- 更新日 : 2023年11月8日
年末調整後の源泉徴収票の見方を解説!正しい見方を身につけよう
年末調整後に発行する源泉徴収票には、年収や1年間に納めた所得税額が記載されています。また、これらの数字をもとに、従業員のおおよその手取りを計算することもできます。
ここでは、源泉徴収票の各項目について説明するとともに、アルバイトやパート、中途退職者など、年末調整の対象外となる従業員の源泉徴収票についても解説します。
目次
源泉徴収票の見方
源泉徴収票には、会社(支払者)が従業員に対して、1月1日から12月31日までの間に支払った給与や賞与の総額、納めた所得税額等が記載されています。
下記、国税庁が公表している源泉徴収票のフォーマットをもとに、それぞれの項目の見方を説明します。
支払金額
会社が支払った給与・賞与の総額です。役職手当や残業代といった会社が支給した金額のすべてを合算した金額が記載されています。支払金額に表示された数字は、所得税等を差し引く前の金額であり、いわゆる「年収」に該当します。
通勤手当や宿直手当などは、一定の限度額までは非課税の所得となります。非課税の範囲内の手当は支払金額に含まれません。
給与所得控除が適用された後の金額
会社が従業員に支払う給与からは、所得税を控除します。しかし、支払金額(年収)のすべてに対して税金が課税されるわけではありません。会社員の場合、自営業のように「経費計上」ができません。しかし、自己負担でスーツを用意したり、仕事に必要な筆記具を負担したりと、経費ともいえる支出が発生します。
こうした事情を考慮して、所得額に応じた一律の控除額を定めているのが「給与所得控除」です。フリーランスや自営業、事業者の経費の代わりに、給与所得控除を設けることで、会社勤めの給与所得者でも、一定の金額を給与収入から差し引くことができ、事業所得者との公平性が保たれます。
【令和2年分以降の給与所得控除額】
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
「給与所得控除後の金額」の欄では、「支払総額-給与所得控除」で算出された金額が記載されています。この金額から各種所得控除を差し引いたあとの金額が、所得税の課税対象となります。
「令和5年分年末調整のしかた」には給与所得控除後の金額が正確かつ簡単に計算できる早見表が掲載されています。上記の表で計算した金額と誤差が生じることがあるため、実務的には、以下で紹介する「令和5年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で計算した金額を記載しましょう。
「令和5年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」(一部を抜粋)
引用:令和5年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表|国税庁
所得控除の額の合計額
「所得控除の額の合計額」には、年末調整で適用される12種類の各種所得控除の金額を合計した額が記載されています。この金額と、前述の「給与所得控除額」を支払総額から差し引いたものが、所得税の課税対象額となります。
源泉徴収の金額
「源泉徴収税額」の欄に記載されている金額が1年間に納付した所得税の合計金額です。
もし、年間の手取りを計算したい場合は、「支払金額」から「源泉徴収額」と「社会保険料等の金額」を差し引けば、おおよその手取りを計算できます。実際の手取りは、上述の計算で求めた数字から、さらに住民税が差し引かれている点に注意が必要です。
源泉徴収票から年収と手取りを確認してみよう
会社勤めのAさんの源泉徴収票には、以下のように記載されていました。先に解説したそれぞれの項目を参考に、Aさんの年収とおおよその手取りを確認してみましょう。
- 支払金額:500万円
- 給与所得控除後の金額:356万円
- 源泉徴収税額:13万5500円
- 社会保険料等の金額:75万円
※源泉徴収税額や社会保険料等は概算額で算出してあります
支払金額に「500万円」とありますから、これがAさんのこの年の年収にあたります。そして、年収500万円から、所得税である源泉徴収税額13万5500円と、社会保険料等の金額の75万円を差し引いた411万4500円が、Aさんのおおよその手取りとなります。
「おおよそ」というのは、源泉徴収票には、住民税と交通費が含まれていないからです。正しい手取りを計算する場合、ここからさらに年間の住民税を差し引き、別途会社から支給されている交通費を加える必要があります。
アルバイトやパートタイマー、年の途中の退職者の源泉徴収票は違う?
