• 作成日 : 2022年9月22日

変形労働時間制とは?残業時間の計算方法や問題点をわかりやすく解説!

変形労働時間制とは、業務に合わせて従業員の労働時間を変えられる制度です。柔軟な働き方が可能になり、時間外労働を減らす効果が期待できます。1年・1カ月・1週間単位の変形労働時間制、フレックスタイム制があり、それぞれの期間の合計労働時間を計算して運用します。36協定や裁量労働制と混同しないよう、きちんと理解しておくことが大切です。

変形労働時間制とは?わかりやすく解説!

労働基準法では、大原則として法定労働時間(1週40時間、1日8時間)を超える労働を禁止しています。例外的に労働者に時間外労働させるには、労使協定の締結など厳格な要件があります。変形労働時間制は、労働時間の弾力化を認め、業務の繁閑に応じて労働時間を配分することで時間外労働とならない制度です。

変形労働制とは

同じように労働時間を柔軟なものとして働きやすくする制度に、フレックスタイム制や裁量労働制があります。これらは所定の手続きをとることで、時間外労働とならない仕組みです。

一方、労働基準法では法定時間を超える時間外労働をする場合、36協定の締結を義務づけています。ここでは、これらの違いや関連性について詳しく説明してきます。

フレックスタイム制との違いは?

フレックスタイム制は、労働者が労働を開始する時間と労働を終える時間を、自由に決めることができる制度です。フレックスタイム制でない場合は、労働者は会社に決められた始業時間に労働を開始し、会社に決められた終業時間に労働を終了する必要があります。フレックスタイム制では労働開始時間と労働終了時間を労働者が自ら決めることができ、柔軟な働き方が可能になります。

フレックスタイム制についての詳細は、次の記事を参照してください。

ほかの3つの変形労働時間制は、労働開始時間や労働終了時間を労働者が決めることはできません。始業時間や終業時間は会社が決定します。

裁量労働制との違いは?

裁量労働制は、実際の労働時間に関係なく、一定の時間を働いたとする制度のことです。特定の業務では、働いた時間とは関係なく労働の成果が得られる場合があります。そのような業務について裁量労働制を用いることで、より実態に即した報酬としたり、柔軟な働き方ができるようにしたりすることができます。

しかし、一方で裁量労働制は、結果として労働者に対する負荷が大きくなりやすいとい言った問題点も指摘されています。裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。

裁量労働制についての詳細は、次の記事を参照してください。

裁量労働制では、一定の時間、働いたとみなされるため、労働時間の正確な把握が行われないのに対し、変形労働時間制はみなし労働時間ではなく、実際に働いた時間が労働時間とされるため、労働時間の正確な把握が必要になります。

36協定との違いは?

36協定とは、時間外労働をさせるために締結する労使協定です。労働基準法で定められている1日8時間、1週40時間の労働時間を超えて労働者を働かせる際に必要な規定で、労働基準法第際36条に規定されていることから「36(サブロク)協定」と呼ばれています。

36協定が締結されていなければ、会社は労働者に時間外労働をさせることはできません。変形労働時間制でも労働者に時間外労働をさせるには、36協定の締結が必要です。

変形労働時間制の法定労働時間と残業時間の計算方法は?

事業主は、労働基準法を遵守して労働者を就業させなければなりません。労働基準法は事業主に対して弱い立場にある労働者を保護する法律で、労働時間は1日8時間、1週40時間と規定されています。この法定時間を超えて労働者を就業させる場合は、時間外労働割増賃金の支払いが必要です。

法定労働時間についての詳細は、次の記事を参照してください。

変形労働時間制としていても法定労働時間を超える労働時間については、割増賃金を支払う必要があります。1年単位の変形労働時間制、1カ月単位の変形労働時間制、1週単位の変形労働時間制のそれぞれの残業時間は、以下のようになります。

1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制は、ある季節やある時期、ある月のみ忙しく、それ以外は忙しくない場合に適した変形労働時間制です。1年のうち多忙な季節・時期・月に労働者を長く就業させ、忙しくない季節・時期・月には就業時間を短くすることができます。

1年単位の変形労働時間制では、労働者が1年に働いた時間のうち、1週間あたり40時間を超えた時間が残業時間となります。1年365日(または366日)を7で割り、その値に40をかけて1年間の法定労働時間を求め、労働者の働いた時間のうち、その時間を超えた時間が残業時間となります。

1年間の法定労働時間 = 40時間 × 対象年の日数 / 7

365日の年・366日の年の1年間の法定労働時間は、以下のようになります。

  • 365日の年の1年間の法定労働時間
    40(時間) × 365(日) / 7 = 2,085時間42分
  • 366日の年の1年間の法定労働時間
    40(時間) × 366(日) / 7 = 2,091時間24分

1カ月単位の変形労働時間制

1カ月単位の変形労働時間制とは、月末は忙しいものの月初や月中は忙しくないといった場合に適した変形労働時間制です。1カ月のうち多忙なときに労働者を長く就業させ、忙しくないときには就業時間を短くすることができます。

1カ月単位の変形労働時間制では、労働者が1カ月に働いた時間のうち、1週間あたり40時間を超えた時間が残業時間となります。1カ月30日(または31日)を7で割り、その値に40をかけて1カ月の法定労働時間を求め、労働者の働いた時間のうち、その時間を超えた時間が残業時間となります。

1カ月の法定労働時間 = 40時間 × 対象月の日数 / 7

30日の月、31日の月の上限時間は、以下のようになります。

  • 30日の月の上限時間
    40(時間)×30(日) / 7=171時間25分
  • 31日の月の上限時間
    40(時間)×31(日) / 7=177時間8分

30日の月では171時間25分、31日の月では177時間8分を超えた時間が残業時間となります。

1週間単位の変形労働時間制

1週間単位の変形労働時間制は、週末の土曜日・日曜日は忙しいものの平日は忙しくないといった、曜日によって繁閑に差が生じる場合に適した変形労働時間制です。1週間のうち多忙な曜日に労働者を長く就業させ、忙しくない曜日には就業時間を短くすることができます。ただし1日の労働時間は、原則10時間と定められています。

1週間単位の変形労働時間制では、労働者が1週間に働いた時間のうち、40時間を超えた時間が残業時間となります。

変形労働時間制のメリット・デメリットは?

