- 更新日 : 2026年7月3日
企業の結婚祝い金とは?相場や税務処理、制度設計の注意点を解説
慶弔見舞金規程にもとづき社会通念上相当な金額を公平に支給すれば、福利厚生費として処理できます。
支給対象や金額、申請期限を就業規則や慶弔見舞金規程に明記しておきましょう。
結婚祝い金は、従業員の結婚時に会社が支給する福利厚生のひとつです。
ただし、支給額や対象者の決め方、就業規則への記載、税務上の取り扱いを誤ると、給与課税や社内の不公平感につながるおそれがあります。
本記事では、企業の経営者や人事・労務担当者に向けて、結婚祝い金の相場、福利厚生費として処理するための考え方、制度導入の手順、慶弔見舞金規程に定める内容、運用時の注意点について解説します。
企業の結婚祝い金とは?
企業の結婚祝い金とは、従業員が結婚した際に会社が支給する、慶弔見舞金です。個人が渡すご祝儀や、自治体の補助金とは異なり、福利厚生制度として扱います。制度化する際は、支給目的、対象者、金額の明確化が必要です。
結婚祝い金以外の福利厚生
結婚に関する福利厚生は、祝い金だけに限りません。結婚前後は、以下のような負担が増えるタイミングです。
- 引っ越し
- 預貯金口座の名義変更
- 結婚式準備
- 新婚旅行
金銭面と休暇面の両方を支援すると、従業員の満足度が高まります。
代表的な制度を、以下にまとめました。
- 結婚休暇
- 住宅手当
- 転居費補助
- 家族手当
- 出産祝い金
- 育児支援制度
たとえば、遠方へ転居する従業員には、結婚祝い金よりも転居費補助がよいでしょう。また、結婚式や新婚旅行を想定するなら、結婚休暇も有効です。
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結婚祝い金の相場
企業が支給する結婚祝い金は、1万〜5万円が目安です。従業員数や年間の対象人数、雇用形態、勤続年数を踏まえて決めましょう。
一般社員に支給する場合の相場
一般社員への結婚祝い金は、1万〜3万円が目安です。金額が低すぎると、福利厚生としての印象が弱くなるでしょう。一方で、高額すぎる支給は、慶弔見舞金としての相当性を問われかねません。
また、採用計画や従業員の年齢層を見れば、翌年度の支給見込みも立てられます。たとえば、全社員に一律3万円を支給するなら、対象者が年間10人であれば年間予算は30万円です。対象者が年間20人の場合は、年間予算が60万円になります。
契約社員やパートを対象に含める場合は、勤務日数や勤続年数に応じた金額設定をあわせて検討しましょう。安易に正社員だけを対象にすると、同一労働同一賃金の原則に反することになりかねません。雇用形態で差を設けるのではなく、業務内容・責任・異動の範囲に応じたルールを整備のうえ、就業規則や慶弔見舞金規程に明記しましょう。
役職・勤続年数によって金額が変わる場合の相場
役職や勤続年数に応じて金額を変える場合は、1万〜5万円の範囲内で段階をつけましょう。差をつける目的は、勤続年数や会社への貢献度を反映することです。条件別の金額を明記した支給表を作ると、制度内容が明確になります。
制度の一例として、条件と金額を以下にまとめました。
- 勤続1年未満は対象外または1万円
- 勤続1年以上3年未満は2万円
- 勤続3年以上は3万円
- 管理職は5万円
ただし、支給金額や条件を、社長や上司の判断で毎回変えるのは不適切です。同じ条件の従業員で金額が異なると、福利厚生としての公平性が下がります。金額に差をつけるなら、勤続年数や役職など、客観的に確認できる基準を設けましょう。
結婚祝い金の税務上の取り扱い
結婚祝い金は、社会通念上相当な金額で公平に支給する場合、福利厚生費として処理します。一方で、実態が給与に近い支給は、給与課税の対象です。
福利厚生費として処理できるケース
結婚祝い金は、慶弔見舞金規程にもとづいて全従業員へ公平に支給する場合、福利厚生費として処理が可能です。ただし、福利厚生費として処理する場合、以下の条件を満たす必要があります。
