- 更新日 : 2026年10月5日
年末調整で住民税はどう決まる?特別徴収・普通徴収の違いから2026年度改正までわかりやすく解説
年末調整で確定した所得が給与支払報告書を通じて市区町村に伝わり、翌年度の住民税額が決まります。
- 住民税は前年所得を基準に課税される
- 特別徴収は会社が給与から天引き納付
- 2026年度改正で所得税と基礎控除額がずれる
Q. 年末調整と住民税はどう関係している?
A. 年末調整の結果が給与支払報告書を通じて市区町村に提出され、翌年6月からの住民税額が確定します。
年末調整の結果は、翌年度の個人住民税額に直接反映されます。本記事では、住民税のしくみや特別徴収・普通徴収の違い、年末調整と住民税額決定の関係、さらに特別徴収税額通知書の電子化や2026年度(令和8年度)税制改正による影響まで、バックオフィス担当者が実務で押さえておきたいポイントを整理します。
住民税とは?
住民税(正式には個人住民税)は、前年の所得に対して課税される地方税で、年末調整で確定した所得額が翌年度の税額計算の基礎になります。会社が行う年末調整の結果は、給与支払報告書を通じて市区町村に伝わり、そこで初めて住民税額が確定する仕組みです。
個人住民税の基本的なしくみ
個人住民税は、市町村民税(区市町村民税)と道府県民税(都道府県民税)を合わせた呼び方です。法人が納める法人住民税と区別するため「個人」住民税と呼ばれています。所得に応じて税額が決まる点は所得税と共通しており、自分が住む地域の行政サービスの費用を住民自身が分担するという考え方に基づいて設定されています。
住民税は「前年の所得」に対して課税される
住民税は、その年の1月1日時点の住所地において、前年1月1日から12月31日までの所得をもとに課税されます。所得税が当該月の給与から源泉徴収される「現年課税」であるのに対し、住民税は前年所得を基準とする「前年課税」方式を採る点が大きな違いです。
そのため、1月2日以降に転居しても1月1日時点の住所地に納税義務が生じます。また、退職して当年の所得がなくなっても、前年の所得に応じた住民税は納付しなければなりません。前年の収入が多いほど翌年度の住民税額も増えるため、収入が高かった年の翌年に退職する場合は、住民税の負担をあらかじめ見込んでおく必要があります。
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住民税の納付方法は?特別徴収と普通徴収の違い
住民税の納付方法には、給与から天引きする特別徴収と、納税者自身が納付書などで支払う普通徴収の2種類があります。会社員など給与所得者は原則として特別徴収、個人事業主など給与から住民税を徴収できない人は普通徴収が基本です。なお、公的年金を受給している人については、一定の要件を満たす場合、公的年金から住民税が特別徴収されます。
特別徴収:会社が給与から天引きして納付する方法
特別徴収は、事業主が従業員に代わって住民税を給与から天引きし、まとめて市区町村に納付する方法です。毎年5月末までに、各市区町村から特別徴収税額通知書(従業員ごとの年間住民税額の一覧)が2部送付され、うち1部を従業員に渡します。
会社は6月分の給与から天引きを開始し、翌年5月までの12回に分けて徴収します。天引きした住民税は、給与支払月の翌月10日までに会社がまとめて市区町村へ納付します。年度途中で入社した従業員を特別徴収に切り替える場合は「特別徴収切替届出(依頼)書」の提出が必要です。年度途中で退職した場合は翌月以降の徴収は不要になりますが、「給与所得者異動届出書」の提出が求められます。
なお、1月以降に退職した従業員については、多くの市区町村で「退職月から5月までの住民税」を最後の給与や退職金からまとめて徴収する取り扱いになっています。
普通徴収:個人事業主や退職者などが自分で納付する方法
普通徴収は、給与からの天引きができない個人事業主・年金生活者・退職者などが、納付書を使って自分で住民税を納める方法です。毎年5月中に、各市区町村から納税通知書と納付書が送付されます。
納税者は、役所や金融機関の窓口、コンビニエンスストアなどで納付書を使って支払います。市区町村によって時期は異なりますが、原則として6月・8月・10月・翌年1月の年4回に分けて納付する方式が一般的です。4期分をまとめて一括納付することも可能です。
| 項目 | 特別徴収 | 普通徴収 |
|---|---|---|
| 対象者 | 会社員などの給与所得者 | 個人事業主・年金受給者・退職者など |
| 納付者 | 事業主(会社)が給与天引きの上で納付 | 納税者本人が納付書で納付 |
| 納付回数 | 年12回(毎月の給与から天引き) | 原則年4回(6月・8月・10月・翌年1月) |
| 通知書 | 特別徴収税額通知書 | 納税通知書・納付書 |
参考:個人住民税特別徴収税額通知の特設ページ|eLTAX 地方税ポータルシステム
年末調整で住民税額はどのように決まる?