変形労働時間制とは、業務量に合わせて労働時間を変えることが可能な制度です。導入することで柔軟な働き方が可能になりますが、デメリットもあります。

変形労働時間制のメリット

変形労働時間制のメリットには、人件費のムダをカットできる点が挙げられます。労働基準法では、労働時間は1日8時間、1週40時間と定められています。業務量に合わせる場合でも、基本的に1日8時間・1週40時間の労働時間を超えて働かせることはできません。時間外労働をさせる場合には、時間外労働時間に対する割増賃金の支払いが必要になります。

しかし変形労働制を導入すると、業務量に合わせて労働時間を変えることが可能になります。多忙なときは労働時間を長く、そうでないときは労働時間を短く設定することで残業時間が削減でき、余計な人件費支出を抑えることができます。

変形労働時間制のデメリット

変形労働時間制のデメリットは、管理が難しい点です。変形労働時間制でない場合は、1日8時間を超える労働時間・1週40時間を超える時間を残業時間として、一律に時間外労働に対する割増賃金の計算ができます。

しかし変形労働制では、労働時間について労働者一人ひとり割増賃金が発生するかどうか判定する必要があります。変形労働時間制の対象者かどうか、変形労働時間制の対象期間はいつかを把握し、給与計算に反映させなければなりません。管理が大変で手間がかかる点が、変形労働時間制のデメリットです。

変形労働時間制の導入方法は?

変形労働時間制を導入する際は、労使協定の締結や就業規則への記載といった手続きが必要です。1カ月単位・1年単位の変形労働時間制によって手続き方法は異なるため、注意が必要です。

労使協定を締結する

1年単位の変形労働時間制を導入する際に必要とされるのが労使協定の締結です。1年単位の変形労働時間制は労使協定を締結した上で、就業規則に記載しなければなりません。

1カ月単位の変形労働時間制を導入する際は、労使協定の締結か、就業規則への記載のどちらかが必要とされます。就業規則への記載を行わない場合は、労使協定の締結が必要です。

就業規則に記載する

1年単位の変形労働時間制を導入する際は労使協定を締結した上で、就業規則への記載を行う必要があります。

1カ月単位の変形労働時間制を導入する際に必要とされるのは、労使協定の締結か、就業規則への記載のどちらかです。労使協定を締結しない場合は就業規則への記載を行わなければなりません。

変形労働時間制を導入する際の注意点は?

変形労働時間制は必要な手続きを経て、正しく導入することが大切です。間違いやすい点や気をつけるべき点を理解し、注意しましょう。

所定労働時間が法定労働時間の上限を超えていないか確認する

1年単位・1カ月単位変形労働時間制での所定労働時間は、1日8時間・1週40時間を超えない範囲としなければなりません。残業時間の計算で説明した1年間・1カヵ月間の日数を7で割り、40をかけた数値が、1年単位・1カ月単位の所定労働時間の上限です。時間を分に変える際も間違いやすいので、注意が必要です。

就業規則をもとに残業時間を計算する

就業規則で残業時間の規定を定めている場合、就業規則に基づいた計算が必要になります。規定の有無や内容を確認し、就業規則を無視した残業時間計算とならないよう、注意します。

マネーフォワード クラウド勤怠は変形労働時間制にも対応!

複雑で面倒な変形労働時間制の管理は、ソフトに任せると効率よく、スムーズに行えます。マネーフォワード クラウド勤怠は、変形労働時間制の設定が可能な勤怠ソフトです。あらかじめ起算日などの「就業ルール」、始業時間・終業時間・勤務時間などの「勤務パターン」を設定し、対象となる従業員へ適用させることで変形労働時間制での勤怠管理が可能になります。

シフト状況や日次の勤怠状況もわかりやすく表示され、効率のよい管理が可能です。所定外勤務時間・法定外勤務時間の集計も自動で行われます。

変形労働時間制は、管理が難しい制度ですが、勤怠ソフトでの自動化・効率化が可能です。対応しているソフトを選んで、変形労働時間制の管理に活用してみてはいかがでしょうか。

変形労働時間制の導入でワークライフバランスを実現しましょう

変形労働時間制を導入すると、業務に合わせて従業員の労働時間を設定できます。忙しい月には労働時間を長く、そうでもないときには労働時間を短く設定することで、残業時間を少なくすることが可能です。時間外労働の割増賃金が抑えられ、不必要な人件費のカットにつながります。

また変形労働時間制は柔軟な働き方を可能にし、ワークライフバランスの実現にもつながります。難しい管理はソフトに任せることができるので、変形労働時間制の導入を検討してみましょう。

よくある質問

変形労働時間制とは何ですか?

従業員を繁忙期には長時間労働にする代わりに、閑散期には短時間労働にするというように、業務に合わせて労働時間を調整できる制度のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

変形労働時間制のメリット、デメリットを教えてください。

変形労働時間制のメリットは余計な人件費をカットできる点、デメリットは管理が難しい点が挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。


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