- 更新日 : 2023年8月10日
ロジカルシンキングとは?メリットや鍛え方を解説
「ロジカルシンキング」という言葉は、もともとはコンサルティング業界を中心に使われていました。しかし、最近では業種・職種・部門を問わず用いられるようになっています。
今回は広くビジネスシーンに普及した「ロジカルシンキング」の定義・メリット・手法・習得法について、詳しく解説します。
目次
ロジカルシンキングとは?
ロジカルシンキングの定義
「ロジカルシンキング(Logical Thinking)」とは、物事を体系的に整理して筋道を立て、矛盾なく根拠から結論を導き出す思考法を指します。日本語では「ロジカル思考」あるいは「論理的思考」と訳すケースが一般的です。
英語圏での「ロジカルシンキング」
「ロジカルシンキング」を和製英語とする向きもありますが、これは英語圏でも日常的に使われる言葉です。
ただし、日本のビジネスシーンにおける「ロジカルシンキング」のニュアンスは、英語の「ロジカルリーズニング(Logical Reasoning)」、つまり論理的推論のほうが近いかもしれません。英語の「ロジカルシンキング」は、厳密な概念というよりも広い意味合いを持つ言葉です。それに対して「根拠から結論への論理展開」というプロセスに、よりフォーカスしているのが「ロジカルリーズニング」です。
ただし、ビジネスシーンで「ロジカルシンキング」という言葉を使っても決して間違いではありません。
ロジカルシンキングが広まった背景
ロジカルシンキングが注目され広まった背景にあるのは、2001年に東洋経済新報社から刊行された照屋・岡田氏共著『ロジカル・シンキング』のヒットです。現在もロングセラーとなっている同書は、ビジネスに必要な論理的コミュニケーション能力を身につけることに力点を置いています。この頃から現在まで、ロジカルシンキングがビジネスのキーワードであり続けているのです。
ロジカルシンキングを身につけるメリット
ビジネスパーソンがロジカルシンキングを身につけるメリットとは何でしょうか。
ここでは5つのメリットを取り上げます。
分析力が身につく
ロジカルシンキングを習得すると、直面する課題を客観的に見たうえで要素に分解し、各要素間の関係性を把握することができます。つまり、原因から結果までの因果関係の構造を捉えられるようになるのです。物事に対して「なぜそうなのか」「どうなっているのか」という問いを繰り返す習慣が分析力を高めます。
問題の原因特定や解決能力が上がる
直面している課題に対し、ロジカルシンキングで分析・分解するアプローチをとれば原因となる要素の特定も容易になります。さらに、原因を起点に結果までを俯瞰して、適切な解決策を示せるようになるのです。結果的に、問題解決処理の効率が上がります。
筋道立てて説明できるようになる
ロジカルシンキングを習得すると、分析のインプット能力だけでなく、表現のアウトプット能力も向上します。ロジカルシンキングを使って、主張を相手に明確に伝えることができます。主張を構成する要素を整理して、矛盾なく論理展開できるのです。根拠のはっきりした説得力のある主張ができるようになります。
コミュニケーション能力があがる
客観的で筋道立った説明の力を身につけると、コミュニケーション能力が格段に向上します。さらに、相手の主張も正確に分析して論理構造を把握することで、意見の一致点と相違点が整理され、効率的なコミュニケーションが可能になるのです。建設的なコミュニケーションが生まれてきます。
生産性が向上する
ロジカルシンキングが可能にするのは、業務遂行プロセスの論理構造での把握です。
業務遂行プロセスを構成する論理が明らかになれば、無駄の所在も明らかになります。無駄をもたらしている要素の発見が容易になり、無駄を除くための道筋も見えやすくなるのです。つまり、ロジカルシンキングにより無駄削減のチャンスが増えます。個人・組織ともに生産性が向上するのです。
ロジカルシンキングがビジネスで求められる理由
ロジカルシンキングの有用性は、20年以上前から指摘されてきたことです。しかし、近年のビジネスシーンでいっそう重要性が認識され、多くのビジネスパーソンに求められるようになっています。その理由は何でしょうか。
