• 作成日 : 2022年4月15日

年末調整での社会保険料控除を解説!

年末調整での社会保険料控除を解説!

年末調整では様々な控除があり、社会保険料控除もそのひとつです。会社の担当者は、年末調整で法定調書を所轄税務署に提出しなければなりません。 提出する書類のうち源泉徴収票には、社会保険料控除の金額を記載する必要がありますが、記載するのは、会社が従業員に給与を支払う際に天引きしている社会保険料だけではありません。

今回は、年末調整での社会保険料控除の種類、適用される対象者などのほかに、社会保険料控除申告書と、それに関わる源泉徴収票の書き方について解説していきます。

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年末調整における社会保険料控除の種類

はじめに、社会保険料控除にはどのようなものがあるのかについて、みていきましょう。種類はかなり多岐にわたり、次のようなものがあります。

  • 健康保険、国民年金、厚生年金保険および船員保険の保険料で被保険者として負担するもの
  • 国民健康保険の保険料または国民健康保険税
  • 高齢者の医療の確保に関する法律の規定による保険料
  • 介護保険法の規定による介護保険料
  • 雇用保険の被保険者として負担する労働保険料
  • 国民年金基金の加入員として負担する掛金
  • 厚生年金基金の加入員として負担する掛金
  • 国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、恩給法等の規定による掛金、納付金または納金
  • 労働者災害補償保険の特別加入者の規定により負担する保険料
  • 地方公共団体の職員が条例の規定によって組織する互助会の行う職員の相互扶助に関する制度で、一定の要件を備えているものとして所轄税務署長の承認を受けた制度に基づきその職員が負担する掛金
  • 独立行政法人農業者年金基金法の規定により被保険者として負担する農業者年金の保険料
  • 国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律の公庫等の復帰希望職員に関する経過措置の規定による掛金
  • 健康保険法附則または船員保険法附則の規定により被保険者が承認法人等に支払う負担金
  • 租税条約の規定により、当該租税条約の相手国の社会保障制度に対して支払われるもの(我が国の社会保障制度に対して支払われる当該租税条約に規定する強制保険料と同様の方法並びに類似の条件および制限に従って取り扱うこととされているものに限ります。)

なお、上記の社会保険料は全額所得控除されますが、控除の方法には次の2つの方法があります。

  1. 毎月、会社が支払う給与から天引きする方法
    健康保険や厚生年金保険、雇用保険などの保険料が該当しますが、こちらは当然のことながら、天引きする会社が控除額を把握しています。
  2.  

  3. 従業員が個人として支払い、勤務先に控除額を申告する方法
    従業員が、親族の負担すべき支払った国民年金保険料や国民健康保険料などが該当します。

社会保険料以外の控除については、以下の記事も参考にしてください。

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社会保険料控除が適用される対象者

所得控除できるのは、従業員が自分自身のために支払った社会保険料だけではありません。自分と生計を一にする配偶者と親族の負担すべき社会保険料を支払った場合にも、支払った金額について所得控除を受けることができます。

「生計を一にする」とは、同じ家計(財布が同じ)であることを意味し、同居の有無は問いません。別居であっても生活費の送金があれば該当します。

配偶者や親族とは、勤務、修学、療養などのために別居しているが、休日等には一緒に起居することが恒例となっているケースだけでなく、常に別居していても生活費、学資金、療養費などの送金が行われているケースも「生計を一にする」と認められます。

ただし、親族が同居していても、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合は該当しません。

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社会保険料控除の対象期間

年末調整で社会保険料控除の対象となる期間は、その年の1月1日から12月31日までであり、その間に納付した社会保険料の金額が控除されます。

控除対象となるのは、上記の期間の保険料だけでなく、それ以降の納期限のものをすでに納付した場合や、期間以前の納期限(その年度以前のもの)の保険料を納付した場合も含まれます。

例えば、次のようなケースが該当します。

国民年金保険料は会社員であれば、納付義務はありません。しかし、20歳以上の大学生の子どもがいる場合、アルバイトをしておらず、収入がなくても子どもに保険料の納付義務があります。学生納付特例がありますが、親である会社員が、子どもに代わって保険料を支払うことも少なくないと思います。

この場合、本年中も含めて2年分納付したときは、その年分の社会保険料控除の対象となります。

このほか、個人事業主だった人が廃業し、年の途中で会社勤めになって滞納していた過去3年分の国民年金保険料をまとめて納付した場合も、本年中の社会保険料の控除対象となります。

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年末調整での社会保険料控除に必要な書類

年末調整の社会保険料控除には、2つの方法があると述べましたが、従業員が個人として支払い、勤務先に控除額を申告する場合には、あらかじめ会社から交付されている給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記載して提出しなければなりません。勤務先は、これに基づいて控除額の集計をします。

会社が毎月の給与から天引きしている社会保険料については、担当者が帳簿で把握しているはずです。

ちなみに、国税庁では、毎月の給与からの源泉徴収や年末調整などの事務を正確かつ能率的に行うために「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」を提供しています。有効に活用することをおすすめします。

参考:「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」|国税庁

なお、前述の社会保険料控除の種類のうち、「国民年金の保険料で被保険者として負担するものおよび国民年金基金の加入員として負担する掛金」については、国民年金保険料または掛金を従業員本人が支払ったことを証明する書類を「給与所得者の保険料控除申告書」に添付することが必要です。

