへ郵送するか、年金事務所に直接持参します。
提出する書類は、被保険者報酬月額算定基礎届、該当者がいる場合の被保険者報酬月額変更届、70歳以上の被用者がいる場合や報酬変更があった場合の追加書類です。事前に記入内容を確認し、期限内に提出を完了させましょう。
STEP2:電子申請で提出する場合
電子申請では、CSVファイル形式で届出データを作成し、オンラインで提出します。紙の郵送や持参が不要になるため、手続きの手間を大幅に省けます。
日本年金機構が提供する届書作成プログラムを使ってデータを作成し、提出先である電子政府の総合窓口(e-Gov)にアップロードする流れです。不明点がある場合は、日本年金機構や e-Gov の窓口で確認できます。
STEP3:電子媒体(CD・DVD)で提出する場合
電子媒体で提出する場合は、届書作成プログラムで作成したデータをCDまたはDVDに保存し、事業所名・提出元ID・媒体通番を油性ペンで記入して提出します。
必要な提出物は、作成したCDまたはDVD、電子媒体届書総括票、該当者がいる場合の被保険者報酬月額変更届です。事前に届書作成プログラムで正確なデータを準備しておくことが、スムーズな提出につながります。
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月額変更届とは?
月額変更届とは、従業員の給与が大きく変動した際に標準報酬月額を変更するための届出で、この見直しは「随時改定」と呼ばれます。
通常、標準報酬月額は4月から6月の給与をもとに決定され9月から適用されますが、昇給・降給や手当の増減により給与が大きく変わった場合は、次の定時決定を待たずに月額変更届を提出することで、実態に合った保険料へ変更できます。
月額変更届について、より詳しい解説は以下の記事も参考にしてください。
月額変更届の提出が必要になる3つの条件
月額変更届は、次の3つの条件をすべて満たした場合に提出が必要になります。
- 昇給または降給などにより固定的賃金に変動があったこと
- 変動月から3ヶ月間の報酬平均額にもとづき算定した結果、標準報酬月額が2等級以上変動したこと
- 変動後の3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上であること
これら3条件がすべて揃った場合のみ随時改定の対象となり、月額変更届の提出によって標準報酬月額が更新されます。
月額変更届の対象にならないケース
休職中の固定的賃金の変動や、非固定的賃金(残業手当・皆勤手当など)による報酬変動は、月額変更届の対象になりません。
休職中に低額の休職給を受けている場合は、休職明けに随時改定の要件を判断します。また、昇給・降給があっても、その変動が非固定的賃金によるものであれば随時改定の対象外です。これらのケースでは標準報酬月額の変更手続きは不要です。
残業代と随時改定の関係をより詳しく確認したい場合は、以下のページも参考にしてください。
月額変更届の提出先と手続き方法
月額変更届は、管轄の年金事務所または事務センターに提出します。協会けんぽ以外の組合健保や共済組合に加入している場合は、各組合への提出も必要です。
提出方法は窓口、郵送、電子申請の3種類です。資本金1億円超の法人や投資法人などは電子申請が義務化されているため、オンライン手続きが必須となります。義務化対象でない企業でも、電子申請は手続き時間の短縮につながるため積極的な活用が推奨されます。
参考:2020年4⽉から特定の法人について電子申請が義務化されます。|厚生労働省
算定基礎届と月額変更届の違いは?
