• 更新日 : 2024年3月22日

雇用形態とは?種類や正規雇用と非正規雇用の違い、変更手続きを解説

雇用形態とは?種類や正規雇用と非正規雇用の違い、変更手続きを解説

雇用形態とは、企業と従業員の間で締結した雇用契約によって定められた雇用契約の種類のことを指します。正規雇用の正社員かアルバイトなどの非正規雇用か、直接雇用か間接雇用かなど、雇用形態や区分は様々です。本記事では雇用形態の種類や雇用形態の変更手続き、社会保険の適用範囲の違い、雇用形態の内訳について解説します。

雇用形態とは?

雇用形態は雇用契約によって定められているもので、具体的には正社員や契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなどが挙げられます。それぞれの形態は正規雇用と非正規雇用、直接雇用と間接雇用に分類することが可能です。

正規雇用と非正規雇用の違い

正規雇用は正規の雇用契約を結ぶ雇用形態で、非正規雇用はそれ以外の契約方法を用いる雇用形態の総称です。正規雇用は正社員、非正規雇用はアルバイトやパート、派遣社員、契約社員などが該当します。正規雇用と非正規雇用の違いをみていきましょう。

正規雇用は期間が定められていない雇用契約を締結し、自ら退職したり企業が倒産したりするケースを除いて、会社で定められている定年まで働くことが可能です。一方で非正規雇用は、正規雇用に比べて、雇用期間の不確実性や福利厚生の不足など、労働条件の安定さが低い傾向にあります。

雇い始めてから5年を超えて契約を更新する場合、労働者が無期限の雇用契約へと転換する申し込みをする権利を持つという無期転換ルールが適用されます。労働者が無期転換を申し込んだ場合、企業側はそれを拒むことができません。

参考:無期転換ルールについて|厚生労働省

正規雇用の場合は、フルタイムで勤務することが多いです。しかし非正規雇用の場合はフルタイム勤務だけでなく、シフト制、時短勤務などの柔軟性や自由度が高い融通が利く制度がよく利用されています。

加えて、勤務地も異なる場合があります。正規雇用は企業の規模や方針次第で転勤を命じられることがありますが、非正規雇用は一般的に転勤がありません。

正規雇用では、月給制や年俸制といった1か月または1年単位の労働に対する固定給が多いです。残業代やボーナスによる変動はあるものの、基本的には決まった金額が支払われます。一方で非正規雇用は1時間あたりの給与額を基準に、実際の労働時間で給与が変わる時給制も多く導入されています。

なお、社会保険や有給休暇取得など、法律で同一の条件を適用するように定められているものに関しては、正規・非正規に違いはありません。

直接雇用と間接雇用の違い

正規雇用と非正規雇用とは異なる分類として、直接雇用と間接雇用があります。直接雇用とは、企業と労働者が直接労働契約を締結することです。正社員やパート、アルバイト、契約社員などがこれに該当します。一方で、間接雇用は企業と労働者が直接労働契約を結びません。派遣社員などがこれに該当し、労働者は勤務先ではなく派遣会社と労働契約を締結します。

雇用形態の種類

雇用形態には正社員やアルバイトをはじめとしたさまざまな種類があり、最近では短時間正社員などの新たな雇用形態も生まれています。ここでは、それぞれの特徴を解説します。

正社員

正社員は会社が定めた定年まで働くことができる雇用形態です。安定した収入を得られるだけでなく、社会的な信用も得られるため、ローンなどの審査が通りやすくなります。家や車などの大きな買い物もしやすいでしょう。

デメリットは、残業や休日出勤が求められる場合があることです。また、雇用契約の就業規則に異動や転勤に関する記載があり、それに同意した場合、異動や転勤の辞令には応じる必要が出てきます。

企業側が正社員を雇用するメリットは、長く働き続けてくれる人材を確保できることです。

しかし、正社員は一度雇うとよほどの理由がない限り解雇することはできないため、正社員を雇うときには慎重に見極める必要があります。

短時間正社員

正社員とは別の区分に、短時間正社員があります。短時間正社員は正社員よりも所定労働時間が短いものの、雇用期間の定めがない正規雇用です。時間あたりの給与、賞与や退職金を算出する方法もフルタイムの正社員と同じであるため、安定した雇用と正社員と同じ待遇を得ながら働くことができるのが大きなメリットでしょう。子育てや介護などでフルタイム労働が難しい人も正社員になれるのが短時間正社員の魅力です。

