• 作成日 : 2023年1月13日

労働保険とは?労災保険と雇用保険の違いや事業主の加入手続きも解説!

労働保険とは?労災保険と雇用保険の違いや事業主の加入手続きも解説!

社会保険という用語は広く知られていますが、労働保険という用語はあまり認知されていないのではないでしょうか。

しかし、労働保険は働く労働者にとって不可欠な保険制度です。

本稿では社会保険における労働保険の位置付けと、その種類・内容、加入手続きの概要を解説します。

労働保険とは?労災保険と雇用保険の2種類

社会保険には、狭義の社会保険と労働保険があります。

狭義の社会保険とは、公的医療保険の健康保険と厚生年金保険などの公的年金のことです。労働保険は、労災保険と雇用保険の総称です。

労働保険

労災保険と雇用保険の違いは?

労災保険と雇用保険には、どのような違いがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

労災保険について、詳細は以下の記事を参照してください。

雇用保険について、詳細は以下の記事を参照してください。

労災保険とは

労災保険法は昭和22年に施行されました。同年に労働基準法も施行されましたが、これらは姉妹法とも呼ばれています。

労働基準法は労働条件の最低基準を定める法律として知られていますが、労働者に業務上の傷病、障害、死亡が発生したときには、使用者(事業主)に過失がなくても、被災労働者や遺族に補償しなければならないとしています(労働基準法第8章「災害補償」)。

しかし、実際には迅速かつ確実に補償されないことも想定されます。そこで、絵に描いた餅にならないように、万が一に備えて使用者は保険加入することを法律で義務付けました。この法律が労災保険法(労働者災害補償保険法)であり、姉妹法と呼ばれる理由です。

昭和48年(1973年)には、本来は使用者に補償責任のない通勤災害も給付対象に含めました。

労災保険の補償内容

労災保険の補償内容は、労働基準法で使用者に義務付けられている補償に対応しています。通勤災害は使用者の補償責任がないため、給付の名称に「補償」という言葉を使いません。

給付には、労働基準法で使用者に補償を義務付ける療養補償(治療代に相当)については療養(補償)給付、休業補償(生活補償に相当)については休業(補償)給付、障害が残った場合の障害補償に対応する障害(補償)給付、死亡した場合は遺族補償に対応する遺族(補償)給付などがあります。

療養(補償)給付には、現物給付の「療養の給付」と、現金給付(還付方式)としての「療養の費用の支給」がありますが、「療養の給付」が原則です。健康保険と異なり、被災労働者の自己負担はありません。

労災保険の対象となる労働者と適用条件

労災保険では法人・個人を問わず、従業員(パート、アルバイトなどを含む)を1人でも雇用していれば、強制適用事業となります。

使用されるすべての労働者が適用対象となり、仮にアルバイトの初日に労災事故に遭ったとしても保険給付が行われます。

労災保険の保険料・保険料率

労災保険の保険料は、本来使用者に補償責任があることから、全額が事業主負担となっています。

保険料は、労働者に支払われる賃金総額に業種ごとに定められた保険料率を乗じて算出されます。

労災保険の給付金申請方法

保険給付の請求手続きは、基本的に被災労働者が事業主を通じて所轄の労働基準監督署に所定の請求書を提出することになります。

ただし、保険給付によって請求方法は異なります。

例えば療養(補償)給付は、労働者が業務上または通勤による傷病により療養を必要とする場合に行われます。

これには、指定病院で受診した場合の現物給付としての「療養の給付」と、指定病院以外で受診して受診料を立て替えた後、還付される現金給付としての「療養の費用の支給」があります。

「療養の給付」は所定事項を記載した上で、診療を受けた指定病院を経由して労働基準監督署に提出します。

一方で「療養の費用の支給」は本人あるいは会社から労働基準監督署に提出します。

雇用保険とは

雇用保険法の前身である失業保険法は、労災保険法と同じく昭和22年に施行されました。もともと戦後の大量の失業者に対応するために、主として失業時の生活保障を目的としていました。

その後昭和50年に雇用保険法が施行され、失業以外にも給付範囲を拡大しました。その後も改正を重ね、現在は給付の内容は多岐にわたります。

雇用保険の補償内容

雇用保険の事業内容は、失業等給付、育児休業給付、付帯事業の3つに分かれます。

失業等給付は、さらに失業時の生活保障としての求職者給付、再就職を支援する就職促進給付、被保険者の主体的なスキルアップを支援する教育訓練給付、高齢や介護などで休業した際の給与を支援する雇用継続給付に分かれます。

