- 更新日 : 2025年3月18日
外国人雇用管理士は国家資格?試験概要や外国人労働者雇用に役立つ資格を紹介
外国人雇用管理士は国家資格ではなく、民間資格です。外国人労働者の雇用に関する知識を身につけ、適切な管理を行うための資格として注目されています。
本記事では、外国人雇用管理士の試験概要や取得メリット、外国人労働者の採用に役立つその他の資格も紹介します。適切な資格を取得し、外国人雇用をスムーズに進める参考にしてみてください。
目次
外国人雇用管理士は国家資格ではない
外国人雇用管理士は、一般社団法人東京都外国人就労認定機構が認定する民間資格です。
企業が外国人労働者を雇用する際に必要な在留資格や特定活動について正しく理解し、適切に対応するための知識を証明できます。
外国人雇用管理士は、新在留資格制度を適切に活用するために必要な知識や、ノウハウを企業の担当者が習得することを目的に創設されました。外国人雇用管理士は国家資格ではないものの、外国人雇用において役立つ資格といえます。
外国人雇用管理士試験の概要
外国人雇用管理士試験は、企業が雇用する外国人労働者に必要な在留資格や特定活動などの知識を学ぶための資格です。取得することで、知識を実務に活かせることが証明されます。
外国人雇用管理士試験の概要は以下のとおりです。
受験資格 | とくになし、誰でも受験可能 |
---|---|
合格率 | 非公開 |
試験形式 | 択一試験(50問4肢択一)マーク方式 |
試験日程 | 年一回開催(令和7年度は未定) ※2025年3月現在 |
申込方法 | Webからの申し込み |
金額 | 外国人雇用管理試験:9,900円(税込) 試験直前対策講座(Web):12,980円(税込) |
試験の合格の有効期間 | 3年間 |
登録料 | 39,800円(税込) |
「外国人雇用管理士」登録証の有効期限 | 交付日から2年間 |
参考:外国人雇用管理士®試験|一般社団法人 東京都外国人就労認定機構
外国人雇用管理士試験は、試験と直前対策講座を合わせて申し込むことも可能です。
受験までの流れ
外国人雇用管理試験を受験するまでの流れは以下のとおりです。
- Webから申し込む
- 入金を完了する
- 入金確認後、受験番号の通知を受け取る
- 試験当日、必要な持ち物を持参して試験会場に向かう
- 指定された座席に13時45分までに着席する
- 合格発表を確認する
参考:外国人雇用管理士®試験(ELFW)|一般社団法人 東京都外国人就労認定機構
入金方法はクレジットカード払いやコンビニ・ATMカード支払いなどが利用できます。万が一、支払い期限を過ぎてしまうと、自動的に取り消されてしまうため、必ず期限内に入金してください。
また、試験当日に使用可能な身分証明書は以下のとおりです。
- 運転免許証
- パスポート
- 写真付き住民基本台帳カード
- マイナンバーカード
- 運転経歴証明書
- 在留カード
- 写真付き身体障害者手帳など
参考:外国人雇用管理士®試験(ELFW)|一般社団法人 東京都外国人就労認定機構
試験当日の持ち物は以下のとおりです。
- 筆記具
- シャープペンシル
- BかHBの黒鉛筆2〜3本
- シャープペンシルの替え芯
- 消しゴム
- 鉛筆削りも持参可能
- 腕時計
参考:外国人雇用管理士®試験(ELFW)|一般社団法人 東京都外国人就労認定機構
ただし、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチなどの無線通信機能のある電子機器類は時計代わりに使用できません。
上記の手順を踏むことで、スムーズな受験手続きが行えます。
主催者情報
外国人雇用管理士試験を実施する主催者情報は以下のとおりです。
主催者 | 一般社団法人 東京都外国人就労認定機構 |
---|---|
設立 | 2017年3月1日 |
所在地(本部) | 〒153-0064 東京都目黒区下目黒3丁目10番29号 |
営業時間 | 9:00〜17:00(土日・祝日除く) |
参考:外国人雇用管理士®試験(ELFW)|一般社団法人 東京都外国人就労認定機構
外国人雇用管理士と外国人雇用管理主任者との違い
外国人雇用管理士と外国人雇用管理主任者は、どちらも外国人労働者の雇用管理に関する民間資格ですが、実施団体や試験方式、目的などが異なります。違いの比較は以下のとおりです。
外国人雇用管理士 | 外国人雇用管理主任者 | |
---|---|---|
実施団体 | 一般社団法人 東京都外国人就労認定機構 | 株式会社 東京リーガルマインド |
試験方式 | マークシート方式 | パソコン上のCBT方式 |
目的 | 新在留資格制度の活用や企業の人事・総務担当者向けの知識習得 | 外国人雇用の全体的な流れや労務管理、助成金活用、育成の知識習得 |
受験料 | 9,900円(税込) | 8,500円(税込) |
