• 更新日 : 2022年10月11日

健康保険の適用事業所とは?企業や個人事業主の加入条件と加入手続き

一般的に、企業に勤める従業員は、健康保適用事業所には、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類があります。険に加入します。また個人事業主や自営業の場合でも、条件にあてはまる事業所では、従業員を健康保険に加入させる必要があります。ここでは、健康保険の適用事業所の要件と加入手続きについて解説します。あわせて、パートやアルバイト、派遣社員などの加入条件についても見てみましょう。

健康保険の適用事業所の加入条件

勤めている会社(事業所)の健康保険に加入するには、まずは勤務先が健康保険の適用事業所である必要があります。

適用事業所には、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類があります。それぞれの違いは以下の通りです。

強制適用事業所

強制適用事業所とは、従業員や事業主の意思に関係なく、法律によって健康保険・厚生年金保険の加入が義務付けられた事業所を指します。まず強制適用事業所となるのは「法人」です。株式会社などの法人事業所の場合は、たとえ社長が一人で経営しているケースでも、強制適用事業所とみなされます。

さらに、自営業など個人が経営する企業では、農林水産業、飲食店・理容業・旅館のような接客娯楽業、寺院・寺社・教会のような宗務業などの特定の業種を除き、常時5人以上の従業員(短時間勤務も含む)がいる事業所も、強制適用事業所となります。

任意適用事業所

上述の強制適用事業所の条件を満たしていないときでも、適用事業所として認めてもらうことができます。これを、任意適用事業所といいます。任意適用事業所になるには、従業員の半数以上の同意があり、事業主が厚生労働大臣への申請と認可が必要です。

一括適用の事業所

一括適用の事業所とは、本社・支社を一つの適用事業所として社会保険を適用するものです。本社・支社があり、それぞれが適用事業所となっている会社では、一括適用の事業所となることで、本社へ社員の入退社にかかる資格取得・喪失の手続きを集約したり、転勤などの人事異動が本社・支社間であった際に発生する従業員の資格取得・喪失の手続きを省略したりすることができます。

一括適用の事業所になるには、本社に人事・労務等の機能が集約されていることや、健康保険の保険者が同一であることなどの基準があることも覚えておきましょう。

適用除外の事業所

日本には、同種の事業・業務の従事者で運営される健康保険組合団体である「国民健康保険組合(通称・国保組合)」があります。医師、弁護士、建設業界など、さまざまな業種の国保組合があり、市区町村が運営する国民健康保険に比べて保険料負担や給付内容でのメリットがあることが多く、それぞれの国保組合で給付の内容が異なるところが特徴です。

法人の事業所は原則として強制適用事業所として健康保険(又は協会けんぽ)や健康保険組合に加入します。しかし、適用除外の承認を受けることで、法人成りした事業所や、常時5人以上の従業員を雇用する事業所でも、国保組合に継続して加入することが可能です。健康保険の適用除外申請が承認された事業所に雇用される従業員は、健康保険は国保組合、年金は厚生年金保険といった形で加入します。

健康保険の適用を受けるための手続き

事業所が強制適用となるか、任意適用となるか、それぞれの状況によって提出する書類は異なりますので、確認していきしょう。

強制適用事業所として加入する場合

強制適用事業所が新たに社会保険に加入する場合、その事実が発生(法人の設立や一定の個人事業所で従業員数が5人以上となるなど強制適用事業所となった場合)してから5日以内に、その事業所の管轄である年金事務所や事務センターに「新規適用届」を提出します。被保険者となる従業員の被保険者資格取得届や健康保険被扶養者(異動)届の提出も同時に行うことが可能です。

さらに、場合によって以下の添付書類が必要となります。

法人の場合

強制適用される個人事業所の場合

  • 事業主の世帯全員の住民票(コピー不可)

事業主が国、地方公共団体又は法人である場合

  • 法人番号指定通知書等のコピー

※法人(商業)登記簿謄本及び住民票は、提出日から遡って90日以内のものが必要です。

また、法人として事業を行っている場所と登記されている所在地が異なる場合や、個人事業所として事業を行っている場所と個人事業主の住所が異なる場合には、実際に事業を行っている事業所の所在地が確認できる資料(賃貸借契約書コピーなど)の添付が必要になります。

