• 更新日 : 2023年7月14日

退職理由の伝え方は?理由の書き方や注意点を解説

退職理由の伝え方は?理由の書き方や注意点を解説

介護、引越し、転職のためなど、従業員が退職する際の理由はさまざまです。しかし、退職届にネガティブな理由が書かれていたら気になるのではないでしょうか。

従業員が会社を辞めるには理由があり、ときには退職届で本音をいうこともあります。従業員が会社に退職理由を伝える場面や、退職理由の書き方や企業としての注意点について解説します。

従業員が会社に 退職理由を伝える場面にはどういったケースがある?

従業員が退職するのにはさまざまな事情があります。従業員が会社に退職理由を伝えるケースには、以下のようなことが考えられます。

1.家族の介護や育児、結婚などの事情で退職する場合

介護や育児、結婚など、従業員の家庭の事情や本人の事情で会社を辞めてしまうことがあります。従業員にとってはこれまで積み上げてきたキャリアが無駄になり、企業としても人材流出は大きな損失です。育児や介護であれば、時短勤務といった仕事と家庭が両立できる働き方を提案することも検討しましょう。

2.病気により退職する場合

特に病気などはプライベートにかかわることであり、従業員が人に知られたくないと思っているケースもあるため、慎重な対応が必要です。病気の場合には、休職により療養に専念してから復職する方法もあります。可能であれば診断書の提出を受け、病状について本人とよく話し合いましょう。また、本人の同意を得て主治医から病状や配慮すべきことを聞いて、病気と仕事の両立を支援する企業も多くあります。

3.業務過多や人間関係など不満があって退職する場合

業務過多や職場の人間関係で退職するケースは少なくありません。特に従業員に不満がある場合は、職場内の他の従業員に伝わり、職場環境に悪い影響を与える可能性があります。ハラスメントが原因だと、損害賠償の訴訟などのリスクもあり、大きな問題に発展しかねません。原因を突き止め改善を図ることが大切です。

4.転職により退職する場合

給与や人事評価、職務への不満などにより従業員が転職を希望するケースもあります。その人だけ給与や賞与を上げるというわけにはいきませんが、キャリアビジョンについてよく話し合い、転職の理由をよく聞き、改善を図ることが大切です。ときには新しいポジションを与え、他の職務に配置転換するという方法で引き止められることもあります。

退職届に記載する退職理由に決まりはある?

退職届に記載する退職理由の書き方には、法的な決まりはなく、従業員が自由に書いて問題ありません。しかし、従業員自身の事情で退職する場合は、「一身上の都合」と記載するのが一般的です。介護、育児、結婚、引越し、病気、転職だけではなく、職務や職場環境に不満があって退職する場合にも自己都合となるため、一身上の都合による退職となります。

一方、会社側の事情で退職する場合には、会社都合の退職です。企業の倒産、業績不振によるリストラや人員整理、退職勧奨などの退職理由が該当します。

退職理由の例

退職届に記載する退職理由について、一般例から解説します。

1.自己都合で退職する場合

従業員の意思で退職する場合には自己都合退職となるため、「一身上の都合」と記載します。定型文で縦書き・横書きにこだわることなく作成することで問題ありませんが、会社所定の退職届・退職願がある場合には会社の書式を案内しましょう。

・退職届の場合の書き方例

「このたび、誠に勝手ながら、一身上の都合により、来る〇月〇日をもって退職いたします」

・退職願の場合の書き方例

「このたび、誠に勝手ながら、一身上の都合により、来る〇月〇日をもって退職したく、ここにお願い申し上げます」

2.会社都合で退職する場合

会社都合で退職する場合には、自分の意思で退職するわけではないため「一身上の都合」とは書きません。この場合、会社の都合で退職することになるため、退職願ではなく退職届を提出することになります。また、会社が解雇する場合には、会社の一方的な労働契約の解除となるため、従業員は退職届を提出する必要もなく、会社から従業員に解雇を通知することになります。

会社都合で従業員が退職する場合の退職理由の書き方は、状況に応じて具体的な退職理由を書くのがよいでしょう。

・会社都合で退職する場合の書き方例

「貴社の人員削減による早期退職制度により、〇月〇日をもって退職いたします」

「所属部署の閉鎖に伴い、〇月〇日をもって退職いたします」

「貴社の退職勧奨に伴い、〇月〇日をもって退職いたします」

退職理由を退職届に書くうえでの注意点 – 本音で書くのはよくない?

従業員が自己都合で退職する場合、退職理由を本音で書く必要はなく、詳しく事情を記載しないのが一般的です。また、退職理由が同じ「一身上の都合」であったとしても、「退職届」を提出するケースと「退職願」を提出するケースの2種類があります。「退職届」と「退職願」はともに退職するときに従業員が会社に提出する書面ですが、言葉尻の問題ではなく、内容も含めて実質的に判断されます。

「退職届」は従業員が会社に退職の意思を申し出る一方的な解約の通知、つまり、「辞職」の意味があります。退職届は会社が受領した時点で効力が発生するため、会社としては納得できない理由で退職する場合でも、退職を断ることができません。期間の定めのない契約の従業員の場合、民法上では会社が退職届を受領してから2週間後に退職できることになっています。

会社に不満があって退職するケースでは、退職理由を従業員が本音で書くケースもあるでしょう。退職届に書かれた退職理由が会社の職場環境や人間関係に関するものであった場合には、事実関係を調査して、事実であれば改善することが大切です。

一方、「退職願」は、従業員が会社に退職をお願いするためのものであり、会社の承諾が必要です。従業員としては、退職理由に本音を書くと余計なトラブルを生む可能性があるため、本音を書くことは少ないと考えられます。従業員の退職の意思が固い場合には、円満退職ができるように、「退職する場合には1ヶ月前までに会社所定の退職願で申し出る」などといった会社の就業規則や雇用契約書のルールに則って、引継ぎや挨拶などを行った上で退職するように説明するのがよいでしょう。

また、自己都合の退職と会社都合の退職とでは、従業員の退職後に受給する雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)の給付制限期間や給付日数が異なります。したがって、会社都合の退職を自己都合で退職するように離職証明書を作成するようなことはあってはなりません。退職理由の違いは従業員とのトラブルの原因となりますので、退職届には適正な退職理由を記載するように従業員に説明しましょう。

職場環境や人間関係を良好に保つことが大切

従業員が退職する際には、上司や所属長に退職理由を伝えてから退職願で退職を申し出るのが一般的です。しかし、ときには退職届で退職理由を伝え、突然従業員が退職してしまうことがあります。退職する従業員が多い企業の場合には、何か職場に問題があるのかもしれません。職場環境や人間関係の問題点、ハラスメントの有無などを調査し、問題点があれば改善する必要があります。

退職届が提出されてから退職しないように引き止めることは容易ではありません。従業員が相談もせずに退職するような事態を防ぐには、上司と部下の関係、同僚同士の関係が円滑であることが、何よりも大切です。普段から従業員とコミュニケーションを取って、従業員のエンゲージメントを高めることが、従業員の離職防止・定着率の向上につながります。


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