- 更新日 : 2024年1月19日
顧問とは?意味や種類および委託するメリットを解説!
企業経営における顧問の役割は多岐にわたります。顧問は、その専門知識と豊富な経験を活かして、経営戦略の策定や困難な課題への対応に貢献する重要な存在です。
この記事では、顧問の基本的な定義や種類、役割、法的な位置づけ、そして人事労務担当者が知っておくべき重要な点について詳しく解説します。
目次
顧問とは?
最初に企業における顧問の意味について、混同されやすい相談役、参与との違いを明確にしておきましょう。
相談役との違い
顧問と相談役は、しばしば混同されがちですが、役割と位置づけに明確な違いがあります。顧問は、主に企業や組織の外部から招かれる専門家で、特定の分野に関する専門的知識や経験を活かしてアドバイスを提供します。一方、相談役は、その企業や組織の元役員や長年勤務していた幹部社員が就くことが多く、組織の歴史や内部の事情に精通していることが一般的です。相談役は企業の伝統や文化の継承、内部の人材育成などに重点を置くことが多く、対内的なアドバイスを行います。
参与との違い
顧問と参与は、ともにアドバイザリーの役割を担いますが、役割と職務範囲において違いがあります。顧問は一般に、特定の専門分野に関する知識や経験を持つ外部の専門家として、企業や組織にアドバイスを提供する役割を果たします。顧問は通常、戦略的な意見や専門的な見解を提供することが求められます。
これに対し、参与は、組織内の特定の業務やプロジェクトに密接に関わり、具体的な業務の実行や運営に積極的に参加することが期待されることが多いといえます。参与は実務的な業務に関与し、より具体的な作業やプロジェクト管理に関与する特徴があります。
英語で顧問はどう呼ぶ?
英語で「顧問」は通常「advisor」または「consultant」と訳されます。Advisor(アドバイザー)は、特定の分野の専門知識を有し、組織や個人に対して専門的な助言やガイダンスを提供する人を指します。Consultant(コンサルタント)も同様に、専門知識を活用してアドバイスを行うプロフェッショナルを指す言葉です。ただし、コンサルタントは、特定のプロジェクトや問題に対する具体的な解決策を提供することが求められるため、より実務的な側面が強調されることがあります。いずれの場合も、これらの英語の用語は、組織外部からの専門的な知見と助言を提供する顧問の役割を的確に表現しているといえるでしょう。
顧問の種類
企業における顧問は、内部顧問と外部顧問の2つに分けることができます。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
内部顧問
内部顧問は、組織内部のメンバーが担う顧問の役割です。通常、その組織に長年勤め、深い知識と豊富な経験を蓄積している元役員や社員が選任されます。彼らは企業の文化、歴史、内部の動きに詳しく、組織の意思決定や戦略策定において重要な役割を担っています。
具体的には、組織内部の問題解決やプロジェクトの指導、若手社員のメンタリング、組織内のネットワーキング促進などを支援します。内部顧問は、その組織の深い理解に基づいて貴重な洞察を提供し、組織の成長と発展に貢献することが期待されます。
外部顧問
外部顧問は、組織の外部から招聘される専門家やコンサルタントです。特定の分野の専門知識や業界経験を有しており、新しい視点や独立した意見を提供します。一般に特定のプロジェクトや戦略策定、業務改善、または特定の専門分野に関するアドバイスの提供に関与します。
外部顧問は、特に新規事業の開発や市場分析、技術革新、法律や財務の専門的アドバイスが必要な場合に重宝されます。組織の内部にはない新鮮なアイデアや最新の業界知識をもたらし、企業が直面する複雑な課題に対する解決策を提供することが期待されています。
顧問の役割
内部顧問、外部顧問のいずれもその専門性によって担う役割があります。ここでは、代表的な4つの役割について詳しく説明していきます。
経営顧問
