- 更新日 : 2021年11月29日
介護保険における特定疾病とは

介護保険のサービスは主に、65歳以上のお年寄り(第1号被保険者)が利用しており、65歳未満の人が病気やケガなどの理由で介護が必要となった場合には、障がい者福祉制度が適用されています。
しかし、40歳を超え65歳に満たない人(第2号被保険者)でも、厚生労働省が定める「特定疾病」という病気に該当し、6カ月以上にわたって続くことが予想される場合には、介護保険によるサービスを受けることができます。
そこで今回は、介護保険における「特定疾病」について解説します。
特定疾病について
介護保険でいう特定疾病とは
「特定疾病」という言葉はいくつかの分野で用いられており、それぞれに内容が違うため注意が必要です。介護保険でいう「特定疾病」とは、以下の要件がすべて確認できる疾病をいいます。
・老化に伴う疾病であると医学的に認められること
・その病気がもととなり、介護を要する心身状態になった
・次の一通りの要件を総合的に満たす
1.有病率や発生率について老化との関連が確認できる疾病で、65歳を超える高齢者によく発症しているものの40歳を超え65歳に満たない人にも発生が確認できる
2.要支援または要介護状態が3カ月を超えて続くかもしれないと考えられる
特定疾病の具体例
特定疾病は、具体的には以下の16種類の病気のことを指します。
・関節リウマチ
・筋委縮性側索硬化症
・後縦じん帯骨化症
・骨折を伴う骨粗しょう症
・初老期認知症
・進行性核上性麻ひ、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭さく症
・早老病
・多系統萎縮症
・糖尿病性神経障がい、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
・脳血管疾患
・閉塞性動脈硬化症
・慢性閉塞性肺疾患
・両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
第2号被保険者が介護保険によるサービスを受けるためには、上記のように特定疾病が原因で要支援または要介護状態が6カ月以上続くと予想されることが条件となります。
末期がんの扱い
介護保険における「特定疾病の末期がん」とは、「回復の見込みがない状態のものに限る」と定義されています。ただし、末期がんについては、医学的な定義はないため、どのような状態が「末期がん」と判断されるのか迷う人もいることでしょう。
ここでは、「特定疾病におけるがん末期の取扱いに関する研究班」が公表している定義と診断基準について説明します。
末期がんの定義
特定疾病における末期がんとは、以下の性質をすべて満たすものをいいます。
・浸潤性:がん細胞が最初に発生した臓器から近くの他の組織に進展、進行する
・転移性:血液やリンパ液などを通じて、遠くの臓器や全身にまで進展、進行する
・致死性:上記にあげた3つの結果によって、何か治療をしなければ死に至る
末期がんの診断基準
がんは、TNM分類(T0~M1)やステージ分類(ステージ0~ステージ4)などでその進行具合を示しています。しかし、介護保険の“特定疾病における末期がん”は、これらの分類とは関係なく、以下の項目を全て満たしたときのことを指します。
■1、2いずれかの方法で悪性新生物(がん)と診断をされること
1.組織診断もしくは細胞診によってがんであると証明される場合
2.組織診断もしくは細胞診によってがんであると証明されていないが、臨床的な腫瘍性病変があって、さらに一定時間の間隔を空けた検査などで進行性が確認できる場合
■治癒を目的とした治療に反応しないこと
■進行性が認められること
■治癒が困難な状態にあると認められること
上記、要件のうち「治癒が困難な状態」とは、おおむね6カ月で死亡すると判断される状態を指します。抗がん剤などによる治療が行われていても、完治が目的ではなく、末期がんの症状を緩和するための治療の場合は「治癒が困難な状態」に含まれます。
まとめ
第2号被保険者は、介護保険でいう「特定疾病」がもととなり6カ月以上介護が必要な状態が続くときのみ、要支援・要介護認定の申請を出すことができます。特定疾病は具体的な疾病名が挙げられており、全部で16種類あります。特定疾病のうち、末期がんについては、独自の定義や診断基準が決められています。
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