• 更新日 : 2024年8月29日

産後パパ育休とは?育休との違いや制度の詳細を解説!

産後パパ育休は、主に男性が出産直後の配偶者とともに育児をしやすくするための育休制度です。子の出生後8週間の間に、最大4週間の休業を2回に分けて取得できるのが大きな特徴です。本記事では、他の育休制度と比較しながら産後パパ育休の導入にあたって人事労務担当者が知っておくべきポイントについて詳しく解説します。

産後パパ育休とは

産後パパ育休は、2022年の育児・介護休業法の改正によって施行された育休制度です。子が生まれてから8週間以内に、最大で4週間の育休を2回に分割して取得できます。主に男性を想定しており、育休中でも労使協定の締結によって就業が可能になるなど、男性の育休取得促進が期待できます。

参考:育児介護休業 特設サイト|厚生労働省

男性の育休取得の現状

厚生労働省が行った調査によると、令和5年度の男性の育児取得状況は以下のとおりです。(令和5年6月1日時点)

男性の育児休業取得率男性の平均育休取得日数
46.2%46.5日

この調査では、従業員数が1,000人を超える全国すべての企業や団体にWebアンケートを行い、発送した4,409件のうち1,472件の回答を得られました。育休の取得率と取得日数には、取得率が高いほど平均の取得日数が短くなるという弱い負の相関が見られます。

参考:「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 (速報値)|厚生労働省

産後パパ育休の支援制度の詳細

産後パパ育休(出生時育児休業)は、男性の育児参加を促すことを主な目的として創設されました。子の出生直後は、男性の育児休業の取得ニーズが高くなります。女性をサポートするために、男性が従来の育児休業よりも柔軟に休業ができるように設けられた制度です。産後パパ育休の特徴は、以下のとおりです。

  • 子の出生後8週間以内で4週間(28日)までの休業が取得できる
  • 2回に分割して取得できる
  • 産後パパ育休中でも労使協定の締結によって一部就業できる

産後パパ育休中に就業するための条件は、労使協定の締結です。また、分割取得するためには、初回申出時に会社への申請が必要です。

産後パパ育休と育休の違い

産後パパ育休は、従来の育児休業とは別の制度です。 産後パパ育休が子の出生後8週間以内の取得であるのに対して、育児休業は原則として子が1歳(最長2歳)になるまで取得できます。両者の違いは以下のとおりです。

産後パパ育休育児休業
対象期間子の出生後8週間以内子が’1歳になるまで(最長2年)
申出期限原則休業する2週間前まで原則1ヶ月前まで
分割取得分割して2回取得できる分割して2回取得できる
休業中の就業労使協定の締結によって可能原則就業不可

男性が産後パパ育休と通常の育児休業を分割取得することで、夫婦間で育休の交代を可能にし、育児の負担の軽減につながります。

参考:育児・介護休業法 改正ポイントのご案内|厚生労働省

産後パパ育休とパパママ育休の違い

両親がともに育児休業をする場合、子の年齢が1歳2ヶ月まで延長される制度がパパ・ママ育休プラスです。本来、育児休業は保育所の申し込みをしても入れないといったやむを得ない事情がある場合でないと延長ができません。

パパ・ママ育休プラスは、このような事情がなくても夫婦の育休取得のタイミングをずらすことで、1歳2ヶ月まで休業できます。ただし、1人あたりの育休取得可能な最大日数は1年間です。パパ・ママ育休プラスを取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 子が1歳に達するまでに妻が育児休業を取得している
  • 夫の育児休業の開始予定日が、子の1歳誕生日以前である
  • 夫の育児休業の開始予定日が、妻の育児休業の初日以降である

産後パパ育休が主に男性が産後8週間以内に取得するものであるのに対して、パパ・ママ育休プラスは、夫婦が育児休業取得のタイミングをずらすことで、通常よりも長く休業できる制度です。

