• 更新日 : 2026年10月8日

年末調整の書類回収を効率化するには?電子化や選び方を解説

Point年末調整の書類回収をどう効率化する?

システムを導入して電子化すると、配布・回収・入力の手作業がなくなります。

  • 従業員はスマートフォンから入力できる
  • 不備をシステムが自動で検知する
  • 税務署への事前の承認申請は不要

導入には費用と、従業員への周知にかかる期間を見込んでおきましょう。

年末調整の書類回収を効率化する方法として有効なのが、年末調整ソフトを導入した電子化です。申告書の計算・チェック・データ入力といった手作業が自動化され、担当者と従業員の双方の負担を減らせます。

年末調整の回収業務を効率化する電子化の仕組みから、導入のメリット、準備の手順、自社に合ったシステムの選び方までを解説します。

年末調整の書類回収はなぜ大変なのか?

年末調整の書類回収が毎年大きな負担となるのは、業務フローが「回収」「チェック」「管理」の各段階で手作業に依存しているためです。記載内容の確認や修正に多くの工数がかかる点も見逃せません。

手作業が発生する3つの段階

負担が集中するのは、書類の回収、内容のチェック、データの入力・管理という3つの段階です。それぞれで発生する作業は次のとおりです。

段階 発生する作業
書類の回収
  • 全従業員への申告書の準備と配布
  • 記入方法に関する問い合わせ対応
  • 提出状況の管理と未提出者への個別連絡
内容のチェック
  • 添付された控除証明書との突合
  • 扶養控除や保険料控除の検算
  • 不備があった場合の差し戻しと再提出の管理
データの入力・管理
  • 給与計算システムへの手入力
  • 入力データと申告書のダブルチェック
  • 7年間の法定期間にわたる保管・管理

これらの課題の中でも、特に業務を停滞させるのが差し戻しの多さです。一度差し戻しが発生すると、従業員との間で何度もやり取りが必要になり、双方にとって負担となります。

差し戻しの原因になりやすい記入ミス

差し戻しの原因となる記入ミスや不備には、いくつかの決まったパターンがあります。よく見られるのは次の4つです。

  • 配偶者の所得金額の誤り:
    「合計所得金額の見積額」の欄に、税金が引かれる前の「収入(年収)」を記入してしまうケース。所得と収入の違いがわかりにくいために頻発し、配偶者控除の計算が根本から変わってしまう
  • 保険料控除額の転記ミス:
    控除証明書に記載された金額を書き写す際に間違えるケース。複数の保険に加入している場合、合計額の計算ミスも起こりがち
  • 住所の不備:
    申告書の住所が住民票と異なっていたり、丁目・番地・号が省略されていたりするケース。年の途中で引っ越した従業員に多い
  • 控除証明書の添付漏れ:
    生命保険料や地震保険料などの証明書の添付忘れ。年末調整の直前になって慌てて書類を探し、紛失しているケースも少なくない

参照:年末調整がよくわかるページ|国税庁

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年末調整の書類回収を効率化する方法とは?

効率化の方法は、大きく分けて「現行業務の改善」と「システム導入による電子化」の2つです。手軽に始められるのは前者ですが、根本的な負担軽減につながるのは後者です。

現行業務の改善で効率化する

紙ベースの運用を前提とした改善策は、比較的すぐに着手できます。取り組みやすいのは次の3つです。

  • チェックリストと記入例の配布:
    提出前に確認すべき項目をリスト化し、よくある間違いを記載した記入例を添える
  • 社内説明会の開催:
    年末調整の目的や書類の書き方について、担当者が直接説明する機会を設ける
  • 段階的なリマインド:
    提出期限を一度だけ伝えるのではなく、1週間前や3日前など段階的に案内する

これらの方法は差し戻しを減らす効果が期待できますが、書類の配布、回収、手入力といった手作業そのものは残るため、担当者の負担軽減には限りがあります。

システムを導入して電子化する

年末調整システムを導入すると、回収・チェック・管理の各段階の課題を解消できます。手作業が発生していた工程が、次のように変わります。

  • 回収の手間を削減:
    従業員はパソコンやスマートフォンから直接入力するため、書類の配布や回収が不要になる
  • チェック作業を自動化:
    入力漏れや計算ミスをシステムが自動で検知するため、差し戻しを減らせる
  • 管理コストを削減:
    データはクラウド上で保管され、紙の保管スペースや管理の手間がなくなる

紙のやり取りを前提とした改善には限界があるため、近年は多くの企業が電子化を進めています。

年末調整の電子化で何が変わる?