しかし、フルタイムの正社員よりも労働時間が短く、給与が減ってしまうというデメリットがあります。

企業側が短時間正社員を雇うメリットは、育児や介護でフルタイム労働が難しくなった社員を辞めさせずに済むことです。雇用形態を短時間正社員に切り替えて雇用し続けることで、新たに人材育成をする手間やコストを省くことができます。

契約社員

契約社員は、雇用期間が定められている「有期雇用」の非正規の雇用形態です。契約期間が満了した時点で、契約を継続する場合も終了する場合もあります。

契約社員は契約で仕事内容があらかじめ決まっているため、やりたい仕事や得意な仕事に就ける点がメリットです。しかし、契約を更新してもらえなかったり次の契約先が見つからなかったりすると、収入が得られなくなるリスクがあります。

企業側としては、人手の足りない繁忙期だけ契約社員を雇うなど、企業の状況に臨機応変に対応できる点がメリットでしょう。

しかし、契約期間の更新を希望されなければ、新たな人材を探さなければなりません。人材不足のリスクはデメリットでしょう。

参考:さまざまな雇用形態|厚生労働省

パート・アルバイト

パートやアルバイトは、一定の時間や条件で働く雇用形態です。パートやアルバイトとして働くメリットは、自分が働きたい時間や曜日に働くことができ、プライベートと仕事を両立しやすいことです。また、仕事を掛け持ちしたい方にも適しています。しかし、忙しさや経営状態によってシフトの量が左右され、安定した収入を得ることが難しいというデメリットもあります。

企業側がパートやアルバイトの社員を雇用するメリットは、忙しさや経営状況に応じて労働者数を調節できることです。さらに固定給の正社員と異なり時給制であることが多いため、人件費を調節しやすくなります。デメリットは、労働者の希望に合わせたシフト調節の難しさです。また、雇用している学生が学校の卒業とともにやめてしまうなど、人の入れ替わりはおきやすくなります。求人や人材育成のコストがかさんでしまうこともあるでしょう。

派遣社員

派遣社員は、派遣会社に登録して派遣会社から紹介された企業で一定期間、決められた業務をこなします。所属は派遣された企業ではなく、登録した派遣会社になります。また、派遣期間終了後に本人と派遣先企業が双方で合意することで社員となる「紹介予定派遣」もあります。

メリットは、勤務地や労働時間、自分のスキルや実績に合わせて探せることです。デメリットは、企業のニーズに合わせた雇用になるため、契約が更新されない可能性があることです。

企業側が派遣社員を起用するメリットは、即戦力を得られ必要な労働力を確保できることです。デメリットは、派遣社員の契約を更新できなければ新たな人材を探す必要があるという点です。

参考:さまざまな雇用形態|厚生労働省

業務委託など

雇用には該当しませんが、他にもさまざまな働き方があります。「業務委託」は、成果物に対して報酬が支払われます。「個人事業主」は、法人を設立せずに税務署に事業の開業届を出して、個人として事業を運営します。開業届を出さない「フリーランス」は、特定の企業や組織に雇用されず、個人として独立して仕事を請け負います。他には自宅やリモートの場所から仕事をする「在宅ワーカー」や主に家庭内で労働を行って物品の製造や加工を行う「家内労働者」があります。

雇用形態の変更方法、手続きの例

雇用形態を変更したい場合、新たな雇用契約の締結などの手続きをしなければなりません。しかし、雇用形態の変更には双方の合意が必要です。企業が一方的に雇用形態を変更することはできないので注意しましょう。

パートタイマーから正社員に変更する場合

雇用形態をパートタイマーから正社員に変更する場合、新たな雇用契約を締結する必要があります。その際、雇用契約書も新たに作成しましょう。雇用契約書の作成は義務ではありませんが、雇用形態の変更後に労使トラブルへと発展したときのために、双方の合意にもとづいた雇用契約だと証明できる雇用契約書を発行しておくと安心です。また、双方が合意した事項をまとめた覚書も交わしておくと良いでしょう。

