- 作成日 : 2022年9月30日
パートの社会保険料の計算方法 – いくらひかれる?
企業に勤めている正社員の方はもちろん、場合によってはパート・アルバイトとして働いている方も社会保険料を納めなければなりません。今回本記事では、パート・アルバイトにおける社会保険料の計算方法を月収8万8,000・10万・12万円以下の3段階に分類して紹介します。自身の社会保険料がいくらひかれるかシミュレーションしたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
パートやアルバイトにも社会保険料はかかる?
パートやアルバイトであっても社会保険料が発生するケースは起こり得ます。
2022年10月からは社会保険の運用拡大が施行されて、従来であれば従業員が500人超(501人以上)の企業が対象だったところから100人超(101人以上)に引き下げられます。また2024年10月以降は対象の従業員数が50人超(51人以上)となり、さらに対象となるパート・アルバイトの方が増える見通しです。
改正後の社会保険が適応される従業員要件は『正規従業員もしくはフルタイム従業員』『週の所定労働日数および月の所定労働日数が、正規従業員の4分の3以上であるパート・アルバイトなど』です。しかし、今回新たに施行される従業員要件では、週・月の所定労働日数が正規従業員の4分の3未満であっても、以下4つの条件を全て満たしていれば被保険者に該当します。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること
- 雇用期間が2ヶ月超見込まれること
- 賃金月額が8.8万円以上(年収106万円以上)であること
- 学生でないこと
原則として、週の労働時間は契約上20時間以上を基準に判断します。残業などは所定労働時間に該当しません。しかし、週の所定労働時間が20時間未満であったとしても、実労働時間が3ヶ月連続して週20時間以上、かつ引き続き20時間以上見込まれる場合は、3ヶ月目から社会保険が適用されます。
基本的には雇用期間が2ヶ月を超える見込みかどうかで判断します。しかし、契約期間が2ヶ月以内であっても、実際は2ヶ月を超えて使用される見込みがある際、雇用期間の最初から遡及して適用対象になります。
「就業規則や雇用契約書などで更新あり・更新予定のような旨が示されている」「同じ職場・雇用契約の従業員が契約期間を超えて雇用された実績がある」といった場合、雇用期間が2ヶ月以内でも訴求して社会保険に適用されます。
賃金月額が8.8万円以上必要です。時間外労働手当や休日・深夜手当 、賞与や業績給、慶弔見舞金など臨時に支払われる賃金は含まれません。通勤手当・皆勤手当・家族手当なども対象外のため注意しましょう。
学生は社会保険の適用対象外です。しかし卒業前に就職したり、卒業後も引き続き同じ会社に雇用されたりしている場合などは適用対象に含まれます。
2022年以降の詳しい運用拡大スケジュールは以下のとおりです。
2022年10月~ | 2024年10月~ |
---|---|
従業員数100人超(101人以上)規模 | 従業員数50人超(51人以上)規模 |
週の所定労働時間が20時間以上であること | 週の所定労働時間が20時間以上であること |
雇用期間が2ヶ月超見込まれる | 雇用期間が2ヶ月超見込まれる |
賃金月額が8万8,000円以上(年収106万円以上) | 賃金月額が8万8,000円以上(年収106万円以上) |
学生でないこと | 学生でないこと |
参考:社会保険適応拡大特設サイト|厚生労働省
参考:社会保険の適応拡大について|厚生労働省
パートやアルバイトの社会保険料計算方法
ここからはパート・アルバイトの社会保険料を計算する方法について解説していきます。
社会保険料とは健康保険・厚生年金保険などにかかる保険料を指すものです。大きく分けると『医療保険』『(厚生)年金保険』『雇用保険』『介護保険』『労災保険』の5つに分類されます。今回は労働者にも支払い義務が生じる『厚生年金』『健康保険』『介護保険』『雇用保険』の4つを見ていきましょう。
社会保険料は報酬月額の区分(等級)によって定められている標準報酬月額を基準に計算されて、健康保険か厚生年金保険かで最低額となる等級が異なります。なお、健康保険は1~35等級、厚生年金保険は1~50等級に区分されます。
基本的に保険料は会社と労働者で折半されますが、雇用保険のみ会社と労働者で負担する金額が異なります。
各保険料の計算方法は以下のとおりです。
厚生年金保険料(保険料率18.3%) | (標準報酬月額×保険料率)÷2 |
健康保険料(保険料率9.84%) ※東京都の場合は9.81% | (標準報酬月額×保険料率)÷2 |