経営顧問は、企業の経営戦略やビジネスプランの策定において重要なアドバイザーの役割を果たします。豊富な経営経験や市場に関する深い知識を持ち、企業のトップマネジメントに対して戦略的な指導や助言を提供します。経営顧問の主な役割には、市場分析や競争戦略の開発、リスク管理、組織構造の最適化、財務計画の策定などが含まれます。
また、経営顧問は企業の長期的なビジョンの策定や、変化する市場環境への適応戦略の提案にも関与します。経営顧問は、企業が直面する課題を多角的な視点から分析し、持続可能な成長を促進するための戦略的なガイダンスを提供することで、企業の発展に大きく貢献します。
技術顧問
技術顧問は、企業の技術戦略の策定や新しい技術の導入に関して専門的なアドバイスを行います。特定の技術分野において高い専門知識を持ち、技術革新や製品開発に関する重要な洞察を提供します。技術顧問の役割には、最新の技術トレンドの分析や技術的なリスクの評価、新技術の導入に関する戦略的計画の策定、製品開発プロセスの最適化などが含まれます。
これ以外にも、社内の研究開発チームと協力してイノベーションを推進し、技術面での競争優位を確立するための支援を行います。技術顧問は、企業が技術の急速な進化に対応し、市場でのリードを保つために不可欠な役割を果たします。
販路開拓顧問
販路開拓顧問は、企業の新しい市場や顧客層へのアクセスを支援する専門家です。市場分析や競合研究、ターゲット顧客の特定、そして有効な販売戦略の策定に関する豊富な知識と経験を持っています。販路開拓顧問の主な役割は、新しい市場セグメントや流通チャネルの特定、ビジネスネットワークの構築支援、販売促進活動の戦略策定などです。また、地域特有の市場動向や文化的要因を考慮したアプローチを提案し、効果的なマーケティング戦略を企業にアドバイスします。
営業支援顧問
営業支援顧問は、企業の営業チームを支え、営業成果の向上を図る専門家です。営業戦略の策定や営業プロセスの最適化、効果的な顧客関係の構築など、営業活動全般に関する深い知識と経験を有します。営業支援顧問の主な職務には、営業チームのトレーニングとコーチング、営業プロセスの分析と改善、効果的な営業手法の導入、重要顧客との関係構築の支援などが含まれます。営業パフォーマンスの向上に不可欠な戦略的アドバイスを提供し、営業チームが目標を達成し、企業の収益増加に貢献するための支援を行います。
顧問の立場上の定義
顧問は、取締役が兼務する場合と退任後に就任する場合があります。それぞれの立場による意味の違いを確認しておきます。
取締役が地位を維持しながら兼任するケース
取締役が地位を維持しつつ顧問を兼任するケースでは、組織内で二重の役割を果たします。したがって、取締役としての責務と、顧問としてのアドバイザリーの役割を両立させる必要があります。取締役としては、企業の経営方針の策定や重要な意思決定に参加する一方、顧問としては特定の専門分野やプロジェクトに関する深い知識と経験を活かして具体的な助言や戦略的な指導を行います。
このような兼任は、組織にとって取締役の専門知識を最大限に活用する機会を提供しますが、役割の重複や時間管理の問題を引き起こす可能性もあります。したがって、明確な役割分担と時間配分が重要となり、組織内での役割の透明性と調和が求められます。
取締役が退任した後に顧問として続けるケース
取締役が退任した後に顧問としてその職を続けるケースでは、組織の経営層から一歩退き、よりアドバイザリーに重点を置いた役割を担います。退任した取締役が顧問に就任する主な目的は、その人物が持つ豊富な経験や業界知識、組織に対する深い理解を活用することです。顧問として、経営戦略や市場分析、人材育成、組織開発など、特定の領域で戦略的な助言や指導を提供することが期待されます。
この立場では、取締役としての直接的な経営責任からは解放され、より客観的な視点から組織に対するアドバイスを行うことが可能になります。このように取締役を退任した後に顧問として活動することは、組織にとって価値あるリソースを保持し、経営の連続性と深い洞察を確保する手段となります。
会社法において顧問に定義はある?
