- 作成日 : 2023年2月17日
社会保険の扶養とは?年収130万円の壁や2022年10月の適用拡大について解説!

配偶者の収入で生活している専業主婦などは、自分では社会保険に加入しなくてもよい場合があります。社会保険被保険者である配偶者の扶養に入ることで、自分自身は社会保険料を納付しなくても健康保険を使えたり、年金を満額で受け取れたりします。年収130万円までの人は扶養に入ることができ、それを超えると扶養から外れます。
目次
社会保険の扶養とは?
社会保険の扶養は、自分自身が社会保険の被保険者にならなくても医療や年金で不利益を被らずに済む制度です。社会保険被保険者の扶養に入ることで、自分が社会保険の被保険者とならなくても、被保険者のように各医療機関で保険診療を受けられたり、国民年金保険料の支払い義務がない第3号被保険者として扱われたりすることができます。定められた要件を満たす場合に社会保険の扶養に入ることができ、要件を満たさなくなった場合は扶養から外れなくてはなりません。
税法上の扶養との違いは?
扶養には「社会保険の扶養」以外に、「税法上の扶養(税の扶養)」があります。税法上の扶養とは、所得税の計算において扶養控除の対象になることを指します。所得税は所得に対してかかりますが、その全額にかかるわけではありません。税金をかけるのが適当ではないものは、所得から控除されます。扶養家族がいる場合も一定額の控除があり、税法上の扶養とは所得税の計算における扶養控除を受けられることを指します。
「年収〇〇万円の壁」と扶養の関係は?
扶養に入るためには、居住状況や関係性といった所定の要件を満たす必要があります。要件には、以下のようなものがあります。
- 同居している
- 別居の場合は一定上の送金をしている
- 3親等以内である など
年収も扶養の要件の一つです。年収が一定額を超えると扶養から外れなくてはならないことから、「年収○○円の壁」と呼ばれています。扶養から外れないためには、どのような「年収○○円の壁」があるのか、正しく理解しておく必要があります。
103万円の壁:所得税の課税対象に
「103万円の壁」は、税法上の扶養に関する壁です。年収103万円を超えると、所得税の扶養控除を受けられなくなります。扶養控除が受けられなくなると、所得税の負担が増えます。
106万円の壁:社会保険の加入条件に(2022年10月拡大)
「106万円の壁」は、社会保険の扶養に関する壁です。月額賃金が8万8,000円以上になると、自分自身で社会保険に加入しなければならなくなる場合があります。社会保険の適用拡大により、2022年10月以降に従業員数101人以上の企業で一定以上の働き方をしている場合は、短時間労働者でも社会保険に加入しなければならなくなりました。年間106万円(=8万8,000円×12ヵ月)が、社会保険の加入条件に当てはまるかどうかのボーダーラインです。
130万円の壁:社会保険の加入条件に
「130万円の壁」も、社会保険の扶養に関する壁です。年収が130万円を超えると、社会保険の扶養から外れなければならなくなります。社会保険の扶養対象条件に該当しなくなるためで、106万円の壁と違って勤務先の従業員数などに関わらず、扶養に入り続けることはできなくなります。
150万円の壁:配偶者特別控除を満額で受けられる上限
「150万円の壁」は、税法上の扶養に関する壁です。年収が150万円を超えると、配偶者特別控除を満額で受けることができなくなります。配偶者特別控除は所得税の計算に用いられる控除の一つで、控除額は年収によって変わります。年収が150万円までであれば満額の控除が受けられますが、超えると控除額は段階的に少なくなります。
年収の計算方法は「社会保険の扶養」と「税法上の扶養」で異なる
社会保険や税法上の扶養に入れるかどうかは年収によって判断されますが、社会保険の扶養と税法上の扶養では以下のように年収の計算方法が異なります。
社会保険の扶養
・雇用保険による失業給付や育児休業給付金、健康保険による傷病手当金などが年収の計算に含まれる。
税法上の扶養
・雇用保険による失業給付や育児休業給付金、健康保険による傷病手当金などが年収の計算に含まれない。
通勤手当や交通費も計算方法が異なる
社会保険の扶養と税法上の扶養では、通勤手当や交通費も年収の計算に含む・含まないが異なります。
社会保険の扶養
・通勤手当や交通費を含んで年収を計算する。
税法上の扶養
・通勤手当や交通費を含まずに年収を計算する。
社会保険の扶養内で働くメリットは?