介護保険料(保険料率1.64%) | (標準報酬月額×保険料率)÷2 |
雇用保険 | 雇用保険料=標準報酬月額×0.9% |
会社負担分の雇用保険料=標準報酬月額×0.65% | |
個人負担分の雇用保険料=標準報酬月額×0.3% |
※介護保険料は40~64歳の健康保険料に上乗せして計算
なお、令和4年10月1日以降の雇用保険率は、会社負担8.5%・個人負担5.0%に改定されます。以降では8万8000円・10万円・12万円の3つの例をもとに、東京都の保険料を基準にしてシミュレーションしていきます。
パートやアルバイトで月収8万8,000円以下の場合
月収8万8,000円以下のパート・アルバイトの社会保険料は以下のとおりです。
保険区分 | 保険料 |
---|---|
健康保険 | 健康保険料:88,000×0.0984=8,659.2円 労働者負担額:8,659.2÷2=4,329.6円 |
介護保険 | 介護保険料:88,000×0.018=1,584円 労働者負担額:1,584÷2=792円 |
雇用保険 | 雇用保険料:88,000×0.009=792円 会社負担額:88,000×0.006=528円 労働者負担額:88,000×0.003=264円 |
厚生年金保険への加入義務が発生する最低月収は9万3,000円のため、月収8万8,000円以下のケースでは厚生年金の支払いはおこなわれません。なお、健康保険料は78,000円・68,000円・58,000円など、月額給与の等級区分によって変動します。
パートやアルバイトで月収10万円の場合
次に、月収10万円のパート・アルバイトの社会保険料は以下のとおりです。
保険区分 | 保険料 |
---|---|
厚生年金保険 | 厚生年金保険料:98,000×0.183=17,934円 労働者負担額:17,934÷2=8,967円 |
健康保険 | 健康保険料:98,000×0.0981(※)=9,613円 労働者負担額:9,613÷2=4,806円 |
介護保険 | 介護保険料:98,000×0.018=1,764円 労働者負担額:1,764÷2=882円 |
雇用保険 | 雇用保険料:100,000×0.009=900円 会社負担額:100,000×0.006=600円 労働者負担額:100,000×0.003=300円 |
※東京都の都道府県単位保険料率で算出しています。
パートやアルバイトで月収12万円の場合
最後に、月収12万円のパート・アルバイトの社会保険料は以下のとおりです。
保険区分 | 保険料 |
---|---|
厚生年金保険 | 厚生年金保険料:118,000×0.183=21,594円 労働者負担額:21,594÷2=10,797円 |
健康保険 | 健康保険料:118,000×0.0981=11,575円 労働者負担額:11,575÷2=5,787円 |
介護保険 | 介護保険料:118,000×0.018=2,124円 労働者負担額:2,124÷2=1,062円 |
雇用保険 | 雇用保険料:120,000×0.009=1,080円 会社負担額:120,000×0.006=720円 労働者負担額:120,000×0.003=360円 |
参考:令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|全国健康保険協会
保険加入ラインと働き方を把握しましょう
パートやアルバイトの社会保険料の計算方法について解説しました。各種保険料については、自身の月収からどの等級に区分されるかを確認して計算しましょう。
今後パート・アルバイトとして働く方は、年収130万円を超えると扶養から外れて社会保険に加入しなくてはなりません。一方で週の所定労働時間や雇用期間など4つの条件を満たしていれば、106万円が社会保険加入のボーダーラインとなります。
給与が上がればその分負担する社会保険料も増える一方で、将来受け取れる年金額が増えたり医療保険が充実したりなどのメリットあります。等級と保険加入ラインをよく把握して、自身が望む働き方を検討しましょう。
よくある質問
パートやアルバイトでも社会保険料の支払いはありますか?
はい。ある一定の条件を満たしている方は、パート・アルバイトであっても社会保険料の支払いが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
パートやアルバイトでの社会保険料の計算方法について教えてください
厚生年金保険と健康保険は「(標準報酬月額×各保険料率)÷2」で算出できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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