• 更新日 : 2024年3月27日

パワハラとは?3つの定義やパワハラになる具体例

パワハラとは上司と部下のように優位性が認められる関係に基づく言動のことで、職場などで起こることがあります。パワハラの定義や種類、2020年に施行されたパワハラ防止法についてまとめました。また、パワハラをなくすためにできる防止策について、具体的に紹介します。働きやすい環境を構築するためにも、ぜひご覧ください。

パワハラとは?

パワハラとは、パワーハラスメント(Power Harassment)を省略した語で、優越的な関係を背景とした言動のことです。たとえば、上司と部下、コーチと選手のように、一方的に指導する・指導される関係が成り立つときに起こる傾向にあります。

パワハラは、当事者が気づきにくいという特徴があります。パワハラをしている本人が「指導をしているだけだ」と考え、また、パワハラを受けている人も「指導されているだけだ」「注意をしてくれている」と考えることがあり、状況が改善されにくくなるようです。

しかし、パワハラは確実に相手の心に影響を与え、深い傷となって残ります。早めにパワハラが行われていることに気づき、状況を改善することが必要です。

パワハラにおける3つの定義

職場での行為がパワハラに相当するかどうかは、次の3つの条件を満たしているかによって判断します。

  1. 優位性を利用している
  2. 業務範囲を超えた指示・命令をしている
  3. 極端な精神的苦痛を与えている・職場環境を害している

上記のすべてを満たす行為は、パワハラだと考えられます。それぞれの条件について見ていきましょう。

① 優位性を利用している

職場ではスムーズに業務を進めるために、指示系統や指導・被指導の関係が生まれます。上司と部下、先輩と後輩、スキルを持つ者と持たない者のような関係が成立することで、知見が乏しい人でも業務を進めていけるようになります。

また、集団と個においても優位性が生じることもあるでしょう。部下や同僚であっても、集団として行動を起こす場合は、その集団に入っていない個人は抵抗しにくくなってしまいます。

しかし、このような優位性を濫用し、業務とは関係のないところで命令をしたり従わせようとしたりすることは、パワハラといえるでしょう。たとえば、休日に個人的な用事で送迎をさせたり、尊厳を傷つけるような発言をしたりするなら、優位性を利用したパワハラ行為だと考えられます。

➁ 業務範囲を超えた指示・命令をしている

職場において業務範囲を超えた指示・命令をすることも、パワハラに相当することがあります。たとえば、次のような言動は、業務範囲を超えているため不適切と考えられます。

  • 業務上明らかに必要ではない言動
  • 業務の目的を逸脱している言動
  • 業務遂行の手段として不適切な言動
  • 該当する行為の回数や、行為者の人数、手段、態度などが明らかに社会通念上の許容範囲を超えている言動

経験年数や年齢、性別、障害・疾患の有無や国籍などは業務とは無関係なため、否定的な言動がされたときはパワハラと考えられます。仮に言動を受ける側に問題行動があった場合でも、人格を否定するような言動はパワハラです。

たとえば、仕事でミスをした部下に対して「事前準備はしたのか?」と改善可能なことについて述べるのは許容範囲内であっても、「偏差値が低い学校の卒業生だからだな」のように関連性のない発言は容認されません。

③ 極端な精神的苦痛を与えている・職場環境を害している

当該発言により、精神的な苦痛を与えているとき、あるいは職場環境を著しく害しているときは、パワハラだと考えられます。

たとえば、執拗に特定の労働者をからかうことは、労働者本人に精神的な苦痛を与えるだけでなく、周囲にも不快感を与えるでしょう。職場に行きたくないと本人だけでなく、周囲の労働者も考えるようになるかもしれません。

また、からかうことが当たり前の職場になってしまう可能性もあります。このように職場環境を好ましくない形に変える言動は、いずれもパワハラと考えられるでしょう。反復性がある場合だけでなく、1回の言動でも相手に強い苦痛を与えるなら、パワハラになり得ます。

パワハラの種類 – 6つの類型

パワハラには、次の6つの種類があります。

  • 身体的侵害
  • 精神的侵害
  • 仲間外れ・人間関係からの切り離し
  • 過大要求
  • 過小要求
  • 個の侵害

それぞれの種類について見ていきましょう。

身体的侵害

身体的侵害とは、暴力行為により相手を傷つけることです。たとえば、殴打、足蹴り、相手に物を投げつけるなどの行為が該当します。

精神的侵害

精神的侵害とは、人格を否定するような言動を行うことです。また、妥当性のある発言であっても、長時間にわたって叱責を繰り返すことは、精神的侵害に該当します。

仲間外れ・人間関係からの切り離し

特定の労働者に対して、集団で無視をすることは、集団の優位性を悪用する行為のためパワハラと考えられます。また、無視をしない場合でも、特定の労働者が孤立するように仕向ける行為もパワハラです。