- 支給対象の公平性
- 金額の社会通念上の妥当性
- 支給根拠の書面保存
上記の条件を満たすには、まず就業規則や慶弔見舞金規程に、支給対象や金額、申請期限を定めます。加えて、同じ条件の従業員には、同じ金額を支給しましょう。
また、申請時には、以下の書類の保管を義務づけます。
- 申請書
- 婚姻を確認できる書類
- 承認記録
上記の書類があれば、税務調査で支給理由を確認された際に、根拠を示せます。
給与課税される可能性があるケース
結婚祝い金であっても、実態が給与に近い支給は、給与課税の対象になります。以下のケースに該当する場合は、給与課税のリスクが高くなるでしょう。
- 規定がなく経営者の判断だけで支給
- 一部の役職者だけに高額を支給
- 勤務評価に応じて金額を変更
- 市場相場から大きく乖離した金額を支給
結婚祝い金を福利厚生として扱うには、公平性と金額の妥当性が欠かせません。不安がある場合は、支給前に税理士へ確認してください。
社会保険料・労働保険料の扱い
結婚祝い金を臨時の慶弔見舞金として支給する場合、社会保険料や労働保険料の対象外として扱います。ただし、判断基準は名称ではなく、以下の項目を踏まえて判断しましょう。
- 支給目的
- 支給頻度
- 支給金額
- 規定上の位置づけ
- 勤務実績との関係
毎月支給する手当や勤務実績に連動する支給は、給与に近い性質をもちます。給与とあわせて支給する場合、給与明細上の基本給や他の手当とは、区別して記載しましょう。
結婚祝い金を福利厚生にするメリット
結婚祝い金を制度化すると、従業員の人生の節目を祝う姿勢を示せます。金額の大小にかかわらず、「会社から支援されている」という実感は、従業員の安心感につながる要素です。
従業員エンゲージメントの向上
結婚祝い金を支給することで、従業員の生活面に会社が関心をもっている姿勢を示せます。給与や賞与とは別の支援として伝わるため、会社への帰属意識の向上につながります。
たとえば、3万円の支給でも、以下の費用に充てれば有効に使えるでしょう。
- 新生活用品の購入費
- 引っ越し費用の一部
- 結婚式準備費用の一部
- 新婚旅行費用の一部
「会社に祝福してもらえた」という実感は、日常業務への意欲につながります。制度を活かすには、申請方法まで含めた周知が欠かせません。以下の方法で周知すれば、従業員に伝わりやすいでしょう。
- 入社時の福利厚生説明
- 社内ポータルへの掲載
- 結婚届出時の案内
- 人事担当者からの連絡
企業側から積極的なアナウンスがあると、制度の価値が従業員に伝わりやすくなります。
離職防止・定着率の向上
結婚は、働き方や住まいを見直すきっかけとなる時期です。結婚のタイミングで会社から支援を受けていると実感できると、従業員は自社で長く勤めるイメージをもちやすくなります。
ただし、結婚祝い金だけでは、定着を促す効果は限定的でしょう。しかし、以下の制度と組み合わせると、より働きやすい職場環境づくりにつながります。
- 結婚休暇
- 住宅手当
- 転居費補助
- 育児支援制度
- 時短勤務制度
人事担当者は、結婚の報告や結婚祝い金の申請時に、関連制度も案内しましょう。従業員が使える制度をまとめて把握できるため、福利厚生の活用度も高まります。
採用広報での魅力アップ
結婚祝い金は、採用広報でアピールしやすい福利厚生です。求職者は給与だけでなく、ライフイベントへの支援内容も確認します。結婚祝い金を求人票や採用サイトでアピールする場合は、以下のように紹介しましょう。
- 慶弔見舞金制度あり
- 結婚時に3万円を支給
- 出産祝い金制度あり
- 弔慰金制度あり
ただし、金額を過度に強調する表現は避けるべきです。とくに利用実績の多い制度に絞ったうえで、「結婚時に3万円を支給」のように事実ベースで具体的に記載すると、求職者の応募意欲を高めることが期待できます。
結婚祝い金制度を導入する手順
結婚祝い金制度は、支給条件を決めたうえで就業規則や慶弔見舞金規程に記載し、社内へ周知しましょう。あらかじめルールを固めておくことで、税務・労務上の判断をしやすくなります。