具体的には、厚生労働省や国民年金基金が発行した保険料の領収書や証明書が該当します。

年末調整での社会保険料控除における書類の書き方

社会保険料控除関係の書類としては、次のものを挙げることができます。

  1. 「給与所得者の保険料控除申告書」
  2. 「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」
  3. 「源泉徴収票」

このうち、年末調整で所轄税務署に提出が義務付けられているのは法定調書である「源泉徴収票」だけです。「給与所得者の保険料控除申告書」は、通常、11月頃に勤務先から従業員に配布し、12月の給与の支払い前に回収します。

従業員が記載するものですが、ポイントを紹介しておきます。
令和3年分給与所得者の保険料控除申告書
引用:国税庁「令和3年分給与所得者の保険料控除申告書」

控除を申告する「給与所得者の保険料控除申告書」の「社会保険料控除」欄に必要事項を記載します。

記載するに当たっては、従業員が自分で支払った保険料や掛金について保険事業を運営する保険者から送付された控除証明書、保険料の領収書を用意します。

具体例として、前述のような親である従業員が子の国民年金保険料を支払った場合の書き方を挙げておきましょう。
国民年金保険料を支払った場合の書き方
「社会保険の種類」ごとに「保険料支払先の名称」、「保険料を負担することになっている人」「本年中に支払った保険料の金額」を記載します。

「保険料を負担することになっている人」については、この事例では、国民年金保険料の納付義務者である従業員の子の氏名を記載します。

なお、国民年金の場合、控除証明書は日本年金機構から送付されてきますが、形式はハガキ版とA4版の2種類があります。

その年の1月から9月までに納付した場合は、10月下旬から11月上旬にかけて送付され、その年の10月から年内に納付した場合は翌年2月上旬に送付されます。

1月から12月分に納付した保険料は、その年の年末調整で控除の対象になりますが、控除証明書の納付済額は9月までと記載されており、10月から12月分は見込み額となっています。

合算した全額を控除対象とするには、控除証明書だけでなく、保険料を支払った際の「領収証書」も添付する必要があるので注意しましょう。

国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療保険料などについては、控除証明書は送付されません。従業員は、「給与所得者の保険料控除申告書」に添付する必要はありませんが、領収証書や保険料納付証明書などを確認したうえで、1年間の納付合計額を記入することになります。

会社の担当者は、提出された「給与所得者の保険料控除申告書」の内容について確認後、その申告書の記載に基づいて、「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」の「社会保険料等控除額」欄の「申告による社会保険料の控除分」欄(13)に金額を転記します。

なお、「給与等からの控除分(2+5)」欄(12)には、通常、すでに天引きした社会保険料は記載されていると思います。
令和4年分給与所得に対する源泉徴収簿
引用:国税庁「令和4年分給与所得に対する源泉徴収簿」

「給与等からの控除分」と「申告による社会保険料の控除分」が記入されたところで、次に法定調書である「給与所得の源泉徴収票」の「社会保険料等の金額」欄に集計した金額を記入します。
給与所得の源泉徴収票
引用:国税庁「令和 年分 給与所得の源泉徴収票」

年末調整での社会保険料控除の計算方法

年末調整における社会保険料控除関係の書類に記載する手順について、ご理解いただけたと思います。

社会保険料の控除額は、国民年金のような定額方式であれば、該当年度の保険料が控除額になりますが、これ以外にも従業員から申告されるものは会社で計算する必要はありません。

健康保険は、厚生年金などの報酬比例方式の場合、それぞれの社会保険の保険料率を標準報酬月額に乗じて算出しますが、会社ではすでに毎月、計算したものを天引きしています。前述の通り、「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」に本年中に控除した合計金額を記載しているものと思います。

年末調整での社会保険料控除について理解しておこう!

年末調整での社会保険料控除について解説してきました。会社の担当者が、普段、給与の支払いの際に天引きしている健康保険や厚生年金の保険料については特段、問題はないと考えます。

注意が必要なのは、従業員が個人的に支払っている保険料であり、これについては本人に確実に申告してもらうことが不可欠です。

年末調整を正確かつ効率的に行うために、国税庁が提供する「給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿」を活用するとよいでしょう。

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よくある質問

年末調整における社会保険料控除にはどういった種類がありますか?

健康保険、国民年金、厚生年金保険などのほかにも多くの種類があります。詳しくはこちらをご覧ください。

年末調整で社会保険料控除を申請するために必要な書類を教えてください。

所轄税務署に提出するのは、法定調書の「源泉徴収票」だけですが、従業員には「給与所得者の保険料控除申告書」を提出してもらう必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

執筆:坪 義生(社会保険労務士)

じんじ労務経営研究所代表(社会保険労務士登録)、労働保険事務組合 鎌ヶ谷経営労務管理協会会長、清和大学法学部非常勤講師、「月刊人事マネジメント」(㈱ビジネスパブリッシング)取材記者。社会保険診療報酬支払基金、衆議院議員秘書、㈱矢野経済研究所、等を経て、91年、じんじ労務経営研究所を開設。同年より、企業のトップ・人事担当者を中心に人事制度を取材・執筆するほか、中小企業の労働社会保険業務、自治体管理職研修の講師など広範に活動。著書に『社会保険・労働保険の実務 疑問解決マニュアル』(三修社)、『管理者のための労務管理のしくみと実務マニュアル』(三修社)、『リーダー部課長のための最新ビジネス法律常識ハンドブック』(日本実業出版社、共著)などがある。

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