• 更新日 : 2024年8月29日

評価基準とは?適切な作り方や具体例、数値化の方法、ポイントを解説

評価基準とは、主に人事評価に用いられるもので、どのくらい目標を達成できたかなどを評価する基準のことです。人事評価を適切に運用するには欠かせないものであり、従業員の意欲を向上させることができます。本記事では、評価基準とはどのようなものか、適切な作り方や手順、具体例や数値化の方法などについて解説します。

評価基準とは?

評価基準とは、主に人事評価に使用されるもので、評価するための尺度や水準のことです。人事評価における評価基準とは、従業員一人ひとりやチームなどがどのくらい目標を達成できたかなどを評価する基準のことを指します。

評価規準との違い

評価基準とは、主に人事評価で使用される言葉です。一方、評価規準の規準とはルールや手本のことをいい、評価規準は主に教育現場で使用されます。そのため、評価規準は、人事評価では使用されません。

約63%が「評価基準が不明確」と感じる

アデコ株式会社の「『人事評価制度』に関する意識調査」によると、勤務先の人事評価制度に対する満足度は、「どちらかというと不満」「不満」の合計が62.3%です。また、人事評価制度への不満の理由は、「評価基準が不明確」が最多で62.8%になっています。

一方、厚生労働省の「令和2年転職者実態調査の概況」によると、自己都合による離職理由として、15.3%が「能力・実績が正当に評価されないから」と回答しています。人事評価への不満は、退職率が高まる原因にもなるため注意が必要です。

参考:

「人事評価制度」に関する意識調査|アデコ株式会社

令和2年転職者実態調査の概況|厚生労働省

評価基準の種類と項目

評価基準にはいくつかの種類があり、評価基準によって昇給、昇格、降格などが決まるため、従業員にとっては重要です。本項では、主な評価基準の種類と内容、具体的な評価項目について解説します。

成果評価

成果評価とは、評価対象期間において、内的要因による業績の目標をどれだけ達成したかを評価することをいいます。また、成果評価は、外的要因に影響されないことが原則です。

具体的な評価項目には、以下があります。

  • 業績目標達成度

評価期間内の売り上げ、利益、新規契約件数などの達成度を評価する項目です。基本的には、組織の目標に基づき各従業員が目標を設定します。目標を定量的な数値で表せない管理部門や事務部門などの業績の達成度は、定性的な指標で判断されます。

  • 課題目標達成度

評価期間内の目標達成率、既存顧客の契約継続率などの達成度を評価する項目です。業績目標達成度と同様に、基本的には組織の目標に基づき各従業員が目標を設定し、管理部門や事務部門などの達成度は、定性的な指標で判断されます。

  • 日常業務成果

評価期間に設定する目標とは別に、コスト削減額や業務スピードなどの日常業務を評価する項目です。管理部門や事務部門などの評価については、日常業務成果の割合が高くなります。

能力評価

能力評価とは、成果とは関係なしに業務を遂行するために重要なスキルや知識をどのくらい発揮・獲得できたのかを測る評価のことです。業務に必要な資格などを保有していると評価されるのが一般的ですが、企画力、実行力、改善性などの可視化しにくい能力を評価することもあります。

具体的な評価項目には、以下があります。

  • 知識評価

業務上必要な専門知識やスキルを評価する項目です。

  • 習熟能力評価

専門知識やスキルによる職務遂行力を評価する項目です。

情意評価

情意評価とは、成果とは関係なしに仕事に対する意欲、姿勢などの勤務態度を評価することです。感情や意志に対する評価のため、客観的な評価が難しくなります。情意評価が低いと、全体の評価も低くなる傾向です。

具体的な評価項目には、以下があります。

  • 規律性

組織のルールを重んじた行動がどのくらいできているかを評価する項目です。情報セキュリティや勤怠のルールを守っているかなどが、評価項目の一例になります。

  • 協調性

上司・同僚といった他の従業員と協力しながら、業績向上につながる業務を実施できたかを評価する項目です。コミュニケーション能力や交渉力などが、評価項目の一例になります。

  • 責任性

与えられた仕事や役割についての責任を意識して、最後まで遂行する姿勢と意志があるかを評価する項目です。

  • 積極性

与えられた業務をただ遂行するだけでなく、自ら提案・改善する積極的かつ能動的な行動をしているかを評価する項目です。

年功評価

年功評価とは、日本の多くの企業で長年採用されてきた年功序列による評価方法です。年功評価の主な項目は、年齢と勤続年数です。

年功評価は、企業が管理しやすく、従業員も将来設計を立てやすいのがメリットです。しかし現在では、成果・能力主義への移行を図る企業が増えています。

評価基準の作り方、手順

評価基準を作成する場合、以下の手順に従って作るのが一般的です。本項では、評価基準の作り方、手順について解説します。

評価項目を決める

まずは、職務を洗い出し、細分化して評価項目を決めます。経営方針、経営目標、事業戦略などに合わせた評価項目を作成することが重要です。これらの業績を意識した評価項目が選択できなければ、評価制度が効果あるものにはなりません。

部署や職種ごとの目標達成に適した評価項目を決めることが、最終的には企業の経営目標の達成につながります。また、評価項目によって、従業員のやる気やモチベーションにつながるため評価項目の選定は重要です。

グレードを決める

次に評価基準を、職務のスキルや役割に応じた何種類かのグレードに分類します。例えば、役職のついていない従業員を一般グレード、主任や係長などの中間管理職をリーダーグレード、課長や部長などの管理職をマネジメントグレードに分けるなどです。

