- 更新日 : 2024年12月13日
休職中に転職活動は法的にOK?バレる理由は?
休職中の転職活動は法的には問題ありません。しかし、就業規則違反や信義則違反となる可能性があります。多くの人が「休職中に転職活動をしてもバレないのでは?」と考えますが、実際にはSNSや知人のネットワークを通じて企業側に情報が伝わることがあります。本記事では休職中の転職活動に関する法的リスクと、バレる可能性について解説します。
目次
休職中の転職活動は違法?問題ない?
休職中であっても転職活動はできます。ここでは、法律面や就業規則の面などから休職中の転職活動について確認しておきましょう。
法的な定め
休職中の転職活動は、違法ではありません。労働者には、日本国憲法第22条第1項「職業選択の自由」が保障されています。この職業選択の自由には「退職の自由」も含まれているため、就業中であっても自由に退職を目的とした求職活動が可能です。
会社の就業規則による定め
就業規則により、在籍中の転職活動を禁じている企業もあります。在籍している会社の就業規則や個別の契約によって、在籍中の求職活動が制限されている場合は、就業規則違反や契約違反となることもあるので注意が必要です。
休職の種類別の転職活動の可否
休職中の転職活動は、休職の種類によって注意が必要です。
- 傷病休職(個人の病気やケガによる休職):転職活動は可能
→ただし、転職先に健康状態について虚偽の申告をすると後に内定取り消しのリスクがある
- 労働災害による休職(業務に起因した病期やケガによる休職):転職活動は可能
→ただし、労災は会社側が責任を取っているため慎重に行動する必要がある
- 自己都合休職(個人的な理由による休職):転職活動は可能
→休職の理由によっては転職に不利となる場合がある
- 懲戒休職(企業秩序に違反する行為に対する制裁としての休職):転職活動は可能ではあるが難しい
→懲戒処分中に転職活動を行うことによるリスクが高い
休職の種類別に見ても休職中の転職はおおむね可能ですが、休職理由によって配慮すべきことや注意すべきことはあります。トラブルにならないよう、事前に就業規則の確認を行うなど、慎重に準備しておくのが賢明です。
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休職中の転職活動が現職や転職先にバレる主な理由
休職中の転職活動が就業規則で制限されておらず、個別の契約でも結ばれていない場合、基本的には転職活動中であることを知られても問題はありません。実際のところ、社会的なモラルとして休職中の転職活動をオープンにする人は少なく、周りに知られたくない人もいることでしょう。
SNSでの不用意な投稿
SNSでの投稿をきっかけに、現職や転職希望先に休職中であることを知られることがあります。転職をほのめかすような投稿は、現職の同僚に知られて良くも悪くも噂となる可能性もあります。
また、転職希望先の会社が採用過程の一つとしてSNS検索を行い、現職や転職についての投稿を確認する可能性も否めません。就業中の転職活動をSNSに投稿するのはリスクが高いので、注意が必要です。
リファレンスチェックによる情報漏洩
リファレンスチェックによって、現職に転職活動をしていることがバレる可能性はあります。リファレンスチェックとは、以前働いていた会社へ過去の勤務状況や人物像について問い合わせることを指します。
個人情報保護法第27条により、リファレンスチェックは本人の同意を得て行わなければ、選考の参考にはできませんが、応募者の情報は渡ってしまいます。そのため、現職に転職活動中であることを知らせてしまうと同時に、転職希望先にも休職中であることを知られてしまいます。
同業他社への応募による噂の広がり
転職活動で希望している企業が、現職の同業他社であった場合は、業界内で噂が広がる可能性があります。企業は同業との横のつながりを持っていることが多く、日常的な情報交換が珍しくありません。
転職先の企業は応募者についてなるべく多くの情報が入手したいと考えています。前職や現職が同じ業界であれば、情報収集および交換の段階で、現職に転職活動がバレる恐れがあります。
面接時の不適切な情報開示
転職先の面接時に、応募者が行う不適切な情報開示がきっかけで、現職に転職活動を知られることもあります。
顧客のことや同僚、上司のことを話したことで転職先に休職中であることを知られてしまったり、外部に出してはいけないことを話したことで現職に転職活動中であることを知られたりすることもあります。転職先に採用されたいという気持ちが強いなら、現職のことを話し過ぎないよう注意が必要です。
休職証明書の提出要求
休職中であることを転職希望先に告げる際に、企業によっては現職の休職証明書の提出を求めることがあります。
この休職証明書は現職で発行してもらう書類です。休職証明書の発行を申請した時点で、転職活動をしているのではと疑われてしまうことがあります。
現職の規定や個人での契約で、休職中の転職活動が制限されていなければ問題はありませんが、内密に転職活動を進めたい場合はリスクが高いと言えるでしょう。
休職中に転職活動をするリスクとは?