年末調整の電子化とは、これまで紙媒体で行っていた申告書の作成・提出・確認・保管といった一連の業務を、クラウドシステムなどを活用してデジタル上で完結させる仕組みです。国税庁もこの電子化を推進しています。

電子化による業務フローの変化

従業員は質問に答えるだけで申告書が作成でき、会社側は検算と手入力が不要になります。電子化の前後で、業務フローは次のように変わります。

区分 手続き内容 電子化前 電子化後
従業員の手続 年末調整申告書の作成 控除証明書等の内容を手書き 自動入力
従業員の手続 控除額の計算 手計算 自動計算
勤務先の手続 控除額の検算 必要 不要
勤務先の手続 給与システム等への取込 申告書の内容を手入力 申告データを一括インポート

出典:年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)|国税庁

保険会社などから電子データで取得した控除証明書も、そのままアップロードできます。企業側は提出されたデータをシステム上で一元管理でき、最終的なデータは給与計算ソフトに直接取り込めるため、手入力作業そのものが不要になります。

参照:年末調整手続の電子化に向けた取組について|国税庁

電子データで提出できる書類

従業員が提出するほとんどの申告書や控除証明書は、紙ではなく電子データで提出できます。対応している申告書は次のとおりです。

書類名 目的
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 扶養親族の状況を申告する書類
給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 基礎控除、配偶者控除等、特定親族特別控除、所得金額調整控除を申告する書類
給与所得者の保険料控除申告書 生命保険料や社会保険料などの控除を申告する書類
住宅借入金等特別控除申告書 住宅ローン控除(2年目以降)を受けるための書類

これらの申告書に添付が必要な各種証明書も、発行元の金融機関や保険会社から電子データ(XML形式)で受け取れます。

  • 生命保険料控除証明書
  • 地震保険料控除証明書
  • 社会保険料控除証明書
  • 住宅借入金等特別控除証明書(年末残高等証明書)

これらの証明書は、マイナポータル経由でまとめてデータ取得できます。従業員は自宅のパソコンやスマートフォンでダウンロードし、年末調整システムへ連携できるため、書類の紛失や提出忘れを防ぐことにもつながります。

参照:マイナポータル連携可能な控除証明書等発行主体一覧|国税庁

電子化のメリットとデメリット

電子化は企業と従業員の双方に利点がありますが、導入前に知っておきたい課題もあります。整理すると次のようになります。

立場・区分 内容
企業側のメリット
  • 申告データがそのままシステムに取り込めるため入力作業が不要
  • 不備をシステムが自動検知するため確認の時間を減らせる
  • 紙書類の保管スペースが不要
  • テレワーク中でも業務を進められる
従業員側のメリット
  • Web上のガイドに従って入力できるため記入漏れを防げる
  • 控除額の計算が自動で行われる
  • 控除証明書を電子データでまとめて取得でき、紛失しても再取得しやすい
デメリット
  • 初期費用や月額利用料がかかる
  • 自社の給与システムとの連携性や操作性を比較検討する手間がかかる
  • 全従業員への周知と教育が必要
  • 文書管理規程や就業規則の見直しが生じる場合がある

デメリットは、事前の計画と準備によって軽減できます。

年末調整の電子化はどう進める?

電子化を進めるには、段階的な準備が求められます。円滑な移行のために、次の3つのステップで進めましょう。

STEP1:対応システムの導入を検討する

従業員から申告書を電子データで提出してもらうためには、対応するシステムやクラウドサービスが必要です。選択肢としては、国税庁が提供する「年調ソフト」や、民間企業が提供する年末調整電子化サービスがあります。

システムを選定する際は、次の視点から比較しましょう。

  • 従業員が使いやすい入力画面であるか
  • 自社の給与計算システムとデータ連携できるか
  • マイナポータルとの連携機能があるか

サービスによって、入力方式やデータ授受方法、給与計算システムへの取り込み手順が異なるため、導入前に運用イメージを固めておきましょう。

STEP2:社内規程やシステム環境を整備する

電子データで申告書類を回収する場合、現在の運用ルールを見直す必要が生じることもあります。確認しておきたいのは次の3点です。

  • 文書管理規程や就業規則の改定
  • 給与・会計システムが電子データの取り込みに対応しているかの確認
  • 必要に応じたシステム改修やバージョンアップ

なお、電子データでの提出について、令和2年10月以降は税務署長への事前の承認申請は不要になりました。会社の判断で電子化を進められます。ただし、電子データを受け取る際の本人確認方法(社内ID・パスワードの付与など)は、あらかじめ定めておきましょう。

STEP3:従業員へ周知しサポート体制を整える

電子化を円滑に進めるためには、従業員への周知が欠かせません。従業員側でも、次のような準備が発生します。

  • 年調ソフトのインストール(利用する場合)
  • マイナポータルの利用準備(マイナンバーカード取得や電子証明書設定)
  • 保険会社への電子控除証明書の発行依頼

準備には時間がかかることもあるため、少なくとも2か月前には電子化の流れを説明し、申告データの作成方法や取得方法を案内しておくと安心です。操作マニュアルの作成や問い合わせ窓口の設置もあわせて検討しましょう。

参照:年末調整手続の電子化へ向けた準備|国税庁

年末調整ソフトはどう選ぶ?