年末調整で確定した1年間の所得額をもとに、会社が作成する給与支払報告書の情報を使って、市区町村が翌年度の住民税額を計算します。年末調整は、毎月の給与や賞与から源泉徴収された所得税額と、1年間の所得をもとに算出した本来の所得税額を比較し、過不足を精算する手続きです。
源泉徴収票と給与支払報告書の役割
会社は年末調整の結果をもとに、税務署提出用の源泉徴収票と、市区町村提出用の給与支払報告書(個人別明細書)を作成します。この2つの書類は様式がよく似ており、1年間の給与総額、給与所得控除後の金額、所得控除後の金額、源泉徴収税額などが記載されています。給与支払報告書は、従業員が1月1日時点で住んでいる市区町村に提出する点が源泉徴収票と異なります。
特別徴収税額通知書が発行されるまでの流れ
市区町村は給与支払報告書の内容をもとに翌年度の住民税額を計算し、特別徴収税額通知書を事業主に発行します。通知書には従業員ごとの年税額とその月割額が記載されており、会社はこの金額どおりに6月分の給与から天引きを開始します。
特別徴収税額通知書はどう受け取る?電子化の最新動向
令和6年度から、eLTAXを通じて特別徴収税額通知書を電子データ(電子署名付きの正本)で受け取ることができるようになりました。
あわせて、これまで書面の正本に添えて提供されていた電子データ(副本)の送付は廃止され、「電子データ(正本)」か「書面(正本)」のいずれかを選択する仕組みに変わっています。給与支払報告書をeLTAX経由で提出する際に受取方法を選択でき、選択に応じて電子署名付きの正本データが事業所に提供される仕組みに切り替わっています。
eLTAXによる電子データ配付の仕組み
給与支払報告書の提出時に登録したメールアドレスに、通知データが格納された旨のお知らせメールが届き、事業所はそれをダウンロードして給与システムなどに取り込みます。電子署名が付与された正本データは法的効力を持つため、書面の通知書と同様に扱うことができます。ダウンロードしたデータを対応する給与システムや会計ソフトに取り込むことで、住民税額の入力作業を効率化できます。
参考:「特別徴収義務者向け」特別徴収税額通知の電子データ取得方法及び注意事項|eLTAX 地方税ポータルシステム
給与支払報告書の提出義務範囲は今後さらに拡大する
令和9年1月1日以降は、前々年に税務署へ提出した源泉徴収票が30枚以上(令和8年までは100枚以上)の事業所について、給与支払報告書のeLTAXまたは光ディスク等での提出が義務化されます。対象となる事業所の範囲が段階的に広がるため、紙での提出を続けてきた中小規模の事業所も、電子提出への対応を検討しておく必要があります。
参考:eLTAX(地方税ポータルシステム)による特別徴収税額通知の電子化について|水戸市
年末調整をしても確定申告が必要になるのはどんなケース?
年末調整を行っていても、給与所得以外の所得(副業などの利益)の合計額が20万円を超える場合や医療費控除を受ける場合、2か所以上から給与の支払いを受けている場合などは、確定申告が必要です。これらのケースは年末調整だけでは所得や控除の内容を正しく反映できないため、税務署への確定申告書の提出が求められます。
確定申告を行った場合、税務署に提出する所得税及び復興特別所得税の確定申告書とあわせて作成する住民税の申告内容をもとに、市区町村が住民税額を計算します。
2026年度(令和8年度)税制改正で住民税はどう変わる?基礎控除の据え置きに注意
令和8年度税制改正で所得税の基礎控除は引き上げられましたが、住民税の基礎控除は43万円のまま据え置かれており、両者の間にずれが生じています。
所得税の基礎控除は合計所得金額2,350万円以下の場合62万円となり、さらに令和8・9年分は合計所得金額489万円以下の人に特例で42万円が加算され、最大104万円まで拡大します。一方、住民税の基礎控除は合計所得金額2,400万円以下の場合43万円のままです。
所得税と住民税で基礎控除額が異なる理由
住民税は所得税に比べて控除額が全般的に低く設定されているため、所得税は非課税でも住民税だけ課税されるケースが生じやすくなっています。令和8年分の所得税の基礎控除引き上げは月々の源泉徴収には反映されず、年末調整での精算扱いとなります。新しい源泉徴収税額表への切り替えは令和9年1月以降とされているため、年末調整の時点で初めて控除の差額が反映される給与所得者も多くなります。
退職時に住民税で気をつけるべきことは?
退職のタイミングによって特別徴収と普通徴収の切り替え方が異なり、前年の所得を基準とする住民税は退職後も納税義務が続く点に注意が必要です。住民税は前年課税のしくみを採るため、退職して収入がなくなった年であっても、前年分の所得に応じた住民税を納めなければなりません。
退職時期による特別徴収から普通徴収への切り替え
1月以降に退職する場合は、多くの市区町村で退職月から5月分までの住民税を最後の給与や退職金からまとめて徴収する取り扱いになっています。再就職する場合は、転職先の会社で特別徴収を継続することも可能ですが、再就職しない場合は住民税が本人に直接請求される普通徴収に切り替わります。
前年所得を基準とするため生じる負担のタイミングのずれ
退職などで翌年の所得が大幅に減ることが見込まれる場合は、前年の高い所得を基準に計算された住民税の負担が退職後の生活に影響しうる点をあらかじめ考慮しておく必要があります。とくに、賞与を含めて年収が高かった年の翌年に退職を予定している場合は、退職後の資金計画に住民税分をあらかじめ組み込んでおくことが望ましいでしょう。
年末調整と住民税額の関係を正しく理解しておこう
住民税は前年の所得をもとに課税される地方税であり、年末調整で確定した情報が給与支払報告書を通じて市区町村に伝わることで、翌年度の住民税額の決定につながります。特別徴収税額通知書の電子化や2026年度税制改正による基礎控除のずれなど、制度は年々更新されているため、最新の情報を確認しながら年末調整と個人住民税の実務に対応していくことが求められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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