日本型コミュニケーションの限界
昭和型の安定した年功序列・終身雇用が解体されつつあり、情と同質性を基盤とした「以心伝心」のあいまいなコミュニケーションがビジネスで通用しなくなりつつあります。
かつての日本企業で多く通用していた「暗黙の了解」「阿吽の呼吸」といった文脈に頼ったコミュニケーションは、すべてを語る必要がなく、それなりに効率的なものともいえました。
しかし、企業活動のグローバル化や人材の流動化が進み、さらにはリモートワークも普及しているのが現在です。企業のオフィスも同質性を前提とし、文脈を頼れるコミュニケーション環境ではなくなりつつあります。そして、こうした環境課で役立つものが「論理」です。
いわば、文脈に頼らず言語の壁も超えることのできる普遍の共通言語といえるでしょう。
つまり、ロジカルシンキングによるコミュニケーションでは、文脈に依存せず論理という言葉を交換することができます。こうした背景もあり、ロジカルシンキングがますます重要視されているのです。
企業を取り巻く環境の複雑化
環境の加速的な複雑化にさらされているのが、日本企業に限らない今日の企業です。複雑化の要素は、情報環境の変化と規模増大・人材の多様化・意思決定の自律分散化・気候変動をはじめとする未来の不確実性などさまざまな事柄を挙げることができます。
このような複雑化のなかでは、置かれた環境と現在の事象を正確に捉えてビジネスを展開することが必要です。複雑性を解きほぐして背景の因果関係を理解し、他者との知識共有を可能にするロジカルシンキングの力が現在まさに求められています。
ロジカルシンキングの代表的な手法
ロジカルシンキングの代表的な手法に、演繹法と帰納法があります。これら両方の思考法を身につけ、ビジネスシーンに応じて使い分けることが肝心です。
演繹法
演繹法とは、一般論に事実を当てはめて結論を導き出す推論方法です。
三段論法とも呼ばれ、アリストテレスが確立したとされています。
以下が代表的な例です。
事 実:「ソクラテスは人間である」
結 論:「ソクラテスは死ぬ」
「人間は死ぬ」という前提に「ソクラテスは人間である」という事実をあてはめると、当然「ソクラテスは死ぬ」という結論に至るわけです。演繹法では初めの一般論に誤りがあると、あとの推論が正しくても結論は誤ってしまいます。この点には注意しましょう。
帰納法
帰納法とは、観察された複数の事実から一般論を導き出す推論方法です。
以下のような代表例があります。
事実2:「2羽目のカラスも黒かった」
事実3:「3羽目のカラスも黒かった」
結 論:「カラスは黒いものである」
3回観察したカラスがすべて黒かったから、カラスは黒い鳥だろうと推論しています。
帰納法で注意すべきなのは、完全な結論を出せない点です。4羽目も5羽目もカラスが黒かったとしても、実は「黒いだろう」という高い蓋然性を示しているにすぎません。
ビジネスシーンでの使い分け
演繹法を使う代表的なビジネスシーンに商品開発があります。これまでに得た知識や技術を現在の市場動向にあてはめて、マーケットに合った新製品を開発するという具合です。
帰納法を使う代表的な場面にマーケティングがあります。数多くの顧客データにあたって得られた傾向から潜在ニーズを明るみに出すといった推論方法です。一般的にいえば、既知の原則からより現状に即した個別具体的な解決を見出そうとする場面では、演繹法が向いています。
対して、個別具体的な事実が先にあって、そこから一般原則を見出だそうとする場面で向いているのは帰納法です。しかし、まずはさまざまなビジネスシーンで両者を積極的に使ってみることをおすすめします。選択すべき推論方法が自然とわかってきて、上手に使い分けられるようになってくるはずです。
ロジカルシンキングのフレームワーク
ロジカルシンキングには演繹法・帰納法だけでなく、思考過程のよりシステマティックなモデルがあります。それが、ピラミッドストラクチャーとロジックツリーのフレームワークです。
ピラミッドストラクチャー(構造)
ピラミッドストラクチャーとは、伝えたい「主張」とその「根拠」をピラミッド構造に配置するフレームワークです。