育児休業給付はもともと雇用継続給付として位置付けられていましたが、労働者の育児休業を強力に支援するため、令和2年に失業等給付とは別になりました。

保険給付以外にも、失業の予防、雇用状態の是正および雇用機会の増大、労働者の能力の開発および向上、その他労働者の福祉の増進などを図るための付帯事業が行われています。

雇用保険の対象となる労働者と適用条件

雇用保険では、適用事業所で使用される従業員は正規・非正規といった雇用形態を問わず、加入義務があります。

ただし、次に該当する場合は適用除外とされ、被保険者となることはできません。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間未満である者
  2. 同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者

雇用保険の保険料・保険料率

雇用保険の保険料は加入者である労働者だけが支払うのではなく、事業主にも納付義務があります。保険給付のための保険料は労使折半ですが、付帯事業の保険料は事業主だけが負担します。

保険料は、労働者に支払われる賃金総額に事業種別ごとの保険料率を乗じて計算します。

雇用保険の給付金申請方法

雇用保険も、保険給付の種類によって手続きが異なります。在職中の手続きであれば、事業所所轄の公共職業安定所で所定の手続きを行いますが、失業後に本人が失業給付を受給する場合は本人の住所地の公共職業安定所で手続きを行います。

例えば、雇用保険の被保険者である従業員が離職した場合、事業所は「雇用保険被保険者資格喪失届」と、給付額などの決定に必要な「離職証明書」を所轄の公共職業安定所に提出します。その際に出勤簿、退職辞令発令書類、労働者名簿、賃金台帳、離職証明書などの離職理由が確認できる書類なども提出します。

離職した本人は、住所地の公共職業安定所に出頭して求職を申し込んだ後、事業主から渡された「離職証-1」と「離職票-2」を提出します。

受給者説明会に出席する際に「受給資格者証」「失業認定申告書」を記載します。失業の認定日に失業が認定されれば、失業給付である基本手当が指定口座に振り込まれます。

労災保険と雇用保険の加入手続きは事業主側が行う

労働保険の加入手続きには、事業所の新規適用手続きと、被保険者(雇用保険)の被保険者資格取得の手続きがあります。

適用事業所の加入手続き

労働保険の強制適用事業となったときは、まず労働保険の保険関係成立の手続きを所轄の労働基準監督署または公共職業安定所で行います。

具体的には、労災保険と雇用保険の適用事業所の手続きでは、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署に提出します。

また、「概算保険料申告書」を保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に所轄の労働基準監督署、都道府県労働局、金融機関のいずれかに提出し、概算保険料を納付する必要があります。

雇用保険の被保険者加入手続き

雇用保険については、上記の事業所の加入手続き以外にも手続きがあります。

「雇用保険適用事業所設置届」を設置日の翌日から起算して10日以内に、「被保険者資格取得届」を資格取得の事実があった日の翌月10日までに、いずれも所轄の公共職業安定所に提出します。

労災保険と雇用保険に未加入の場合はどうなる?

労働保険は原則として強制加入であり、事業主は保険関係の成立手続きを行い、労働保険料を納付する義務があります。

労働局などから成立手続きを行うよう指導を受けたにもかかわらず、手続きを行わない事業主に対しては、政府が職権により成立手続きと労働保険料の認定決定を行います。

労働保険では、未加入期間についても遡って労働保険料を徴収するだけでなく、納付すべき額に100分の10を乗じて得た額の追徴金を徴収することになっています(徴収法第21条)。

未加入期間中に労災事故が発生した場合、被災労働者には労災保険から保険給付が行われますが、事業主からは追徴金だけでなく、保険給付に要した費用の全部または一部も徴収します。

労働保険とは何か、加入手続きについても知っておこう!

社会保険における労働保険の位置付けと、その種類と内容、加入手続きの概要を解説しました。

労働保険は会社員など雇用される労働者にとって、非常に重要な社会保険です。制度は複雑ですが、人事労務担当者や事業主だけでなく、労働者自身も概要は知っておきたいものです。

よくある質問

労災保険とは何ですか?

労働者の業務上あるいは通勤途上で発生した傷病、障害、死亡に対して必要な給付を行う労働保険です。詳しくはこちらをご覧ください。

雇用保険とは何ですか?

被保険者が失業したとき、高齢・介護など雇用の継続が困難になったとき、育児で休業するときなどに必要な給付を行う労働保険です。詳しくはこちらをご覧ください。


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