• 更新日 : 2023年11月10日

年末調整における扶養控除とは?扶養親族の条件や控除額、必要な手続きまで解説!

毎年の年末調整時に、「扶養する」「扶養控除」という言葉をよく耳にしませんか。「扶養」には「養う」という意味があります。例えば、ある会社員に大学生の子どもがいて、その子どもの生活費を負担している場合、扶養しているということになります。今回は、この扶養や年末調整における扶養控除、必要な手続きなどについて見ていきます。

扶養親族となる条件は?

扶養親族とするには、その年の12月31日の時点で以下の条件のすべてに該当していないといけません。

6親等内の血族及び3親等内の姻族(配偶者を除く)

「血族」とは、納税者本人の親族のことで、「姻族」とは、納税者の配偶者の親族のことをいいます。家系図を描くと分かりやすく親等を数えることができます。例えば、両親や子どもは1親等、兄弟姉妹・祖父母・孫は2親等です。

「扶養」という言葉からは、自分の配偶者や子どもなど、下の世代を養うというイメージがあります。しかし、実際は上の世代の人でも扶養控除の対象となり得ます。

納税者本人の親族の場合は、「6親等」と広範囲のカバーができます。

同一生計

同一生計とは、「日常の生活の資を共にする」という意味ですが、必ずしも同居して生活費を共有している必要はなく、納税者本人の収入で生活費を共有している親族であれば、同居していなくても問題ありません。

例えば、以下の場合は、別居していても「同一生計」であるといえます。

  • 納税者本人の単身赴任や納税者の子どもが遠方の大学への入学により別居中の親族に仕送りを行っている場合
  • 納税者が病気のため入院中の親族の療養費を負担している場合

合計所得金額48万円以下

年末調整の扶養控除の対象となる親族は、無収入の人に限りません。合計所得金額が48万円以下なら、扶養親族となります。

この場合の「所得」とは、実際に得た収入金額とは一致しません。税法上での所得とは、収入から所得控除などの必要経費を差し引きした金額を指すからです。必要経費は、所得の種類別によって異なります。

 

1.パート・アルバイトの場合「年収103万円以下」

パート・アルバイトは、提供した労働の対価として給与を支払われる労働者のことです。

給与所得は、「収入 - 給与所得控除額(最低ライン55万円)」で求められるため、年収が103万円以下の場合は、「103万円 - 55万円 = 48万円」により、48万円以下となり、合計所得金額48万円以下の条件を満たします。

※平成30年度改正により、令和2年分以降の所得税における配偶者の合計所得金額が38万円から48万円に引上げられました。ただし一方で、給与所得控除は65万円から55万円に引き下げられたので給与収入換算は55万円+48万円=103万円と変わりません。

 

2.年金受給者の場合「65歳を境に計算法が異なる」

ここでいう年金とは、国民年金・厚生年金などの公的年金等をいいます。

公的年金等を受給した場合の所得金額は、「年金の受給額 - 公的年金等控除額」で求められますが、公的年金等控除額の最低額は、以下のように65歳を境にして異なります。

  • 65歳以上:110万円
  • 65歳未満:60万円

この金額に48万円を加えた金額が、扶養控除を受けることができる年金受給額のボーダーラインとなります。扶養している親族の収入が年金しかない場合に、年金額が158万円以下の65歳以上または年金額が108万円以下の65歳未満であれば、扶養控除が受けられます。

青色申告者の事業専従者ではない

親族が青色申告の事業専従者の場合、その年を通じて一回も給与の支払いを受けていない場合、または、白色申告者の事業専従者ではない場合も、扶養親族となる条件になります。

年末調整における扶養控除とは?

扶養控除とは、納税者本人に扶養している親族がいる場合に受けることができる所得控除のことです。

親族を養う納税者の経済的負担を軽くするために設けられている制度で、対象の扶養親族一人につき、あらかじめ決められた扶養控除を受けることができます。なお、配偶者に関しては配偶者控除の対象になるため、扶養控除を受けることはできません。

扶養控除の対象となる扶養親族とは?

扶養親族となる条件を満たせば必ず扶養控除に該当するというわけではありません。扶養控除の対象となるのは、その年の12月31日時点において16歳以上である扶養親族だけです。

16歳未満の扶養親族(年少扶養親族といいます)は、児童手当の対象になっていますので、扶養控除から除外になっています。

なお、対象の親族が年度の途中で亡くなった場合は、亡くなった時点で対象になる要件を満たしていれば扶養親族に該当し、扶養控除を受けることができます。

扶養控除の金額は?

扶養控除の金額については、年齢によって以下のような区分に分類されます。また、区分によって、控除額も異なります。区分ごとの説明と共に控除額も確認してください。

年齢区分控除額
16歳以上19歳未満控除対象扶養親族38万円
19歳以上23歳未満特定扶養親族63万円
23歳以上70歳未満控除対象扶養親族38万円
70歳以上老人扶養親族同居老親等
以外の人
48万円
同居老親等58万円

参考:No.1180 扶養控除|国税庁

一般の扶養親族(控除対象扶養親族)

扶養親族のうち、その年の12月31日時点において年齢が16歳以上の人のことをいいます。

特定扶養親族

扶養親族のうち、その年の12月31日時点において年齢が19歳以上23歳未満の人のことをいいます。

老人扶養親族

扶養親族のうち、その年の12月31日時点において年齢が70歳以上の人のことをいいます。

同居老親等

老人扶養親族のうち、納税者本人やその配偶者の直系尊属で、納税者本人や配偶者と同居している人のことをいいます。

同居しているかしていないかの判断は、その年の12月31日時点で判定します。

参考:専門用語集|国税庁

年末調整における扶養控除の手続きは?