参考:両親で育児休業を取得しましょう!|厚生労働省

産後パパ育休を取得するためには?従業員が行う手続き

産後パパ育休の取得を希望する従業員は「(出生時)育児休業申出書」を会社に提出する必要があります。原則、申し出の期限は休業の2週間前までです。申出書には、休業の期間や職場復帰予定日などを記載します。産後パパ育休を2回に分割して取得する場合には、1回目と2回目の休業期間について記載が必要です。

また、産後パパ育休期間中に就業するかどうかを決めることも大切です。産後パパ育休期間中、労使協定を締結している場合に限って就業が可能です。就業を希望する場合には、従業員は事業主にその条件を申し出る必要があります。

事業主は、従業員が申し出た条件の範囲内で候補日や時間を提示します。ただし、産後パパ育休期間中の就業については、以下のように制限があります。

  • 休業期間中の所定労働日と所定労働時間の半分を上限とする
  • 休業開始日と終了予定日に就業する場合、当該日の所定労働時間数未満であること

例えば、1日の所定労働時間が7時間で週の所定労働日数が5日の従業員が、以下の条件で産後パパ育休を申し出た場合を見てみましょう。

  • 14日間の産後パパ育休を申し出
  • 休業期間中の所定労働日が10日
  • 所定労働時間が70時間

この場合の就業日数の上限は5日、就業時間の上限は35時間です。また、休業開始日と終了予定日の就業は7時間未満とする必要があります。

参考:(出生時)育児休業申出書|厚生労働省
改正育児・介護休業法の概要及び改正法への具体的対応について|厚生労働省

育児休業申出書の無料テンプレート

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産後パパ育休について人事労務担当者が知っておくべきこと

ここでは、産後パパ育休について人事労務担当者が知っておくべきことについて解説します。産後パパ育休の取得で従業員の利益となることが多いため、申請等をスムーズに進めることが大切です。

社会保険料免除の期間

まずは、産後パパ育休期間中の社会保険料の免除期間についてです。社会保険料は、育児休業等の開始日が属する月から、終了日の翌日が属する月の前月分までが免除になります。以下の条件を満たすことで、各月の月給・賞与に係る社会保険料について本人負担分と会社負担分が免除対象になります。

  • その月の末日が育児休業期間中である
  • 同一月内のみで育児休業を取得した場合には、その日数が14日以上ある
  • 賞与に係る社会保険料の免除については、連続して1ヶ月を超える育児休業を取得している

参考:令和4年10月から育児休業等期間中における社会保険料の免除要件が改正されました|日本年金機構

出生時育休給付金について

産後パパ育休を取得した従業員は、出生時育児休業給付金を受けられます。給付金を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 子が出生した日から起算して8週間経過する日の翌日までに、4週間以内の期間を定めて産後パパ育休を取得したこと
  • 休業を開始する日以前の2年間に、11日以上の賃金支払基礎日数がある完全月が12ヶ月以上あること
  • 休業期間中に就業した日数が、最大10日以下であること

有期契約労働者の場合は、上記の条件に加えて、子が出生した日から起算して8週間経過する日の翌日から6ヶ月経過する日までに労働契約が満了することが明らかでないことという要件が求められます。

出生時育児休業給付金は、子が出生した日から起算して8週間が経過する日の翌日から支給申請ができ、申請書は当該日より起算して2ヶ月を経過する日の属する月の末日までに提出する必要があります。

支給金額は「休業開始時賃金日額✕休業期間の日数×67%」の計算式で求められます。休業期間の上限は、産後パパ育休の上限である28日です。

就業規則の改定

産後パパ育休の導入にあたっては、就業規則の改定が必要です。就業規則の改定にあたっては絶対的記載事項を必ず記載します。絶対的記載事項の記載がないと罰金が課されるので注意が必要です。絶対的記載事項には、始業・就業の時刻、賃金、休日、休暇などがあります。就業規則には、以下の内容を含めましょう。