1.支給条件を決める
まずは「誰に」「いくら」「いつ」支給するかを決めましょう。支給条件が曖昧だと、申請のたびに担当者の個別判断になり、対応に差が出かねません。検討項目は、以下のとおりです。
- 支給対象者
- 支給額
- 申請期限
- 必要書類
- 支給日
- 再婚時の扱い
- 対象外となる条件
制度内容を明文化する際は、「婚姻届提出日から3か月以内に申請した従業員へ3万円を支給する」のような形にしましょう。
2.就業規則に記載する
支給条件が固まったら、就業規則または慶弔見舞金規程に反映します。継続的に適用する制度を文章化せず、口頭説明だけで運用するのは、福利厚生として支給する根拠として不十分です。
文章量が多くなる場合は、詳細を別規程に委ねる形も有効です。就業規則に記載する場合も、別規程を設ける場合も以下を記載してください。
- 支給対象者
- 支給額
- 必要書類
- 申請期限
- 承認フロー
- 支給日
- 対象外となる条件
常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則の作成と届出が義務づけられています。規程を変更する際も届出が必要なので、記載内容は慎重に決めましょう。
3.社内に周知する
制度を整えた後は、従業員に周知しましょう。規程だけ作成しても、従業員が存在を知らなければ、福利厚生として機能しません。社内ポータルや入社時資料に掲載するほか、社内チャットでの告知も有効です。
とくに、申請書の提出先と申請期限は、わかりやすく示しましょう。上司や一部の担当者だけが制度を知っている状態は、避けるべきです。全従業員に同じ情報を届けられるよう、申請様式も共有場所に置く必要があります。
慶弔見舞金規程に定める内容
慶弔見舞金規程には、支給対象や支給額、申請方法を定めます。また、例外的な事態への対応方法も定める必要があります。
支給対象と支給額
支給対象の主な基準は、以下のとおりです。
- 雇用形態
- 勤続年数
- 在籍状況
- 申請日時点における勤務実態
- 休職中の扱い
正社員のみ対象とするか、契約社員やパートタイム社員も含めるかを明記しましょう。
また、支給額を決める方法は、一律型と段階型から選択できます。
- 一律型
- 段階型
一律型は、申請者に同じ金額を支給する方法であるため、管理が簡単です。段階型は、勤続年数や役職を支給額に反映できる利点があります。従業員数が少ない会社では、一律2万〜3万円の支給にすると、管理コストを軽減できるでしょう。
また、対象外となるケースの想定も必要です。たとえば、以下の従業員が申請した場合、どのように対応するか定めましょう。
- 退職した従業員
- 休職中の従業員
- 入社前に婚姻していた従業員
- 申請期限を過ぎた従業員
例外的なケースの対応を決めておけば、申請時のトラブルを防げます。
申請方法と承認フロー
結婚祝い金の申請にあたっては、以下の項目を定めましょう。
- 提出書類
- 提出先
- 申請期限
担当者の裁量が少ないほど、支給漏れや二重支給のリスクを軽減できます。必要書類として、以下の書類の提出を求めましょう。
- 婚姻届受理証明書
- 住民票記載事項証明書(必要に応じて)
戸籍謄本に限定すると従業員の負担が大きくなるため、婚姻届受理証明書や住民票記載事項証明書も認めれば、実務上の負担を減らせます。
また、承認フローの一例は、以下のとおりです。
- 本人申請
- 上長確認
- 人事承認
- 経理支給
支給日は、申請月の翌月給与日などに固定しましょう。
再婚・夫婦とも社員の場合の扱い
再婚時の支給可否も、規程に定めましょう。記載がないと、初婚のみか再婚も含めるかで、担当者の判断が分かれかねません。以下の項目を検討し、明文化することで、判断の属人化を防げます。
- 初婚のみ対象にするか
- 再婚も対象にするか
- 在籍中1回限りにするか
- 申請回数に上限を設けるか