社会保険の扶養内で働くことには、自分自身に社会保険加入の義務が生じないというメリットがあります。このメリットの内容として、以下の2点が挙げられます。
働いただけ収入が増える
メリットの1つ目は、社会保険料の負担がない分だけ収入が増えることです。社会保険に加入すると自分自身で保険料を支払うことになり、給料から控除されます。そのため手取額が減りますが、扶養に入っていれば社会保険料の負担はありません。給料から社会保険料が控除されないため、働いただけ収入が増えます。
被扶養者としての優遇を受けられる
メリットの2つ目は、被扶養者として優遇を受けられることです。健康保険では被扶養者の数の健康保険証が交付され、各医療機関で保険診療を受けられます。国民年金では、保険料を支払う義務のない第3号被保険者として扱われます。国民年金第3号被保険者である期間は保険料納付済期間とされ、満額の年金を受け取ることができます。
社会保険の被扶養者になる手続きは?
社会保険の被扶養者になるには、所定の手続きが必要です。手続きは被扶養者の扶養者の勤務する会社が行わなければなりません。以下の方法で手続きを行います。
提出書類
・健康保険被扶養者異動届・国民年金第3号被保険者関係届
添付書類
・被扶養者の戸籍謄本(抄本)か住民票の写し
・収入を確認できる書類(退職証明書や雇用保険被保険者離職票の写しなど)
提出方法
・電子申請・郵送・窓口持参のいずれか
提出先
・郵送する場合は事務センター
・窓口に持参する場合は事業所所在地を管轄する年金事務所
提出期限
・事実があった日から5日以内
社会保険の扶養から外れるとどうなる?
年収が基準を超えると、社会保険の扶養から外れる必要があります。扶養から外れた場合は、自分自身で社会保険に加入しなければなりません。社会保険料を支払わなければならなくなり、また扶養手当をもらえなくなることで収入減となる場合もあります。
社会保険料はいくら支払う?
扶養から外れて自分自身で社会保険に加入すると、社会保険料を負担することになります。社会保険料は、給与の約12~15%です。
会社から扶養手当をもらえなくなる?
会社によっては、社会保険の扶養から外れた家族を扶養手当支給の対象外とします。扶養手当は会社が独自に定める給料手当の一つで、支給条件も自由に決められます。社会保険の扶養家族に対して扶養手当を支給する会社では、社会保険の扶養から外れると扶養手当ももらえなくなります。
年収と扶養の関係を示す「○○円の壁」に注意しよう
扶養は年収がない、あるいは少ない家族に対し、社会保険への加入義務を課さずに被扶養者として扱う制度です。社会保険の扶養に入ると、自分自身で社会保険に入る必要がなくなります。年収130万円までの場合に扶養に入ることができ、被扶養者となります。被扶養者に対しても健康保険証が交付され、医療機関で保険診療を受けることができます。また、国民年金でも保険料納付義務がない第3号被保険者として扱われ、満額受給が可能になります。
社会保険の適用拡大により、2022年10月以降は従業員数101人以上の事業所で条件を満たす短時間労働者が社会保険加入となります。条件の一つは月額賃金8万8,000円以上で、年収106万円以上の場合に扶養から外れ、自分自身で社会保険に加入しなければならなくなります。社会保険料負担が生じる他、扶養手当をもらえなくなる場合があるので注意しましょう。
よくある質問
社会保険の扶養とは?
自分自身で社会保険に加入せずに健康保険が使えたり、年金の満額受給を受けたりすることができる制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
「年収〇〇万円の壁」と扶養の関係は?
社会保険や税法上の扶養を外れたり、控除額が減ったりする年収のことを「○○円の壁」と表現します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。