過大要求

特定の労働者にのみ、大量の業務を押し付ける行為はパワハラに相当します。また、業務とは関係のない私的な雑用を強制的に行わせる行為も、パワハラと考えられます。

過小要求

労働者が能力を発揮できないように仕向ける行為は、パワハラに相当することがあります。たとえば、管理職に対して誰でもできる業務のみを行わせ、自主退職に仕向ける行為はパワハラと考えられます。

個の侵害

特定の労働者を継続的に監視する行為は、個の侵害に相当するパワハラ行為です。また、私物を勝手に撮影したり、本人が希望しないときに勝手に触れたりする行為も、個を侵害した行為だと考えられます。

2020年に施行されたパワハラ防止法とは?

2020年6月、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」、通称、パワハラ防止法が施行されました。これに伴い、企業はパワハラ防止のために、パワハラ防止法に基づいた雇用管理の実施が義務づけられることになりました。

また、施行当初は一定規模以上の企業のみを対象としていましたが、2022年3月までの猶予期間が終了したことにより、中小企業もパワハラ防止法の対象となっています。詳しくは次の記事で解説しています。ぜひご覧ください。

パワハラをしてしまう人の特徴

パワハラをする人には、次の特徴が見られることがあります。

  • ストレスを抱えている
  • 自己中心的・自己顕示欲が強い
  • マイクロマネジメントをしてしまう

それぞれの特徴について説明します。

ストレスを抱えている

パワハラをする人は、ストレスを抱えていることが多いです。些細なことがきっかけとなり、ストレスを周囲にぶつけることがあります。常にイライラしている人や、不機嫌な雰囲気を醸し出している人は、ストレスからパワハラ行為をするかもしれません。

自己中心的・自己顕示欲が強い

自分の考えが正しいと思い込んでいる人や、相手の立場に立って物事を考えられない人は、自分の主張を相手に押し付ける傾向にあります。過度に押し付けるときは、パワハラ行為にもなるでしょう。

また、自己主張が強く、自己顕示欲が強い人も、相手に自分の意見を押し付けることがあります。本人は良かれと思ってしていることも多く、パワハラ行為をしている自覚がありません。

マイクロマネジメントをしてしまう

マイクロマネジメントとは、過度に管理することです。部下の行動を逐一報告させ、細かく指示を出します。

たとえば、「電話には5回コール以内に出ろ」「メールの返信は10分以内」などの極端な指示を与え、部下が従わなかったときには烈火のごとく怒ります。マイクロマネジメントはパワハラにつながることも多く、部下に過剰な負担を与える点に注意が必要です。

パワーハラスメントの防止方法・事前準備

パワハラを防ぐためには、社内体制を変革することが必要です。次の準備をしておきましょう。

  • 社内方針の明確化・研修などの整備
  • 対処する場合の体制整備
  • 相談者のプライバシー保護
  • 事案があった場合の迅速な対応整備

それぞれの準備について説明します。

社内方針の明確化・研修などの整備

パワハラに対する社内方針を明確化します。方針を就業規則などに規定し、すべての労働者に周知・啓発することも必要です。

周知には、社内報やパンフレットなどの文書を活用する方法や、社内ホームページに掲載する方法などがあります。また、どのような行為がパワハラに相当するのかについての理解を深める研修も、必要に応じて定期的に実施します。

対処する場合の体制整備

パワハラに対応するための体制整備が必要です。次の方法を検討してみましょう。

  • 相談担当者を決め、誰もが相談できる制度を構築する
  • 外部機関に相談対応を委託する

社内で相談窓口を設けるときは、担当者を複数配置し、面談だけでなく電話やメールでも相談できるようにします。

相談者のプライバシー保護

相談者のプライバシー保護のための対策も、あらかじめ決めておくことが必要です。

マニュアルとして確立し、相談窓口の担当者に研修を実施して、プライバシーが正しく守られるようにします。また、相談者だけでなくパワハラ行為者のプライバシーも守る必要があります。

事案があった場合の迅速な対応整備

相談を受けたときは、迅速な対応が必要です。次の対応をスムーズに実施できるように、整備しておきましょう。

  • 事実関係の把握
  • 相談者と行為者の関係改善に向けたサポート
  • 配置転換を実施し、相談者と行為者を引き離す
  • 行為者に謝罪させる
  • 被害者が被ってきた不利益を回復する
  • 被害者のメンタル不調に対するサポート
  • パワハラに対する意識を啓発するための研修を実施する