また、夫婦がともに自社社員である場合の想定も必要です。一般的には、以下の2つのいずれかを選択します。
- 従業員個人単位でそれぞれに支給する
- 世帯単位で1回のみ支給する
従業員個人単位で支給するなら、夫婦それぞれに対して支給が必要です。一方、世帯単位にするなら、「世帯単位で1回のみ支給」と明記しましょう。
事実婚・同性パートナーへの対応
事実婚や同性パートナーを支給対象に含めるかも、明確に規定しましょう。多様な家族のあり方に配慮した制度は、エンゲージメントの向上に有効です。
対象に含める場合は、確認書類を定める必要があります。主な必要書類は、以下のとおりです。
- 住民票の続柄が確認できる書類
- 自治体のパートナーシップ証明書
- 社内申立書
- 同居実態を確認できる書類
ただし、プライバシーの観点から、必要以上に個人情報を取得するのは避けましょう。
結婚祝い金制度を導入する際の注意点
結婚祝い金制度を設ける際は、公平性や個人情報の管理に配慮しましょう。従業員支援を目的とした制度でも、判断を誤れば、税務や労務のリスクにつながりかねません。
公平性を保つ
結婚祝い金は、同じ条件の従業員に、同じ基準で支給する必要があります。特定の従業員だけを有利に扱うと、恣意的な支給と受け取られかねません。たとえば、以下のようなケースは、恣意的な支給とみなされます。
- 部署によって案内内容が異なる
- 上司の判断で支給額が変わる
- 一部の従業員だけが制度を知っている
- 例外対応の理由が記録されていない
公平性を保つため、結婚祝い金の支給条件と申請書式を全社で統一しましょう。例外対応が必要な場合は、人事部門に判断を依頼するのが理想的です。支給実績を確認された場合に備え、支給理由を記録に残す必要もあります。
個人情報の取り扱いに注意する
結婚祝い金の申請では、婚姻日や配偶者情報、住所変更などの個人情報を扱います。担当者は情報の取得を必要最低限にとどめ、利用目的を限定して管理しましょう。避けるべき対応の一例を、以下にまとめました。
- 不要な戸籍情報や詳細な家族情報の提出を求める
- 閲覧できる担当者を限定しない
- 保管期間を決めない
また、申請書の管理を怠ると、個人情報が漏洩しかねません。紙で保管する場合は、施錠管理が必須です。また、データで保管する場合は、アクセス権限を厳格に設定する必要があります。
役員への支給は慎重に判断する
役員への結婚祝い金は、従業員への支給以上に、支給条件を慎重に検討しましょう。役員に対する金銭の支給は、役員給与や役員賞与など、税務上の取り扱いがかかわるためです。とくに注意すべきケースは、以下のとおりです。
- 同族会社で親族役員に限って支給する
- 従業員より著しく高額を支給する
- 規定がないまま役員へ支給する
- 取締役会の記録を残していない
役員に結婚祝い金を支給する場合は、役員用の規程と、従業員用の規程を分けて作成しましょう。支給額を社会通念上相当な範囲に抑えることで、税務上のリスクを抑えられます。
結婚を機に住まいが変わる従業員を支援するなら、結婚祝い金とあわせて社宅制度の整備も有効です。「マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸」なら、従業員の住居費負担を抑えながら、企業の福利厚生として住宅支援を導入しやすくなります。
よくある質問
厚生年金加入者は結婚祝い金をもらえる?
厚生年金保険には結婚を支給事由とする給付はありませんが、厚生年金基金から結婚祝い金をもらえる場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。
厚生年金加入者の結婚祝い金の申請方法は?
結婚祝い金制度の有無も含めて厚生年金基金によって異なるため、確認が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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