休職中の転職活動は、会社規定や契約上で問題がなければ制限はされませんが、いくつかのリスクが存在します。
現職との信頼関係の崩壊
休職は法律で義務付けられた制度ではなく、自社で再び働いてもらうために企業が用意している制度です。休職中に転職活動を行っていることが、現職の同僚にわかってしまうと、「体調不良で休職しているのに普通に生活をしている」「制度の悪用」などの疑念を抱かれることがあり、信頼関係が崩壊する可能性があります。そのため、休職中の転職活動には、慎重な行動と周りへの配慮が必要です。
復職の機会を失う可能性
休職中に転職活動をしたことで、現職への復帰ができなくなるリスクがあります。休職は企業の制度の一つであり、法律で定められているものではありません。休職制度は、会社が従業員に対する善意として与えられた制度と言ってもよいでしょう。
しかし、休職期間中に他社への転職活動をしているのが判明した場合、貸家は休職者への信頼を失うだけでなく、退職を前提とした新たな人材獲得の動きに入るでしょう。結果として、休職者が復帰を希望しても、かつての自分のポジションに空きがなく、現場に戻れなくなることが考えられます。
転職先での評価低下
休職中に転職活動を行うことは、転職希望先にもよい印象を持ってもらえないことがあります。休職中の転職活動が制限されていないとしても、現職での進退を明確にしていない状態で転職活動をするという姿勢が低く評価されます。ただし、転職の理由や転職希望先の志望動機などの内容にもよるため、評価については一概には言えません。
メンタルヘルスへの悪影響
休職中に転職活動を行うことに後ろめたさを感じる場合、転職活動を行うことでのメンタルヘルスの低下が予想されます。規定や契約で休職中の転職活動が制限されていなくても、現職に対して申し訳なく思いながらの活動はストレスとなって休職者を苦しめます。
法的トラブルの可能性
休職中の転職活動が、会社の規定や個人の契約で制限されている場合は、法的トラブルの可能性があります。
規定の違反や契約違反については、事前に違反時の罰則などの取り決めがされています。いかなる理由があっても、休職中の転職活動がバレてしまった場合には罰則を受けなければなりません。
最悪の場合、罰則ではなく法的トラブルへと発展することもあります。これらの多くは罰則に従わないことが原因です。お互いの主張が噛み合わずに大きな問題に発展する可能性もあります。
応募先に「休職中であること」を伝えるべきケースは?
休職中の転職活動では、先方に休職中である旨を伝えておくと、一定のリスクは回避できます。ここでは特に「休職中であること」を伝えるべきケースについて解説します。
休職理由が転職後の業務に影響する可能性がある場合
求職理由が転職後の業務にも影響する可能性がある場合は、応募時に「休職中である」ことを伝えた方がよいでしょう。メンタルの不調や体調不良など、転職先でも同じ症状による欠勤や休職が予想されるためです。
この場合、休職中であることを隠して転職をすれば、転職先での欠勤や遅刻のたびに説明しなければなりません。そのストレスがさらなるメンタルや体調の不調に影響する可能性があるでしょう。「休職中である」ということは言いにくいかもしれませんが、正直に伝えるとお互いに無駄な負担が生じません。
即時入社が困難な場合
休職中に転職が決まっても、現職を退職するまでの時間が必要になり、即時入社は難しいでしょう。休職中の転職では「休職中である」ことを伝えたうえで、入社時期を決定します。
休職中であることを隠したまま転職となると、即時入社ができない理由について、その場しのぎの嘘をついてしまうなど悪循環に陥りやすくなります。
長期休職で業界動向から遅れている場合
長期間にわたり休職をしていると、タイムリーな情報に触れる機会が減るので、正直に「休職中である」ということを伝えておけば、転職先が休職期間をキャッチアップできる環境を提供してくれるかもしれません。
休職期間中のスキルアップを強調したい場合
休職期間中のスキルアップや資格取得を強調して転職したい場合も、休職中であることを伝えましょう。休職期間を有意義に過ごし、その結果としてスキルアップや資格取得したのであれば、アピールできるよう対策をします。そのアピールを適切に行い、先方に好印象を持ってもらうためには、早い段階で「休職中である」ことを伝えましょう。「休職をしたこと=よい結果に結びついた」というアピールは、転職に有利に働く可能性があります。
休職中の転職活動でよくある質問集
休職中に転職活動を行う際、さまざまな疑問が出てくるでしょう。以下では、休職中の転職活動についての「よくある質問」について解説します。
育休中に転職活動してもよい?