登録料 | 39,800円(税込) | 10,000円(非課税・有効期間3年間) |
外国人雇用管理士は、在留資格制度を理解し、企業の人事・総務担当者が適切に対応できるようにすることが目的です。
一方、外国人雇用管理主任者は、外国人雇用の流れや労務管理、助成金制度など幅広い知識を身につけ、企業内で外国人雇用を推進・サポートする役割を担います。
どちらも民間資格ですが、目的や試験方法が異なるため、自身の業務や目的に応じた選択が重要です。
外国人雇用管理士の資格の特徴
外国人雇用管理士は、企業が外国人労働者を適切に受け入れるための知識を持つ専門資格です。新在留資格制度や労務管理の理解を深め、企業の人事・総務担当者が適切に対応できるように設計されています。
下記では、外国人雇用管理士の資格の特徴を解説します。
外国人労働者の採用が円滑に行える
外国人雇用管理士の資格を取得すると、外国人労働者の採用を円滑に進められます。
外国人を雇用する際は、日本人とは異なり、在留資格の確認や各種届出が必要で、手続きが複雑です。とくに在留カードの確認や特定技能の在留資格申請など、日本人には馴染みのない業務が多く、知識がなければ時間と手間がかかります。
本資格を取得することで、外国人雇用に必要な知識を習得でき、適切な手続きをスムーズに進められるため、採用の効率が向上します。
外国人労働者を育成できる
外国人雇用管理士の資格を取得すると、外国人労働者の育成にも役立ちます。
本資格では、外国人雇用に関する知識やノウハウだけでなく、異文化理解についても学ぶため、入社後のサポートや適切な指導が可能です。
文化や習慣の違いを理解し、外国人労働者に寄り添った対応ができるため、定着率の向上にもつながります。また、試験範囲には福利厚生に関する項目も含まれており、日本人労働者の育成や職場環境の改善にも活かせます。
人事としてのキャリアアップを目指せる
外国人雇用管理士の資格は、人事としてのキャリアアップに有効です。
近年、外国人労働者の雇用が増加していますが、適切な管理や法令遵守について十分に理解している企業は多くありません。そのため、外国人雇用に関する専門知識を持つ人材の需要が高まっています。
本資格を取得すれば、企業に対して専門性をアピールでき、採用・労務管理の分野での活躍が期待されます。今後、多くの企業が外国人雇用を進めるなかで、資格の価値はさらに高まるでしょう。
外国人雇用管理士以外で外国人採用に役立つ資格
外国人労働者の採用を円滑に進めるには、適切な知識やスキルが必要です。外国人雇用管理士の資格は有効ですが、他にも役立つ資格があります。
在留資格の手続きや労務管理、異文化理解など、採用に必要な知識を深められる資格を取得することで、企業の対応力が向上するでしょう。以下では、外国人雇用管理士のほかにも外国人採用に役立つ資格を紹介します。
外国人雇用管理主任者試験
外国人雇用管理主任者試験は、外国人労働者の採用から育成までの幅広い知識を証明する資格です。
試験では、外国人雇用の基本知識や労務管理、在留資格の種類と手続き、必要な費用、助成金の活用方法、採用後の育成などを総合的に学びます。資格を取得することで、企業内で外国人雇用を推進し、適切なサポートができる能力を証明できます。
社会保険労務士や行政書士、公的機関の支援員も多く保有しており、専門性の高い資格です。また、優秀な外国人人材の確保や在留資格別の雇用管理、日本語能力や文化の違いへの理解を深めることで、離職防止にも役立ちます。
外国人採用に関わる人事担当者にとって有益な資格です。
外国人雇用労務士(外労士)資格試験
外国人雇用労務士(外労士)資格試験は、外国人雇用に関する実践的な能力を証明する資格です。
外国人材の人権、採用・労務手続き、育成など、外国人を取り巻く環境や実務知識を幅広く学べます。一般社団法人全国外国人雇用推進機構が実施し、2022年に開始された新しい資格で、一般社団法人外国人雇用協議会の「認定教育コンテンツ」にも認定されています。
試験は完全オンラインで実施され、合格後に登録講習を受講することで、正式に「外国人雇用労務士(外労士)」を名乗ることが可能です。受験の際はカメラ付きPCや安定したインターネット環境を用意する必要があり、日本語の読み書きができることが条件です。
外国人採用の実務に携わる人事担当者にとって有益な資格といえます。
外国人実習雇用士検定
外国人実習雇用士検定®(ガイシ検定)は、外国人材の適正な受け入れと実務運営に必要な知識を証明する資格です。
外国人雇用に関する法的・実務的知識を習得し、適切な運用を行う人材育成が目的です。合格者は「外国人実習雇用士」として認定され、企業や団体で実務担当者としてだけでなく、スーパーバイザーとしての役割も担えます。
外国人材の受け入れに関する法律や手続きを適切に理解し、実務を円滑に進めるスキルが身につくため、外国人採用や技能実習制度に携わる人にとって有益な資格です。
外国人労働者を雇用するまでの流れ