パートタイマーの頃に社会保険や雇用保険に未加入だった場合は、加入手続きが必要となります。

正社員からパートタイマーに変更する場合

正社員からパートタイマーに雇用形態を変更する場合も、新たな雇用契約を締結しなければなりません。この場合も、雇用契約書を作成してトラブルに備えておくと安心です。

パートタイマーになる場合、契約の内容によっては社会保険の被保険者となる場合があります。また、条件次第では厚生年金保険料や健康保険料を決める標準報酬月額を改定する手続きが必要になるので、そちらも合わせて確認しておきましょう。

派遣社員を直接雇用に変更する場合

雇った派遣社員の中で、ぜひこの先も自社で働いてほしいという人が見つかった場合、派遣期間終了後に直接雇用に変更することが可能です。なお、派遣会社はこれを正当な理由なく拒むことができません。しかし派遣期間が終了する前に派遣社員を直接雇用してしまうと、不法行為だとみなされて損害賠償を請求される可能性があるので注意しましょう。

また、派遣期間終了後に正社員など直接雇用の形態へ移行することが前提となっている紹介予定派遣の場合は、派遣先の企業が派遣会社に紹介手数料を支払わなければなりません。

直接雇用する社員が社会保険への加入資格を有する場合は、健康保険・厚生年金保険や雇用保険の被保険者資格取得届を提出するなどの手続きが必要です。書類によって提出する先が異なるので注意しましょう。また、前職の源泉徴収票も本人から提出してもらい、年末調整に備えておくのがおすすめです。

参考:就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き|日本年金機構
参考:事業主の行う雇用保険の手続き |厚生労働省

雇用形態による社会保険の適用範囲・条件

社会保険は、健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険の4つから構成されているものです。正規雇用か非正規雇用か、また非正規雇用でも労働時間や労働日数などによって社会保険の適用範囲が変わります。雇用する労働者がどの条件に該当するのかしっかりと確認しておきましょう。

正規雇用

株式会社や合同会社等の法人の正規雇用の正社員は社会保険に加入する必要があります。雇用している企業は、いかなる理由があっても正社員が社会保険へ加入することを拒むことができません。

非正規雇用

労働時間や労働日数が正社員の4分の3以上であれば社会保険に加入することができます。また、会社の規模によっては学生ではなく2ヶ月以上雇用する見込みがあり、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満で所定内賃金が月額8万8千円以上の方も社会保険の適用対象になっています。

参考:パート・アルバイトのみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省

雇用形態の内訳は?雇用者の約4割は非正規雇用者

2023年に行われた労働力調査では、正規の職員や従業員の人数は前年と比較して18万人増の3606万人、非正規の職員や従業員の人数は23万人増の2,124万人となっています。全体の約4割が非正規雇用者です。

男女別に見ると、女性の正規雇用者数は18万人の増加、非正規雇用者数は9万人の増加といずれも増えているのに対して、男性の正規雇用者数は1万人の減少、非正規雇用者数は14万人の増加となっています。

非正規雇用の従業員となった理由で最も多い回答は、男女ともに「自分の都合のよい時間に働きたいから」であり、回答者数は合わせて711万人です。女性で次に多いのは「家計の補助・学費等を得たいから」という理由で、回答者数は295万人となっています。それに対し、男性で次に多いのは「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由で、回答者数は99万人です。このように回答した人は4万人減少しているものの、それでもなお2番目に多く挙げられる理由となっています。

女性の社会進出が増えている一方で、男性は正規雇用になりたくてもなれない人が増えているということがわかります。

参考:労働力調査(詳細集計) 2023年(令和5年)平均結果

求人を出すなら自社が求めている雇用形態にすること

雇用形態は契約によって定められた働き方の種類で、雇用形態によって社会保険の適用範囲などが異なります。それぞれに働く側と企業側のメリットとデメリットがあるため、自社のニーズや業務内容に合った雇用形態を選択しましょう。最適な人材の活用に繋がります。


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