任意適用事業所として加入する場合

強制適用事業所ではない事業所は、従業員の半数以上の同意を得たら、すみやかに「任意適用申請書」を管轄の年金事務所や事務センターへ提出し、厚生労働大臣の認可をもらう必要があります。任意適用の申請をする際には、「任意適用申請書」に以下の添付書類と「新規適用届」を添えて提出しましょう。

  • 任意適用同意書(従業員の半数以上の同意を得たことを証する書類)
  • 事業主世帯全員の住民票(コピー不可)
  • 事業主が納めた1年分の以下の5種類の公租公課の領収証(原則1年分)(コピー可)
  • 所得税(国税)、 事業税(道府県税)、 市町村民税(市町村税)、 国民年金保険料、 国民健康保険料

なお、任意適用事業所となると、同意をしなかった従業員も含め、被保険者となる要件を満たすすべての従業員に対して加入手続きが必要となります。

一括適用事業所として加入する場合

一括適用事業所の承認を受けるには、まず以下の基準をすべて満たす必要があります。

  1. 一つの適用事業所にしようとする複数の事業所に使用されるすべての者の人事、労務及び給与に関する事務が電子計算組織により集中的に管理されており、適用事業所の事業主が行うべき事務が所定の期間内に適正に行われること
  2. 一括適用の承認により指定を受けようとする事業所において、上記1.の管理が行われており、かつ、当該事業所が一括適用の承認申請を行う事業主の主たる事業所であること
  3. 承認申請にかかる適用事業所について健康保険の保険者が同一であること
  4. 協会けんぽ管掌の健康保険の適用となる場合は、健康保険の一括適用の承認申請も合わせて行うこと
  5. 一括適用の承認によって厚生年金保険事業及び健康保険事業の運営が著しく阻害されないこと

引用:一括適用|日本年金機構

その上で、申請書に加え、一つの適用事業所と見なされる事業所についての説明書類を提出します。

  • 一括適用承認申請書(記入例)
  • 人事、労務及び給与に関する事務の範囲及びその方法(記入例)
  • 各種届書の作成過程及び被保険者への作成過程または届出の処理過程(記入例)
  • 被保険者の資格取得・喪失の確認、標準報酬の決定等の内容を被保険者へ通知する方法及び健康保険被保険者証(協会けんぽ管掌の健康保険の場合)を被保険者へ交付する方法(記入例)

引用:一括適用|日本年金機構

申請は、適用事業所として業務を集約する事業所(本社等)の管轄である年金事務所に提出します。

事業所が適用除外の承認を受ける場合

個人事業主だった事業所が法人成りした際や、常時雇用する従業員が5人以上になった際、「健康保険被保険者適用除外承認申請」を提出して承認を得ることで、医師や建設業の国保組合に引き続き加入することが可能です。

  1. 所属する国保組合に、「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を送付
  2. 国保組合が証明印を押して返送
  3. 管轄の年金機構に「健康保険被保険者適用除外承認申請書」を提出
  4. 後日、年金事務所から「健康保険被保険者適用除外承認証」が交付されるので、その写しを所属する国保組合に提出する

詳細は「新規適用の手続き」「任意適用申請の手続き」をご確認下さい。

健康保険の加入対象となる被保険者

被保険者の加入条件は、年金の受給があっても影響はありません。国籍も日本国籍に限らず、性別も問いません。

雇用の状態が常時であるということは、雇用の実態があればよく、雇用契約書も必要としません。給料が支払われていれば試用期間中も雇用されていると判断されます。

令和4年10月からパート・アルバイトの適用が拡大

パートタイマーやアルバイトなど、週の労働時間が短い従業員については「週の所定労働時間」及び「1カ月の所定労働時間」が、同じ事業所で使用され、同様の業務に従事する正社員などの通常の従業員の4分の3以上である場合は被保険者となります。

また4分の3未満であっても、「被保険者数501人以上の企業」では、従業員が下記の要件を全て満たす場合に被保険者となります(特定適用事業所)。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 継続して1年以上の雇用が見込まれること
  3. 月額賃金が8.8万円以上であること
  4. 学生ではない

※常時500人以下の企業でも、申出によって「任意特定適用事業所」となった企業に勤めているパート・アルバイトの短時間労働者は、上記4つに該当すれば被保険者となります。