もしパワハラが起こってしまったら?対応フロー

パワハラが起こったときは、次の流れに沿って対応します。

  1. 就業規則に記載の内容にあわせて対応
  2. 事実確認・本人への自覚を促す
  3. 人事的措置を行う

順に解説します。

就業規則に記載の内容にあわせて対応

パワハラが起こる前に、パワハラの定義や起こったときの対応について就業規則に定めておきます。ルール化することで、同じ行為に対して同じ対応が実施できるようになり、不公平感がなくなります。

実際にパワハラが起こったときは、就業規則に記載の内容にあわせて対応しましょう。例外を設けずに対応することで、パワハラ行為は許されない行為であることが明確になります。

事実確認・本人への自覚を促す

事実関係を確認します。事実であることが判明したときは、パワハラ行為者本人に自覚を促します。

パワハラは無自覚に行われることが多いです。どのような行為がパワハラに該当するのかを明確に示し、行為者が自身の言動を悔い改められるようにサポートします。

人事的措置を行う

パワハラ行為者が自身の言動を悔い改めても、被害者は行為者のそばにいるだけでストレスを感じるかもしれません。過去の言動がフラッシュバックして、追い詰められたように感じることも想定されます。

行為者の配置転換を実施し、被害者と物理的に引き離すことが必要です。また、行為者が複数いる場合も、それぞれを配置転換し、再び被害者を追い詰めることがないように取り計らいます。

パワーハラスメントに関する報告書の無料テンプレート・ひな形

職場でパワーハラスメントが発生した場合は、報告書を記入し、状況の把握や再発防止に努めましょう。「パワーハラスメントに関する報告書」の作成には、専用のテンプレートをご利用いただくことをお勧めします。

マネーフォードクラウドでは、今すぐ実務で使用できる、テンプレート(エクセル・ワード)を無料でダウンロードいただけます。ベースを保ちつつ、自社の様式に応じてカスタマイズすれば使い勝手の良い書類を作成できるでしょう。この機会にぜひご活用ください。

パワハラが生じてしまうことのデメリット

パワハラが職場で起こると、次のようなデメリットが想定されます。

  • 職場の雰囲気悪化
  • 生産性の低下
  • 被害者へのケアが必要

それぞれのデメリットについて解説します。

職場の雰囲気悪化

パワハラが生じている職場は雰囲気が悪くなります。パワハラ行為者の怒声や執拗な嫌がらせ行為により、被害者だけでなく周囲の労働者も精神的な苦痛を感じることがあります。

また、行為者に迎合して、被害者との関わりを避けるようになったり、行為者と同様の行為を被害者に対して実施したりするかもしれません。和気あいあいとした雰囲気が職場からなくなり、殺伐とした居心地の悪さが蔓延します。

生産性の低下

パワハラが行われている職場では、被害者は精神的に苦痛を感じているため、通常よりも仕事ができなくなってしまう可能性はあります。また、職場の雰囲気が悪くなると、被害者だけでなくほかの労働者の生産性も落ちるかもしれません。

休職者や退職者が増え、労働力が確保しにくくなることもあります。誰もが前向きな気持ちで働くためにも、パワハラは根絶すべき行為といえるでしょう。

被害者へのケアが必要

パワハラが行われたときは、被害者へのケアが必要です。十分に休息を取らせ、メンタルケアに時間をかけなくてはいけません。

被害者へのケアは、当然会社がすべきことですが、会社全体から見れば労働力の減少となり、デメリットと呼べるでしょう。被害者にケアをする状況を回避するためにも、パワハラが起こりにくい職場にすること、万が一パワハラが起こったときは迅速に対応することが大切です。

日本におけるパワハラの現状・事例

厚生労働省の調査によれば、過去3年間にパワハラについての相談があったと回答した企業は48.2%に上りました。これはセクハラ(29.8%)やカスハラ(カスタマーハラスメント、19.5%)よりも著しく高く、多くの企業でパワハラが問題になったと考えられます。

たとえば、新入社員に対して「会社を辞めるほうが皆のためになる」「この世から消えてほしい」と言ったり、部下が失敗するたびに大量の反省文を書かせたりすることがあるようです。また、情報を与えずに孤立させる、横領していないのに横領したと決めつけて「泥棒」と呼ぶなどの陰湿なパワハラも見られています。

参考:厚生労働省「令和2年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」

パワハラに対応する制度を構築しよう

会社というある意味閉ざされた空間において、立場や人数によって上下関係が生まれると、パワハラが起こることがあります。どのような行為がパワハラに該当するのか十分に周知し、万が一、パワハラを受けたときに速やかに相談できる場所を設けておくことが大切です。

また、パワハラに対する措置を就業規則に明確に記載し、公平な対応ができるようにしておくことも必要です。パワハラを根絶するためにも、パワハラを防ぎ、対応する制度を構築しましょう。


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