会社法は、主に株式会社の組織と運営に関する規定を設けており、取締役、監査役、代表取締役などの役員の地位や権限について詳細に定めていますが、「顧問」という役職や立場についての明確な定義はありません。
顧問は、通常、会社の経営または特定の業務に対して助言や支援を行うために雇用される専門家や元役員であり、その役割は会社によって異なるのが一般的です。
したがって、会社法では顧問の地位や権限、責任に関する規定は設けられておらず、顧問の役割や範囲は各企業の内部規則や契約によって異なることになります。また、顧問は法律上の役員には該当しないため、取締役や監査役といった役員に関する法的責任や義務からは一般的には免れています。
人事労務担当者が顧問について知っておくべきこと
企業が顧問を設ける場合、人事担当者として知っておくべきことがいくつかあります。ここでは4点を挙げておきましょう。
契約形態
人事労務担当者が顧問との関係を検討する際、契約形態の理解は非常に重要です。顧問契約は一般に、雇用契約とは異なり、専門的な助言やサービスを提供するための業務委託契約として結ばれます。この契約には、顧問の役割や責任範囲、助言の提供方法、報酬の支払い条件、契約期間、解約条件などが明記されるべきです。
顧問は通常、従業員ではなく独立した専門家として雇用されるため、労働基準法等の労働法の適用を受ける従業員とは異なります。このため、契約は両者間の具体的なニーズと期待を反映した内容で慎重に作成される必要があります。顧問契約は、双方の期待を明確にし、将来的な誤解や紛争を避けるために重要です。
社会保険の有無
顧問との契約において、社会保険の適用可否は重要なポイントです。一般的に、顧問は独立した業務委託契約に基づいてサービスを提供するため、従業員としての地位を有していない場合が多く、社会保険の対象外です。つまり、顧問は企業の社会保険(健康保険、厚生年金保険など)に加入することが一般的にはありません。
しかし、顧問との関係が実質的に従業員と同様の状況を有している場合には、社会保険への加入が必要になることもあります。例えば、企業が顧問に指揮命令し、顧問の業務内容や時間を厳密に管理している場合などです。このため、人事労務担当者は、顧問との契約関係を正確に理解し、適切な社会保険適用の判断を行う必要があります。また、契約内容に応じて顧問が自分自身で国民健康保険や国民年金に加入することも考慮すべきです。
給与の形態
顧問の給与の形態は、通常の従業員とは異なるのが普通です。顧問は一般に、業務委託契約に基づいて報酬を受け取るため、時間給や月給といった従業員の給与形態とは区別されます。顧問への報酬は、通常、具体的なプロジェクトの完了や提供されるサービスの範囲、もしくは達成されるべき特定の目標に基づいて決定されます。
これには、一定期間ごとの固定報酬や成果に基づく報酬、あるいは個々の業務ごとの報酬などが含まれます。顧問契約における報酬の支払い条件、支払いスケジュール、および業務の範囲と報酬の関係は、契約書に明記されるべき重要な要素です。顧問報酬の支払いには、税法等も考慮する必要があります。
年収の決定
顧問の年収の決定は、その専門性や経験、業務の性質、市場価値に基づいて行われます。顧問の年収は一般に、定期的な報酬(月額または年額)、特定のプロジェクトや業務に基づく報酬、および追加的なインセンティブやボーナスによって構成されます。年収の決定にあたっては、顧問の提供するサービスの範囲と価値、企業の予算や支払い能力、および同様の専門性を持つ他の顧問との市場競争状況を考慮する必要があります。
また、年収は契約の範囲や期間、顧問が関与するプロジェクトの規模や複雑さ、必要とされる専門知識の度合いに応じて調整されることが一般的です。顧問の年収は、労働市場の動向や業界標準に即して適切に設定され、双方が納得できる形で契約書に明記されるべきでしょう。
顧問を活用するメリット
顧問の種類や役割などについて見てきましたが、企業が顧問を活用することで得られるメリットについて考えてみましょう。
専門的なアドバイスをもらえる
顧問を活用する最大のメリットの一つは、その専門的な知識と経験を基にしたアドバイスを得ることができる点です。顧問は特定の分野の専門家であり、業界の動向や最新の技術、市場戦略、法的な側面など、多様な知見を提供します。例えば、法律顧問は複雑な法的問題に対する助言を、IT顧問は技術的な課題に対する解決策を提案します。