主張をピラミッドの頂点として、下部には主張を支える根拠を複数配置して論理構造を作っります。さらに下部に追加するのは「根拠の根拠」です。ピラミッドが完成すると、自分の主張について複数の根拠を述べ、根拠について問われればさらに根拠を掘り下げて述べることができます。ピラミッドストラクチャーで主張を整理しておけば、豊かな説得力で自分の考えを伝えられるのです。
ロジックツリー
ロジックツリーとは、「課題」に対し複数の「原因となる課題」をつなぎ、さらに「原因の原因の課題」をつないでツリー状の論理構造を作るフレームワークです。
課題を深掘りして分析していくと、下部の課題はよりシンプルなものになります。そして、シンプルに分解された課題に対して解決策をつなげるのです。そのままでは解決策を見出し難い課題がこのように分析されると、シンプルな複数の解決策が浮かび上がってきます。ロジックツリーを駆使すれば、困難な課題に対しても解決策を示すことができるのです。
ロジカルシンキングの鍛え方
ロジカルシンキングの力を鍛えるためには、何をすればよいでしょうか。
鍛え方・トレーニング方法を4つ取り上げます。
研修に参加する
ロジカルシンキングの習得がまだこれからの段階ならば、ロジカルシンキングの研修に参加することが早道です。体系的な研修プログラムに継続的に参加することで、ステップバイステップでロジカルシンキングの基礎を習得することができます。
ディベートに参加する
ディベートとは、特定のテーマについて賛成側と反対側に分かれてそれぞれが主張を論理づけて述べ、説得力を競うものです。賛成・反対はランダムに振り分けられるので、主観に頼らず論理の力そのものを鍛えるのに向いています。
インプット・アウトプットの練習をする
私たちは普段から、インターネットや本などから知識を吸収しています。これがインプットです。こうしてインプットした知識を、誰かにわかりやすく話す練習をしましょう。雑然とした知識のままでは、わかりやすく伝わりません。わかりやすく話すためには、知識を整理して論理立てる力が必要になるのです。
フェルミ推定の例題を解く
フェルミ推定とは、膨大な数を扱う問題に対し概算で答えを推論することです。確かな根拠に基づいて速やかに仮説を立てる練習として優れています。
ロジカルシンキングの関連用語との違い
ロジカルシンキングに似た言葉に「クリティカルシンキング」「ラテラルシンキング」があります。これらとロジカルシンキングとはどう異なるのでしょうか。
クリティカルシンキングとの違い
ロジカルシンキングは「論理的思考」で、クリティカルシンキングは「批判的思考」です。クリティカルシンキングでも論理的な思考法を用います。その意味では、クリティカルシンキングはロジカルシンキングを含んでいるのです。しかし、クリティカルシンキングでは、ある命題が本当に正しいのかを反省的に検証するということに特化して思考します。
ラテラルシンキングとの違い
「水平思考」と訳されるのが、ラテラルシンキングです。水平思考は「垂直思考」と対照されています。ロジカルシンキングは、論理で物事を深掘りするという意味で垂直思考です。しかし、垂直思考には閉鎖的な性質があり、新しい発想を生み出す創造的思考にはなりにくい面があります。そこで、論理という縦の軸から一度離れて自由に思考の軸を動かすのがラテラルシンキングです。斬新な視点で新奇なアイデアを生み出すための思考法といえます。
ロジカルシンキングを身につけて変化に強い人になろう
日本企業も世界の企業もこれまでにない時代の変化のなかにあり、適応力や柔軟性が問われています。企業に属するビジネスパーソンもこうした変化に適応していかざるを得ないのが今日です。
ロジカルシンキングは、変化への適応のための一つのキーワードといえるでしょう。どの企業のどの部門で働く人であっても、「論理」という場所と時間を超える世界共通言語を身につけることが期待される時代です。ロジカルシンキングを身につければ、予測しがたい変化に耐える問題解決力を獲得することができます。ロジカルシンキングは、将来にわたって保持できる強力な武器なのです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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