算定基礎届と月額変更届は、いずれも標準報酬月額を確定させる届出ですが、提出のタイミングと適用の仕組みが異なります。算定基礎届は毎年1回の定時決定、月額変更届は給与変動時に随時行う随時改定という位置づけです。
| 項目 | 算定基礎届(定時決定) | 月額変更届(随時改定) |
|---|---|---|
| 提出時期 | 毎年7月1日~7月10日 | 給与変動が確定したタイミングで随時 |
| 算定対象期間 | 4月~6月の報酬 | 固定的賃金変動後の3ヶ月間 |
| 適用開始月 | 9月から翌年8月まで | 変動後の報酬発生月から4ヶ月目 |
| 提出頻度 | 年1回 | 対象者が出るたびに提出 |
算定基礎届と月額変更届、どちらの標準報酬月額が優先されるか
7月・8月・9月に随時改定の対象者がいる場合は、その期間に決定された標準報酬月額が優先されます。算定基礎届がすでに提出されていても、新たに決定された月額変更届の内容が優先して適用される仕組みです。
算定基礎届の提出後に報酬変更があった場合は、速やかに月額変更届を提出し、正しい標準報酬月額を反映させることが大切です。タイミングを見極めて手続きを行い、社会保険料の算定誤りを防ぎましょう。
参考:算定基礎届と月額変更届(7月・8月・9月改定分)では、どちらの標準報酬月額が優先されますか|日本年金機構
算定基礎届と月額変更届は同時に提出可能
算定基礎届と月額変更届は同時に提出可能で、提出タイミングや内容に応じて同時提出、または月額変更届を先に提出することが推奨されています。
特に7月の月額変更届は、6月の給与支払い後速やかに提出する必要があるため、算定基礎届と同時、または先に提出するのが望ましいとされています。この時期は月額変更届の提出漏れや遅延が起こりやすいため注意が必要です。両者を同時に提出することで、社会保険料の算定が正確に行われ、手続きがスムーズに進みます。なお、電子媒体や電子申請で提出する場合は、それぞれのファイルを別々に作成する必要があります。
算定基礎届の記入方法は?
算定基礎届は、支払基礎日数・通貨と現物支給額・総計額・平均額といった項目を正確に記入する必要があります。記入を誤ると標準報酬月額の算定結果に影響するため、提出前に各項目を確認することが重要です。

引用:被保険者報酬月額算定基礎届 70歳以上被用者算定基礎届|日本年金機構
支払基礎日数の記入方法
支払基礎日数とは、4月から6月の各月において実際に給与の支払対象となった日数のことです。算定基礎届の「日数」欄に記入します。
時給制・日給制の場合は、有給休暇を含む実際の出勤日数を支払基礎日数として記入します。月給制・週給制の場合は、出勤日数にかかわらず暦日数を使用しますが、欠勤日数分の給料が差し引かれる場合は、所定労働日数から欠勤日数を控除した日数を記入します。
【給与末日締、当月末日支払のケース】
| 月 | 暦日 | 支払基礎日数 |
|---|---|---|
| 4月 | 4月1日~30日 | 30日 |
| 5月 | 5月1日~31日 | 31日 |
| 6月 | 6月1日~30日 | 30日 |
【給与25日締、当月末日支払のケース】
| 月 | 暦日 | 支払基礎日数 |
|---|---|---|
| 4月 | 3月26日~4月25日 | 31日 |
| 5月 | 4月26日~5月25日 | 30日 |
| 6月 | 5月26日~6月25日 | 31日 |
参考:算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和8年度)|日本年金機構
通貨と現物支給額の記入方法
通貨欄には現金で支給された基本給や手当を、現物欄には食事や住宅など現金以外で支給された報酬を記入します。
現物支給は原則として時価に換算して記入しますが、食事や住宅など特定の支給品については、日本年金機構が公表する全国現物給与価額一覧表を参考に記入します。通貨と現物の支給額は合算し、「合計」欄にその月の合計額を記入することで、社会保険料の算出に必要なデータが整います。
参考:健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届(記入例)|日本年金機構
総計額・平均額の記入方法
総計欄には、支払基礎日数が17日以上の算定対象月における通貨と現物の合計額を記入し、平均額欄にはその総計額を算定対象月数で割った金額を記入します。
たとえば5月の支払基礎日数が15日だった場合、5月は算定対象月から除外され、4月と6月の報酬のみを合算して総計額を算出します。算定対象月が2ヶ月であれば合計額を2で割り、小数点以下は切り捨てて平均額を記入します。この平均額が最終的に標準報酬月額の決定根拠となるため、計算ミスがないよう注意が必要です。
参考:算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和8年度)|日本年金機構
算定基礎届を提出しなかったらどうなる?