令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書-扶養控除の手続き

出典:令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書|国税庁を加工して作成

申告書の内容は、上記の①~⑥に分かれています。

①納税者本人の基本情報
②源泉控除対象配偶者
③控除対象扶養親族(16歳以上)
④障害者、寡婦、ひとり親または勤労学生
⑤他の所得者が控除を受ける扶養親族等
⑥16歳未満の扶養親族

自分に家族がいない、もしくは、家族に該当者がいない場合には、①のみ記入し、年末調整まで待たずに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しましょう。年末調整時期に重なると年末調整のやり直しといった面倒な事態にもなりかねませんので、とにかくすぐに担当者に知らせるようにします。

自分の家族に該当者がいる場合には、1.を記入したうえで該当する項目を記入して提出します。扶養控除等(異動)申告書について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご確認ください。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方は、次の通りです。

①基本情報

給与支払者と給与所得者本人の情報について記入してください。

「給与の支払者の名称(氏名)」「給与の支払者の所在地」は、給与所得者本人が記入しても問題ありません。また、「給与支払者の法人(個人)番号」「あなたの個人番号」は原則として記入しますが、給与支払者が従業員やその配偶者、扶養親族のマイナンバーに関する帳簿を管理していれば省略できます。

なお給与支払者が法人の場合は、法人番号を記載した状態で給与所得者に渡しても問題ありません。

②源泉控除対象配偶者

配偶者控除の対象となる配偶者について記載してください。

ただし、令和2年分以後については、控除を受ける所得者の見積額が900万円を超える場合は、源泉控除対象配偶者には該当しませんので注意してください。

また合計所得見積金額が95万円超133万円以下の場合は、配偶者特別控除の対象配偶者となるため、別途「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出が必要になります。

③控除対象扶養親族

控除対象扶養親族は、扶養親族のうち、16歳以上の年齢の人を記入してください。

控除対象となる扶養親族には下記の4種類があります。

  1. 一般の扶養控除対象扶養親族:16歳以上の人
  2. 特定扶養親族:上記1.のうち19歳以上23歳未満の人
  3. 老人扶養親族:70歳以上の人
  4. 同居老親等:上記3.のうち同居している人

④障害者、寡婦、ひとり親または勤労学生

障害者欄は、本人、同一生計配偶者、扶養親族に障害者がいる場合に記入してください。

寡婦欄は、本人の所得見積額が500万円以下(給与所得のみの場合は収入額が6,777,778円以下)で、かつ事実上婚姻関係と同様と認められる人がおらず、次のいずれかに該当する人が記入してください。

  • 夫と離婚後に婚姻しておらず、扶養親族を有する人
  • 夫と死別後に婚姻していない人、または夫が生死不明な人

ひとり親欄は、本人の所得見積額が500万円以下で、かつ事実上婚姻関係と同様と認められる人がおらず、次のすべてに該当する人が記入してください。

  • 現在、婚姻していない人、または、配偶者の生死不明な人
  • 本人と生計を一にする子(他の人の同一生計配偶者・扶養親族になっておらず、所得額が48万円以下の子に限る)を有する人

勤労学生欄は次のすべてに該当する人が記入する欄です。

  • 大学生、高校生、一定の要件を満たした専修学校等の生徒、または、職業訓練法人の認定職業訓練を受ける訓練生であること
  • 自身の勤労で得た事業所得、給与所得、退職所得または雑所得があること
  • その年の所得見積額が75万円以下(給与所得のみの場合は、給与の収入額が130万円以下)であって、そのうち給与所得等以外の所得が10万円以下であること

⑤他の所得者が控除を受ける扶養親族等

納税者の同一生計内に複数の所得者がいる場合に、納税者の扶養親族等を他の所得者の扶養親族等としたり、その生計内の扶養親族等を分けて控除を受けたりする場合に記入してください。

⑥16歳未満の扶養親族

扶養親族のうち16歳未満の人について記載してください。

参考:令和5年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書|国税庁

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出方法

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書に必要な項目を記入し、会社に提出してください。提出時期は、該当の年の最初の給与支払日の前日までです。中途入社の場合は、入社後最初の給与支払日の前日までに提出してください。

提出した同年中に変更があった場合には、その変更日後、最初の給与支払日の前日までに変更内容を記載した申告書を会社に提出しましょう。

扶養親族と扶養控除の違いについて確認しましょう

扶養親族であったとしても必ずしも扶養控除の対象ではないということに注意して、正しい年末調整申告ができるように、事前に自身の扶養関係についても確認しておきましょう。

よくある質問

年末調整における扶養控除とは?

扶養控除とは、納税者本人に扶養する親族がいる場合に受けられる所得控除のことです。 親族を養う納税者の経済的負担を軽減するための制度で、対象者一人につきあらかじめ決められた扶養控除を受けることができます。詳しくはこちらをご覧ください。

扶養控除の対象となる扶養親族とは?

扶養控除の対象となる扶養親族は、その年の12月31日時点において16歳以上である扶養親族になります。16歳未満の扶養親族は、現在、児童手当の対象になっているため、扶養控除の対象からは除外されています。詳しくはこちらをご覧ください。


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