自社に合った年末調整ソフトを選ぶには、いくつかのポイントを比較します。無料のツールから高機能な有料サービスまでさまざまですが、次の点を基準にすると選びやすくなります。

比較ポイント 確認すべき内容
料金体系 初期費用、月額・年額料金、従業員数に応じた従量課金など
操作性 従業員・管理者ともに直感的でわかりやすい画面か
(無料トライアルの活用)
給与システム連携 現在利用中の給与計算ソフトとCSVやAPIで連携できるか
サポート体制 導入時の設定支援や、運用中の問い合わせ対応
(電話、メール、チャット)
セキュリティ 個人情報を扱うため、暗号化通信やアクセス制限などの対策が万全か
税制改正への対応 改正後の控除額や様式に対応する時期と方法

国税庁の年調ソフトと民間ソフトの違い

年調ソフトは無料で使えますが、会社側の計算業務までは対応していません。両者の違いは次のとおりです。

  • 国税庁の年調ソフト:
    無料で利用でき、申告書作成や控除額の自動計算ができる。ただしデータの提出や管理は手動で行う必要があり、給与システムとの自動連携機能はない。従業員が作成したデータをメールなどで回収し、担当者が手動でインポートする手間がかかる
  • 民間ソフト:
    有料だが、従業員からのデータ回収、不備チェック、給与システムへの自動連携までを一つのシステムで完結できる。サポート体制が整っているサービスも多い

業務全体の効率化を考えるなら、給与システムとの連携まで見据えた民間ソフトの導入が選択肢になります。

年末調整の書類回収を効率化した企業の例

実際にシステムを導入すると、どれほどの効率化が実現できるのでしょうか。「マネーフォワード クラウド」を導入した2社の事例を紹介します。

脱・手作業で30%超の業務効率化に成功(オリオンビール株式会社)

オリオンビール株式会社では、給与計算を2名で担当し、源泉徴収票へのマイナンバーの手書き作業などが負担となっていました。特に年末調整は、従業員にとって記入が難しく、人事担当者が代理で記入するケースもあったため、本来の業務時間を圧迫していました。

そこで「マネーフォワード クラウド 給与・年末調整」等を導入。年末調整がわかりやすいアンケート形式になったことで、従業員自身での入力が進み、代理記入が不要になりました。書類の回収も早まり、チェック作業を前倒しで開始できるなど、年末調整業務全体の効率化を実現しています。

参照:クラウドによるサービス連携で脱・手作業 30%超の業務効率化に成功|オリオンビール株式会社様の導入事例|株式会社マネーフォワード

年末調整1,000人分をほぼ未経験の2名で完了(フレッシュ物流株式会社)

従業員1,000名弱で多数の物流拠点を展開するフレッシュ物流株式会社では、年末調整の書類配布に5人がかりで3日を要していました。全従業員分のデータは担当者1名が手入力しており、業務が特定の担当者に依存する状態でした。

ベテラン従業員の退職で業務の引き継ぎが困難になるという課題に直面し、クラウド型の年末調整システムを導入。その結果、ベテランが不在の中、ほぼ未経験の担当者2名だけで1,000名弱の年末調整を完了させました。

書類回収も早まり、業務負荷と残業時間を削減。クラウド化によって業務の属人化を解消し、持続できる体制を築いています。

参照:年末調整1,000人分をほぼ未経験の2名で完了 残業も減りました|フレッシュ物流株式会社様の導入事例|株式会社マネーフォワード

年末調整の電子化は義務になる?

本記事の執筆時点で、年末調整の電子化は義務ではありません。企業は従来どおり紙の申告書で年末調整を行うことも、電子化を導入することも選べます。

ただし政府は行政手続き全体のデジタル化を推進しており、税務関連手続きもその例外ではありません。実際に、大法人を対象とした法人税等の電子申告(e-Tax)はすでに義務化されています。

この流れをふまえると、将来的には年末調整手続きの電子化も義務化される可能性があるでしょう。法改正で義務化が決まってから慌てて対応するのではなく、業務効率化やペーパーレス化といった利点を得るためにも、早めに情報収集と導入検討を始めることをおすすめします。

年末調整の書類回収を効率化するにはシステムの導入から

年末調整の書類回収とチェック業務の効率化は、年末調整システムの導入による電子化で実現できます。手作業による書類の配布・回収・検算・入力といった一連の作業を自動化することで、担当者の負担を軽減し、従業員の手続きも簡素になります。

電子化には、費用や従業員への周知といった準備が必要ですが、税務署への事前の承認申請は不要です。会社の判断で進められます。

自社の規模や給与システムとの連携性を考えて最適なソフトを選び、毎年繰り返される煩雑な業務から離れて、生産性の高い業務に集中できる環境を整えましょう。

参照:年末調整がよくわかるページ|国税庁


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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