• 更新日 : 2024年11月1日

源泉徴収票は自分で作成できる?作成方法や注意点を解説

年末調整は、所得税の過不足を調整するための大切な手続きです。年末調整後には、従業員に対して源泉徴収票が交付されますが、その作成を外部に委託している企業が多いのではないでしょうか。しかし、源泉徴収票は自社でも十分に作成可能です。当記事の解説を参考に、源泉徴収票を正確かつ効率的に作成してください。

源泉徴収票は自分でも作成できる

「源泉徴収票」とは、1年間の収入や納付した税額、控除された額などが記載された書類のことです。12月に行われる年末調整後に発行され、従業員に交付されることが通常ですが、年度途中の退職の場合などは、年末を待たずに発行される場合もあります。交付された源泉徴収票は、ローン審査時の所得証明や、確定申告、転職先への提出などに使用されます。

年末調整や源泉徴収票の作成は、税務をはじめとする専門的な知識が必要となるため、税理士や代行業者などにアウトソーシングしている企業も少なくありません。しかし、自社内で年末調整を行い、外部に頼ることなく、源泉徴収票を作成することも可能です。源泉徴収票を自社で作成できれば、アウトソーシングにかかっていたコストを削減することも可能なため、検討の余地があるといえるでしょう。

源泉徴収票を自社で作成する方法には、以下のような種類があります。

  • 国税庁のテンプレートを利用
  • インターネット上の無料テンプレートを利用
  • 表計算ソフトを利用
  • e-Taxを利用

源泉徴収票のテンプレート(無料)

以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。

国税庁のテンプレートを利用する場合

源泉徴収票を作成する際に必要となる様式は、国税庁のホームページで公開されています。手書き用と入力用の2種類が公開されているため、いずれかを選択してダウンロードしてください。PDFファイル形式となっているため、表示や入力に必要なソフトウェアを最新の状態にアップデートしておきましょう。

手書きの場合には、ダウンロード後に印刷し、必要となる事項を記入します。入力用では、ダウンロード後に必要事項を入力し、印刷します。ダウンロードをせずに入力しようとすると、文字の入力ができない場合もあるため、注意してください。

国税庁のテンプレートは、公的機関が公開しているため、改正点などが正確に反映された状態で利用できます。また、利用料金がかからない点もメリットです。

参考:給与所得の源泉徴収票(同合計表)|国税庁

インターネット上の無料フォーマットを利用する場合

インターネット上のサイトに、無料のフォーマットが公開されている場合もあります。国税庁のテンプレートを基にしており、PDFだけでなく、エクセルなど、他のファイル形式で公開されている場合もあります。作業しやすい形式を選択しましょう。

インターネット上のサイトに公開されているフォーマットは、PDF以外の形式で作業できる点や、無料で利用できる点がメリットです。導入の際にコストがかからず、気軽に導入できます。ただし、内容に誤りがあったり、最新のフォーマットではなかったりする場合もあるため注意しましょう。

給与計算ソフトを利用する場合

自社従業員に支払う給与を計算するために、給与計算ソフトを利用している企業も少なくありません。そのような場合には、給与計算ソフトを利用して源泉徴収票を作成する方法も選択できます。日頃から使用しているソフトであるため、利用にも抵抗がなく、スムーズに作成できるでしょう。

また、ソフトによっては給与計算のデータを基に、ほぼ自動で作成できる場合もあり、大きな時短につながる点もメリットです。マイナンバー記載の有無を選択することも可能なため、従業員への交付用と税務署への提出用も簡単に作成できます。クラウド形式のものが多く、データを失うリスクも大幅に減少します。

給与計算ソフトには、多くの種類が存在するため、自社に合ったソフトを選ぶことが必要です。また、無料ではなく、有償のソフトが多いため、導入にかかるコストなどを含めて総合的に判断する必要があります。

参考:マネーフォワード クラウド給与

e-Taxを利用する場合

e-Taxは、国税庁によって運営される税申告や納税に関するオンラインサービスです。e-Taxを利用することで、税申告や納税をオンラインで行うことが可能となります。

源泉徴収票の作成もe-Taxを用いて行うことが可能であり、様式に従って必要事項を入力するだけで、完成します。また、支払者の氏名や住所といった情報が自動で表示されるため、作業時間をより短縮可能です。そのままオンラインで源泉徴収票を提出できるため、税務署へ出向く手間を減らせる点もメリットといえるでしょう。

e-Taxの利用には、電子証明書や利用者識別番号が必要です。あらかじめ取得しておきましょう。取得には、ICカードリーダライタや、マイナンバーカードの読み取りが可能なスマートフォン等が必要となる場合もあるため、併せて準備が必要です。