算定基礎届を期限内に提出しないと、年金事務所から催告状が届く場合があります。さらに提出を怠り続けると、法律にもとづき6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
長期間の未提出が続くと、年金事務所による立ち入り調査が行われ、事業所や従業員に不利益が生じる恐れもあります。未提出が判明した場合は、速やかに算定基礎届を提出することが重要です。
月額変更届の記入方法は?
月額変更届では、被保険者情報・改定年月・従前の標準報酬月額・昇降給の内容・給与支給月・給与計算の基礎日数を正確に記入する必要があります。
| 記入項目 | 説明 |
|---|---|
| 被保険者情報 | 整理番号・氏名・生年月日 |
| 改定年月 | 給与変動後4ヶ月目を記入 |
| 従前の標準報酬月額 | 変更前の金額を記入 |
| 昇(降)給の内容 | 変更のあった月・増減の区分を記載 |
| 給与支給月 | 給与変動後の3ヶ月間を記載 |
| 給与計算の基礎日数 | 17日以上の支払いがあったことを証明 |
参考:健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額変更届(記入例)|日本年金機構
たとえば4月に昇給し、その給与が5月に支払われた場合、改定年月は8月となります。このタイミングで月額変更届を提出し、適正な標準報酬月額への変更を行います。
随時改定が反映されるタイミング
随時改定による標準報酬月額の変更は、固定的賃金が支払われた月から起算して4ヶ月目に反映されます。
社会保険料は、随時改定が反映された月の翌月に納付されるのが一般的です。ただし給与が翌月払いの企業では、実際に保険料が差し引かれるのは、変動後の給与が支払われた月を含めて5ヶ月目になる場合があります。企業の給与体系によって反映タイミングが異なるため、事前に正確なスケジュールを把握しておくことが重要です。
月額変更届を提出しなかったらどうなる?
月額変更届を提出しない場合も、厚生年金保険法にもとづき6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
月額変更届には算定基礎届のような明確な提出期限は定められていないため、手続きが多少遅れても、速やかに提出すれば罰則が適用されるケースは少ないとされています。しかし未提出のままにしていると、年金事務所から指摘を受け、あらためて提出を求められる場合があります。給与の固定的賃金に変動があった際は、速やかに手続きを行い提出漏れを防ぐことが企業のリスク管理につながります。
算定基礎届や月額変更届などの社会保険手続きにおける課題と業務負担
入社手続きで最も苦労する社会保険手続き
入退社時の社会保険手続きは、労務担当者にとって大きな負担となります。マネーフォワードが独自に実施した調査によると、入社手続きにおいてトラブルや苦労が発生しやすい項目として、社会保険(健康保険・厚生年金)や住民税の手続きを挙げた割合が最も多く39.0%でした。
手続きの不備がもたらす業務への影響
書類の不備や回収の遅延などのトラブルが生じた際、業務上最も影響が大きかった項目は担当者の残業時間の大幅な増加で37.5%に達しています。 年1回必ず発生する算定基礎届の提出や、給与が変動した際に必要となる月額変更届の作成といった、正確性を求められる社会保険の手続きにおいても、手作業に頼る運用ではさらなる業務負担や残業の増加につながりかねません。
算定基礎届と月額変更届を正しく理解して適切に提出しよう
算定基礎届と月額変更届は、どちらも標準報酬月額を決定し社会保険料を確定させるために欠かせない手続きです。算定基礎届は毎年1回の定時決定、月額変更届は給与変動時の随時改定として、それぞれ提出タイミングや対象条件が異なります。
両者の違いと優先関係を理解し、給与変動が生じた際は速やかに月額変更届を提出することで、社会保険料の算定誤りや罰則のリスクを防げます。期限と記入項目を正確に押さえ、適切な手続きを行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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