外国人労働者を雇用するには、日本人の採用とは異なる手続きやルールを理解する必要があります。在留資格の確認や各種申請、採用後の労務管理など、適切に対応しなければなりません。
手続きを誤ると、企業や外国人労働者に不利益が生じる可能性があります。以下では、外国人労働者を雇用するまでの具体的な流れを解説します。
1. 外国人労働者の採用募集をする
外国人労働者を採用する際は、自社に適した方法で募集を行うことが重要です。
求人の掲載先として、自社HPやSNS、ハローワークを含む公的機関、教育機関の求人情報、フリーペーパー・新聞、新卒・転職求人サイト、人材紹介会社などが挙げられます。とくにSNSを活用する場合は、ターゲットとする国籍の方がよく利用するプラットフォームを選ぶことが大切です。
たとえば、フィリピンではFacebook、中国ではWeChatが主流です。適切な媒体を選ぶことで、より多くの求職者にアプローチでき、効果的な採用活動につながります。
具体的な外国人労働者の雇用方法については、下記の記事をご覧ください。
2. 書類選考する
書類選考では、履歴書や職務経歴書の確認に加え、在留資格の取得要件を満たしているかを慎重に判断することが重要です。
外国人が在留資格を取得するには、学歴や職歴の条件を満たす必要があります。学歴要件では、海外の短期大学卒以上で日本の短期大学士相当の学位、または日本の専門学校卒で専門士以上の学位が必要です。
学歴を満たさない場合でも、職歴が一定期間あれば申請できます。たとえば、「技術・人文知識」の業務なら10年、「国際業務」なら3年の職歴が求められます。履歴書の内容だけでは判断が難しいため、卒業証明書や成績証明書などの提出を求め、正確に確認することが必要です。
3. 対象の外国人労働者と面接する
書類選考で選ばれた外国人労働者とは、事前に指定した方法で面接しましょう。
面接では、まず学歴や専攻を確認し、業務に関連する知識やスキルを把握します。在留カードを確認し、在留資格や有効期限を確かめることも重要です。また、過去のアルバイト経験や業務経歴年数を確認し、実務能力や適性を見極めます。
さらに、日本に留学した理由や今後のキャリアプラン、どの程度の期間日本で働く予定かを尋ね、長期的な雇用の可能性を判断します。慎重な面接により、業務内容や勤務条件に合った適切な人材かどうかを見極められるでしょう。
4. 内定する
面接を通過した外国人労働者には、賃金や勤務時間などの雇用条件を話し合い、双方が合意すれば内定となります。
採用後のトラブルを防ぐために、日本語の雇用契約書だけでなく、雇用する外国人の母国語に対応した翻訳文を用意しておくといいでしょう。
また、在留資格取得前に雇用契約を結ぶことに抵抗がある場合は、労働条件通知書や内定通知書を作成し、契約内容を明確に示しておくことで不安を軽減できます。
5. 在留資格を申請する
外国人労働者を雇用する際は、外国人本人が住居地を管轄する地方出入国在留管理局で在留資格を申請します。
外国人留学生を新卒採用する場合は、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更許可申請を行います。日本にいる外国人を中途採用する場合は、担当する職種に応じた新しい在留資格への変更申請が必要です。
なお、転職前後で職種が同じ場合は在留資格変更は不要ですが、在留資格更新時には転職先企業に関する関係書類を提出し、在留期間更新許可申請を行う必要があります。
6. 入社後の手続きを済ませる
外国人労働者が入社した後は、必要な手続きを速やかに済ませる必要があります。
まず、ハローワークに「外国人雇用状況報告」の届出を行います。届出の提出は法律で義務付けられており、怠ると罰則があるため注意が必要です。
次に、所属(契約)機関に関する届出について外国人労働者に指導してください。転職時に届出を怠ると20万円以下の罰金が科される可能性があるため、正確な指導が重要です。
また、居住地が決まった場合は、外国人本人が市区町村役場で住民登録を行うよう案内します。
さらに、会社の社名や住所が変更された場合は、出入国在留管理庁に社名変更等届出の提出が必要です。これらの手続きを確実に行うことで、外国人労働者が安心して勤務できる環境を整えます。
外国人雇用管理士とその他国家資格などを外国人雇用に活かそう
外国人雇用管理士は国家資格ではないものの、外国人労働者の適切な採用・管理に役立つ資格です。さらに、外国人雇用管理主任者や社会保険労務士などの国家資格を取得すれば、より専門的な知識を活かせます。
適切な資格を選び、外国人雇用の実務に活用することで、スムーズな採用や労務管理を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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