参考:ご利用の流れ|e-Tax

源泉徴収票に記載する項目

源泉徴収票には、給与をはじめとした様々な情報が記載されています。源泉徴収票の主な記載項目は、以下のとおりです。

  1. 種別
    支払われた金額の種別を記入するために設けられています。従業員の場合であれば、「給与・賞与」となり、役員の場合であれば、「役員報酬」や「報酬」と記入します。
  2. 支払金額
    1月1日より12月31日までの間に支払われた給与や賞与、手当等の金額を記入します。なお、この額は社会保険料や所得税等が控除される前の額面となります。
  3. 給与所得控除後の金額
    給与所得控除が適用された後の金額を記入します。これは、2の支払金額から給与所得控除の額を控除した金額となります。なお、扶養控除等申告書を提出しなかったなどの理由により、年末調整が行われなかった場合には、この欄は空白です。
  4. 所得控除の額の合計額
    納税者である従業員に適用された配偶者控除や、社会保険料控除をはじめとする所得控除の合計額を記入します。3と同様に年末調整が行われなかった場合には、この欄は空白です。
  5. 源泉徴収税額
    年末調整によって算出された所得の金額を基にした最終的な源泉所得税の額(年調年税額)を記入します。なお、この額には所得税だけでなく、復興特別所得税も含まれます。
  6. 控除対象配偶者の有無等/配偶者(特別)控除の額
    従業員が配偶者(特別)控除の対象である控除対象配偶者を有しているかどうかを記入するために設けられています。控除対象配偶者を有し、配偶者控除の対象となる場合には、該当する欄に〇を付け、控除額を記入します。
  7. 控除対象扶養親族の数
    控除の対象となる親族の人数を記入します。扶養親族に配偶者は含まれず、それぞれ該当する項目へ人数を記入します。
  8. 社会保険料等の金額
    従業員へ支払われた給与や賞与から控除された社会保険料の合計額を記入します。社会保険料の額には、健康保険料や厚生年金保険料だけでなく、小規模企業共済等掛金も含まれます。
  9. 生命保険料の控除額・地震保険料の控除額
    控除適用時におけるそれぞれの控除額を記入します。この額は、年末調整に当たって、従業員より提出された申告書等に基づきます。
  10. 住宅借入金等特別控除の額
    住宅ローン控除を適用する際に、その金額を記入します。年末調整に当たって、住宅借入金等特別控除申告書を提出した従業員が対象です。
  11. 摘要
    扶養親族を書き切れなかった場合や、前職の給与等を含めて年末調整を行った場合に使用されます。

源泉徴収票を自分で作成する際の注意点

源泉徴収票は、自社で作成することも可能ですが、作成の際には注意すべき点が存在します。項目ごとに見ていきましょう。

記載内容に間違いがないか慎重にチェックする

給与や賞与をはじめ、原則として従業員に支払われた金銭は、源泉徴収の対象となります。しかし、一定額までの通勤手当や、社会通念上相当と認められる範囲の慶弔手当は所得税の対象とならず、源泉徴収は不要です。そのため、非課税となる手当を含めて計算してしまうと、納めるべき所得税額にズレが生じることになります。非課税となる手当を把握し、正確な計算を行う必要があります。

内容に誤りがあった場合には、訂正が必要となり、作成者にとって大きな負担となってしまいます。なかには把握が難しい項目もありますが、ダブルチェックの体制を取るなどして、ミスのないようにしましょう。

税務署に提出する源泉徴収票はマイナンバーを記載する

源泉徴収票は、従業員に交付するだけでなく、税務署にも提出しなければなりません。また、従業員に交付する源泉徴収票にマイナンバーの記載は不要ですが、税務署へ提出する源泉徴収票に対しては、マイナンバーの記載が求められています。

マイナンバーの提出に対しては、抵抗を持っている従業員も存在します。しかし、記載が義務であることや、用途以外に使用されないことなどを説明し、マイナンバーの提供を求めましょう。また、従業員に交付する源泉徴収票にマイナンバーを記載してしまうと、郵便事故等を原因とするマイナンバーの流出につながりかねないため、記載してはなりません。

電子データで交付する場合は電子証明書を添付する

源泉徴収票は、従来の紙媒体での交付のほかに、電磁的方法による交付が認められています。電子メールでの交付や、社内LANで閲覧可能とすれば、従業員も利便性が高くなるでしょう。ただし、電磁的方法による交付は、従業員の承諾があった場合に限られることに注意が必要です。

電磁的な方法によって源泉徴収票を交付する場合には、それが正規の権限を持った者から発行されたことを証明するために、電子証明書を添付することが望ましいでしょう。電子的な印鑑証明書に相当する電子証明書の添付があれば、正規の源泉徴収票であることの保証となり、従業員も安心して使用できるようになります。

押印は不要

2021年4月以降に税務署や地方自治体に対して提出する税務書類には、原則として押印の義務がありません。そのため、現在は年末調整書類等に押印する必要はありません。源泉徴収票も同様であり、作成する源泉徴収票に押印をする必要はないことになります。

ただし、ローン審査のために提出する源泉徴収票には、押印が求められることもあるため、提出先に確認することが必要です。なお、任意に押印しても効力が否定されるようなことはありません。

注意点を守って効率的な源泉徴収票の作成を

源泉徴収票の作成は、外部へのアウトソーシングも考えられますが、自社で作成することも可能です。テンプレートなども公開されているため、それらを利用することで効率的に作成できます。しかし、記入すべき項目も多く、正確な金額等の把握も必要となるため、当記事で解説した注意点などを参考として正確に作成してください。


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