育休中の転職活動は、法律的には問題ありません。育休中や育休明けの転職活動は、会社の規定や個人の契約に反していなければ自由に行えます。
ただし、いくつかのリスクは伴います。
- 保育園入園へ影響するリスク
- 育児休業給付金へ影響するリスク
- キャリアへ影響するリスク
- 採用側の心象
保育園入園は、親が働いていることを前提に申込みや選考が行われるため、転職先が決まるまでの間は保育園の選考に残りにくいかもしれません。保育施設の規模や人数、子どもの年齢によって、入園の枠が異なるので、志願している保育施設の傾向(例:倍率や人気度など)を確認することをおすすめします。
育児休業給付金も、働いていることが前提で支払われる給付金です。現職を辞めた時点で「給与所得がなくても生活に困らない」とみなされ、給付対象から外れてしまいます。転職する前に給付概要を入念に調べましょう。
他にも、転職することによる自身のキャリアが途絶えるリスクや、採用側の心象など懸念事項があります。
公務員で休職中に転職活動するのは問題ない?
公務員であっても職業選択の自由がありますので、休職中に転職活動はできます。ただし、公務員には、兼業や営利企業への就職を制限する国家公務員法第103条「私企業からの隔離」をのっとって、転職活動をしなくてはなりません。
「私企業からの隔離」は休職中であっても適用されるため、公務員の休職中に転職活動を行うのは、現実的には難しいと言ってよいでしょう。
うつ病で転職すると、転職先にバレる?
うつ病で転職する場合、間接的に転職先へ病歴が知られることがあります。まず、健康状態についての転職者からの開示義務は基本的にはありません。転職活動の中で健康状態を聞かれることはありますが、詳しく答えなければならないと決まりは特にありません。
しかし、転職や入社の手続きをする中で間接的にうつ病の可能性が知られることはあります。
- 給与明細や源泉徴収票
→大幅な減額があると休職が推測されることがあり、うつ病を推測されることがある
- 住民税の納税額
→住民税の納付額が極端に少ないと過去のうつ病を推測されることがある
- 傷病手当の申請
→うつ病を再発して傷病手当を再申請すると、申請情報が転職先に伝わる可能性がある
上記はいずれも可能性として挙げていますが、意図的ではなく就業や申請に伴う事務処理の中から伝わることがあるものです。うつ病になると体調不良が増えるため、給与や収入に伴う税金の金額に変動が生じます。
病歴については重要なセンシティブ情報として、企業内でも慎重に扱われますが、取り扱う担当者や管理する企業の心象部分までには及ばないのが現実です。
休職中の転職活動は年齢制限に影響する?
休職中の転職活動が、年齢制限に直接影響することはありませんが、「どうしてこの年代(この時期)に転職をしたいのか」ということは、転職先の採用担当者も強い興味を持つ場合があります。採用面接の際に、丁寧に、かつわかりやすく回答できるよう準備しましょう。
まずは、健康状態や転職理由を明確に記載し、適切なタイミングで転職活動を行うことが重要です。
休職中の転職は履歴書にどう書くべき?
休職中であることを、履歴書に記載する義務はありません。伝えたいのであれば、面接などで休職中であることに触れてもよいでしょう。
休職中であることを履歴書に記載したい場合は以下の項目を満たすことをおすすめします。
- 休職期間と簡潔な理由
- 業務への支障
- 履歴書の「特記事項欄」または「職歴欄」に記載
休職期間は「令和〇年〇月〜〇月」のように、わかりやすく記載します。「体調不良のため」など、休職期間に添える理由は簡潔に書きましょう。
業務への支障とは、「転職後の業務に休職した理由が影響するかどうか」ということです。特に影響がない場合は「業務への影響なし」とします。業務への支障は、採用担当者の不安を軽減できる部分です。しかし、虚偽を記載するのではなく「○○の理由で休職しましたが、現在は良好で業務に支障はありません」など、ポジティブな内容でまとめましょう。
履歴書に休職を記載する場所は、特記事項や職歴の欄です。職務経歴書を添える場合は、時系列に沿って相手に伝わりやすいように記載し、書類選考と面接に臨みましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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