また、2022年10月以降、段階的にパートやアルバイトに対する健康保険・厚生年金の適用範囲が拡大されます。

【適用事業所の範囲】

現行
(2016年10月~)
2022年10月~2024年10月~
常時501人以上
常時101人以上常時51人以上

※被保険者の数は、法人の場合は支店や営業所ごとではなく、同一の法人番号(会社全体)、個人事業所の場合は現在の事業所の被保険者数でカウントすることに注意しましょう。また、12カ月のうち6カ月以上で101人の被保険者数が見込まれる場合に「常時101人以上」の事業所と判断します。

【パート・アルバイト等短時間労働者のチェック項目】

現行
(2016年10月~)
2022年10月~
週20時間以上
変更なし
月額8.8万円以上変更なし
継続して1年以上雇用される見込み継続して2カ月を超えて雇用される見込み
学生でないこと変更なし

参考:厚生労働省から法律改正のお知らせ|厚生労働省

従来の4分の3以上の条件を満たすパート・アルバイトの従業員と所定労働時間が週20時間以上となる適用拡大により被保険者となる短時間労働者では、算定基礎届などの支払基礎日数の数え方が異なります。特定適用事業所や任意特定適用事業所に該当する企業では、算定基礎届や月額変更届の書き方についても確認しておく必要があります。

これらの改正により、パートやアルバイトなど短時間労働者の健康保険・厚生年金の加入対象者の増加が予測されます。2022年10月以降の変更内容を確認し、自社で新たに被保険者となる従業員がいないかどうかを確認しましょう。

派遣社員の健康保険の加入条件

派遣社員であっても、通常の労働者と同様の条件に照らし合わせて健康保険に加入することとなります。派遣社員の場合、派遣元企業が事業主です。したがって、雇用契約を結んだ派遣元企業が適用事業所である場合には、派遣社員も被保険者となります。

ただし、派遣社員の場合、派遣元企業との契約期間に注意する必要があります。適用事業所と雇用契約を交わした派遣社員が以下の条件を満たす場合、健康保険の加入の手続きが必要です。

  • 2カ月を超える契約期間がある(2カ月以内の期間でも更新した場合には、他の条件を満たせば更新したときから被保険者となります)
  • 週の所定労働時間が一般社員の4分の3以上、および1カ月の所定労働日が一般社員の4分の3以上

派遣社員の所定労働時間が一般社員の4分の3に満たない場合は、上述の「パート・アルバイト等の短時間労働者」の加入条件に照らし合わせて加入資格を確認します。

従業員の社会保険加入に必要な手続き

加入条件を満たす従業員を新たに雇用をした際は、事業主は「被保険者資格取得届」を、退職などで健康保険加入条件を満たさなくなった際は、5日以内に日本年金機構(事務センター又は年金事務所)へ「被保険者資格喪失届」を提出します。

健康保険加入条件を満たさなくなった従業員に関する手続きについては「退職する従業員の社会保険手続き」をご確認ください。

健康保険の加入義務があるのに未加入だったときの罰則

年金事務所では適宜企業の社会保険適用や従業員の未加入の調査をしており、適用事業所であるにも関わらず、加入資格のある従業員を加入させない事実が発覚した場合、過去2年にさかのぼって、企業は未納分の保険料を徴収されることになります。

また、悪質と判断された場合には、健康保険法第208条により、6カ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科されることにもなりかねません。健康保険の未加入は従業員に大きな不利益をもたらしますので、健康保険の加入条件に該当する従業員を雇用したら、確実に手続きをしましょう。

健康保険の適用事業所は従業員の加入手続きを正しく行おう

適用事業所となる法人や個人事業所に勤める従業員は、健康保険の加入対象となります。2022年10月からは、パートやアルバイトなど短時間労働者に対する健康保険の適用範囲も拡大されるため、事業主は適用範囲を確認し、自社の従業員で加入漏れが発生しないよう、適切に手続きを行いましょう。

よくある質問

健康保険の適用事業所の加入条件は?

法人は強制適用事業所となります。また、農林水産業・宗教・飲食店などの接客娯楽業等一部の非適用業種を除き、常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所も適用事業所となり、従業員は被保険者となります。詳しくはこちらをご覧ください。

健康保険の適用を受けるための手続きは?

新たに適用事業所となる場合には、事業所の所在地の管轄である年金事務所や事務センターに新規適用届を提出します。強制適用とならない事業所でも任意適用申請書を提出することで適用事業所となる方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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