分類したグレードが少ない場合は、等級差が大きくなるため昇格の難易度も上がります。一方、分類したグレードが多い場合は、昇格や降格の頻度を高めることが可能です。何種類のグレードに分類するかは企業によって異なりますが、一般的には4種類から6種類くらいに分類していることが多いです。

評価内容を数値化する

グレードと評価項目が決まったら、グレードごとの職務レベルを数値化します。このときに成果評価、能力評価、情意評価の各項目の評価配分も決定するとよいでしょう。

成果評価、能力評価、情意評価の評価軸は、部署や職務、役職ごとに分けるのも一つの方法です。一方、評価軸を固定したほうがよい場合もあるため、多角的な方向から意見を取り入れることが大切です。

評価者や評価期間を決める

評価基準が決まったら、評価者や評価期間を決める必要があります。評価期間は、あまり長すぎると結果が見えづらくなり、従業員のモチベーションも続きません。成果や業績評価なら1か月前後、職務遂行能力であれば3か月くらいが、一般的には最適な評価期間といわれています。

評価者は企業によってそれぞれですが、一般的には直属の上司が一次評価をして、その上位者が二次評価をする方法が取られます。

評価結果に基づく待遇を決める

評価結果に基づく待遇は、企業によってそれぞれです。一般的には特別手当などで対応しますが、給与や賞与で対応する企業もあります。また、評価結果によって、昇進や昇給の基準となるケースもあります。

数値化しにくい評価基準の決め方

評価基準を決めるのに、間接部門などの目標の数値化が難しい部署もあります。このように目標の数値化が難しい場合であっても、貢献度などの評価を明確化することは可能です。

例えば、一定の時期と比較してミスの発生率がどのくらい下がったかや、経費がどれだけ削減されたかなどで評価できます。また、数値以外にも、従業員のモチベーションの上がり具合や、エンゲージメントの向上具合などで評価基準を決定することも可能です。

評価基準を決めて運用する際のポイント

評価基準が決まったら、その評価基準を実際に運用していかなければなりません。本項では、評価基準を決めて運用する際のポイントについて解説します。

評価基準を明確にする

評価基準を運用する際に大切なのは、評価基準を明確にしてあらかじめ企業内に明示しておくことです。評価基準を明確化することで、従業員が企業内でどのような行動をとればよいかが明確になります。評価基準を明確化すると、人事評価に対する従業員の納得感も高まります。

従業員に理解を促す

評価基準の明示により、評価基準を明確化できますが、それだけでは不十分です。大切なことは、従業員が評価基準を理解することです。従業員の一人ひとりに何故この評価基準を採用しているのかを理解してもらうために、資料を配布したり説明ができるように準備をしたりするとよいでしょう。

相対評価と絶対評価を使いわける

相対評価とは、従業員の成績や能力を他の従業員と比較することにより、相対的に評価する手法です。一方、絶対評価とは、あらかじめ企業や従業員が決定した目標数値の達成度によって、絶対的に評価する手法をいいます。どちらもメリットデメリットがあるため、評価基準ごとに使い分けることが大切です。

一律の評価基準も設定する

部署や職種ごとの評価基準に不公平をなくすために、一律の評価基準を設定することが大切です。部署や職種にかかわらず一律の評価基準も設定することで、より公平で客観的な評価基準になります。

人事評価に用いられる評価手法-無料テンプレートあり

人事評価を行うにあたっては、いくつかの評価手法が用いられています。本項では、人事評価に用いられる評価手法について解説します。

MBO

MBOは「Management By Objectives」の略称で、目標管理制度のことです。あらかじめ設定された目標に対する達成度を評価する評価手法であり、能力評価に適した手法になります。目標の内容や期限が明確なため、従業員も進むべき方向がわかりやすく、モチベーションアップやスキル向上が図れます。

OKR

OKRは「Objectives and Key Rults」の略称で、目標管理手法の一つです。ObjectivesのOは達成目標のことで、Key ResultsのKRはその達成度を測る指標のことです。OKRは、MBOと同様に能力評価に適しています。

KPI

KPIは「Key Performance Indicator」の略称で、重要業績評価指標のことです。目標達成のための最重要プロセスを具体的な数値で表すため、成果評価に適しています。

360度評価

360度評価とは、上司、部下、同僚などの様々な立場の複数の人が多面的に評価する方法です。勤務態度ややる気など、情意評価に適しています。

360度評価のフォーマットは、以下のリンクから無料でダウンロード可能です。

360度評価シート(ワード) テンプレート|給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」

360度評価シート(エクセル) テンプレート|給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」

コンピテンシー評価

コンピテンシー評価とは、業務の遂行能力の評価のことです。従業員一人ひとりの行動特性から細かく観察して評価する手法で、従来の評価制度よりも客観的で公正な評価として注目を集めています。

【業界別】人事評価シート-テンプレート

業界別の人事評価シートのテンプレートは、以下のリンクから無料でダウンロード可能です。

人事評価シート – 営業職(エクセル) テンプレート|給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」

人事評価シート(事務職) テンプレート|給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」

人事評価シート 技術職(エクセル) テンプレート|給与計算ソフト「マネーフォワード クラウド給与」

評価基準次第で従業員のモチベーションが向上する

評価基準は、従業員がどのように行動するかの指針にもなります。評価基準次第では、従業員のモチベーションの向上や、企業の業績向上にもつなげることが可能です。本記事を参考にして社内でよく検討し、適切な評価基準を決めるようにしましょう。


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