このように、専門的なアドバイスにより、企業はより効率的で効果的な意思決定を行うことが可能になり、競争優位を築くための重要な支援を受けることができます。
客観的な意見が得られる
顧問は組織の外部からの視点を提供するため、客観的な意見を提供することができます。企業内部の人間は、しばしば既存の文化やプロセスにとらわれがちですが、外部顧問はそのような前提に縛られず、新鮮で中立的な視点を持っています。
客観的な分析や評価は、組織の盲点を明らかにし、問題解決のための新しいアプローチを提示することができます。この客観性は、組織内の固定観念を打破し、創造的かつ革新的な解決策を生み出すのに役立ちます。
知見のないトラブル・アクシデントに対応できる
顧問は、企業が通常直面しない種類のトラブルやアクシデントに対応する際にも重要な役割を果たします。企業は日々さまざまな課題に直面しますが、すべての分野において専門知識を有しているわけではありません。特に、新しい市場への進出や新技術の採用、重要な法的問題など、未知の課題に対処する際に顧問の専門知識は貴重です。
顧問はこれらの特殊な状況に精通しており、適切な対策を迅速に提案し、リスクを最小化することができます。また、顧問が過去の経験から学んだ教訓を共有することで、同様の問題が将来発生するのを防ぐのにも役立ちます。
顧問を戦略的に活用し、企業成長を実現しよう!
顧問の基本的な定義、種類、役割、法的な位置づけのほか、人事労務担当者が知っておくべき重要なポイントについて解説してきました。
顧問は、企業にとって貴重なリソースであり、その専門的知見と客観的な意見は多くの場面で重要な役割を果たします。
企業の持続的な成長と発展のために、顧問の重要性と戦略的な活用方法を理解しておくことが大切だといえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
ラポールとは?なぜビジネスで重要か?意味から活用法・コツを解説
「ラポール」という言葉をご存知でしょうか。もともとはカウンセリング時の相手との信頼関係を意味する心理学用語ですが、最近ではビジネスにおいてラポールが重要視されています。この記事では、ラポールの概要やビジネスにおけるラポールの重要性、5つのテ…
詳しくみる「メラビアンの法則」とは?好印象な話し方やビジネスの応用例をわかりやすく解説
メラビアンの法則とは、コミュニケーションにおいて、言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%影響するという法則です。この法則は1971年にアメリカのアルバート・メラビアンという心理学者が提唱しました。法則の解釈については諸説あるよう…
詳しくみる自己肯定感を高める方法を解説!高めるための行動習慣や低い人の特徴
自己肯定感とはありのままの自分を受け入れ、認めることを指します。自己肯定感が高いと自信が持て、自分自身を尊重できます。会社では承認し、傾聴して、自己肯定感の低い人と付き合うことが大切です。付き合い方のポイントには信頼を伝えたり応援や支援をし…
詳しくみる自責思考とは?他責思考との違いやストレス・うつとの関連を解説!
自責思考とは、何か問題が起きたときに、他者ではなく自分に非があるとする考え方のことです。当事者意識や成長意欲につながりやすく、ビジネスでは高く評価される考え方ですが、極端な自責思考はストレスを抱えやすくうつ病の原因になる可能性があります。自…
詳しくみる1on1とは?ミーティングの目的と方法を解説!
1on1とは、上司と部下が1対1で話し合うミーティングをいいます。対話を通じて部下が自分で悩みや問題点の解決方法を考える機会を与え、成長を促すのが主な目的です。 部下が主体的に話ができるのが理想です。1対1で話す場合、話題に困ってしまうこと…
詳しくみる45年定年制とは?発言の真意は?人事労務の観点から考えた時
45年定年制は、45歳をキャリアの転換点として定年後に他の企業に転職したり起業したりと様々な働き方を選ぶための考え方のことで、早期退職を求めるものではありません。この概念が提唱された際、世間から反対されたことに加え、国は少子化対策として定年…
詳しくみる