アルバイトやパートで働く人、もしくは年の途中で退職した人は、受け取った源泉徴収票に「支払金額」と「源泉徴収税額」のみ記載され、「給与所得控除後の額」と「所得控除の額の合計」の欄が空欄となっている場合があります。
こうした源泉徴収票を受け取った人は、会社の年末調整の対象にはならなかったということを意味します。
アルバイトやパートタイマーの方の場合
通常、1か所の勤務先で年末まで継続して働いている場合、アルバイトやパートなど勤務形態に関わらず、年末調整の対象になります。年収103万円以下の場合も同様です。しかし、なかには年末調整の対象とならないケースもあります。この場合、源泉徴収票は先に説明した例にある内容で発行されます。
【年末調整の対象とならない主なケース】
- 複数個所で働いており、別の勤務先が主たる収入源となっている
- 12月支給の給与を受け取る前に退職した
一つ目は、他の収入源である勤務先に「扶養控除等(異動)申告書」を提出しており、別の勤務先で年末調整を行っているケースです。二つ目は、会社が年末調整を行う時期に在籍していないため、年末調整の対象とならないケースです。どちらの場合も、確定申告を行うことで、所得税の過不足を精算することができます。
なお、例外として年の給与総額が103万円以下で、退職後の本年中に他の勤務先から給与支払の見込みがないパート・アルバイトは、年末調整の対象となります。
なお、そのようなケースでは、会社から発行された源泉徴収票に「給与所得控除後の額」と「所得控除の額の合計」の記載があれば、一般的には年末調整が行われて源泉徴収税額が0円となるため、退職した従業員が確定申告をする必要はありません。
年の途中の退職者の場合
年末調整とは、その名の通り年末に行われるものです。そのため1年の途中で退職した人、具体的には12月に支払われる給与の支給前に退職した人は、会社で行う年末調整の対象とはなりません。
源泉徴収票は、退職時に受け取ります。この源泉徴収票は、当年中に退職した従業員が他の会社に転職したときや翌年確定申告を行う際に必要です。
源泉徴収票は、退職者のその年収入とそれまで納めた所得税を証明する書類であるため、これがなければ転職先で年末調整が行えません。
従業員が退職した場合にも源泉徴収票の発行が企業に義務付けられているため、少なくとも1か月以内には源泉徴収票を発行・交付するようにしましょう。
源泉徴収票は大切に保管するように従業員へアナウンスを
源泉徴収票には、その年の年収や納めた所得税の合計など、手取りを確認する上で大切な情報が記載されています。源泉徴収票の見方を知っていれば、従業員が自分の所得を把握できるだけでなく、支払っている社会保険料の総額をチェックしたり、そもそも年末調整が行われていたかどうかを確認したりすることができます。
年の途中で退職した場合、会社で交付した源泉徴収票は、その後の転職するときや確定申告するときに必要となります。アルバイトやパートでも、確定申告が必要となる場合もあります。従業員が失くしてしまった場合には再発行をしなければならなくなりますので、大切に保管するようにアナウンスしましょう。
よくある質問
源泉徴収票の見方について教えてください
源泉徴収票では「支払金額」で1年間の総収入を確認できます。これには、交通費以外の会社から支給された金額(基本給・賞与等を含む)が記載されています。また「源泉徴収税額」は年間に納めた所得税です。詳しくはこちらをご覧ください。
源泉徴収票で年収を確認するにはどうすればよいですか?
税引前の年収は「支払金額」を確認しましょう。実際の手取りをチェックするには、「支払金額」から「源泉徴収税額」と「社会保険料等の金額」を差し引きます。これでおおよその手取りが計算できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
自営業や個人事業主の年末調整|従業員がいる場合は必要!
「年末調整」は、毎年年末に行われる所得税の過不足を調整するための手続きです。毎月給与から天引きされる所得税は概算額に過ぎず、正しい税額ではありません。では、年度末に確定申告を行っている自営業者や個人事業主は年末調整は必要ないのでしょうか。こ…
詳しくみる国民年金保険料の前納制度とは?年末調整での控除方法とともに解説!
年末調整では、社会保険料が所得控除されることはご存じの方は多いでしょう。具体的には、公的年金では厚生年金保険料が該当しますが、国民年金保険料が控除対象となるケースもあります。国民年金は、厚生年金と異なり、保険料を前納すれば保険料を割引しても…
詳しくみる年末調整と離婚との関係
男性、女性に限らず、また、未婚・離別・死別に限らず、ひとりで子である扶養家族がいる人で一定の要件を満たす人は「ひとり親」として所得控除ができるようになりました。ひとり親控除は2020年分の年末調整から新設された制度の一つです。 夫と離婚した…
詳しくみる年末調整用の封筒の書き方は?書類を郵送する際の注意点を解説
読者の中には、会社で経理を担当し初めて年末調整をする方もいるでしょう。そのなかで「年末調整の書類は郵送ではできないの?」と、ふと疑問がわいたことはありませんか?リモートワークも普及し、在宅勤務も当たり前になってきましたが、年末調整の書類は郵…
詳しくみる12月支給の賞与で年末調整を処理する場合の方法と注意点
年末調整は、1年の最後の給与支払となる12月給与で行われることが一般的ですが、12月支給の賞与で行われる場合もあります。年末調整のやり方自体は、賞与でも給与でもあまり変わりませんが、賞与年調とする際は12月給与金額をあらかじめ見積もっておく…
詳しくみる国民年金保険料は年末調整によって控除できる?
年末調整の控除では、生命保険料をはじめ、給与から天引きされる社会保険料も所得税控除の対象になります。では、この社会保険料に国民年金保険料は含まれているのでしょうか。 「会社員だから国民年金保険料は払っていない」「自分は厚生年金だから関係ない…
詳しくみる