  • 育児休業を取得できる対象者の範囲
  • 育児休業の期間
  • 育児休業の申し出と撤回の手続きについて
  • 育児休業中の就業について
  • 育児休業期間中の賃金の支払いの有無
  • 育児休業期間中に通常とは異なる賃金が支払われる場合には、その決定、計算および支払い方法

参考:就業規則における育児・介護休業等の取扱い|厚生労働省

制度の従業員への説明・取得意向の確認

産後パパ育休の制度を従業員に説明し、取得意向の確認をすることが大切です。意向確認は、以下の4つの全てを行う必要があります。

  • 育児休業や産後パパ育休の制度に関すること
  • 育児休業や産後パパ育休の申し出先
  • 育児休業給付に関すること
  • 育児休業や産後パパ育休の休業期間中の従業員が負担すべき社会保険料の取り扱い

従業員が育児休業を取得することで得られるメリットを説明し、休業を希望しているのかを把握します。また、意向確認書では以下の点についてもヒアリングを行いましょう。

  • 子の出産予定日
  • 産後パパ育休の取得予定期間
  • 育児休業の取得予定期間
  • 復職後の働き方の希望
  • 周囲に配慮してほしいこと
  • 業務の引き継ぎについて

前もって従業員の意向確認をしておくことで、会社も人員の配置転換や人材確保などをスムーズに行えるでしょう。

育休取得状況の公表

従業員が1,000人を超える企業は、2023年4月から男性労働者の育児休業取得率等の公表が義務付けられました。具体的には以下の2つのうちのいずれかを公表する必要があります。

  • 育児休業等の取得割合
  • 育児休業等と育児目的休暇の取得割合

これらの割合を求めるためには以下の①〜③の人数を把握する必要があります。

①配偶者が出産した男性従業員数

②育児休業等をした男性従業員数

③小学校就学前の子の育児のための休暇を取得した男性従業員数

育児休業等の取得割合は②/①で求め、育児休業等と育児目的休暇の取得割合は(②+③)/①で求めます。育休取得状況は、一般の方が閲覧できるインターネットなどでの公表が必要です。

育休を取得する体制・環境整備

従業員が産後パパ育休の申し出をしやすくするために、会社は、従業員が育児休業を取得できる体制や環境を整備することが大切です。事業主は、以下のうちのいずれかの措置を講じる必要があります。

  • 育児休業や産後パパ育休に関する研修を実施する
  • 育児休業や産後パパ育休に関する相談体制を整備する
  • 実際に自社で育児休業や産後パパ育休を取得した従業員の事例収集や提供行う
  • 従業員に育児休業や産後パパ育休の制度に関することや育児休業取得促進に関する方針を周知する

相談体制整備の方法としては、社内に相談窓口や相談対応者を設置するなどがあり、窓口は形式的なものではなく実質的な対応が可能である必要があります。自社の育休事例については、従業員が閲覧できるよう書類配布やイントラネットへ掲載が必要です。また、自社の方針を周知するためにポスターなどを社内に掲示したり、イントラネットへ掲載するのも有効でしょう。

参考:育児休業給付の内容と支給申請手続|厚生労働省
中小企業事業主の皆さまへ 改正育児・介護休業法 対応はお済みですか?|厚生労働省

男性の育休参加を促しワークライフバランスを実現しよう

育児・介護休業法の改正によって新たに創設された産後パパ育休は、男性の育児参加の促進が期待できます。1,000人を超える企業での男性の育休取得率等の公表が義務付けられたことで、今後多くの企業で男性が育児休業を取りやすい環境が醸成されていくでしょう。

産後パパ育休の導入にあたっては、就業規則の改訂や従業員への周知、環境の整備など会社がすべきことは多いです。しかし、育児と仕事のワークライフバランスが取れた企業風土をつくることで従業員のモチベーションがアップし、ひいては会社の業績向上にもつながるでしょう。


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